映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

ニューイヤーズ・イブ

2011年12月31日 | 映画(な行)
“愛”の気持ちで新年を迎えよう



                   * * * * * * * *

大晦日のニューヨーク、オールスターキャストによる恋愛群像劇です。
タイミングよく、今日この日にこの作品といきましょう!


この作品、とりあえず普通にロマンチックで楽しめればいい、くらいの気持ちで見たのですが、
期待以上に満足できました。
12月31日。
一年の締めくくりとなるこの日に向ける特別な思いは、洋の西洋を問わないようです。
恒例ニューヨークのタイムズスクエアで繰り広げられるイベントは
日本で言えば紅白歌合戦のようなものか。
深夜零時をカウントダウンしたその時には、
周りの誰かとキスをして、新年のお祝いをするというような習慣は、
ロマンチックを盛り上げます。



さて、この作品は男女8組の大晦日の様子を交差させながら、ストーリーが進んでいきます。

1年前に出会った女性が忘れられない男。

再会した元カップル。

死期が迫った老人と看護師。

故障したエレベーターに閉じ込められた男女。

0時に出産したときの賞金を狙う二組の夫婦・・・など。



特に私が好きだったのは、
内気でなかなか自分の思ったことができない一人の女性(ミシェル・ファイファー)。
いいように会社にこき使われて、
気がついたら独身のままいい年になってしまった・・・。
彼女はこの日きっぱりと会社を辞めて、
今年やり残した「今年の目標リスト」をやり遂げようと決心するのですが・・・。
(実はどれ一つも実現できていなかったんですね)
彼女を助けてくれるのが、気のいい宅配サービス(ザック・エフロン)の青年。
ティファニーで朝食をとる、
バリに行く、
世界一周をする・・・・。
現実そのものの体験ではないけれど、
機転を利かせて楽しく夢を実現していくのは、なかなか胸のすく思いです。


それからこの作品には一つ罠がありますね。
1年前の大晦日。
名前も知らないまま、1年後に会う約束をしたのは誰と誰だったのか。
巧みなミスリードに、うまくはめられてしまいました。



今作は、音楽がまたよかったのです。
シンガー役でジョン・ボン・ジョビが出演しているくらいですし。
大晦日の意義は、劇中のヒラリー・スワンクがステキなことを言っています。

大晦日だからと言って、浮かれているだけではダメ。
この一年何をしてきたのか、何をできなかったのか。
それぞれに振り返ってみましょう・・・と。


特に大きな災害のあった今年は、
そういう厳かな気持ちも忘れないでいたいものです。

2011年/アメリカ/118分
監督:ゲイリー・マーシャル
出演:ハル・ベリー、ジェシカ・ビール、ジョン・ボン・ジョビ、アビゲイル・ブレスリン、ロバート・デ・ニーロ、ザック・エフロン、アシュトン・カッチャー、サラ・ジェシカ・パーカー、ヒラリー・スワンク

レオン

2011年12月29日 | 映画(ら行)

少女とおじさんのピュアな心の交流

                 * * * * * * * *

フランスの誇るリック・ベッソン監督が初めてハリウッドで制作した作品。
レオン(ジャン・レノ)は、プロフェッショナルのクールな殺し屋。
その殺しの手口はまるで必殺仕事人。
しかしその実、仕事を離れた彼は、
ミルクを愛飲し、観葉植物の世話をまめにし、古いミュージカル映画を楽しみとする男。
このちょっととぼけた味がこの作品を引き立たせているのです。
そんな彼の元に一人の少女が転がり込んできます。
12歳マチルダ(ナタリー・ポートマン)。
彼女はレオンの隣家の子ですが、
麻薬取引のトラブルで家族を皆殺しにされてしまったのです。
レオンを殺し屋と知った彼女は、家族を殺した相手への復讐を決意し、
弟子入りを志願。
二人の不思議な共同生活が始まります。


レオンが家族を皆失ったマチルダを慰めようと、
ブタの鍋つかみをひっぱりだしてくるシーンには、不覚にも泣かされてしまいました。
・・・しかし、どうしてレオンの台所にそんなものがあったのか、
これが最大の謎であります!!


ナタリー・ポートマンは、この役のための2000人以上ものオーディションから選ばれたとのことで、
さすがに美少女。
精一杯大人ぶってもやはりまだ子供というところをのぞかせる、
この年齢だけが持つ不安定ではかなげな「少女」としての時期が
どんぴしゃりではまったと思います。
こういう時期を映像で残せるのはすごく幸せなことではないでしょうか。
その後も消えることなく、映画界で生き延びたナタリー・ポートマンであればなおさらに。


さて、少女とおじさんのピュアな心の交流は心地よいのですが、
バイオレンス作品であることを忘れてはいけません。
この作品での悪役は実は麻薬取締局の汚職捜査官という皮肉な設定です。
これは、警察をも敵に回すという最悪な状況。
絶体絶命のピンチをどのように覆すのか、これも見逃せません。
おすすめの名作。

