映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「きのこいぬ」 蒼星きまま 

2012年07月31日 | コミックス
いぬか? きのこか?

きのこいぬ(リュウコミックス)
蒼星 きまま
徳間書店


                  * * * * * * * * * 

切なくもじんわりと胸にしみる、愛犬家ならより一層・・・。
癒し系のコミックです。


愛犬、はなこを亡くして、傷心の絵本作家、夕闇ほたる。
庭にピンクのきのこが生えているのを見つけ、
見つめていたら、もぞもぞと動き出して犬になっちゃった・・・!
それが"きのこいぬ"です。


"きのこいぬ"は、以前からこの庭に生息(?)していたらしいのですが、
いつもほたるとはなこが仲良く寄り添っているのを眺めていたのです。
ほたるは少年時代に両親をなくしていて、
はなこが唯一の"家族"でした。
そのはなこを亡くして、ほたるはすっかり仕事の意欲も生きる意欲もなくしていたのです。
そのほたるを見かねて、一念発起したピンクのきのこは、
エイっとばかりに、イヌに変身。
ほたるを慰めようと、一生懸命。
うーむ、このきのこは、きのこ似た未知の宇宙生物? 
全く正体不明なのですが、本作の登場人物たちは、さして頓着しません。
ほたるは、単に家に入りたそうだったからと、入れてしまうし、
幼馴染の担当編集者、こまこは、不気味に思いながらも
ホタルがいいのならよしとする。
きのこ研究所員の矢良くんは、その生態を解き明かそうともせず、
ほたるをめぐってのライバル関係に。
みな何やらのほほんとしたところが、なんとも言えなくいい味になってます。
あくせくしすぎず、脱力系。
こういうのが好きです。


しかし、この"きのこいぬ"、
見かけはこんなでいかにも癒し系ですが、
感情表現は意外とワイルドで、
はなこの思い出の首輪や、残っていたペットフードは燃やしてしまうし、
はなこを思い出しているほたるを土手から突き落としたりする。
そんな"きのこいぬ"を怒りもしない、ひたすら人のいいほたるなのです。
・・・いや、人がいいと言うよりも単に鈍感なのかも知れませんが。
"きのこいぬ"はそんなほたるが大好きなのですが、
ほたるは"きのこいぬ"ははなこが好きだったのだろうと思っているのです。
そんなふうだからこそ、みんなほたるが好きなんですけどね。


私もちょっぴりかつての愛犬を思い出してしまいました。
我が家にもはえてこないかな。
きのこいぬ。

「きのこいぬ」蒼星きまま 徳間書店
満足度★★★★★

ペントハウス

2012年07月30日 | 映画(は行)
やってやろうじゃん!!



* * * * * * * * * 

マンハッタンの超高級マンション「ザ・タワー」。
ベン・スティラー演ずるところのジョシュは、そこの敏腕マネージャーです。
特に最上階のペントハウスに住む大富豪、アーサー・ショウは上得意客。
マンションとはいえ、ここまで来るとほとんどホテルのようです。
ドアマンがいて、受付がいて、エレベーターボーイがいて
・・・セキュリティに守られている。
ここの従業員は、マネージャーのジョシュの元、
心ひとつにして、顧客満足第一のサービスに務めている。
そしてそれを誇りにしています。
なんとも心地よいマンション、そして職場。
冒頭のそんなところでちょっと感動してしまいました。



さてところが、その一つだった皆の心にほころびができる事件が・・・。
最上階、アーサー・ショウが2000万ドルの詐欺容疑で逮捕されたのです。
従業員たちの年金の運用を任せてあったのもパア。
一見、従業員にもフランクで物分りの良い紳士のように見えるショウが、
実は、従業員の損失などはした金と豪語し、
大金を積んで簡単に釈放され、なおも隠し財産をたっぷり抱え込んでいる
と知るに及んでジョシュの気持ちに火がついた!!
彼は仲間とチームを組み、ペントハウスに忍び込み、
隠し財産を奪い取る計画を練るのですが・・・・。









彼らは盗みに関しては全くのドシロウト。
ただ一人プロといえるのはバルコニーのBSアンテナ専門のこそ泥(エディ・マーフィー)・・・。
綿密な計画を練ったつもりが、あちこちにほころびが出てしまいます。
けれども、臨機応変というかやぶれかぶれというか、
うまく話が転がっていく。


息があっているのやらいないのやら、よくわからない彼らの行動、
そして振り絞る知恵と勇気。
笑いとスリルに満ちていて非常に楽しめる作品でした。
大金持ちに一泡吹かせる・・・というあたりが、なんとも痛快なんですよね。
おススメです。

