映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

複製された男

2015年01月31日 | 映画(は行)
男の潜在意識の物語



* * * * * * * * * *

自分と瓜二つの人物の存在を知り、
自身のアイデンティティが失われていく男の物語・・・
う~ん、悔しいのですが
一度見ただけではその真意を読み取ることができませんでした。



大学講師のアダム(ジェイク・ギレンホール)は、
友人から紹介された映画のDVDを見ているうちに、
自分とそっくりな端役の俳優を発見します。
どうしても気になってしまった彼は、
その俳優・アンソニー(ジェイク・ギレンホール二役)の所在を突き止めます。
そしてコンタクトを取り、2人で逢うことに。
なんと2人は顔や体型ばかりでなく、
声も、そして後天的にできた胸の傷跡までが同じ。
コピーしたとしか思えません。
終盤では、アンソニーがアダムの恋人と、
そしてアダムが妊娠中のアンソニーの妻と、
それぞれ2人きりで逢うことになりますが・・・。



冒頭の謎の秘密クラブの集まりのシーン。
繰り返されるアダムの「独裁者」の講義。
有機栽培のブルーベリー
巨大なクモ・・・。


これはいったい何なんだろう。
どういうことなんだろう。
正直疑問符ばかりで、楽しむところまでに至りませんでした。
意味ありげなのですが、最後まで明確な答えは示されません。



というところで、本作のオフィシャルサイトを覗いてみたら・・・
ちゃんとヒントが出ていました。
ネタばらしはやめておきますが、
つまりは男の潜在意識の物語なのだ・・・ということで、
あ~、それなら納得。
なるほど~、と、遅まきながら面白い!と思えたりして。
妊娠した女性というのはやはり、
男を身動きできなく絡めとるクモなんですかね・・・(-_-;)


それにしても普通自分と瓜二つの人を見つけたら、
驚いてドキドキするかもしれないけれど、
あそこまで不安にかられたりはしないと思う。
そういうところを見事な緊張感と不安感を煽る描写、
なるほど、これが監督の力というものか。
同じ素材でも描き様によってはギャグにできるかも、
と思ったりもします。



本作は、ヒントで納得したところで、
再度見るべき作品のように思います。
そうすれば、もっといろいろな秘密が見えてきそう。
まあ、また、そのうちに・・・?

複製された男 (日本語、吹替用字幕付き) [DVD]
ジェイク・ギレンホール,メラニー・ロラン,サラ・ガドン
バップ


「複製された男」
2013年/カナダ・スペイン/90分
監督:ドゥニ・ビルヌーブ
原作:ジョゼ・サラマーゴ
出演:ジェイク・ギレンホール、メラニー・ロラン、サラ・ガドン、イザベラ・ロッセリーニ、ジョシュ・ピース

混迷度★★★★★
満足度★★★★☆

ANNIE アニー

2015年01月30日 | 映画(あ行)
文句なく、好き!



* * * * * * * * * *

ミュージカルは嫌いではないので、
随分前から劇場でも予告編が流れていた本作、
楽しみにしていました。
アニーは有名なミュージカルですが、
実のところ先の映画化作品も見たことはなく、
でもテーマ曲だけは聞き覚えがありました。
それにしても、予告編って、うまくつくるものですよね・・・。
私はクワベンジャネ・ウォレスちゃんのTomorrowの
さわりの部分を聞いただけで泣きそうでした。



舞台はニューヨーク、マンハッタン。
赤ん坊の頃に両親に捨てられ、
横暴な里親ハニガン(キャメロン・ディアス)のもとで、
他の数人の里子たちとともに生活しているアニー(クワベンジャネ・ウォレス)、10歳。
いつかきっと両親が迎えに来てくれると固く信じています。
ある日、事故に合いそうなところを
市長候補のスタックス(ジェイミー・フォックス)に助けられました。
アニーの存在が、選挙戦に有利と考えたスタックスは、
彼女を引き取り一緒に暮らし始めます。



本作のオリジナルは大恐慌時代が舞台なのだそうですが、
本作はまさに現代のニューヨーク。
何しろスタックスは携帯電話の会社で財を築き上げた大富豪。
住む家も大きなお屋敷・・・ではなくて、
高層ビルの最上階、スマートハウス。
彼は貧乏人も子供も大嫌いなのですが、
何事も有権者の人気取りのため・・・ということで
やむなくアニーと同居を始めるわけです。



一方アニーは、スタックスに利用されていることは承知の上。
利発で、生きる力に富んでいて、なんとも魅力的です。
ギブ&テイクの関係を踏まえつつも、
それでも次第に気持ちが接近していくのは無理もないこと。
お互い、孤独なのですよね・・・。
頑ななスタックスの心が、次第に解けていくのを見るのは心地よい。


本作は何と言ってもクワベンジャネ・ウォレスの起用が成功でした。
「バスタブ島の少女」は、
本作に彼女を起用するための前段階としてあったのだ・・・
といいたくなってしまうくらいです。
この役、10歳前後の少女の時にしかできないですものね。
もう、白人の可愛い子ちゃんの演じる「アニー」なんて、考えられません。