レオン 完全版 [DVD]
ジャン・レノ
CICビクター・ビデオ


1994年/フランス・アメリカ/133分
監督:リック・ベッソン
出演:ジャン・レノ、ナタリー・ポートマン、ゲイリー・オールドマン、ダニー・アイエロ

007/ムーンレイカー

2011年12月28日 | 007
わくわくのスペースシャトルを題材に

                        * * * * * * * *

007シリーズ11作目、ロジャー・ムーアのボンド役としては4作目です。
何しろ今作の冒頭でドッキリさせられるね。
ボンドが、パラシュートもつけずに飛行機から突き落とされてしまう。
ひゃー、どうやって助かるんだ???
全く命がいくつあっても足りないと思うけど、よく生きながらえてるよね。
いやいや、そんなのは序の口で、今回は宇宙が舞台なのだ!!
まず、輸送中の米スペース・シャトル、ムーンレイカーが何ものかに盗まれちゃうんだね。
それは大富豪のドラックスという男の陰謀だということがわかってくる。
なんとこいつは、その当のスペース・シャトル製造に関わっている。
実は、彼の目的は、毒ガスで地球上の人類を死滅させ、
自分を含めた選ばれた人間だけで世界を創造しようという、神をも恐れぬ陰謀。
そのためにシャトルが必要ということだったんだ。
それで数が足りないから、輸送中のスペース・シャトルも失敬しちゃったわけ。
えーと、この作品が1979年作品。
スペース・シャトルの初飛行は1981年だね。
つまりちょっぴり未来を先取りした作品ということか。
そうだね、多分当時はもうじきこのスペース・シャトルが実際に宇宙を旅する、ということで、
皆が期待し話題になっていたんだろうね。
その宇宙へ向かうシーンは最後のお楽しみなんだけど、
前半、ヴェネツィアの水路でボートチェイスをしたり、
リオデジャネイロのケーブルカー上でジョーズとやり合ったり、
観光気分をかねて盛り上がるシーンもたっぷり。
この鋼鉄の歯を持つ男、ジョーズは前作に引き続く登場。
ボンドの行く先々に登場しては襲いかかってくるわけだけど・・・
なんと今回は最後の方で、ボンドたちと利害が一致して、協力関係になっちゃうという・・・。
なんだか3枚目の悪役になっちゃったね。
前作でも結構インパクトが強くて、人気が出ちゃったんだね・・・。
しかし、ケーブルカーのケーブルをかみ切っちゃうって、ドンだけのあごの力なんだよ・・・。
宇宙にまで話が及ぶのは初期の「007は二度死ぬ」にもあったけど・・・。
あの、日本が舞台のやつね。
あれはいかにもおもちゃっぽくてちゃちだったけれど、
さすがにこのあたりでは一応見られるものになってるよね。
欲を言えば宇宙でのマシンの重量感とか爆発シーンとか、そういうのが・・・。
この時代だから、これが精一杯というところで無理もないでしょ。
何十年もかけて今のレベルにまでなってるわけだから。
今はさすがにこんな風な個人的、妄想的な世界征服を企むなんていう悪役像はないよね・・・。
そうだね。大企業がいかに裏の金を蓄えるか、弱者を食い物にして儲けるか・・・、そんなところだよね。
レトロで荒唐無稽な悪人像を楽しみましょう。

ムーンレイカー (デジタルリマスター・バージョン) [DVD]
ロジャー・ムーア,ミシェル・ロンズデール,ロイス・チャイルズ,リチャード・キール
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン


007/ムーンレイカー

1979年/イギリス/126分
監督:ルイス・ギルバート
出演:ロジャー・ムーア、ミシェル・ロンズ・デール、ロイス・チャイルズ、リチャード・キール、バーナード・リー

「テルマエ・ロマエ Ⅳ」ヤマザキマリ 

2011年12月27日 | コミックス
ルシウスの長期滞在

テルマエ・ロマエ IV (ビームコミックス)
ヤマザキ マリ
エンターブレイン


                  * * * * * * * *

テルマエ・ロマエも4巻目となりましたが、なんとここで意外な展開。
ここまではルシウスが、短期間で古代ローマと現代日本を行き来していたのですが、
今作ではルシウスが戻れなくなってしまいます。


皇帝ハドリアヌスとお風呂にて(?)会談中の所、
例によって突如時空を超え"伊藤温泉"にやってきてしまったルシウス。
そして月の夜、桜の舞い散る露天風呂で、美しい女性を見てしまった。
「こんな美しい平たい顔族を見たのははじめてだ」とルシウスに言わせしめたのは、
伊藤温泉きっての才女、さつき。
彼女はなんと古代ローマおたくで、
ラテン語をも解し、
ルシウスが平たい顔族で言葉を交わし合えたのも彼女がはじめて。
しかし、このさつきさんの生い立ちがまた、実にユニークでつい笑ってしまう。
参りました。