「ペントハウス」

ペントハウス [DVD]
ベン・スティラー,エディ・マーフィ,ケイシー・アフレック,アラン・アルダ,マシュー・ブロデリック
ジェネオン・ユニバーサル


2011年/アメリカ/104分
監督:ブレット・ラトナー
出演:ベン・スティラー、エディ・マーフィー、ケイシー・アフレック、アラン・アルダ、マシュー・ブロデリック

ポスター犬8

2012年07月29日 | 工房『たんぽぽ』
お昼寝中

                 * * * * * * * * * 

羊毛フェルト編、なんだか久しぶりになってしまいました。
今度のわんこはお昼寝中です。



南の島の木陰で、ぱいかじに吹かれてお昼寝。
そりゃ、犬だって気持ちいいでしょう・・・。


ビジュアル的には、このほうが映えますが・・・
バットマンは、やはり見ることになるだろうなあ・・・
前作には、ヒース・レジャーが出てたのに・・・(T_T)



リチャード・ギアに抱かれたい・・・?



ぱいかじ南海作戦

2012年07月28日 | 映画(は行)
毎日が夏休み


              
                       * * * * * * * * * 

映画「舞妓Haaaan!!!」で、変な人、と思った阿部サダヲ。
今年のNHK大河ドラマ「平清盛」の信西役を見て、
なんだか圧倒されてしまったのです。
始めはコキタナイ乞食坊主。
同じくコキタナイ清盛とともに、大国、宋の国へ行ってみたいと夢を共有する。
あれよあれよという間に信西は権力を得て国政を操る・・・。
しかし、やがて夢敗れる時が来て・・・。
ドラマチックな信西の生き様を、
阿部サダヲ氏が熱演していました。
それで今作も気になって見たくなったわけです。




失業と離婚を同時に体験した佐々木(阿部サダヲ)は、
人生をリセットするために南の島へやって来ました。
レンタカーでドライブ。
軽快に走ってきた道が、突然「終点」。
けれどその先に細い道を見つけた彼は、更に前進してみます。
鬱蒼とした茂みを抜けると、そこには美しく静かな海岸が広がっていました。
そしてそこにいたのは、この海岸で暮らすホームレスの4人。
海岸でのサバイバル生活に佐々木もすっかり同調して、共に暮らし始めたのですが、
ある朝、目覚めると4人は佐々木の全財産を持って姿をくらましていたのです。
途方に暮れている佐々木のもとにやってきたのは、
人のよさそうな都会の若者オッコチ(永山絢斗)。
佐々木は“サバイバル生活”の達人を装い、
今度はオッコチと共同生活をはじめるのですが・・・。



“ぱいかじ”とは南風のこと。
ぱいかじに吹かれると頭の中がもやもや~としてくるそうな。
確かに、こんなふうに南の島の海岸で一日南風に吹かれていたら、
大抵のことはどうでも良くなってしまいそうです。
この島が無人島で、そこにたまたま流れついた、というのとはわけが違います。
少し離れているけれどコンビニもあり、お金さえあればひと通りのものは揃います。
そういうところがいいですよね。
だからサバイバル生活でも悲壮感がない。
そうした自然の中の生活は、いってみれば毎日が夏休み。
仕事も離婚のことも忘れて。
毎日、ちょっぴりの冒険と、多大なのんびり。
・・・これもたった1人ならなんだかわびしいのですが、
仲間がいればまた格別、というわけです。
佐々木は騙された4人組にリベンジを図るのですが、
ちっともアクションにもサスペンスにもスペクタクルにもならないところがまた南国風。
「佐々木」のくせに佐々木小次郎ではなくて宮本武蔵だったりする。



佐々木は筏に乗って宋国まで行くつもりでは・・・と、私には思えてしまいました!



「ぱいかじ南海作戦」
2012年/日本/115分
監督:細川徹
原作:椎名誠
出演:阿部サダヲ、永山絢斗、貫地谷しほり、佐々木希、ピエール瀧


「追撃の森」 ジェフリー・ディーヴァー 

2012年07月27日 | 本(その他)
森の中の緊迫した一夜

追撃の森 (文春文庫)
Jeffery Deaver,土屋 晃
文藝春秋


               * * * * * * * * * 

女性保安官ブリンは、通報により人里離れた森の別荘を訪れますが、
そこで夫婦2人の死体を発見。
そこへ殺し屋の銃撃が襲います。
ブリンは現場で出会った女性を連れ、深い森を逃走。
時は深夜、無線なし、援軍もなし。
二人の女対二人の殺し屋。
知力を駆使した戦いが始まる・・・。


時々、こんなふうにハラハラドキドキのサスペンスストーリーを読みたくなります。
でも考えてみたら随分映画で見てるんですけどね。
今作の著者の作品、私はこれが始めてですが、
「ボーン・コレクター」を書いた方です。
映画は拝見しました!!