キャメロン・ディアスは、やけにアクは強いが、しかし中途半端(?)な悪人役。
なんだか彼女のところだけ、漫画チックに過ぎるような気もしましたが・・・。
マンハッタンの上空、ヘリコプターの散歩。
ステキでしたねえ。
なんとも心が浮き立ちます。
愛犬のサンディも可愛かったなあ。
文句なく、「好き!」な作品。


「ANNIE アニー」
2014年/アメリカ/118分
監督:ウィル・ブラック
出演:ジェイミー・フォックス、クワベンジャネ・ウォレス、ローズ・バーン、ボビー・カナベイル、キャメロン・ディアス

アニーの魅力度★★★★★
音楽性★★★★☆
満足度★★★★★

ハード・ラッシュ

2015年01月29日 | 映画(は行)
裏切りと、危機一髪と



* * * * * * * * * *

元運び屋のクリス(マーク・ウォールバーグ)は、
裏社会から足を洗い、妻子とともに穏やかな生活を送っています。
しかし義弟アンディが麻薬の密輸に失敗したことから
マフィアに命を狙われ、クリスの家族にも危機が及びます。
家族を守るため、クリスは
やむなく再び運び屋の仕事をせざるを得なくなってしまいますが・・・。



危機一髪!のシーンが多くて、ハラハラさせられますが、
それにもまして心痛むのは、ある「裏切り」に出会うこと。
これは結構ショックです。
・・・でもまあ、彼を信頼し、
一生懸命力を尽くしてくれる友人たちもいるので、そこが救い。



主人公をマフィア側でもなく取り締まる側でもない、
という立場においたところが本作の成功の理由だと思います。
一度は「密輸」に加担したけれど、今はカタギ。
しかし、家族を守るという目的のためには手段を選ばず、
何が何でもやりぬこうとする。
信念の男。
いやあ、やっぱりカッコいい。
しびれます。
マーク・ウォールバーグはこうでなくっちゃね!!



彼は、偽札を運ぶことで報酬を得ようとしますが、
決して麻薬は運ばないと決めている。
どっちもどっちといえるかもしれないけれど、
麻薬は多くの人を実際苦しめますからね・・・。
しかし、罠にハマり
結局その麻薬をも運ばなくてはならなくなってしまった。
でも、その落とし前はちゃんと付ける!
そしてまた、行き掛けの駄賃のように手に入れたある物が、
最後に大変重要な意味を持つ、というおまけがまた、
効いています。
(予測はつきましたが)



本作のようなアクションものは、
ただドンパチあって、主人公が生き残って、めでたしめでたし・・・
と、実は甘く見ていました。
予想外によく出来たストーリーでした。

ハード・ラッシュ [DVD]
マーク・ウォールバーグ,ケイト・ベッキンセール,ベン・フォスター,ジョヴァンニ・リビシ,ケイレブ・ランドリー・ジョーンズ
NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン


「ハード・ラッシュ」

2012年/アメリカ/109分
監督:バルタザール・コルマウクル
出演:マーク・ウォールバーグ、ケイト・ベッキンセール、ベン・フォスター、ジョバンニ・リビシ

ハラハラ度★★★★☆
裏切り度★★★★★
満足度★★★★☆

「その女アレックス」 ピエール・ルメートル 

2015年01月28日 | 本(ミステリ)
哀しきアレックス・・・

その女アレックス (文春文庫)
橘明美
文藝春秋


* * * * * * * * * *

おまえが死ぬのを見たい―
男はそう言ってアレックスを監禁した。
檻に幽閉され、衰弱した彼女は、死を目前に脱出を図るが…
しかし、ここまでは序章にすぎない。
孤独な女アレックスの壮絶なる秘密が明かされるや、
物語は大逆転を繰り返し
、最後に待ち受ける慟哭と驚愕へと突進するのだ。
イギリス推理作家協会賞受賞作。


* * * * * * * * * *

2014年の海外部門における各ミステリ大賞総なめというこの作品、
いやしかし、読めば納得。
驚きの連続。
こういう読書体験に出会うために、読書を続けていると言ってもいい私には、
実に楽しめる一冊でした。
・・・楽しめると言っても、
決して「楽しい」ストーリーではありませんが。


まずは、アレックスという女性が突然見知らぬ男に拉致され、
全裸のまま身動きもままならないごく小さな檻に監禁されるという
ショッキングな場面から始まります。
衰弱しきって死を目前に、
かろうじて彼女は脱出に成功するのですが・・・


というところまでは、本の紹介文にもありますので書けるのですが、
この先のストーリーを明かすと
すなわちそれがネタばらしになってしまうので、詳しくは書けません。
しかしつまり、私達読者は著者に何度も騙されます。
当初にたっぷり私達の同情を買った彼女は、
実は・・・! 
アレックスという女性の身の上の秘密。
それこそが本作のストーリーなのです。


また、「女性が拉致された」との通報を受けた警察側に、
実に個性的な警官が揃っています。
中心となるのは、驚くほど小男のカミーユ。
逆に巨漢のル・グエン。
裕福な好青年のルイと、
貧乏でドケチのアルマン。
このチームはとても洞察力鋭く捜査を進めていくのですが、
いかんせん、アレックスの動きについていけない。
常に後手後手にまわり、責任問題にまでなりかけますが・・・。
しかし、彼らがアレックスの秘密を解き明かすのです。
翻訳物のカタカナ名前を覚えるのが苦手な私にとっては
非常にわかりやすく覚えやすい登場人物たち。
これもウレシイ。