それにしても、この作品中の日本人は皆人がよくて親切ですよね。
突如なんの持ち物も持たず素っ裸で現れた、
言葉の通じない変な外人に、なんと寛大なこと・・・。


どうしてもローマに帰れなくなってしまったルシウスは、
とある温泉旅館に住み込みで働くことに。
さつきに恋心を抱きつつ、日本の温泉の"サービス"を学んでいくルシウス・・・と、
これはまだしばらくの長丁場となりそうなのです。


ルシウスの目には日本の何もかもが新鮮。
そういう所が、私たちが読むのに非常な面白みとなるのですね。
向学心に燃えるルシウスというのも、実は日本人の気質に近い。


この巻のラストではなんと、馬に異常に好かれてしまったルシウスという、
これまた意外な展開をみせまして、いったいこれがどのように発展するのやら、見当もつきません。
うう・・・次巻が待ち遠しいですね。


さて、今作はいよいよ映画化決定、
阿部寛さんがルシウス役で、2012年4月28日公開。
う~む、なんだかんだ言いながら、みてしまいそうです。


「テルマエ・ロマエ Ⅳ」ヤマザキマリ エンターブレイン ビームコミックス
満足度★★★★☆

ステキな金縛り

2011年12月25日 | 映画(さ行)
幽霊が見える人の3要素とは・・・?



                      * * * * * * * *

やや遅ればせながら、お楽しみの三谷作品をやっと見ました。


失敗ばかりの三流弁護士エミは、ある殺人事件の容疑者の弁護をすることになります。
ところが容疑者の言うことには、
自分にはアリバイがある。
事件の起きたその時間には、ある旅館の部屋で、ずっと金縛りにあっていた。
落ち武者の姿をした幽霊がずっとのしかかっていたので、身動きができなかった・・・と。


そんなことがアリバイとして通用するのか?・・・と思いながらも、
この事件に失敗すればもう弁護士生活にも後がないと思うエミは、
実際にその旅館を訪れてみるのです。
そしれその夜、本当に落ち武者の幽霊とご対面!!
エミは落ち武者の六兵衛さんの慰霊碑を建てることを条件に、
証人として出廷することを承諾してもらいます。



さてしかし問題は、その幽霊を見ることができる人とできない人がいる。
むしろできない人の方が圧倒的に多い。
姿が見えないばかりか声も聞こえない。
さて、どうやって証人として意思を伝えるのか・・・。
いやいや、難問ですね。



この法廷コメディのミソは、見える人と見えない人とのギャップ。
ところが見えるのに見えないふりをしているというやっかいな人もいたりして、
事態は混迷を深めていくのです。
が、そんなことに気をとられているうちに、
なんと事件の真犯人を突き止めてしまうという、
この展開がなかなか見事でした。



ところで、幽霊を見ることができる人の三要素。

・最近仕事がうまくいっていない。
・最近生死に関わる体験をした。
・シナモンが大好き。


・・・と言うことで、仕事がうまく回り始めると、見えるモノが見えなくなってしまったりもするわけです。
ちょっとした切なさもにおわせるラスト。
まあ、うまくまとまっていたのではないでしょうか。

ものすごい贅沢な出演陣で、たっぷり楽しませてくれました。
まあ、恒例の三谷祭りと言うくらいのノリで、
気楽に楽しむのがよいと思います。


ステキな金縛り
2011年/日本/142分
監督・脚本:三谷幸喜
出演:深津絵里、西田敏行、阿部寛、竹内結子、中井貴一、浅野忠信

シャンプー台のむこうに

2011年12月24日 | 映画(さ行)
全英ヘアドレッサー選手権に挑む!・・・コメディタッチで

                * * * * * * * *

ジョシュ・ハートネット出演のこの作品、
以前から見たいと思いながら、見損ねていました。
イギリス作品ですね。


とある田舎町で、全英ヘアドレッサー選手権が開かれることになりました。
そこには“伝説のハサミ師“と呼ばれるフィルが住んでいます。
10年ほど前、同じ大会に挑もうとしていた彼は、
大会前日に同じチームの妻とヘア・モデルに逃げられてしまったのです。
以来、すっかりやる気をなくし、田舎町の床屋として地味に過ごしてきたフィル。
一方妻シェリは、同じ街で美容室を開き、
ヘア・モデルと同棲。(女性同士!)
でも、どうも体調に問題が・・・。
彼女は10年間ばらばらだった家庭を取り戻そうと、選手権出場を決意します。
夫とともに住む息子ブライアンも交えて。


アラン・リックマンの美容師姿なんて考えたこともなかったですが、
なかなかかっこよくてまさに“伝説のハサミ師”。
(ハサミ男だったら、シザーハンズになっちゃいますね・・・。)
ブライアンは、死んだ人の整髪を練習がわりに腕を磨いているとか、
近年毎年優勝しているライバルチームは実はかなりずるくてインチキな手を使っているとか、
コメディタッチで楽しい作品です。


そして当然、目を見張るような斬新なヘア・スタイルがたくさん見られるのもたのしい。
英国王室の結婚式などで、女性の奇抜でど派手な帽子が話題になりましたよね。
ここのヘア・スタイルは、もはやそのようなノリ。
まねしようと思ってできるものではありませんが、確かに見る分には楽しい。
ちょっと、ほっとできる作品でした。