さて今作、ブリンは腕の立つ優秀な警官。
まあ、よくある設定です。
普通とちょっと違うのは、この殺し屋の造形。
プロなんですが、普通の仕事ではもう倦んでいるのです。
ブリンを頭がよく、ウデも立つと見て、好敵手とばかりに燃えてしまう。
ブリンの体力勝負でもありますが、
逃げる方向などいかに相手を欺くか、そういう知力の勝負でもあるのです。
終盤には二人が密接して会話を交わすシーンも。
なかなか緊迫感に満ちています。
そしてまた、今作はそれだけではなくて、
全く意外な展開も見せるので油断なりません。
え~、そんなあ・・・と、思わず呟いてしまいます。


更にはブリンの以前の夫のこと。
息子のこと。
今の夫のこと。
複雑な状況も絡めて全く退屈しないエンタテイメントとなっています。
「ボーン・コレクター」のリンカーン・ライムシリーズを読みたくなって来ました。

「追撃の森」ジェフリー・ディーヴァー 文春文庫
満足度★★★★☆

サラの鍵

2012年07月26日 | 映画(さ行)
真実を知るには代償がいる



                      * * * * * * * * * 

1942年。
ナチス占領下フランスでの出来事。
フランス警察がナチスに協力し、ユダヤ人を一斉検挙。
ベルディブ冬季競輪場に13000人ものユダヤ人が幽閉され、
更にはドイツやポーランドの収容所へ送られた事件です。
この事件については先に「黄色い星の子供たち」という作品で知りました。
フランス人にとっては慚愧に堪えない事件で、
でも決して忘れてはならないこととして記憶に留めておこうとしているのがよくわかります。
今作中でも、若い人が“ベルディブ”の名前も知らず、主人公が嘆くシーンが。


さて、サラというのはユダヤ人の少女。
フランス警官が彼女の家族を捕らえに来た日、
すぐ戻れると信じた彼女は、弟を納戸に隠しました。
その納戸の鍵を持ったまま、彼女は収容所へ送られてしまったのです。
弟のことが気がかりでならないサラは、ついに収容所を脱走するのですが・・・。



一方、それから時を隔てた現代。
ジャーナリストのジュリアがこのフランスでのユダヤ人迫害の出来事を調べ始めます。
そんな中で知った、サラのこと。
彼女はサラのその後の消息を尋ねていくのです。


ジュリアが知った真実は、決して誰を幸せにもしません。
むしろそのことで傷つく人も。
彼女は言います。
「真実を知るのには代償がいるのよ。」



オーストラリアに無理やり送られた子供たちの話も、そうでしたね。
真実を知ることは時には残酷でもあります。
けれども、そうしたことを一度受け入れることが、
やがて癒しにつながっていくのかも知れません。
今作でも、ある人物がラストシーンで流す涙が、
私達の心を浄化していくような気がしました。
運命にひたすら耐え、挑むかのような少女の眼差しが忘れられません。

サラの鍵 [DVD]
クリスティン・スコット・トーマス,メリュジーヌ・マヤンス,エイダン・クイン
東宝


「サラの鍵」
2010年/フランス/111分
監督:ジル・パケ=ブレネール
原作:タチアナ・ド・ロネ
出演:クリスティン・スコット・トーマス、メリシューヌ・マイヤンス、ニエル・アレストラップ、エイダン・クイン

おおかみこどもの雨と雪

2012年07月24日 | 映画(あ行)
成長していく“子どもと親”の物語



                   * * * * * * * * * 

「サマーウォーズ」にすっかりハマった私は、この細田守監督作品、迷わず見ました。
脚本の奥寺佐渡子さんも好きなんですよね。

ただ、“おおかみおとこ”と恋に落ちて、生まれた“おおかみこども”の話し・・・というのは
題材としてやや期待はずれ?のようにも思えたのですが・・・、
見始めてそのような思いはどこかへ消え失せてしまいました。



19歳女子大生の“花”が好きになった人は
実は“おおかみおとこ”。
二人は都会の片隅で慎ましく暮らしていました。
そしてまもなく二人の子供を授かります。
姉の“雪”と弟の“雨”。

二人は父親の血を受け継いで、何かの拍子におおかみに変身してしまいます。
ところがそんな矢先、“おおかみおとこ”は突然この世を去ってしまいます。
さあ、大変!! 
実際、私は、どーするんだっ!!と思ってしまいました。
乳飲み子を抱え、勤めようにも勤められない。
保育園に預けたくても、いつおおかみに変身してしまうかもわからないのではとても預けられない。
ご近所から赤ん坊の鳴き声がうるさいとか、
ペット(?)は飼えないはずだとか、苦情が来る・・・。
花はついに決心して、豊かな自然に囲まれた田舎町に越してくるのです。
なるべく近所に家がなさそうな山奥。
格安の古い家。
そこで、家族3人の生活が始まります。