子供のころ、時の過ぎるのを忘れて読みふけったたくさんの本たち。
そんな感覚をチョッピリ思い起こすような、
ドキドキするミステリでした。
ラストがまた効いている! 
アレックスの魂に拍手!!
まさに「ストーリー」なんですよね。


こういうのを求めている私にとって、
嫌いではなかったですが「満願」が、
やはり小粒に思えてしまうのは仕方ありません・・・。


「その女アレックス」ピエール・ルメートル 文春文庫

満足度★★★★★


ネクスト・ゴール 世界最弱のサッカー代表チーム0対31からの挑戦

2015年01月27日 | 映画(あ行)
勝つことがこんなにも難しいなんて



* * * * * * * * * *

2001年FIFAワールドカップ予選で
0対31でオーストラリアに大敗したアメリカ領サモアのサッカー代表チーム。
以来負け続けで世界最弱と言われ続けてきました。
本作はそのアメリカ領サモアのサッカーチームが
2014年ワールドカップブラジル大会の予選で
初勝利を目指す姿を追うドキュメンタリーです。



サモアと聞くと私はその昔NHKの「みんなの歌」で聞いた歌を思い出します。

♪青い青い空だよ、雲のない空だよ、サモアの島、常夏だよ・・・♪

思えば私が、南太平洋の美しい空と海と、
のんびりした島の生活に憧れた、はじめの体験かも知れません。



さて、そのサモアのサッカーチーム。
そもそもサモアと言っても本国サモアと米領サモアに分かれているなんてことも、
この度初めて知ったという体たらくですが、
こんな平和な島のサッカーチームは、確かにそう強そうな感じはしません。
でも、それにしても31対0はあんまりです。
が、そのままチームが存続しているというのも
ある意味スゴイですけどね。
けれど選手たちにとっても、
31対0は大きなトラウマなのは間違いありません。
そんなところにやってきたのが
アメリカサッカー連盟から派遣されたオランダ人監督のトーマス。
はじめのうちは彼の強引なやり方に反発もあったけれど、
次第にチームは一つにまとまっていく。
それと若干のメンバー増強も果たして。



米領サモアは2009年に大きな津波があって相当な被害があったそうです。
そのため津波に対しての避難訓練があったりする。
急に、サモアが身近に思えてしまいました。
決して平和なだけの島ではなかったのですね。
また、驚いたことにこの島の文化で「第3の性」というのがあって、
それは誰からも尊重されているということ。
・・・つまりはゲイなわけですが、
選手の一人ジャイヤ・サエルアがその一人。
確かに女性と言われても納得できるきれいな方で、
仕草がモロに女っぽい。
彼女(あえてそう呼ばせていただきますが)が、
むくつけき男性に混じってプレイするのは
危険ではないかと思うのですが、
これがなかなか決まっているという・・・。
面白いなあ。



彼らはこのワールドカップ予選で初勝利を上げるわけですが、
実のところはなんということのない2対1の勝ち。
でも、この1勝の価値はとてつもなく大きい。
こんなことで感動できるのがスポーツの面白いところ。
ワールドカップの優勝を賭けた超ハイレベルの闘いとは全然違うのに、
感動の大きさはまた別のところにあるものなんですね。
いいものを観ました。

ネクスト・ゴール! 世界最弱のサッカー代表チーム0対31からの挑戦 ブルーレイ&DVDセット(初回限定生産/2枚組) [Blu-ray]
アメリカ領サモアサッカー代表チーム,トーマス・ロンゲン,ジャイヤ・サエルヤ,ニッキー・サラブ,ラミン・オット
ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント



「ネクスト・ゴール 世界最弱のサッカー代表チーム0対31からの挑戦」

2013年/イギリス/98分
監督:マイク・ブレット、スティーブ・ジェイミソン
感動度★★★★★
満足度★★★★☆


ストックホルムでワルツを

2015年01月26日 | 映画(さ行)
父と娘の物語



* * * * * * * * * *

スウェーデンの世界的ジャズシンガー、
モニカ・ゼタールンドの半生を描きます。



スウェーデンの田舎町で、両親と5歳の娘と暮らす、シングルマザーのモニカ。
電話交換手をしながら、ジャズクラブで歌っています。
歌手としての成功を夢見ていますが、父親からは認められていません。
ある時、ジャズの聖地ニューヨークのステージに立つチャンスがあったのですが、
失敗。
それは歌がまずかったわけではなく、
黒人ミュージシャンと同じステージに立ったのが、
反感を買ったらしいのです。
黒人をジャズの優秀な担い手と認識しながらも尚、
差別意識が根強くあった時代ならでは、です・・・。
スウェーデンでジャズのレコードを聞き、
彼らの大ファンであったモニカには
全く差別意識がなかった、というのも皮肉です。



当時のスウェーデンではジャズは英語で歌うのが当たり前。
でも彼女は憧れの黒人歌手フィッツジェラルドに
自分の気持ちを歌わなくてはダメと言われたことから、
自国、スウェーデン語で歌うようになります。
確かに、肌の透き通るように白いスウェーデン人が
ニューオリンズの歌を歌っても気持ちがこもりません。
自分の言葉で、自分の風土が育んだ自分の心を唄えばこそ、
人々の胸を打つ。
そしてさらに、様々な苦労を乗り越え、
経験を積んだ後であればなおさらに。
カフェでスウェーデン人の詩をテイクファイブの曲に乗せて、
一人口ずさんでしまうモニカのシーンがステキでした。



