映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

マリリン7日間の恋

2012年08月31日 | 映画(ま行)
常に皆の中心にいながらの孤独



                  * * * * * * * * * 


2012年で没後50年となる世界のセックスシンボル、マリリン・モンローの秘話。


1956年、ローレンス・オリビエ監督・主演作品「王子と踊子」撮影のため、
ロンドンを訪れたモンロー。
撮影所で第三助監督を務めるコリン・クラークと親しくなっていきますが、
今作はそのクラーク氏の当時の回想録を映画化したものです。



マリリンはすでにトップ・スター。
しかし、初の海外撮影であることのプレッシャーや
夫との確執で精神的に不安定。
度重なる撮影の遅刻や何度もの撮り直しに、
次第に周りの人々までイライラし始めます。


常に皆の中心にいてもてはやされながら、心休まる時がない。
結婚していてさえも孤独なマリリンの姿が次第に浮かび上がってきます。
そんな彼女が唯一本音をさらけ出せる相手がコリンだったのです。
少女のように気取りなく無邪気。
そしてはかなげ。
このようなことと、ウリモノのセクシーさとのアンバランスが
彼女の魅力なのでしょう。



このストーリー、実は、言ってみれば
大女優が気まぐれに自分を崇拝する青年をつまみ食いただけなのかも知れません。
けれど、青年はそうであってもいいと思っていますよね。
ほんのひととき、儚くて美しいものに触れた。
そういう思い出だけでも一生を幸福に生きていけそうです。
けれどもマリリンは、7日間の“ロンドンの休日”の後には
また現実に立ち返らねばならない。
気丈にもまた現実に帰っていくマリリンですが、
それはここまでのし上がってきた彼女の矜持でもあるのでしょう。



というところで、
きっと男性ならこのあとマリリン・モンロー出演作を見まくるところだと思うのですが、
残念ながら私はそこまでの思い入れはありません。
まあ、嫌いではありませんけどね・・・。

マリリン 7日間の恋 [DVD]
ミシェル・ウィリアムズ,ケネス・ブラナー,エディ・レッドメイン,ドミニク・クーパー,エマ・ワトソン
角川書店


「マリリン7日間の恋」
2011年/イギリス・アメリカ/100分
監督:サイモン・カーティス
出演:ミシェル・ウィリアムズ、ケネス・ブラナー、エディ・レッドメイン、ドミニク・クーパー、ジュディ・デンチ、エマ・ワトソン

あの頃ペニー・レインと

2012年08月29日 | 映画(あ行)
少年が見たロック界



                * * * * * * * * * 

この作品、もっと古い作品かと思っていたのですが
実は10年と少し前。
この作品の舞台自体が70年代で、往年のロック全盛期となっていたのでした。
15歳でローリング・ストーン誌のライターを勤めたという
キャメロン・クロウ監督自身の体験を元にした作品です。


15歳のウィリアムスには、口うるさい母親を嫌って家出した姉が居ます。
その姉が残したレコードをきっかけに、
彼はロックの世界にのめり込んできました。
伝説的ロック・ライターであるレスターに気に入られ、
彼もロック関係のライターを目指すことになるのです。
ある時彼は、ローリング・ストーン誌掲載予定の記事を書くため、
売り出し中のバンド、スティルウォーターのツアーに同行することになりました。
そこで出会ったのはグルーピーの中でもひときわ目立つ少女、ペニー・レイン。
しかし、彼女はグループの一番人気ギタリスト、ラッセルと付き合っているのです。
15歳の少年のインタビューにも、
グループのメンバーはあまりまともに答えようとしてくれません。
記事の構想もうまくまとまらないうちに締め切りが迫ってきます・・・。


15歳、まだ青春の入り口にたったばかり、
世間知らずのボウヤの視点から見たロック。
彼は天才少年で、音楽的な知識や感覚は確かに優れているのです。
けれども、そこには彼がまだ知らなかった世界が広がっていた。
それは憧れたロックスターたちの真の姿でもありますが、
未知の切ない感情でもあります。
ロックスターたちの、いってみれば自堕落な生活ぶりを
少年の視点で、みずみずしく見せてくれたと思います。


ラストの、嵐に揺さぶられる飛行機内のシーンが圧巻でした。
もうダメだ、これで最後だということで、
みな自分がこれまで心の底に隠していた感情を大声でさらけ出すのです・・・。


ウィルの母親の描き方も面白かった。
大学教授ということで、非常に堅苦しいのです。
そもそもロック自体が受け入れられないし、
そのロックのツアーなど、息子を堕落させるだけと思っている。
ドラッグは絶対ダメとしつこく言い聞かせ、
さらにまたツアー先にまでせっせと電話をよこして、お説教。
・・・いやはや、これでは嫌になるよね。
姉が出ていったのは当然だし、ウィルもこもまま帰らないのでは・・・?
とそう思わせるのですが。


けれどもこの嫌味なまでにお固いお母さんが、
やっぱりウィルの帰るべきところだったりする。
うん、15歳なら、まだそのほうがいいですよね。
ロック界の実情を描きながら、
すごくマトモな感覚でまとめられているという、
ちょっと意外なおすすめ作なのでした。

あの頃ペニー・レインと [DVD]
キャメロン・クロウ,キャメロン・クロウ
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント


「あの頃ペニー・レインと」
2000年/アメリカ/123分
監督・脚本:キャメロン・クロウ
出演:パトリック・フュジット、ビリー・クラダップ、フランシス・マドーマンド、ケイト・ハドソン、ジェイソン・リー、フィリップ・シーモア・ホフマン


「アリアドネの弾丸 上・下」 海堂尊

2012年08月28日 | 本(ミステリ)
高階氏が殺人犯?! そんなバカな!!