おおかみというのはもともと自然の化身のようなものですね。
だからこの家族が自然に囲まれたこの土地にやってくるのは
ごく当然の成り行きのように思えます。
花とおおかみおとこの生活には、いつも慎ましい野の花が飾られていましたっけ。
さて、二人は姉弟でも性格が随分違います。
姉の雪の方はまさに野生児で怖いもの知らずの元気者。
すぐにこの山の生活に馴染みました。
ところが弟の雨は違います。
引っ込み思案で臆病。
いつも母や姉の後ろに隠れているような・・・。
彼はもとの家に帰りたくて仕方ないのです。
でも、面白いものですね。
二人が成長していくに連れ意外な面が見えてきます。



二人は成長していく過程で
おおかみとして生きるのか、人として生きるのか、
選択を迫られることになります。

自分とはナニモノなのか。

そうです、考えてみれば“おおかみこども”ではないどんな子供も、
いつか自分を知り、何者かになろうとする。
そうして、親は結局子供の決断をハラハラして見守るしかない。
このストーリーは決して特殊なものではないのですよね。
そうした中で親自身も成長していくのでしょう。
花が田舎暮らしを決意し、あばら屋を見事に蘇らせたその行動力、たくましさに打たれます。
守るものができると人は強くなるのかも知れません。
けれど、彼女は後に気づくことになります。

「人目を避けて引っ越してきたはずが、
いつの間にか里の人達にお世話になっている」

片意地張っても1人では生きられない。
いろいろな人の手を借りてこそ生きていける
という気づきもまた、成長の証です。
何よりも、子供たちの自立こそが子育ての成功を物語っています。





美しい雪原を笑いながら駆けまわり転げまわりする母子3人のシーンが印象的。
後にはこの一人一人の胸に
帰らぬ思い出となってよみがえるであろうその至福のとき。
私も今にして思いますが、そういう時期はほんの一瞬なのです。
今子育て中の皆様、
精一杯“子供の小さい時”を楽しんでくださいね。


おおかみおとこという特殊な題材を置きながら、
実は普遍的な“親と子供”、“家族”の物語なのでした。
雨の成長ぶりにも泣けますが、
雪の淡い初恋にも泣けます。
願わくば、子供たちを送り出した花さんにも、
また新しい生きがいが見つかりますように。
まだまだものすごく若いですしね~。

2012年/日本/117分
監督:細田守
脚本:細田守、奥寺佐渡子
声:宮崎あおい、大沢たかお、黒木華、西井幸人、大野百花

「宵山万華鏡」 森見登美彦

2012年07月23日 | 本(SF・ファンタジー)
万華鏡のような森見ワールドに魅了される

宵山万華鏡 (集英社文庫)
森見 登美彦
集英社


                  * * * * * * * * * 

京都祇園祭の夜に繰り広げられる不思議なストーリーです。
短篇集ですが6篇からなるこのそれぞれのストーリーは、互いに関連しあっています。
祇園祭は話には聞きますが、私は訪れたこともなく、
この本でその賑やかさ、ちょっぴり覗いてみたくなりました。
宵山は7月の16日に行われるそうで、
なんと私、はからずもちょうどこの日にこの本を読んでいました!!
・・・なにやら虫の知らせとでもいいましょうか。
不思議な因縁でございます。


冒頭の「宵山姉妹」では、小学生の姉妹が宵山で大賑わいの町をさまよいます。
積極的で向こう見ずな姉は、寄り道をしないようにとの親の言いつけを破り、
渋る妹を引きずるようにして祭を見物に来てしまいました。
しっかり握っていた手がいつの間にか離れ離れになり、
妹は迷子になってしまいます。
そんな時、人ごみの中をまるで金魚が水中を泳ぐように、すいすいと走り回る赤い着物の少女たちに出会います。
一緒においでよ・・・
彼女たちの誘いに、ついつられてしまうのですが・・・。


人ごみと喧騒の祭。
連なる提灯の明かり。
露天の賑々しさ。
その明かりの届かないほの暗い場所に何かが潜んでいるような・・・、
そんな不思議な雰囲気がうまく現されています。


しかし、今作はほんのプロローグ。
私たちはさらなる森見ワールド、宵山の迷宮に足を踏み入れることになります。


次の「宵山金魚」では、藤田という男が大変な目にあってしまいます。
"宵山法度違反"をおかし、「宵山様」の裁きを受けることになる。
次々に繰り広げられる夢の様な光景。
荒唐無稽ではありますが、いかにもそれは森見登美彦の世界。
いや本当に、これは単に幻想・・・と思えたのですが・・・。
私はこんな光景をジブリのアニメで見てみたい!!と強く思いました。