本作は、一人のシンガーのサクセスストーリーと言うよりは、
一人の女性が父親に認められ自己肯定するまでの過程を描いた物語のような気がします。
そしてまた、なんともじれったいラブストーリーでもあります。
いつも木のてっぺんまで登らないと気のすまない子だった、
と父はモニカのことを言います。
危険だから他の子は途中まで登って諦めるのに・・・と。
もっと安全で堅実な道を歩んでほしいと思うのは、
まあ親としては当然のこととも思えるのですが。
父に認められて初めて
自分のままでいていいのだと納得できる、
これも一つの父と娘の物語。



本年は実のモニカ・ゼタールンド没後10年に当たります。
Wikipediaで、同年代の写真を拝見すると、
本作のエッダ・マグナソンがそっくり!!なのでした。

「ストックホルムでワルツを」

2014年/スウェーデン/111分
監督:ペール・フライ
出演:エッダ・マグナソン、スベリル・グドナソン、シェル・ベリィクビスト
ジャズのお楽しみ度★★★★☆
満足度★★★★☆

ニューヨーク冬物語

2015年01月25日 | 映画(な行)
現代のお伽話



* * * * * * * * * *

2014年冬、ニューヨーク。
100年ほど前に記憶をなくし、
若き日の姿のままでさまよっていたピーター(コリン・ファレル)。
眠りから覚めるように、
余命僅かな美しい令嬢ベバリーとの運命的な恋と
その儚く散った命の記憶を取り戻します。
実は彼が今目覚めたことには、ある宿命的な理由があった・・・。



120年ほど前、このニューヨークに
移民のため大西洋を渡ってきた夫婦があったのです。
しかし夫に結核が認められたため、
移民審査にパスすることができず、
やむなく帰国の途に付くことになってしまった。
しかしこの自由な国で生きることを希求していたこの夫婦は、
なんと自分たちの赤子を小舟に乗せてニューヨークの岸辺へ放った。
孤児として育ったその子がピーターというわけで、
これがドラマチックな運命の始まり。



う~ん、それにしても本作で最もドラマチックだったのはここの部分で、
その後のストーリーはなんだかよくわからない。
ラッセル・クロウ演じるギャングのボスみたいなのの正体は
結局何だったのか。
悪魔・・・と言ってしまうには通俗的すぎますか。
何か邪悪なもの。
悪しき者。
でもその上司に当たる(?)のがウィル・スミスで、
こうなると一層なんだかよくわからない。
邪悪を突き抜けていっそいい人に見えるウィル・スミス、
あなたはだれ?



突如現れる白馬はカッコ良かったですが。
空も飛ぶ。
ネイティブアメリカンの神話めいていたようでもありますが、
それもよくわかりません。
ムードばかりが先行して、
結局運命の出会いとは言うものの、ほんの一つのラブストーリー。
まさに現代のお伽話とは言えると思うのですが、
どういう年代層へ向けたものやら何なのやら、
狙いがよくわからない。
コリン・ファレルの髪型もイヤでした・・・

ニューヨーク 冬物語 ブルーレイ&DVDセット(初回限定生産/2枚組/デジタルコピー付) [Blu-ray]
コリン・ファレル,ジェシカ・ブラウン・フィンドレイ,ジェニファー・コネリー,ラッセル・クロウ
ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント


「ニューヨーク冬物語」
2014年/アメリカ/118分
監督:アキバ・ゴールズマン
出演:コリン・ファレル、ジェシカ・ブラウン・フィンドレイ、ラッセル・クロウ、ジェニファー・コネリー、ウィリアム・ハート、ウィル・スミス
ファンタジー度★★★☆☆
満足度★★☆☆☆


「新解さんの謎」赤瀬川原平

2015年01月24日 | 本(エッセイ)
「新解さん」の人格とは

新解さんの謎 (文春文庫)
赤瀬川 原平
文藝春秋


* * * * * * * * * *

辞書の中から立ち現われた謎の男。
魚が好きで苦労人、女に厳しく、金はない―。
「新解さん」とは、はたして何者か?
三省堂「新明解国語辞典」の不思議な世界に踏み込んで、抱腹絶倒。
でもちょっと真面目な言葉のジャングル探検記。
紙をめぐる高邁深遠かつ不要不急の考察「紙がみの消息」を併録。


* * * * * * * * * *


2014年10月に逝去された赤瀬川原平さんを偲んで・・・


辞書の説明文の中の妙にユニークな説明や用例を見つける・・・、
そんな「辞書ブーム」はこの一冊から始まったそうなんですね。
私、それは知らなかったのですが、
この三省堂「新明解国語辞典」、確かになんだか怪しいと思います。
本書で一番初めに紹介されているのが「恋愛」という項目なのですが、

れんあい【恋愛】
特定の異性に特別の愛情をいだいて、
二人だけで一緒にいたい、できるなら合体したいという気持ちを持ちながら、
それが、常にはかなえられないで、
ひどく心を苦しめる・(まれにかなえられて歓喜する)状態。