BLOW DRY シャンプー台のむこうに [DVD]
パトリック・ドイル,サイモン・ボーフォイ
東宝


シャンプー台のむこうに
2000年/イギリス/95分
監督:パディ・ブレスナック
出演:アラン・リックマン、ジョシュ・ハートネット、レイチェル・リークック、レイチェル・グリフィス、ナターシャ・リチャードソン、ビル・ナイ

「言葉のチカラ」香山リカ 

2011年12月23日 | 本(解説)
言葉のチカラをよい形で

言葉のチカラ (集英社文庫)
香山 リカ
集英社


                 * * * * * * * *

おなじみ、精神科医香山リカさんの「言葉」の力について書かれた本です。
自分で何気なく言った一言が、相手にとって、ひどく傷つくことであったり、
また、一生の支えになったり、
言葉は不思議な力を持っています。
であれば、できるだけこの言葉の威力をよい形で使いたい
・・・ということで書かれたこの本。
私も、できればそのような言葉を身につけたいと思い、読んでみました。


さて、この本で紹介されているのは、何も難しい言葉ではありません。
易しい・・・というよりも「優しい」言葉なのだと思います。

「こんなに楽しいのは、はじめてです。」
「お会いできてよかったです」
「きっとうまくいきますよ」
「またお会いしましょう」

そんな中で、「がんばってください」という言葉を見つけました。
このたびの東北大震災の折にも話題になりましたが、
被災者に「がんばってください」と声をかけるのはどうなのか・・・ということです。
うつ病の人に「がんばってください」というのもタブーだといいます。
でも著者はこういうのです。

相手と距離を置き、吐き捨てるように発せられる「がんばれよ」は、「怠けるな」にひとしい。
でも、相手の努力を尊重して、優しく投げかけられる「がんばってくださいね」は、
「無理しないでね」と同じような意味を持つ。
そして、いくら表面的に取り繕いながら「がんばって」と言っても、
その背後にある本音が透けて見えるのも、この言葉の特徴だ。
それから、「がんばってください」と言ったあとには、
「がんばりましたね」とその成果を評価してあげることも大切、

と。
確かに使い方の難しい言葉なのですが、
全く使ってはダメというわけではないということで
少し気が楽になったような気がします。


また、この本にはあまり使わない方がいい言葉もあげられています。

「どっちでもいいです」
「あなたのために言っているんです」
「ビミョーです」
「私は頭が悪いもので」

そんな中にあったのは「まさに奇跡と感動です」。

言葉の力を鍛えたければ
「最高・感動・奇跡・絶対」の四つの単語は使わないと言う原則をオススメしたい。
気持ちを表す自分らしい表現を選んでみては。


・・・というのは、ブロガーにとっては貴重なアドバイス。
ついこれらの言葉に頼りたくなってしまうことはあります。
肝に銘じます!


おしまいに、私が是非身につけて使いたいと思った言葉。
「お察しします」
「おっしゃるとおりです」
「うれしいなんてものじゃありません」
「おやすい御用です」

・・・ですが、言葉ばかり調子がよくて、
あてにならないヤツにならないように、気をつけなければ!!

「言葉のチカラ」香山リカ 集英社文庫
満足度★★★☆☆


ミッション:インポッシブル ゴースト・プロトコル

2011年12月21日 | 映画(ま行)
実はこんなに楽しめるとは思っていなかった・・・



                  * * * * * * * *

つい期待の高まるトム・クルーズのミッション・インポッシブルですが、
期待にそぐわず、やってくれました。
いきなり、監獄からの脱出シーンから。
・・・それはほんの前振りで、続いて舞台はモスクワ、クレムリンに移ります。
イーサン・ハントは、そこで起こった爆破テロ事件の犯人にされてしまう。
彼らの今回の超弩級に過酷な任務は、
クレムリン爆破の黒幕をつきとめること、
そして核テロを未然に防ぐこと。
チームはたったの4人。
さあ、どうする!!



この監督、ブラッド・バード氏は、これまでアニメの監督で実写作品は今回が初めてといいます。
でも、実写アクションの常識にとらわれない、スリルたっぷりのアクションシーンには痺れさせられました。
CMシーンにもある、ドバイの超高層ビルの外壁をよじ登るハント。
全く正気の沙汰ではありませんね。
これでもかと繰り出される危機一髪、絶体絶命。
でも、無駄に長い殴り合いシーンなどはなく、キレがよく小気味よいのです。
そしてそんな緊張の中にありながらも、彼らの口から飛び出るジョーク。
これぞ、大人のエンタテイメント作品。
文句なし。
チーム4人のそれぞれの持ち味がまたいい。
それぞれがそれぞれの役割を必死にやり遂げようとするところもまた見所。
誰のシーンをみてもつい力が入ります。
4人というところがほどよいのでしょうね。
あまり多いと誰が誰やらわからなくなるし、興味も分散します。
連係プレイの小気味よさを味わえるのも、この人数がちょうどいいですね。
そして、リーダーであるトム・クルーズの立ち位置はやはり花。
実にうまい配剤です。