そしてなんと、このストーリーの舞台裏が次の「宵山劇場」。
たった1人の観客のために仕組まれたその舞台とは・・・!
これはでは興ざめではないか・・・と思いながらも、
その酔狂さとほんのりと漂う悲哀に、結局は打ちのめされました。


その後の、毎日毎日"宵山"の一日を繰り返し生きる話もすごいですし、
ラストでは冒頭の姉妹の話に戻るのですが、
こちらは姉の視点に立っています。


改めて考えてみると、この本は2作がセットで、それぞれ別々の視点から描かれている。
それで大きく3つの話、といえるかも知れません。
それは裏と表ともいえるくらいかなり様相が異なっています。
そしてまたそれぞれの話が時には交差。
同じ日の同じ時間を共有しているわけで・・・。
現実と幻想が入り乱れ、
常に現れる赤い着物の少女たち、
空中に浮かぶ巨大な緋鯉、
金魚鉢の風船
・・・ああ、なるほど、まさしく万華鏡の世界。
これらをアクセントとしながら、見る角度によってくるくる変化していく。
その世界に翻弄され、
そして堪能しました。

森見ワールド、この本に限ってはまさに
万華鏡のミラクルワールドでした。



「宵山万華鏡」森見登美彦 集英社文庫
満足度★★★★★

ジャックとジル

2012年07月22日 | 映画(さ行)
ラジー賞でもいいじゃない。楽しめれば。



                * * * * * * * * * 

今作は2012年ゴールデン・ラズベリー賞で、
アダム・サンドラーが史上初男女優賞W受賞し、
また全10部門を制覇したという、ものすごい作品。
怖いもの見たさで見てしまいました♪



アダム・サンドラーは双子の兄妹、二役。
兄ジャックは広告代理店のビジネズマンとして成功。
妹ジルはいつもお騒がせのトラブルメーカー。
普段はニューヨークとロサンゼルス、別れて暮らしていますが、
今作は感謝祭でジルが兄のもとへやってくるところから始まります。
ジャックは、いつも人騒がせなジルがやってくるのが憂鬱でたまらない。



いやはや、このジルがなんとも迫力があります。
まあ、こんな感じなので男っ気もない・・・。
ところがある日バスケの試合を見に行き、
会場に居合わせたアル・パチーノが彼女に一目惚れ!! 
アル・パチーノはそのまま“アル・パチーノ”の役なんですよ。
シェークスピアの劇中に客席からケータイの呼び出し音が響くと
怒って劇をやめてしまったりする、
気難しい超名優のアル・パチーノ。
彼はすぐにジルにアタックを開始するのですが、
なぜかジルは全然彼を気に入らない。
ところがジャックは、アル・パチーノにCM出演を承諾してもらわなければならない
という大仕事を抱えています。
ジャックの苦肉の策略が始まりますが・・・・



うーん確かにしょうもないドタバタ劇。
ラストもホロリとさせるようで、でも、なんだかなあ・・・。
ジルの性格というのがイマイチピンと来ません。
まあ、アル・パチーノをこんな役で引っ張り出した、
ということの一点のみで光っている作品です。
しかし、実はこのバスケ観戦にはジョニー・デップも来ていまして、
彼もそのまま“ジョニー・デップ”役でカメオ出演。
こんなふうで、周りのお膳立てが楽しかったのです。
ジャックの息子は、なんでも体に貼り付けたくなる性分。
見るたびに違ういろいろなものを体に貼り付けているのがお楽しみ。
娘の方はいつもお人形さんとお揃いの服装をしています。
このかわいいコスプレショーも目が離せない。
映画のオープニングとエンディングに
実際の双子の兄弟たちの語りが入っているのも楽しいですしね。

・・・結局なんだかんだと言いつつ楽しんでしまいました。

ジャックとジル [DVD]
アダム・サンドラー,ケイティ・ホームズ,アル・パチーノ
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント


「ジャックとジル」
2011年/アメリカ/91分
監督:デニス・デューガン
出演:アダム・サンドラー、ケイティ・ホームズ、アル・パチーノ、エロディ・トーン、ユージニオ・デルベス


「ブレイズメス1990」 海堂尊

2012年07月20日 | 本(その他)
患者をお金で選別するという天城医師の真意は・・・?