・・・できるなら合体?!
いや、言われてみればたしかにそうなのですが、
妙にこの解説の中に「人格」を感じるわけです。
それで著者はその人格に「新解さん」と命名。
いろいろな言葉を例に上げながら、新解さんの人格を分析していきます。


私の感覚ではちょっと男尊女卑で、古いタイプのようにお見受けしました・・・。
(改訂は繰り返されているけれど、
一番初めの説明や用例が結構色濃く残っているのかもしれません)


本巻、後半は「紙がみの消息」というエッセイ集になっていて、
私はこちらのほうがむしろ楽しかった。
平成4年~6年「諸君!」に連載されたもので、
「紙」にまつわるいろいろなことをテーマとしています。

「余白」の考察の中で、余白は「上品」である、と。
余白がなくてぎっしりなのは「実質」であると。
あー、言われてみれば確かに、その通り。
余白たっぷりの例えば「詩集」などは、お上品の極みだけれど、
文字と写真がびっしりのスーパーのチラシなどは「上品」からは遠く、
しかし、「実質の極み」だ。
居酒屋の壁にびっしり貼られたお品書きの紙。
決して上品ではないけど、なんだか安くて景気がよさそう。
高級レストランの壁にそんなものは貼っておらず、
あっても品の良い絵画とか・・・。
余白たっぷり。
そうです、確かに私達は無意識のうちにそう感じ取っていたのですが、
このように言葉ではっきり指摘されたのは初めて。
こういう鋭い洞察が赤瀬川さんならではということなのでしょう。


また、ようやくワープロが普及してきた20年ほど前の文章なので、
今となっては「当時を偲ぶ」という楽しみ方もできるのです。
これもまたよろしい。
渋く楽しめる一冊なのでした。

「新解さんの謎」赤瀬川原平 文春文庫
満足度★★★★☆


百円の恋

2015年01月23日 | 映画(は行)
安藤サクラさんに拍手!!



* * * * * * * * * *

実家で引き籠もり生活をしていた32歳、一子(安藤サクラ)。
離婚して出戻ってきた妹と大げんかをし、家を出て一人暮らしを始めます。
100円ショップの深夜勤務の職についた一子。
その帰り道のボクシングジムで、
寡黙に練習を続ける中年ボクサー・狩野(新井浩文)が、何故か気にかかります。
やがて一子は自らもボクシングを始めますが・・・。



山口県の周南映画祭、松田優作賞第一回グランプリを受賞した脚本。
あ、ちゃんとこんなに地味~な脚本を評価する賞もあるのですね。
ちょっと安心しました。
はじめの方の一子のダラダラぶりがなかなか振るっています。
(私、なんとなく北大路公子さんを思い出してしまった・・・、
キミコさん、ごめんなさい!!)。
初めて狩野にデートに誘われた時も「なんで私を?」と問えば
「断らなさそうだったから」との答え。
そんな風で、彼女自身全く自分に自信がなく、
自分自身の値段もショップの品と同じ「100円」と思っているのです。
そんな彼女が、ボクシングに打ち込む男の姿をちょっといいなあ・・・と思い、
戦う物同士だけに通じ会う共感のようなものに憧れ、
ボクシングを始める。
プロ資格テストを受けることができる上限の32歳で。



いやそれにしても、安藤サクラさんに拍手!!
始めはどうなることかと思いましたが、
後々のトレーニングを積んだ一子のなんとカッコイイこと。
動きのキレがいいし、体もビシッと引き締まって・・・!!
実際に相当練習したのでしょうねえ。
この役はオーディションだったそうで、
この役をやりたいというガッツがまた、スゴイと思います。





練習を積むだけそれが自分の力になる。
そういう確かさが、自信となっていったような気がします。
誰からも認められない100円の一子が、
周りの人々に認められ、自分の存在を肯定できるようになっていく。
それまでバカにしていた周りの眼の色も変わってきます。
勝ち負けではなく、どれだけ力を尽くせたか、
そういうところがみなにも伝わって、ステキな物語になりました。


「百円の恋」
2014年/日本/113分
監督:武正晴
脚本:足立紳
出演:安藤サクラ、新井浩文、稲川実代子、早織、宇野祥平
変身度★★★★★
満足度★★★★☆

鉄道員 ぽっぽや

2015年01月22日 | 映画(は行)
高倉健さんを偲んで



* * * * * * * * * *

本作、私、見てなかったんですねー。
今さらながら見てみましたが、泣けて泣けて・・・。


舞台は北海道幌舞(ほろまい)線の終着駅、幌舞。
かつて炭鉱で栄えた街ですが、廃坑になってからはどんどん寂れて、
まもなく廃線になろうというところです。
高倉健さん演じる佐藤乙松はこの駅の駅長さん。
と言っても他に駅員はいません。
鉄道員(ぽっぽや)一筋でこれまでの人生を送ってきました。
幼い一人娘を亡くし、妻(大竹しのぶ)を亡くし・・・、
彼はそんな時もずっとこの駅に立ち続けたのです。
その乙松もこの春でいよいよ定年。
その後の生活のことを周囲のみなが気にかけているのですが、
本人は特にに何も考えてはいないよう・・・。
そんな時、駅を一人の少女が訪れます・・・。