彼らの使う様々な新兵器も興味深いですね。
壁の奥行きを演出するスクリーンなんていうのは、すごい・・・。
全くの絵空事でもなさそうなところが、またいいのです。
舞台もモスクワ・ドバイ・ムンバイ・ブタペスト・・・。
情報は一瞬で世界を駆け巡りますが、
彼らの行動も負けず劣らず迅速です。
今やスパイはグローバルでなければいけない。
昨今は、せいぜいがアメリカの片隅で世界征服を企む
・・・なんていうお粗末な陰謀もめっきり少なくなりました・・・。


そして、今回の敵役は核兵器によるテロを図る狂信的な男コバルト。
これがマイケル・ニクビストで、
スウェーデン版元祖「ミレニアム」シリーズの敏腕ジャーナリスト、ミカエルを演じた方ですね。
まあ、なんて渋い起用。
これがまた、ラストの立体駐車場シーンでトム・クルーズと死闘を演じるのでした・・・。
いやあ、命がいくつあっても足りないと思う・・・。



これは宣伝倒れではなくて、本当に満足の行く作品です。
年末年始には是非オススメ。

「ミッション:インポッシブル ゴースト・プロトコル」

2011年/アメリカ
監督:ブラッド・バード
出演:トム・クルーズ、ジェレミー・レナー、サイモン・ペッグ、ポーラ・パットン、マイケル・ニクビスト

クロエ

2011年12月20日 | 映画(か行)
清純そうでありながら 不思議な妖しさをただよわせて




                    * * * * * * * *

大学教授の夫(リーアム・ニーソン)と一人の息子を持つキャサリン(ジュリアン・ムーア)。
熱烈に愛しあい、結婚した二人ですが、
それはもう遠い昔のことで、夫婦間は倦怠。
そんなとき、キャサリンは夫の携帯に若い女の子との浮気を思わせるメールをを見てしまいます。
さすがに、心穏やかではいられない。
彼女はクロエ(アマンダ・セイフライド)という若く美しい娼婦に、
夫を誘惑し、その様子を報告するよう依頼します。



公園の温室でキスをした。
ホテルの部屋で会った。

・・・次第に大胆になる夫の行動に、自分から仕掛けたことにもかかわらず、
嫉妬に焦がれ、また、体のうずきを感じてしまうキャサリン。
やがてクロエは息子にまで接近をはかろうとするのですが・・・。



題材としては、ドタバタの浮気コメディにもなりかねないものなのですが、
さすが名優の配置で、愛憎と官能、倒錯した性愛の妖しい雰囲気がよく描かれていました。
特に、アマンダ・セイフライドがすごいですね。
私がこれまでに見ているのは、
「マンマ・ミーア」、「ジュリエットからの手紙」、「親愛なるきみへ」というところで、
まあ、普通に魅力的な女性の役ですね。
しかし、ここはかなりの難役です。
何しろ娼婦ですから。
でも、一見清純そうでありながら、不思議に妖しいこの雰囲気が見事です。
この方はきっと、今後も活躍をしそうです。



そして意外な結末が待っているのですが、これはうすうす想像がつきました。
しかし、とすればクロエの意図はいったい何だったのでしょう。
そこにはうかがい知れない心の闇があるようで、これもまた怖いのです。
めいっぱい母親に反抗しているつもりの息子は、全くの「坊ちゃん」でしたね。
男は単純でわかりやすい。
しかし女は怖い。
そういう作品でした。

2009年/カナダ・フランス・アメリカ/96分
監督:アトム・エゴヤン
出演:ジュリアン・ムーア、リーアム・ニーソン、アマンダ・セイフライド、マックス・シエリオット

源氏物語 千年の謎

2011年12月19日 | 映画(か行)
“雅(みやび)”な世界ですが・・・



                * * * * * * * *

「物語の中の光源氏」の世界と「物語を書いた紫式部」の世界の交差。
源氏物語はなぜ書かれたのか、書かれなければならなかったのか、その謎を探る物語です。
雅な平安時代の貴族たちの光景に目を奪われはするのですが・・・。
う~ん、なんだかなあ・・・。


源氏物語は嫌いではありませんし、
まさに日本が誇る「男と女の心理」をとらえた偉大な作品であるのは確か。
でもこの作品、物語世界も、現実の紫式部の世界もそっくり同じ地続きなんですね。
まあ、当時としてはリアルな現代小説だった訳なのか・・・。
なんだかイメージがいかにも私たちの思う「平安時代」そのまま。
もっと、何か斬新な切り口が欲しかったというか・・・。
紫式部の秘められた思い・・・と言うのが眼目なのですね。
女は欲しいまま、権力も思いのままにする道長を光源氏になぞらえ、
真の愛情は得られず苦しみのたうつ様を書き綴る。
そう考えると、ちょっと、怖い気もします・・・。
源氏物語の中の女性たち以上に複雑で錯綜し、しかも陰湿。