ブレイズメス1990 (講談社文庫)
海堂 尊
講談社


                * * * * * * * * * 

海堂尊ワールド、
今作は、「ブラックペアン1988」の2年後の物語ということになります。


東城大学医学部附属病院の新米医師世良は、
佐伯教授よりある極秘のミッションを受けてモナコへ向かいます。
それは、この世でただ一人しかできないという心臓手術をする天才外科医、天城雪彦を日本へ連れ帰ること。
紆余曲折、この医師を連れ帰るまでが、
ほとんど冒険譚と言っていいくらいに困難で、
そして読者としては面白いものでした。
しかし、日本へ舞台を移してからがまた大変。
この医師、天城の主義はとんでもないものなのです。
つまりはお金!! 
彼はお金で患者を選別します。
彼の手術を受けるためには、全財産の半分を投げ出す覚悟が必要。
何やら、ブラック・ジャックを彷彿とさせますが、
同様に、彼の最終的な目的はお金儲けなのではない。
彼が見つめる先は、医療の未来。
現制度の矛盾やら複雑さやらを蹴散らして、
自分が望む未来を目指そうとする。
それは多分著者自身の理想なのかも知れませんが、
その道のあまりの険しさに、ただただ圧倒されるのみ。
これだけの強烈な人物でなければ、思うことはあっても踏み出せるものではないですね。
まあ、そこが小説の醍醐味でもあるのです。


ちょうど、舞台はバブルの絶頂期。
天城はいいます。

「日本は凋落しないとでも?
・・・日本も遠くない未来に必ず凋落します。
だからこそ栄華の頂きで考えなければいけない。
不採算部門の確率ができるのは好景気の今しかない。」


ほんとうに、あの頃そう考えることの出来る人がいれば、
今の日本はもう少しマシになっていたかも知れません。
キザでアクの強い天城については、読み手としてもちょっと引くものがあったのですが、
終盤、彼が語る理想については、同調してしまいました。
そして、ご自慢のグリーンの愛車ガウディの色をカエルに例えられてムッとくるあたりが、
なかなかチャーミングだったりする。
なんだか素敵な夢を見させてもらったような・・・?


いつもながらの海堂尊ワールドは、見知った人々が多数登場。
黄金地球儀やボンクラボヤの話なども出てきて、
読みこめば読み込むほど楽しめるわけでした。

「ブレイズメス1990」 海堂尊 講談社文庫
満足度★★★★☆

ブラザーフッド

2012年07月19日 | 映画(は行)
反目し合いながらもなお強まる兄弟の絆



                  * * * * * * * * * 

最近チャン・ドンゴン出演作をいくつか見た私は、
もっと色々見てみたくなってしまいました。
まずはやはり、このブラザーフッドですよね。
1950年、朝鮮戦争時。
日本は太平洋戦争に敗れ、それでもどん底から立ち上がって、
好景気へ向かっていく時期ですが、
朝鮮は自国を真っ二つにする戦争のさなかなのでした。



ジンテ(チャン・ドンゴン)は、父なき後、
母を助けよく働き、頭の良い弟ジンソク(ウォンビン)の将来を楽しみにしています。
貧しいけれど信頼しあえる家族。
こんな幸せがいつまでも続けばいいとジンテの妻は言うのですが・・・。
ある時、ジンソクが強制的に徴兵されてしまい、
兄ジンテも弟を守るために入隊します。
ジンテは武勲を立て勲章を貰えば弟を帰してもらえると聞き、
自ら危険な任務を志願し、凄まじい戦闘のまっただ中に踏み込んでいくのです。
そんな姿勢が認められ、ジンテは隊の中でどんどん位をあげて行きます。
ジンテはひたすら弟を思い、守ろうとする。
けれどもその熱い思いはひたすら彼自身の胸の中にあり、言葉で弟に告げることはない。
韓国版「プライベート・ライアン」ともいえる今作ですが、
こういう精神構造はやはり東洋のものですね。
日本人にはとても馴染みのある構図です。



今作でいいのは、もちろんこのジンテのひたすら弟を思う熱き男の生き様なのですが、
一方、弟ジンソクの成長ぶりも、眼を見張るものがあります。
始めは本当にまだ無邪気な子供のようでした。
そしていかにも兄に頼りきっている。
こんな子が戦争に行って大丈夫?と思わせる。
ところが、ジンソクは次第に兄に反感を募らせていくのです。
兄が自分のために武勲を立てようとしているというのは薄々気づきながらも、
あまりにも軍に忠実で人の命を奪うことに鈍感になっている兄に疑問を覚えてしまう。
このあたりがいかにもインテリっぽいジンソクをよく表していると思うのです。
兄の心、弟知らずというところも皮肉。
しかし、この反目していく兄弟の描写が、いかにも深い。
こういう場面を体験し乗り越えていくことで、なお絆が深まっていくし、
ジンソクはぐーんと成長するんですね。