アリアドネの弾丸(上) (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)
海堂 尊
宝島社


アリアドネの弾丸(下) (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)
海堂 尊
宝島社


                      * * * * * * * * * 

おなじみの「チーム・バチスタ」シリーズです。
このシリーズは医療ミステリとは言うものの
次第にそのミステリ性が薄れてきているように思っていました。
だからつまらないというのではなく、
医療エンターテイメントとしての面白みが増して、
それはそれで好きなわけですが。
けれど今作はまたミステリ性の濃いものとなっています。


まずは、東城大学病院内の新型MRIの中で、
MRI技術者の友野が亡くなっているのが発見される。
死因は不明。
また更にその後、同じMRIの中で目から血を流す男の死体。
その傍らには、拳銃を握った高階病院長が倒れており、
その手からは硝煙反応が確認された。
警察は高階病院長を殺人の現行犯逮捕。


そんなバカな!!! 
これまでこのシリーズや、または他の海堂ワールドを読んできた人なら必ずそう思うはず。
あの高階氏が殺人など万が一にもあり得ません。
いつものコンビ、田口・白鳥にしても同じ思いに駆られ、
この犯罪トリックに挑むのです。
タイムリミットは72時間。
いちいち発言がむかつく白鳥氏ですが、
今回は頼りになります。
この人の頭脳だけが頼り。
この事件には高階氏の名誉だけではなく、
この東城大学病院の存続すらもかかっているのです。


まさに、真っ向からの本格ミステリでありまして、
なんと文庫の帯には、かの島田荘司氏の言葉が。
曰く
「本格ジャンルの先行諸作合流させてみても、見劣りのない一級品であることがわかる。」
この文庫の解説が島田氏で、
「海棠氏とは先日、大晦日から新年への年越しを某所で歓談して過ごし、意気投合していた」
などともあり、双方のファンとしては喜ばしい限りです。


今作はそういったミステリ性を満足させつつ、
海堂氏のいつもの主張、エーアイ(死後画像診断)の必要性を説くというところでも
大きな意義を持っています。
なにしろ、東城大学病院にエーアイセンターが開設されることになり、
センター長に田口氏が任命されてしまうという、
ものすごい展開を見せているわけで・・・。
この田口&白鳥シリーズは、
今夏発売された「ケルベロスの肖像」で完結だそうですが、
にわかに気になってきてしまいました。
文庫化まで待てるかな・・・?

「アリアドネの弾丸 上・下」海堂尊 宝島社文庫
満足度★★★★☆

しあわせのパン

2012年08月27日 | 映画(さ行)
洞爺湖観光協会推奨作品?



              * * * * * * * * * 


北海道洞爺湖のほとりの小さな町、月浦。
ここに仲の良い夫婦、水縞と妻りえが、
宿泊もできるパン・カフェを営んでいます。
物語は四季折々、
この店を訪れる人々、そしてこの夫婦の穏やかな日常を綴っています。



洞爺湖は札幌に住んでいる私達にも大変馴染みの深い場所です。
札幌の小学校の修学旅行はたいていこのあたり。
湖の真ん中にぽっかり浮かぶ島が、なんとも優しい雰囲気を醸し出していて、
私もこの風景は大好きです。
以前私も、この湖を見下ろす場所で手作り小物のおみやげ屋さんを開けたらいいなあ
・・・などと思ったことがあります。
でも、このカフェ・マーニのように、
ちょっとしたお食事ができるお店のほうが、もっといいですね。
シンプルで美しいお店、ライフスタイル、そして映像。
ちょっぴり吉田篤弘さんの描く世界観にも似ているような・・・。
まあ、これはつまりメルヘンなのでしょう。
作中で紹介サれている絵本と通じるメルヘンの世界。
・・・まあ、そんなわけで生活感には欠けます。
終盤ここに来た関西の老人が水縞に
「地に足のついた生活をしている」
というシーンがありますが、
そこはちょっと違うのでは?と思ってしまいましたが。
それを言うなら、あなたこそ、ですよね。
妙に“いい人”の大泉洋にも、やや拍子抜け。
であればこの役は誰でも良かったのでは?と思わなくもないのですが、
やはりそこは道産食材で決めたかったわけなのでしょう。







とは言え、美しいものはやはり美しい。
美しい物語なのでした。
食が満ち足りていて、更にはそれをわかちあう人が居さえすれば、
人は幸せなのだな・・・。
そういうシンプルな気づきをあたえてくれます。



それにしても、無性に焼きたてのパンが食べたくなってしまいます!!

洞爺湖観光協会推奨作品・・・?