先日読んだ「千年の黙」という本にも
道長の野望のために源氏物語が天皇に献上された、という似たような切り口がありました。
むしろその本の方が、いかにも生き生き息づく登場人物が描かれていて、とても楽しかった。
紫式部を描くなら、なかなか筆が進まずヒステリーを起こしてるなんてくらいの現実味が欲しかった・・・。
いくら平安時代とはいえ、皆あのようにいつも優雅に過ごしていたとはとても思えないのですね。
もっと生活感が欲しかったというか・・・皆、何かお人形さんのようでした。


まあ、一つだけ迫力があったのは、田中麗奈さんの六条御息所。
生き霊というのがなんとも怖い。
けれど、女たちがここまで男に執着するのは嫉妬もあるかもしれないけれど、
自分の生活がひとえに男にかかっているからでもありますよね。
そんなふうで、いろいろとえぐるべき所はある時代のはずなのです。



さて、東山紀之さんの藤原道長は、ステキ過ぎ。
ヒガシはそのまま光源氏でもいけます。
権力をほしいままにし、「私は何をしても許される」と豪語する道長には、
もっと暑苦しいオッサンのイメージがあるけれど。
まあでも、それでは、紫式部の気持ちがそちらに向かうはずもない、ということか。


私としてはどこで感情を盛り上げていいのやら、
つかみ所のない残念な作品でした・・・。



そうそう、生田斗真さんの光源氏は、いいですよ。
要するにそれが見たかったわけなので、これでいいのか・・・。

源氏物語 千年の謎
2011年/日本/135分
監督:鶴橋康夫
原作:高山由紀子「源氏物語 悲しみの皇子」
出演:生田斗真、中谷美紀、真木よう子、東山紀之、田中麗奈

「不連続の世界」 恩田陸

2011年12月17日 | 本(SF・ファンタジー)
日常が非日常へとペロリと裏返し

不連続の世界 (幻冬舎文庫)
恩田 陸
幻冬舎


              * * * * * * * *

「月の裏側」に登場した塚崎多聞が再登場。
彼が遭遇した不可思議でちょっぴり怖い出来事を綴る、連作短編集です。
でも、これらの発表時期はかなりばらついていて、
10年近くに跨がっているとのこと。
それにしては、ほとんどが旅の途上であったりするようなトーンがそろえられていまして
一気に書き上げたかのようなのはさすがです。


「砂丘ピクニック」では、鳥取砂丘が近年特に小さくなってしまい、
思ったよりみすぼらしいというリアルな感想をにじませながらも、
しかし実は遠近感の不思議で、実際には結構広い・・・
そういう実感としての不思議さが顔をのぞかせるところがステキでした。


旅という非日常を行く多聞が、幻想的な事象を呼び寄せていく・・・。
恩田陸ならではの不可思議ワールドがたっぷり堪能できます。


さてしかし、最後の「夜明けのガスパール」では、
すっかり驚かされてしまいました。
そこまでは、あくまでも多聞は旅人であり、不思議なことを見る者、聞く者という役割でした。
ところがここでは、まさに彼自身の抜き差しならない事情が主題となるのです。
妻と別居中の多聞と、三人の友人が
「夜行列車で怪談をやりながら、さぬきうどんを食べに行く旅」という、
それはちょっと怖いけれど、のどかな情景のはずだったのですが・・・。
車中、何度も多聞の携帯にかかってくる無言電話。
友人は言う。
「おまえの奥さん、もうこの世にいないと思う。おまえが殺したから」


「日常」と思っていたモノが「非日常」へとぺろりと裏返しになるような
・・・くらくらした思いに襲われてしまいます。
これだから恩田陸は止められないのです。
本当に。

「不連続の世界」恩田陸 幻冬舎文庫
満足度★★★★☆

ナイトメアー・ビフォア・クリスマス

2011年12月16日 | 映画(な行)
クリスマス、本当に必要なものは・・・?



                * * * * * * * *

12月ですので、時にはこんなアニメもいいのではないかと。
人形アニメです。
とはいえ、この作品はクリスマスよりもむしろハロウィン向きですね。
奇々怪々のハロウィンタウンが舞台です。


年に一度ハロウィンの盛大なお祭りが繰り広げられる街。
人を怖がらせるのが生き甲斐の住人たち。
なかでもお祭りをプロデュースするジャックは皆からも賞賛を浴びるのですが、
毎年同じように繰り返されるこのお祭りに、
すっかり嫌気がさし、むなしさを覚えています。

そんなとき彼は、深い森を分け入って、クリスマスタウンに迷い込みます。
色とりどりの明かり。
幸せそうな人々。
笑顔の街。

これだ! 僕がずっと探し求めていたものは!

ジャックは街に戻って、早速クリスマスを主催しようとします・・・。
自らサンタクローズになりすまし、空飛ぶトナカイ(ガイコツ)のそりに乗ってプレゼントを配って回るのです。
それはゾンビたちの大好きなものではあるけれど、
普通の人々にとっては恐怖のプレゼント!!