長く子供ができず、やっとできた子供が
まだ赤ん坊のうちに病死。
炭鉱の事故で亡くなった人の子供を引き取って育てようかという話も出たけれど、
妻が病弱だったため断念。
そしてその妻も病で先に逝ってしまう。
好きな仕事一筋で生きてきたけれど、
あまりにもわびしい今のこの生活。
雪一色の風景の中で、本当に物悲しさが募るのですが、
そこへ息吹を吹き込むのは一人の少女です。
始めは小学校入学前の幼い女の子。
その次に現れたのは中学校入学前くらいの女の子。
そしてまたその後で高校生の女の子が現れて
乙松に親しげに話しかけます。
3人の姉妹なんだな、と乙松は思うのですが・・・。


「ジェニーの肖像」が大好きな私は、すぐにピンときました。
リアルで無骨な男の生涯の話と、
ちょっぴりファンタジックな部分との融合で、
本作は素晴らしい奥行きと広がりを見せています。
少女がつけていた赤いマフラーが鮮烈で印象的。
広末涼子さんのなんと可愛らしいこと! 
この舞台の中では特にそう感じます。
そしてこの2人のツーショットに、涙・・・涙・・・。
健さんには北海道の冬景色が似合いますねえ・・・。
つくづくいい作品でした。

鉄道員(ぽっぽや) [DVD]
高倉健,大竹しのぶ,広末涼子,吉岡秀隆,安藤政信
TOEI COMPANY,LTD.(TOE)(D)


「鉄道員 ぽっぽや」
1999年/日本/112分
監督:降旗康男
原作:浅田次郎
出演:高倉健、小林稔侍、大竹しのぶ、広末涼子、奈良岡朋子

健さんの魅力度★★★★★
満足度★★★★★

トト・ザ・ヒーロー

2015年01月21日 | 映画(た行)
幸も不幸も本人次第



* * * * * * * * * *

老人ホームで暮らすトマ老人は、
自分は産院の火事の時に裕福な隣家・カント家の
アルフレッドと取り替えられたと信じています。
本作はこの現在のトマ、そして彼の少年時代と青年時代の回想からなっています。


優しい父母と家族、
そう裕福ではないものの、幸せな子供時代でした。
しかし父が事故で亡くなってしまいます。
また、彼は異常なくらいに姉アリスを慕っていました。
美しく、どこかエキセントリックな姉。
しかしその姉も、少女のまま亡くなってしまうのです。
こんなはずではなかった。
こんな人生は間違っている。
現実を受け入れたくない彼は、
ますます自分の創りだした「出生の秘密」にのめり込んでいったのではないでしょうか。
大人となったトマは、どこか姉と面影がよく似たエヴリーヌという女性に惹かれます。
しかし彼女は人妻で、しかもその夫は・・・!


自分の幸せであるべき人生を、アルフレッドがすべて盗んでしまったのだ。
そう思い込んだトマは
アルフレッドに復讐するため老人ホームを抜け出し、
アルフレッドに会いに行きます。
しかし、そこで出会ったアルフレッドは
自分以上に老い、疲れているように見えます。
そしてトマは彼から意外な言葉を聞くのです。


トマ程ではないにしても、
誰しも今の自分は間違ったすがたで、
本当はもっと幸せなはずだった。
誰かのせいで、または何かのせいで、
こんな境遇に陥っているのだ・・・
そんな空想をすることがあるのではないでしょうか。
あるいは、あの時、あんなふうにしていれば。
あの時、あちらの道を選んでいれば・・・と、
ありえたかもしれない別の人生を想像してみたり。


けれども、そんな人生ではあるけれど、
これがまた他の誰かから見れば、
独身で自由で、しかも平穏という、羨むような人生だったりする。
人はどこまでも貪欲で、自分ばかりが不幸に思え、
他人がみな幸せのように見えてしまう。
本作ではでも、最後の最後にトマがそのことを思い知るところがいいですね。
かつて幸せだった、父がいて姉がいた頃の思い出を見た時、
彼は初めてカント家の生まれでなくてよかったと思ったのかもしれません。
1時間半ばかりの作品ではありましたが、
私達はそこに紛れもない一人の男の「人生」を観るでしょう。
幸も不幸も結局は本人次第・・・なのかな。

トト・ザ・ヒーロー [DVD]
ミシェル・ブーケ,ジョー・ドゥ・バケール,ミレイユ・ペリエ,トマ・ゴデ,サンドリーヌ・ブランク
角川書店


「トト・ザ・ヒーロー」
1991年/ベルギー・フランス・ドイツ/92分
監督・脚本:ジャコ・バン・ドルマル
出演:ミシェル・ブーケ、ジョード・バケール、トマ・ゴデ、ギーセラ・ウーレン、ミレーユ・ペリエ、サンドリーヌ・ブランク
人生度★★★★★
満足度★★★★☆


「満願」米澤穂信

2015年01月20日 | 本(ミステリ)
「動機」の意外性

満願
米澤 穂信
新潮社


* * * * * * * * * *

人を殺め、静かに刑期を終えた妻の本当の動機とは―。
驚愕の結末で唸らせる表題作はじめ、
交番勤務の警官や在外ビジネスマン、
美しき中学生姉妹、
フリーライターなどが遭遇する6つの奇妙な事件。
入念に磨き上げられた流麗な文章と精緻なロジックで魅せる、
ミステリ短篇集の新たな傑作誕生。