しあわせのパン [DVD]
原田知世,大泉洋,森カンナ,平岡祐太
アミューズソフトエンタテインメント


「しあわせのパン」
2011年/日本/114分
監督・脚本:三島有紀子
出演:原田知世、大泉洋、森カンナ、平岡祐太、光石研


THE GREY 凍える太陽

2012年08月25日 | 映画(さ行)
生き方も死に方も、それぞれの道



                         * * * * * * * * * 

石油掘削現場で働く屈強な男たちを乗せた飛行機が、
酷寒のアラスカ荒野に墜落。
その時点で生き残ったのは7名。
襲い来る冷気、そして狼の群れ。
狼の縄張りを荒らしているらしいこの場を離れ、生き残るために、
彼らは南へ向かって歩き始めます。
しかし一人、また一人と 犠牲者が・・・。



うう・・・想像するだけでも恐ろしい。
寒さはみごとに人の気力を奪います・・・。
私ならいっそ飛行機事故で一気に死んだほうがマシだな、と思いながら見ていました。
こんな状況では運・不運は裏表。
最後の方まで生き残って余計につらい思いを味わうくらいなら・・・ということもありますよね。



リーアム・ニーソン演じるオットウェイは、狼を専門とするハンター。
だから狼の生態には詳しいのですが、
飛行機事故でライフルを失い、はじめから狼と戦う手段を奪われてしまっているのです。
しかも彼自身、最愛の人を失い生きる希望を見失っていた。
その彼が、生き残った男たちを率い、サバイバルの先頭に立たなければならないという運命の皮肉。
しかし、その極限の状況で彼の本能的な生への執着が呼び覚まされていくわけです。



物語は狼との戦いというよりは、
いかに生き残りに向けての精神力を持ち続けられるか、
ということがテーマとなっていると思います。
まあ、ちょっと穿ち過ぎかも知れませんが、
この酷寒のサバイバルは、いってみれば私達の人生そのもの。
私たちは実は否応なしに、己の最後の瞬間へ向けての長いサバイバルを生きている。
単に運命としか呼びようのない元々の寿命もあるでしょう。
全く予期せぬ不条理とも思える事故もある。
またはガンなどにかかった時に、あえて延命治療を避け潔く死に向かおうとするものも・・・。
長さも、順番も、立ち向かい方もまちまち、
でもそれぞれがその人の人生だ。
だから、今作では犠牲者一人ひとりの財布(身分証明や家族の写真が入ったもの)を、
その人の証として、生き残ったものが大事に持ち運んでいくのです。
通常のこの手の作品のようにわかりやすいハッピーエンドとなっていないのも、
実はちょっと拍子抜けというか物足りない気がしたのですが、
でも、こうして見るとそれでいいと思えてきました。
オットウェイは最後の最後まで戦い抜いて生きようとした。
それが彼の答えであり、結果はそう重要ではないのかも知れません。



あ、でもエンドロールの最後の最後にワンシーンだけありますので、
これから見る方はお見逃しなく。

ザ・グレイ [DVD]
リーアム・ニーソン,フランク・グリロ,ダーモット・マローニー,ダラス・ロバーツ,ジョー・アンダーソン
ジェネオン・ユニバーサル


「THE GREY 凍える太陽」
2012年/アメリカ/117分
監督:ジョー・カーナハン
原作:イアン・マッケンジー・ジェファーズ
撮影:マサノブ・タカヤナギ
出演:リーアム・ニーソン、フランク・グリロ、ダーモット・マローニー、ダラス・ロバーツ、ジョー・アンダーソン

「ビブリア古書堂の事件手帖3」 三上延

2012年08月24日 | 本(ミステリ)
栞子さんと母親の確執

ビブリア古書堂の事件手帖3 ~栞子さんと消えない絆~ (メディアワークス文庫)
三上 延
アスキー・メディアワークス


                 * * * * * * * * * 

引き続き、ビブリア古書堂。
本作は古書とそれにまつわる様々な人々の本へ込める「思い」の物語であるわけですが、
2作目あたりから店主栞子さんと、その母親の確執が大きな柱となってきています。
そして、栞子さんと大輔のほのかな恋の進展も、私の楽しみではありますが
本作はさほどの進展はありません。


第一話で紹介されるのは「たんぽぽ娘」ロバート・F・ヤング著。
妙に親しみを感じてしまうのは、その題名のためでもありますが、
どうもこれは私が好きなタイムスリップモノのSFファンタジーらしいので・・・。
私の好きな「ジェニーの肖像」に似た感じのようなんですが、
未読です。
本作では市場に出た絶版文庫の貴重なこの本を、
よりによって栞子が盗んだという疑いをかけられてしまうのですが・・・。
まあ、彼女のことですから、
そんな疑いを晴らすくらいお手の物、ということですけどね。

全然関係ないのですが、文中に西谷祥子『オリンポスは笑う』と『いとこ同盟』という書名があって、
泣きたいくらい懐かしさがこみ上げてきました。
と言っても内容は全然思い出せないのですが、
好きだったんですよねー、西谷祥子さん。


こうして見ると、私も子供の頃から今まで一体どれだけの本を手にとってきたものやら、
見当もつきませんが、
確かに、そう簡単に手に入らなかった子供の頃に自分の家にあった本については、
とても懐かしく思われます。
無論今は手元にありませんが、
もしこのような古書店で同じ本を見つけたら、買ってしまうかもしれませんね。


ところで、なんとなーくですが
私、栞子さんがあまり好きではないような・・・。
“めんどくさい女”
と思えてきたりして。
彼女と母親の確執・・・って言うのを引っ張りすぎなのでは?。

「ビブリア古書堂の事件手帖3」三上延 メディアワークス文庫

満足度★★☆☆☆

ハスラー

2012年08月23日 | 映画(は行)
男の夢か?サガか?