この町の住人たちをなんと呼べばいいのでしょう。
妖怪・・・といえば、ゲゲゲの鬼太郎の世界を思い浮かべてしまうし、
モンスター? オバケ・・・? 
強いて言えばゾンビでしょうか。
ジャックもガイコツですし。
一口にゾンビといっても皆さん(?)それぞれ個性豊か。
このイマジネーションの世界を見るだけでも十分楽しい。
そして、ミュージカル風に歌が挿入され、
切ないサリーの恋心もありまして、
大人が見ても大変楽しめる作品になっています。
ジャックのパートナーである犬(の幽霊?)、ゼロがかわいかったですね。
あんな幽霊なら、うちにいてもいいな。


クリスマススタイルをまねても、形だけではだめ。
本当に必要なのは“愛”。
そういうことですね!!

ナイトメアー・ビフォア・クリスマス [DVD]
ティム・バートン
ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント


1993年/アメリカ/76分
監督:ヘンリー・セリック
制作・原案:ティム・バートン
出演(声):ダニ・エルフマン、クリス・サランドン、キャサリン・オハラ

リアル・スティール

2011年12月15日 | 映画(ら行)
立て! 立つんだ、ATOM!!



                 * * * * * * * *

近未来、2020年。
プロボクサーから身を転じ、ロボット格闘技の世界に身を置くチャーリー。
しかし、資金がなくてはいいマシンも手に入らず、借金まみれのいわば“負け犬”。
そんな彼の元にやってきた一人の少年。
別れた妻とともに暮らしていた息子マックス11歳。
母親が亡くなったため、しばらくチャーリーと過ごすことに。
いわば、母子を捨てて出て行ってしまった父なので、
そもそもうまくいくとは思えません。
けれど、ロボット格闘技やコンピュータゲームに目を輝かせる少年は、
その世界を通じて次第に父との絆を取り戻していきます。



ストーリーとしてはとても単純で、ありがち。
でも、初めから終わりまで、何よりもわくわくと楽しく見てしまいました!! 
ロボットものにも、ボクシングにも、さして関心があるというわけでもないのに。

始めに出てきたロボットがステキです。
もとチャンピオン級のロボットですが、すでに落ちぶれ各国のどさ回りをしていたというそれは、
ボディに漢字で「悪」とか何とか、ペイントされています。
音声認識も、初めは日本語モードになっていて、
マックスが日本語でロボットをコントロールしてみせる。
また、マックスが廃材置き場で見つけた旧式のロボットは“ATOM”と言う名前です。
日本人としては、これらの設定が何とも楽しい!!
ATOMにはシャドー機能がついていまして、人の動きをまねしてその通りに動く。
そこで、元プロボクサーのチャーリーの出番。
小回りのきくボディ、切れのあるパンチ、
ATOMの動きが次第に小気味よくなってきます。
あくまでもコントロールされて動くATOMなのですが、
私たちは次第にその中に人格を見出します。
人の形をしたモノには、そういう力がありますね。
「立て! 立つんだ、ATOM!!」
私たちも手に汗を握りつつ、ついそう叫びたくなってしまいます。



お金が無い。
ロボットは旧式のボロ。
チームは落ちぶれた男と子供。
マイナス要件ばかりの彼らが、潤沢な資金に物を言わせて作り上げた最強マシンに挑む。
今時の格差社会にちょっぴりと反逆をにおわせつつ、
実に痛快なストーリーです。
ラストも気に入りました。
そう、ここはこれでいいのです。
マックスが笑顔だから。


前向きで明るくて、物怖じしないマックス少年。
実に気持ちがいいなあ・・・。
こんな風に育てたお母さんはきっとステキな人だったろうと、
つい余計なことまで思ったりして。
マックスとATOMのダンスがとってもよかったですね。
もっと長く見ていたいシーンでした。

ほぼ10年後にしては、チャーリーが持っていたケータイは、iPhoneよりお粗末のような気がしましたが・・・。

「リアル・スティール」
2011年/アメリカ/127分
監督:ショーン・レビ
原作:リチャード・マシスン
出演:ヒュー・ジャックマン、エバンジェリン・リリー、ダコタ・ゴヨ、アンソニー・マッキー

「マンボウ家族航海記」 北杜夫

2011年12月13日 | 本(エッセイ)
やはり問題は株ですが・・・

マンボウ家族航海記 (実業之日本社文庫)
北 杜夫
実業之日本社


           * * * * * * * *

どくとるマンボウこと北杜夫氏の小説やエッセイ、
かつては好きでずいぶん読んでいました。
ご存じのように、氏はこの10月に逝去されましたが、
つい懐かしく、この本を読んでみようと思いました。