* * * * * * * * * *


例年「このミス」の1位だけは読むことにしている私。
しかし本作は「このミス」のみならず
「週刊文春ミステリーベスト10」、
「ミステリが読みたい!」
(すべて国内部門)で、3冠という偉業を成し遂げた作品
ということで、期待が高まります。
もともと好きな作家でもありますし。
でもこれ、短篇集なのです。
う~ん、せっかくなので長編を読みたかったのですが。


本作は、ミステリと言っても
犯人当てとか密室モノとか、アリバイものではありません。
本格モノ好きな私にとってはそこがちょっと物足りないのですが、
いってみれば「動機」の意外性を狙ったものといえるかもしれません。


冒頭「夜警」。
ある事件で、新米警官が殉職。
その指導にあたったベテラン警官の語りでストーリーが進行しますが、
その新米くんは、どう考えても「警官」には向かないタイプだった。
その彼がなぜ、名誉の死とでも言っていいほどの死に方をしてしまったのか・・・。
彼の行動の動機こそが、本作のミステリであります。


「関守」は、
フリーライターが都市伝説的なネタを探しに、ある田舎のカフェを訪ねる話ですが、
やや怪談めいて、怖~いストーリーです。
オチも怖いです。
いつも同じ場所で起こる車の転落事故・・・。
それは怪談とか因縁めいたものではなくて実は・・・。


表題作「満願」は、
ある女性が借金の相手を殺してしまい、その罪で服役していたのですが、
彼女の真の目的は・・・。
さすが表題作、情感たっぷりで素敵な作品なのですが、
女性の真の狙いは他所にあったのでは?というのが、
内容は分からないまでも、なんとなく透けて見えてしまったので、
意外性という点ではやや物足りない気がしました。


他に企業戦士ともいうべき在外ビジネスマンのストーリー、
美しき中学生姉妹のストーリー等、
バラエティに富んでいて確かに面白く読ませてもらいましたが、
これが2014年各賞総なめ・・・というのは、
他によほどマシな作品がなかったのだなあ・・・とも思えてしまったのでした。

「満願」米澤穂信 新潮社
満足度★★★★☆


96時間 レクイエム

2015年01月19日 | 映画(か行)
無敵の父親 パート3



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リーアム・ニーソンの96時間シリーズ第3弾。
私は飽きっぽいので、3作目となるともうどうでもよくなってきているのですが、
まあせっかく前2作を見たのだから・・・と、まあ、半ば義務感で見ました。



さて本作は、これまで舞台をパリ→イスタンブールと変えてきましたが、
今回は地元ロサンゼルスです。
ブライアンは別れた妻とよりを戻そうとしていた矢先・・・、
いきなり冒頭でその妻レノーアが殺されてしまいます。
前作であんなに必死で妻を守りぬいたのは一体何だったのか、
と言いたくなりますが。
しかも、あろうことか、ブライアン(リーアム・ニーソン)自身が殺人犯と疑われ、
警察から追われる身となってしまう。
3作目ともなると、ここまで追い詰めないとダメなんですね・・・。
ブライアンは、警察から身を隠しながら、
真実を暴き、娘を守り、そして妻の復讐を果たすという
離れ業をやってのけなくてはなりません。
でもまあ、彼が不可能を可能にする無敵の男なのはわかっていますから・・・、
じっくりお手並み拝見、というところです。



警察の監視下にある娘キムとのコンタクトをどのように取るのか・・・
そこはもう、父と娘の互いの信頼度が抜群に表れるところでもありますね。

そもそも、これまで、殺意を隠そうともしない敵と散々に渡り合ってきたわけですから、
警察など、ちょろい、ちょろい。
ただしここでは、うっかり相手を殺したりしないよう、返って気を使う・・・。
そんななかで、ちょっとおっとりしながらも切れの良い、
フォレスト・ウィテカー演じるドッツラー警部がいい感じでした。
結局警官としては何も役に立ってなかったですけどね・・・。
殺伐になりがちなシーンの連続の中で、
ほんのチョッピリ癒やし系で、私は好きです。



本作「妻殺し」の濡れ衣を着せられた男が、逃亡を続けながら真犯人を探すという
あの「逃亡者」を彷彿とさせます。
犯人のヒントが、旧TVドラマでは“片腕の男”だったのですが、
本作では“腕に刺青のある男”になっているあたり・・・。



何にしてもこのシリーズは、もう打ち止めにしてほしいと思います。
これ以上やると今度は娘が死ななくてはならなくなる・・・。
それとも孫の危機???

「96時間レクイエム」
2015年/フランス/109分
監督:オリビエ・メガトン
製作・脚本:リック・ベッソン
出演:リーアム・ニーソン、フォレスト・ウィテカー、ファムケ・ヤンセン、マギー・グレイス、ダグレイ・スコット
ドキドキハラハラ度:★★★☆☆
満足度★★★★☆

Love Letter

2015年01月18日 | 映画(ら行)
ちっとも古びないみずみずしさ



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岩井俊二監督作品。
北海道小樽も舞台の一つということで
以前から見たいと思っていた作品です。
でももう20年近く前のものだったんですね。


事故で婚約者を亡くした博子(中山美穂)。
その彼が昔住んでいたという住所(北海道・小樽)は、
今はもう国道になってしまっているというのですが、
戯れに、届くはずのない手紙を出してみました。
ところが、何故か返事が届くのです。
でもこれはミステリではありません。
愛の奇跡でもありません。
その住所には彼と同姓同名の「藤井樹(いつき)」が住んでいたのでした。
ただしこちらは女性で、中山美穂が一人二役を演じています。


亡くなった彼と同じ名前の樹は中学時代同級生。
博子は中学の卒業アルバムで間違えて
女子・樹の住所を彼の住所と思い込んでいたわけです。
何の不思議もなかった、ということですね。
つまり本作、博子(中山美穂)と樹(中山美穂)の
手紙のやり取りを軸に進行していきます。
二人はついに最後まで実際に対面することはなく、
手紙のやり取りがあるだけです。
実にユニーク!! 