                    * * * * * * * * * 

ハスラーとは、相手を引きつけておいて、徹底的に稼ぐギャンブラーのこと。
まあ、“勝負師”とでも言うところです。
本作の勝負のネタはビリヤード。
う~ん、イマイチルールも何もわかっていなかったのでもの足りない部分はありましたが、
でも、スタイリッシュで、カッコイイです。
バーでお酒を飲みながらビリヤード。
なんとなく紳士的で知的な雰囲気があるところが心にくい。


さて物語は、ハスラーで身を立てようと腕を上げてきたエディ(ポール・ニューマン)が、
シカゴで名うてのハスラー、ファッツに挑戦するところから始まります。
調子は上々でかなりの金額を勝ち越していたのですが、
ぶっ通し24時間を超える辺りで力尽き、
ボロ負けし無一文になってしまいます。
酒を煽りながらの勝負、調子に乗りすぎました。
負け犬の彼は、バス・ステーションでサラという女性と出会い、
彼女の家に転がり込みます。
そんなエディに、バートという男がマネージャーにつくことになり、
稼ぎのためケンタッキーへ行く事になりますが・・・。


自分のウデ一つに一攫千金の夢をかけ、突き進む。
男のロマンか、はたまたサガか?
まあ、とりあえずそこのところは良いのですけれど・・・。
私はどうも、このサラという女性の描き方に気が向いてしまいまして・・・。
はじめの方はちょっとエキセントリックで、なかなか魅力的だったのですよ。
ところが途中からエディにしがみつくだけで、どんどん彼の“重し”になっていく。
内田樹氏の「アメリカの男はアメリカの女が嫌い」という言葉がまさに当てはまってしまうので、
納得する一方、驚くやら呆れるやら・・・・。
確かに女性は現実的なので、
一攫千金の夢に憧れ溺れる男性を、なじりもするし引き止めもするでしょう。
それにしたって、もっと軽くかわせよ、と言いたくなってしまう。
ほんとに、かつてのアメリカ男性にとって、
女は足かせであり、トラブルメーカーでしかなかったんだなあ・・・と、
しみじみ思ってしまいました。
もちろん、当時の男性たちがそういう認識を自覚していたわけではないですが、
こういう作品を見ると、妙に明らかになってしまうところが怖い。


でも、昨今の作品にはさすがにこういう風潮を感じることがありません。
それは、男性が変わったからと言うよりも、
女性が男性に近くなってきたためのような気がします。
だってね、今、今作を見た私もサラはなんだか好きになれないのですもの・・・。
ちっとも彼女には感情移入できません。
ポール・ニューマンのかっこ良さは超一流ですが、
時代性のため、いまの人が見てすごく納得できる作品ではなくなってしまっているのではないか。
・・・というのが正直なところです。

ハスラー [DVD]
ポール・ニューマン,ジャッキー・グリーソン
20世紀 フォックス ホーム エンターテイメント


「ハスラー」
1961年/アメリカ/
監督・脚本:ロバート・ロッセン
出演:ポール・ニューマン、ジャッキー・グリーンソン、パイパー・ローリー、ジョージ・C・スコット、マイロン・マコーミック

桐島、部活やめるってよ

2012年08月21日 | 映画(か行)
1人の退部が巻き起こす波紋



                 * * * * * * * * * 

舞台はどこにでも有りそうな田舎町の高校。
ある金曜日、バレー部キャプテンの桐島が
部活をやめるという噂が流れます。
桐島は成績優秀、かっこよくて人気バツグン。
おまけに彼女も校内一の人気の美少女。
しかし本人の姿はありません。
なんで・・・
どうして・・・。
そんな話は本人から一言も聞いていない彼女(一応)、
親友(一応)の動揺はもちろんのこと、
桐島を取り巻く友人たち、クラス、部活にいろいろな形で波紋が広がっていきます。







神木隆之介くん演じるところの前田は、映画部。
今作は大きく分けて、帰宅部、運動部、文化部の生徒たちに分類され、
微妙なヒエラルキーが形成されているのです。
文化部、しかもこの映画部は、どうにも地味でオタクっぽくて、
下層に位置しています。
それで、学園のスーパースター桐島と映画部の前田は
同じクラスにありながら、普段はほとんど話をしたこともない。
・・・ああ、ほんとに、学校ってそんなふうですよね。
同じクラスでも、みんな揃って一致団結の仲良し・・・なんてあり得ない。
それから一見仲良しグループに見える女子も、
実は微妙に好き嫌いや反目があって・・・、
というあたりもものすごくリアルでした。
この金曜日までは、まあ、そんな関係もなんとなくバランスを取っていたのだと思います。
けれど、桐島が部活をやめたということが、
そのバランスを崩していくのです。



その金曜日、主要人物の視点を変えて同じ出来事が何度かリピートされます。
そこで私たちは、彼ら一人ひとりの立場や考え方をじっくり見ることが出来る。
実は誰が誰のことを密かに思っているのか、
そんなところがうかがえるのも、ちょっと楽しいですよ。
けれどそんなところにも、どんでん返しがあったりするので要注意。