実は私が北杜夫氏の本をあるときから読まなくなったのには、理由があります。
それはこの本の中でもずいぶんと詳しく記述がありますが、
株取引にまつわる騒動のこと・・・。
氏が躁鬱病であるとは有名な話ですが、ある躁期のこと。
株の売買を始めたのだけれどそれが尋常ではない。
奥様が泣いて止めるよう頼んでも、怒鳴り散らし株売買を繰り返し、ついに破産。
知人友人、出版社にまで借金があったといいます。
私が最後に読んだ氏のエッセイにはそのようなことがまるで自慢話のように書いてありまして、
正直そのことですっかりこの方に寄せる信頼をなくしてしまいました。
思うにそのエッセイ自体、躁状態の時に書いたものだったのでしょうね。


本作は1986年から2000年までのエッセイをまとめたもので、
この文庫にはご本人の今年8月19日付のあとがきがあります。
その中で
「私が50歳代の頃は4年に1度の大ソウ病が起こり文章もでたらめになったり、
意味不明の文章になったりで編集者のみなさまにたいへんご迷惑をかけたりした時代である。
たいへん申し訳ないことをしたと反省している。」
とあります。
近頃鬱病はいろいろ取りざたされることがあり、たいへんなことは認識していますが、
躁病についても、ただ明るく前向きなどというモノではなく、
やはり病気であり、ご本人にも身の回りの人たちにもつらいことだと、今更わかりました。


何よりもこの本の解説で、娘さんの斉藤由香さんが、
そんなことも今となってはとても懐かしいとおっしゃっているので、
私がとやかく言う筋合いのものではありません。
いずれにしても大いなる変人であったことは間違いないかも・・・。


代表作「楡家の人々」は遠い昔に一度読んだきりなので、
また読んでみようかという気になってきました。


「マンボウ家族航海記」北杜夫 実業之日本社文庫
満足度★★★☆☆

ガス燈

2011年12月12日 | 映画(か行)
ほの暗いガス燈の下で、精神に変調を来していくヒロイン

                  * * * * * * * *

邂逅<めぐりあい>のシャルル・ボワイエに魅せられまして、こちらの作品も見てみました。
題名だけは聞いたことはありましたが、私は初めてです。
霧の街ロンドンに灯るガス燈をイメージしていました。
それでなにやらロマンチックなラブストーリーかと思っていましたが、
これはヒッチコック張りの心理サスペンスでした!!


19世紀末ロンドンが舞台です。
ポーラは早くに父母を亡くし、有名な女性歌手である叔母とロンドンの屋敷に住んでいました。
ところがある夜、その叔母が何者かに殺害されてしまいます。
その時まだ子供だった彼女は、以来その恐ろしい記憶が頭から離れません。
さて、美しく成長したポーラは、結婚し、
夫グレゴリーとともにこの屋敷にまた住むことになりました。
ところがまもなく、夫に彼女の物忘れや盗癖のことを指摘されます。
また、夜ごとに部屋のガスの明かりがスッと暗くなり、
誰もいないはずの天井裏から足音やなにやら怪しい物音が聞こえ・・・。
次第に精神の変調を来していくポーラ。


ガス燈というのは、外の街灯だけではなくて、
室内の照明でも使っていたのですね。
初めて知りました。
それが、同じ家の他の部屋でも明かりをつけたりすると、
ガス圧が下がって、暗くなってしまうのです。
だからポーラは自室の明かりがスッと暗くなったときに、
メイドに、「どこかで明かりをつけた?」と何度も訪ねたりしています。
いかにも時代がかっていて、なんだかいいですよね。
しかし、題名にもあるとおり、この現象はある陰謀の証でもあるわけです。


自分では正常だと思っていても、人から精神の異常を指摘され続けたとしたら・・・。
怖いですね。
自分自身も信じられなくなってきます。
この作品は、かなり初めのうちから、夫が怪しいとわかります。
その用意周到かつ執拗にポーラを追い詰めていくやり口。
いったい何のために・・・? 
端正な顔の下に秘められた悪意。
これが薄気味悪さを倍増しています。
また、ひたすら夫のいいなりに、屋敷から一歩も出ず、
閉じ込められたも同然のポーラ。
レディ・ファーストなどといいながらその実、女性は、男性の所有物。
そんな時代の風潮が読み取れるのも興味深いところです。
欲を言えば、お向かいの詮索好きのおばさまにも何か活躍のシーンが欲しかったですね。
このおばさまの存在が、ちょっとした息抜きになっています。


モノクロで映し出される、シャルル・ボワイエとイングリッド・バーグマン。
ひたすらムードがあります。
時には古典も悪くありません。
この作品を見ていたら
「1944年って、ずいぶん古いの見てるね。私はまだ生まれてないよ。」
と、長女がのたまう。

そりゃ、私だって生まれてませんってば!!

ガス燈 [DVD] FRT-068
テリー・ムーア,アンジェラ・ランズベリー,イングリッド・バーグマン,ジョセフ・コットン,シャルル・ボワイエ
ファーストトレーディング


1944年/アメリカ/114分
監督:ジョージ・キューカー
出演:シャルル・ボワイエ、イングリッド・バーグマン、ジョセフ・コットン