ストーリーはほとんど中学時代の二人の藤井樹のやりとりが語られます。
中学時代の女子・樹が酒井美紀で、
男子・樹が柏原崇。
こんなところもおいしいですよね~。
特にこの男子・樹。
女の子には結構もてていたようなのですが、本人全くその毛なし。
女の子に対しては特にブッキラボウ。
だがしかし、実はこの二人、親しく話したこともないと言いながら
実はむちゃくちゃ互いに気になっているというところが見て取れるのです。
やはり中学生ですよねえ・・・。
初々しくて、微笑ましくて・・・。
オバサンは、目尻が下がりっぱなし。
女子・樹は、中3で転校していった男子・樹のことを思い出し、懐かしく思いますが、
彼女はまだ男子・樹が今はもう亡くなっていることを知りません。
博子は樹のことを過去のこととし、
新たな恋人・秋葉(豊川悦司)と新たな道を歩み始めようと思っていたのですが、
思いがけず活き活きした中学時代の樹のエピソードに触れ、
また気持ちが揺れていきます。


単純には割り切れない人が人を思う気持ち。
みずみずしい感動を呼ぶ作品です。
しかし、20年前の作品とはいえ、全く古びないフレッシュさ。
これはやはり岩井俊二作品だからこそですね。
もちろん、中山美穂も、トヨエツも、ステキに若くて、いいですしねえ・・・。
未見の方にはぜひおススメします。

Love Letter [DVD]
岩井俊二
キングレコード


「Love Letter」
1995年/日本/113分
監督:岩井俊二
出演:中山美穂、豊川悦司、酒井美紀、柏原崇、范文雀
みずみずしさ★★★★★
満足度★★★★☆

嘆きのピエタ

2015年01月17日 | 映画(な行)
圧倒された・・・



* * * * * * * * * *

私には「泣く男」に次ぐ韓国作品。
これがまた非常に重いのですが、とても衝撃的な作品です。



債務者に重症を負わせ、その保険金で借金を返済させる
非情な取り立て屋のイ・ガンド(イ・ジョンジン)。
親の顔も知らず30年、これまで孤独に生きてきました。
いくつかその取り立てシーンがあります。
借金をしているのはどれも小さな工場(こうば)の主人。
金属加工をしているのでしょう、
そこにある機械を見ただけで何やら恐ろしげな気がしてしまうのですが、
ガンドは顔色一つ変えずに、そこの主人の腕を裁断機にかけたりしちゃいます。
そんな風に身障者となってしまったものの中には
その後の生活に困り自殺するものもいます。



さてある日、ガンドのもとに、
ガンドを捨てた母(チョ・ミンス)と名乗る謎の女が訪ねてきて、つきまとい始めます。
ガンドは戸惑い、邪険に扱い、残酷な仕打ちすらもしたのですが、
それでもひたすら無償の愛情を注ぐミソンを、次第に母親として受け入れて行きます。
しかしそうなるとおかしな具合なのです。
例えば母親が作ったしっかりした朝食を食べて、
人を傷つけるような仕事ができるでしょうか?
これまで知らなかった愛を知ってしまい、ガンドは否応なく変わっていく。
そしてとうとうガンドが取り立て屋から足を洗おうとした矢先に、
ミソンが姿を消してしまいます。



私達は中盤からミソンの真の目的を知るようになりますが、これもまた壮絶。
彼女の編むセーターは誰のものなのか。
それがすべてを物語っています。
しかし、人の心はそう単純ではない。
ミソンの固い決心すらも、
一心に自分を慕い始めるガンドの前に揺らぎが生じるのです。
すごいですね~。
この演技も最高でした。



そしてまた、ラストにも絶句させられます。
あのセーターを着ている人物B7をみて、一瞬にして彼は真実を悟ります。
しかし、一旦愛を知ってしまったガンドは、
もう元の孤独な生活に戻ることはできない。
彼の選んだ道もまた壮絶なのでした。



壮絶で残酷なストーリー。
工場にあふれる金属類が、やわな感傷など突き放す様に
怪しく重く光ります。
この効果が大きかったですね。
とにかく圧倒された・・・と言うにつきます。

嘆きのピエタ [DVD]
チョ・ミンス,イ・ジョンジン
キングレコード


「嘆きのピエタ」
2012年/韓国/104分
監督・脚本:キム・ギドク
出演:チョ・ミンス、イ・ジョンジン、ウ・ギホン、カン・ウンジン、クォン・セイン
残酷さ★★★★★
痛さ★★★★★
満足度★★★★☆