そんな風にして、翌週火曜日、屋上でのクライマックス。
バックミュージックは吹奏楽部の生演奏!!というのも実に洒落ていました。


神木隆之介くんは、実は私はジブリアニメの声の人!!というくらいの認識しかなかったのですが、
この度はすっかりファンになりました。
地味で目立たなくて、運動はダメだけど、でもやっぱり好きな事には一生懸命! 
そういう前田をとても自然に演じていたと思います。
そして今作もう一人重要なのは桐島の親友(一応)←シツコイ、ヒロキ。
彼も桐島に継ぐくらい、スポーツができ成績優秀、上位グループ。
同じくこれまで前田とは話したこともないのですが、
ラストシーンがとても良い。
新感覚。
満足感の非常に高い作品でした。
◎のおススメです。



それにしても、前田のゾンビ映画、見たかったですね・・・。
以前に見た「キツツキと雨」を思い出してしまいました。
もしかすると、この前田くんの将来像が、あの作品の新人監督・・・? 
気弱な感じが、それっぽい。

桐島、部活やめるってよ(DVD2枚組)
神木隆之介,橋本愛,大後寿々花
バップ


「桐島、部活やめるってよ」
2012年/日本/103分
監督:吉田大八
原作:朝井リョウ
出演:神木隆之介、橋本愛、大後寿々花、前野朋哉、岩井秀人、東出昌大

「ビブリア古書堂の事件手帖2」 三上延

2012年08月20日 | 本(ミステリ)
彼女の鋭さは時には怖いくらい

ビブリア古書堂の事件手帖 2 栞子さんと謎めく日常 (メディアワークス文庫)
三上 延
アスキー・メディアワークス


                  * * * * * * * * * 

「ビブリア古書堂」さっそく続編と行きましょう。
さて、案じられた栞子さんの怪我の具合も快方に向かったようで、
ようやく退院し、いよいよ大輔とともに古書店の営業に当たることになります。


第一話は「時計じかけのオレンジ」にまつわるもの。
そういえばこの作品、映画にもなっていますが、
私は映画も本も見ておらず、でもなんだか読んでみたい題名ではある・・・と思っていました。
ストーリーは、この感想文を書いた女の子が、その内容の暴力性に共感するようなことを書いたため、
周りの大人達から危ぶまれてしまった・・・というようなことから始まります。
栞子はこの感想文を読むなり、これを書いた子に会ってみたいというのですが・・・。
栞子だけがわかる秘密があったわけですが、
彼女の鋭さは時には怖いくらいです。


今作は古書店だけあって古今の様々な名著を、
本を読めない大輔に栞子がストーリーを語って聴かせるという体裁を取りつつ、
私達にもその内容を紹介・解説するという仕組みになっているのです。
(こんな肝心なことを1巻目で言っていなかったですよね。失礼!)


隙間なく積まれた本の山。
まあ、我が家も時として似たような状況があったりするので、親しみ深いです。
でも心配なのは古そうなこの栞子さんのお宅、
2階にこんなに本を上げてしまって大丈夫なのか???ということで。
大きな地震でもあれば本が崩れるばかりでなく、家ごと崩壊しかねないな
・・・なんて、いらぬ心配でしょうか?
今作では栞子と母(家を出ています)の確執といいますか、
うまくいかない関係を語るとともに、
大輔と栞が互いに名前で呼び合う様になるなど、
その距離も少し縮まっているのです。
しかし、栞は「一生結婚しない」などと言っておりますので・・・、
前途多難ですな、大輔さん。
健闘を祈る。

「ビブリア古書堂の事件手帖2」三上延 メディアワークス文庫
満足度★★★★☆

友へ チング

2012年08月19日 | 映画(た行)
ヤクザはカッコが悪くてはダメ

                  * * * * * * * * * 

チャン・ドンゴン出演作、多分このくらいでネタ切れだと思います。
これもなかなか良いのです。


釜山、4人の幼馴染の少年たち。

ヤクザの父を持つジュンソク(ユ・オソン)。

葬儀屋の息子ドンス(チャン・ドンゴン)。

優等生のサンテク(ソ・テファ)

お調子者のジュンホ(チョン・ウンテク)

小学校時代はいつも一緒に遊んでいた彼ら。
中学校は別々でしたが、高校で再会。
またつるむようになります。
ある時、他校の生徒と乱闘騒ぎを起こしてしまい、
やけを起こしたサンテクはジュンソクに一緒に家出をしようと持ちかけますが、
ジュンソクは、優秀なサンテクの将来を思い引き止めます。
ヤクザの父を持つ自分の将来は見えているけれど、
サンテクだけはまっとうな道を歩んで欲しい。
それは果たせない自分の夢を彼に託すようでもあります。
けれどもこの男気、カッコイイですね。

その後更に道を分かつ彼ら。

ジュンソクはやはりヤクザとなり、
父の葬儀屋の仕事を継ぐのが嫌なドンスもまた同じ道に入ってしまうのですが、
お互いが組同士の抗争の渦の真ん中に位置してしまうのです。
やがて起きる悲劇。


チングは元々の韓国語ではなくて「親旧」と表記するそうです。
ずっと長い付き合いという意味。
やむなく敵同士という立場になりながらも、
お互いの身の上を案じる・・・そういう男の友情がじんわりと胸にしみます。
強がりでもいい。
カッコイイです。
そう、「ヤクザはかっこ悪くちゃダメ」なんですものね。
さて、チャン・ドンゴンのチンピラぶりも実に決まっていましたが、
今作ジュンソク役のユ・オソンも素敵でした―。
実に男っぽく、しびれます。


ラストでまた、少年時代の彼らの映像に戻るところがまた、なんとも心憎い演出なのでした。

友へ チング [DVD]
クァク・キョンテク
ポニーキャニオン


「友へ チング」
2001年/韓国/118分
監督:クァク・キョンテク
脚本:クァク・キョンテク
出演:ユ・オソン、チャン・ドンゴン、ソ・テファ、チョン・ウンテク、キム・ボギョン

ヤング≒アダルト

2012年08月17日 | 映画(や行)
都会で奮闘する女性への、ごくごく控えめのエール?