いやそれにしても、凄まじい戦闘シーンでした。
それこそ「プライベート・ライアン」も真っ青。
飛び交う銃弾に兵士は血まみれ泥まみれ、。
思想によって分けられてしまった南北。
今作はその虚しさももちろん伝えています。
どちらにも正義はない。
いわば同じ穴のムジナ。
その思想を分ける恐怖は、戦場だけでなく、
故郷で待つ家族にも降りかかります。
最後にはもうどうでも良くなってしまった破れかぶれのジンテ。
今もまだ分断されたままの半島の歴史を見るにも、とてもいい作品です。
ただし気の弱い方は要注意。

ブラザーフッド スタンダード・エディション [DVD]
カン・ジェギュ,カン・ジェギュ
ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン


「ブラザーフッド」
2004年/韓国/148分
監督・脚本:カン・ジェギュ
出演:チャン・ドンゴン、ウォンビン、イ・ウンジュ、コン・ヒョンジン、チェ・ミンシク

リンカーン弁護士

2012年07月18日 | 映画(ら行)
清濁あわせ持つスタイリッシュな弁護士



                      * * * * * * * * * 

高級車リンカーンの後部座席を事務所がわりに、
ロサンゼルスを駆けまわる敏腕弁護士のミック・ハラー(マシュー・マコノヒー)。
彼は非常に優秀ですが、麻薬密売人などの弁護をするわけで、
彼のために刑期が軽くなり、じきに出所してきてしまう輩も多いということ。
「社会にゴミをまき散らしている」との批判もあったりします。
しかし、巻きあげるべきところは巻きあげておく、
きっちり仕事として大金の弁護料をいただく、
という割り切った主義。
変に正義感ぶるよりも、こういうのも実際的でスタイリッシュかも。



さてある日、彼は資産家の御曹司ルイス・ルーレ(ライアン・フィリップ)から弁護を依頼されます。
彼は女性への暴行容疑で起訴されたのですが、
本人は「自分は無実で罠に嵌められた」と主張しています。
弁護にあたり、事件を調べ始めたミックは、
自身が過去に担当した事件とこの事件との類似点に気が付きます。
しかし、そのことで彼は大変な苦境に立たされることになる・・・。



罪状が明らかで、その刑をいかに軽くするか。
そういうことも弁護士の役割ですが、
問題なのは“無実”の場合。
実際に何も罪を犯していない人に対して、
刑期がどれくらいかというのは問題ではありません。
もちろん、どんな刑も負うべきではありません。
けれど無実の証明というのは、なかなか難しいことでもあるのでしょう。
スリリングな展開の中で、そんなことも考えさせられます。
「正義」なんて知らないよ、というふうを装いつつ、
やっぱり芯は“正義”のこのミック・ハラーが好きになってしまいました。
自分なりの倫理というものがあって、いつでも彼はそれに忠実です。
彼の苦境はかなりハードなのですが、そこをどう乗り越えるのか。
私は法廷ものには少し苦手感があるのですが、
全く退屈せず、見入ってしまいました。



それにしても、人を見かけで判断してはいけませんよね・・・、
全く・・・・。
マザコンもダメです・・・。

「リンカーン弁護士」
2011年/アメリカ/119分
監督:ブラッド・ファーマン
原作:マイクル・コナリー
出演:マシュー・マコノヒー、マリサ・トメイ、ライアン・フィリップ、ジョシュ・ルーカス、ジョン・レグイザモ

「ふたりの距離の概算」米澤穂信

2012年07月16日 | 本(ミステリ)
マラソン大会中に出さなければならない答

ふたりの距離の概算 (角川文庫)
米澤 穂信
角川書店(角川グループパブリッシング)


                 * * * * * * * * * 

文庫版が出るのを待っていました!
古典部シリーズの最新刊です。
この本、よく見るとカバーがリバーシブルになっていまして、
裏返しにするとTVアニメ版イラストとなっています。
私としてはこちらのカバーのほうが好きなので、うれしい配慮。
助かります。


今作は、5月。
古典部の面々は高2となりました。
なんといきなりマラソン大会のスタートシーン。
同じ所に戻ってくるのになんで長々と走らねばならないのか。
省エネ少年のホータローにとっては、
確かに主義に反する行事でありましょう。
しかしその上、なんとホータローには、
この20キロの走行中に考えなければならない宿題がある。
やれやれ、走るだけでも大変そうなのに、
その上論理立てた思考ができるとういのが、
ゆとりなのか、投げやりなのか(実は"投げやり"の方でした)。