                 * * * * * * * * * 

監督ジェイソン・ライトマン、脚本ディアブロ・コーディは、
あの「JUNOジュノ」のコンビです。
となれば、ちょっと興味はひかれますね。



ティーン向け小説のライター、メイビスは久しぶりに故郷ミネソタに帰ってきます。
かつての恋人バディに再会し、復縁しようと狙っているのです。
メイビス自身はバツイチで、今はミネアポリスで自堕落に犬と暮らしています。
さてその元カレ、バディは結婚し、子どもが生まれたばかり。
メイビスは勝手に彼がこんな生活に嫌気が差していると思い込んでいるのですが・・・。
メイビスは高校時代の友人たちに出会うのですが、
誰もが平凡ながらも自分の生活に楽しみを見出しながら、
満ち足りた生活をしているように思われる。
それに引き替え、自分は一人ぼっちで、
ライターといってもゴーストライターだし、
人気も下降気味。
そんな現実から、目をそむけるように、彼女は思い込んでいるのです。

「こんな退屈な町で、退屈な生活。馬鹿みたい。
なんとかバディを救い出して私と結婚させよう・・・!」



美人でいつもちやほやされていた自分こそ本当の自分。
こんなはずはない。
本当の私は今の私ではない。
彼女が書くティーン向け小説の人物そのもので、
メイビス自身大人になりきれていないのです。



・・・と、シャーリーズ・セロン演じるところの
とんでもなく身勝手な勘違い女、嫌な女メイビルなのですが、
なんだか嫌いになれません。
それは、今作がはじめから彼女を包み込み、見守る趣旨でできているからです。
それは、高校時代に彼女に憧れ、でも高嶺の花で近寄ることもできず、
彼女に認識さえもしてもらえなかったという今作のマットの視点でもあります。
彼はただ一人彼女の企みを打ち明けられますが、
ひたすら気にかけて見守っています。



生きる道は人それぞれ。
大人になりきらない自分に気づいたとしても、
あえてまた自覚を持って同じ道を行くのもアリですよね、確かに。
そうでなければ、都会で過ごしたこれまでの時間が無になってしまう。
これはもしかすると都会で1人で健闘して生きている女性たちへの
ごくごく控えめの賛歌なのかも知れません。



それにしても、バディの気を引くためにおしゃれに念を入れる、シャーリーズ・セロン、
まだまだ若くて綺麗。
見とれてしまいます。
この役にはぴったりでした。
しかしまた、美人であるがゆえに、平凡な幸せを手に入れ損なった(今のところ)という事なら、
私は美人でなくてよかったなあ・・・と思ったりして。
コメディになってしまいそうなところを、
やんわり包み込む、素敵な作品でした。

ヤング≒アダルト [DVD]
シャーリーズ・セロン,パットン・オズワルト,パトリック・ウィルソン,エリザベス・リーサー,コレット・ウォルフ
パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン


「ヤング≒アダルト」
2011年/アメリカ/90分
監督:ジェイソン・ライトマン
脚本:ディアブロ・コーディ
出演:シャーリーズ・セロン、パットン・オズワルト、パトリック・ウィルソン、エリザベス・リーサー、J.K.シモンズ

「ビブリア古書堂の事件手帖~栞子さんと奇妙な客人たち~」 三上延

2012年08月16日 | 本(ミステリ)
アームチェアならぬ、病室の名探偵

ビブリア古書堂の事件手帖―栞子さんと奇妙な客人たち (メディアワークス文庫)
三上 延
アスキーメディアワークス


                   * * * * * * * * *  

本屋大賞文庫初ノミネート作品とのことで、
書店の店頭を賑わしているこの作品、
やはり手にとってしまいました。
以前からコミック調イラスト表紙の本は苦手ですが、
でも、素敵なイラストですしね・・・。


表題の通り、ビブリア古書堂という古本屋をめぐる様々な謎を解いていくという、
"日常の謎"に類するミステリ。
ここに登場する人物がそれぞれ魅力的です。
店長、篠川栞子は、古本屋のイメージには合わない若くて清楚な美人。
しかし、残念なのは初対面の人とはろくに口も聞けない人見知り。
でも、古書の知識はなみ大抵ではなく、
本の話になると人が変わったように滑らかに語りだす。
ははあ・・、これが本屋大賞というのもなんだかわかる気が。
男性が好きそうなキャラですよね。
なんだか無防備で守ってあげたくなって、
意外と胸が大きかったりする、黒髪の美人。
女からみると、こんな女なんかいないよ!!と、
つい言ってしまいたくなりますが、
まあ、それでも可愛らしいからヨシとしよう。


この物語の語り手は、ひょんなことからこの店を手伝うこととなった五浦大輔。
ガタイのでかい無骨な男子ですが、
気持ちは至って優しくノーマル。
しかし彼はなんと本が読めない。
幼い頃のトラウマからか、彼は本を読み出すと胸の鼓動が高鳴り、
手のひらに汗がにじみ具合が悪くなってしまう。
でも、それだけに本の中にある様々なストーリーへの興味は人一倍なのです。


というわけで、需要と供給がぴったりあったところで、
ビブリア古書堂の物語が始まります。
まあ、というわけでこの二人のほのかな思いの変化、
二人の距離の変化が読みどころではありますが、
本題はやはりミステリなのです。


今作では店長栞子は入院中。
事故で怪我をしたのですが、その顛末については最終話で明かされます。


はじめの謎は「漱石全集」の本に書かれた署名。
入院中のベッドの上で、栞子がするすると謎を解き明かしていきます。
一話ずつに登場する人物たちが後にも登場して、
ストーリーに彩りと奥行きを与えていく趣向、
そしてまたそれが伏線であったりするストーリー運びもよくできています。
やはり、続きを読まずにはいられませんね!

「ビブリア古書堂の事件手帖~栞子さんと奇妙な客人たち~」三上延 メディアワークス文庫

満足度★★★★☆



ダークナイト ライジング

2012年08月15日 | 映画(た行)
迫力とオドロキと・・・、あっという間の165分



                 * * * * * * * * * 

クリストファー・ノーラン監督による
「バットマンビギンズ」、「ダークナイト」に続くシリーズ第3弾。
「ダークナイト」から8年後のゴッサム・シティを描きます。
最近、この手の作品をあまり見なくなっているのですが、
このシリーズについてははじめから見ているので、やはり見届けようという気になりました。
前作はヒース・レジャー演じる“ジョカー”の迫力のある悪人ぶりに圧倒され、
ただのヒーローものとの差異を強く感じたものでしたが、
さて、今作のお手並みは・・・?というところです。



バットマンことブルース・ウェインは、その後隠遁生活を続けていたのですが、
ゴッサム・シティの破壊をもくろむベインという超過激なテロリストの登場により、
また、立ち上がる時が来ました!!

今回、IMAXシアターで見たためもあってか、その大迫力に圧倒されっぱなしでした。
IMAXではあるけれど、3Dではないというところがまた、渋くていい感じ。



まずは冒頭、敵側が、飛行機をジャックし、乗っていた博士を拉致、
そして墜落させるシーンのスピーディでリアルな映像にオドロキ。
でもそれは本当に序の口だったわけで・・・。
予告編でも使われていた、アメフト競技場の爆破シーンや、
数々の橋が爆破され崩れ落ちていくシーン(これはあえて高所からの俯瞰シーン)のような
私達の文明が儚く崩れ落ちていくシーンは
まるで黙示録でもあるかのように、衝撃的でした。

また、アン・ハサウェイがキャット・ウーマン役というのもオドロキ。
近頃は女優さんもアクションが出来ないといけないというのは大変そうです。
「アベンジャーズ」のスカーレット・ヨハンソンなどもね・・・。



今作で特に感じたのは、バットマンは生身の人間で、
あくまでも訓練によって人並み以上の身体能力を身に着けているということ。
決してスーパーマンというわけではないのですね。
だから彼は人間としての苦悩がある。
苦悩するヒーロー。
しかし、この度の敵に対しては、周りのいろいろな人がそれぞれにできる限りの力を尽くすのです。
決してヒーローに寄りかからない。
そんなところにも共感がもてます。
また更に今作、終盤にアッと驚く秘密が・・・。
この作品で、こんなどんでん返しを期待までしていなかったので、
虚を突かれたというか、
ひえ~、この上まだ仕掛けがあったのか・・・と、
ここでもまた驚かされ・・・。



ベインに財産も名誉も奪われ、文字通り奈落の底に落とされたブルースの再生はあるのか???
映像にもストーリーにも心奪われてしまう165分。
でも、あっという間でした。

そして、ついニンマリさせられるラストシーン。
満足いっぱいです。

ダークナイト ライジング [DVD]
クリストファー・ノーラン,ベンジャミン・メルニカー,マイケル・E・ウスラン,ケビン・デ・ラ・ノイ,トーマス・タル
ワーナー・ホーム・ビデオ


2012年/アメリカ/165分
監督:クリストファー・ノーラン
出演:クリスチャン・ベール、マイケル・ケイン、ゲイリー・オールドマン、アン・ハサウェイ、トム・ハーディ、ジョセフ・ゴードン=レビット、マリオン・コティヤール

星の旅人たち

2012年08月13日 | 映画(は行)
癒しの道



                  * * * * * * * * * 


以前大好きだった「サン・ジャックへの道」と同じ道をたどるこの作品、楽しみにしていました。


アメリカ人、眼科医のトムは、フランスの警察から
一人息子ダニエルがサンティアゴ・デ・コンポステーラへの巡礼の旅の途中で、
事故死したとの知らせを受けます。
呆然として現地に赴くトム。
妻が亡くなって以来、息子とは疎遠になっており、
息子がなぜこんなところを旅しようと思ったのかも見当がつかない。
彼はふと思いついて息子が残したバックパックを背負い、
息子の遺灰を持って、息子が辿ろうとした旅をなぞっていきます。



今作はフランスとスペインの国境近く、すぐピレネー山脈に入る町からの出発で、
聖地サンティアゴ・デ・コンポステーラまではおよそ800㎞。
1日30㎞歩くとしても約一ヶ月。
60を過ぎたあなたなら2ヶ月くらいかかると、トムは現地の警官に言われていました。
ちなみに「サン・ジャックへの道」も同じ道ですが、
「サン・ジャック」という言い方はフランス語。
「サンティアゴ・デ・コンポステーラ」がスペイン語。
この道は世界遺産に認定されていてとても人気があり、
映画でもかなり行き交う人は多かったですが、
近年特にこの道をたどる人は多くなっていて年間10万人くらいとか。
山間の小道や、なだらかな丘の連なる田園風景の道、
古い町並み、
毎日テクテク、テクテクひたすら歩む。
憧れずにはいられません。



さて、みな同じ道を行くわけですから、自然と顔なじみの人ができてきます。
トムは行きずりの3人と親しくなり、
4人チームで歩くようになってきます。

気のよさそうなオランダ人、ヨスト。
彼はメタボのお腹を気にして、ダイエットのために歩くのだと言っているのですが、
誰よりも美味しいものに目がなくて、どう見ても痩せそうにありません。

やや気むずかしげなサラは、カナダ人で、
禁煙のため旅をしているというのですが、こちらも毎日限りなくスパスパ・・・。
本気で禁煙したがっているようにも思えません。

作家のジャックはアイルランド人。
スランプに陥っており、この旅で何かを得ようと思っているのです。


寡黙なトムは、はじめのうちはいつも不機嫌そうな顔をして、風景も見ずに黙々と歩いくだけ。
ただ時折息子の遺灰を取り出して、道端に撒いているのです。
けれど長いこの旅の間に次第に心もほぐれ、
この道を息子ダニエルと共に歩んでいるような気がしてきます。



この道は、癒しの道。
悲しみも、苦しみも、ただひたすら歩くことで昇華していくかのようです。



たどり着いたサンティアゴの大聖堂も荘厳ですばらしいのですが、
トムはそこからまた更に歩いてスペインの最先端の岬、フィニステレヘ向かいます。
思いの外荒々しいその海の光景に、また心を奪われてみたり・・・。
この旅で神の祝福を受けたけれども、
でも明日から始まる人生は、やっぱり荒波の中だと、
そういわれたような気もしもします。
う~ん、素晴らしい作品でした。



ちなみに今作の監督、エミリオ・エステベスが
亡くなったダニエル役で時折登場します。
そしてトム役のマーティン・シーンが、監督の実父。
そういうことでも意義のある作品となっています。

こちらも是非どうぞ
サン・ジャックへの道

星の旅人たち [DVD]
エミリオ・エステヴェス,エミリオ・エステヴェス,フリオ・フェルナンデス,デヴィッド・アレクザニアン
アルバトロス


「星の旅人たち」
The Wey

監督・脚本:エミリオ・エステベス
出演:マーティン・シーン、エミリオ・エステベス、デボラ・カーラ・アンガー、ヨリック・バン・バーヘニンゲン、ジェームズ・ネスビット



「きのこいぬ2」 蒼星きまま

2012年08月12日 | コミックス
朝イチの胞子放出?

きのこいぬ 2 (リュウコミックス)
蒼星 きまま
徳間書店


             * * * * * * * * * 

さて、さっそく第2弾を読んでみました。
きのこいぬ。
ますますパワーアップです。


まず、前巻では好物がメロンパンとなっていましたが、
ここではたこ焼きが追加。
それも、なんと自分でたこ焼き器で作るんですよ!! 
字もろくに書けないくせに、なんて器用なんだ。
すごい! 
こんなペットならいいなあ・・・と思わず思ってしまいますよね。
もっとも普段は、タコ無し、ソースもなし、
ただの小麦粉・卵ボールのようなのですが、
これも焼きたてなら美味しそうですけれど・・・。


それからまた不思議な生態が判明。
なんときのこいぬには歯がない。
癇癪を起こすと思わず人に噛み付いたりもするきのこいぬですが、
「がぶっ」と噛み付いたつもりが、
歯がないので「ふに ふに ふに」となってしまう。
それで、相手は
「はははは!!!くすぐったい!!」
ということに。


そしてさらに、きのこいぬは、朝起きると庭に出てホワ~っと胞子を放出したりします。
ほたるは、朝一のトイレみたいなものかな、と思うのです。
しかし、とすれば、いつも布団についているたくさんの胞子は、
もしやオネショ・・・???
いやいや、深くは考えないほうがいいのでしょう。
まあ、たしかに、胞子であってオシッコではないので、不衛生ではないですよね。
しかし、この無駄に放出される胞子は、どこかでまた根付いたりはしないのでしょうか。
増殖するきのこいぬ。それも悪くはない。


また、珍しくきのこいぬを連れてホタルが山へハイキングへいったときのこと。
しかし途中ではぐれてしまいます。
慌ててきのこいぬを探すほたるですが、彼がそこで見たものは・・・

森の動物達と仲良くお話をしているきのこいぬ。

まあ~。なんてメルヘンなんでしょ!!
その生態が知れるに連れ、ますます不思議で可愛らしくなってしまいます。
とにかく癒されます。
待たれる次巻。


「きのこいぬ2」蒼星きまま 徳間書店リュウコミックス
満足度★★★★★