ホータローが出さなければならない答えとは。
この4月、古典部に奇跡的に新入部員が入ったのです。
大日向という元気な女の子。
ところが、「突然入部しない」と本人が宣言したのが昨日のこと。
なぜ急に彼女が心変わりしてしまったのか。
千反田は、それが自分のせいだと思い込み、ショックを受けている。
ホータローは大日向の入部の時からの出来事を一つ一つ詳細に思い出しながら、
彼女の気持ちの変化を読み取ろうとしていきます。


今作の題名がなかなか意味深長。

二人の距離の概算。

実はこのマラソン大会、時差スタートなのです。
2年A組のホータローは、後からスタートしてくるH組の千反田の話を聞くために、
わざとだらだら走ったり、歩いたり。
更に大日向は2年の後の1年B組だったりしますが、
バス停に腰掛けて彼女を待っていたりします。
完全に勝負を投げてますね。
まあでも、そこがホータローらしいところ。
つまりは、ホータローと千反田や大日向の距離の概算、
というのが実際的なところですが、
それは心の距離の問題でもあるのです。
ホータローと千反田の心の距離。
そして、千反田と大日向の心の距離。
今作で最も肝心なところです。


ちょっとした思い込みや先入観。
そういうことで人を見誤ることって確かにあるのかも知れません。
前作「遠回りする雛」の出来事の後、
ホータローは風邪をひいて寝こむことになるなどというエピソードも知れて、
ファンには非常に楽しい作品でした。
そして、大日向さんはやっぱり古典部の気風に合わない気がしまして、
実は辞めていただいてホッとした、
というのがファンとしては偽らざる心境・・・。
いやいや排他的なのは良くない。
わかってはいるんですけどね・・・。

「ふたりの距離の概算」米澤穂信 角川文庫
満足度★★★★☆

オルランド

2012年07月15日 | 映画(あ行)
“男”であること、“女”であることからの開放

              * * * * * * * * * 

始まりは1600年。
エリザベス1世晩年の頃。
晩餐の宴で女王に詩を捧げた青年貴族オルランドを女王が気に入り、
「決して老いてはならない」という条件付きで、彼に大きな屋敷を与えます。
中性的魅力をたたえたこのオルランド役が、
なんとティルダ・スウィントン。
なるほど、男装が似合っています。
一方老境の女王エリザベスを演じるのは男優クエンティン・クリスプ。
こういう配役の意味が最後にわかってくる仕組みです。


エリザベス女王の言葉の呪縛からか、
それからオルランドは“老いる”ことがありません。
まるでバンパイアのように、若く美しいまま年月だけが流れていく。
バンパイアならそれなりに生き続けるのには苦労がありますが、
オルランドにはそういう悩みもありません。
しかし、生きていくのがとてつもなく嫌になってしまう時、彼は眠りにつくのです。
始めは恋に敗れた時。
一週間程も眠り続けた後、さっぱりと目を覚ます。
そしてその次は、自分は男として生きられないと感じた時。
一週間の眠りから目覚めた時に、なんとオルランドは女性になっていたのでした。
ガサガサとかさばるスカートの裾を気にしながら歩くオルランド。
突然女になってしまった戸惑いはありながらも、
「私は私。変わらない」とつぶやく。


400年を生き続けて、オルランドが見届けたのは、
“男”であること、“女”であることからの開放。

男は強く勇敢で家を継ぎ守って行かなければならない。

女は夫に従い、子供を産んで育てなければならない。

性別による、このようながんじがらめの社会のしがらみや思い込み。
そうではなくて、ただ1人の人間として自由に生きたい。
それが原作者ヴァージニア・ウルフの願いなのでしょう。
だからといって、子供を産み育てるという営みを
否定するものではないということでもあります。
人類の歴史から見ても、このような考え方が認められてきたのはつい最近のこと。
いえ、結局今もそう変わったとも思えないのですが・・・。


エリザベス朝時代の雰囲気の描写が素敵でした。
特に、異常寒波のイングランドで、
凍てついた道や海の上を、人々がスケートで歩き回っているさまなどはユーモラスでもあります。
この時代の夜の明かりは、月明かりと僅かなろうそくや松明のみ。
こんな夜には、永遠に年を取らない不思議もあって可笑しくない気がしてきますね。

オルランド 特別版 [DVD]
サリー・ポッター
パイオニアLDC


「オルランド」
1992年/イギリス・ロシア・イタリア・フランス・オランダ
監督・脚本:サリー・ポッター
原作:ヴァージニア・ウルフ
出演:ティルダ・スウィントン、シャルロット・ヴァランドレイ、ヒースコート・ウィリアムス、ロテール・ブリュトー、ビリー・ゼーン

崖っぷちの男

2012年07月14日 | 映画(か行)
起死回生、人生の大博打



                   * * * * * * * * * 

ニューヨークのホテル21階から飛び降りようとする男。
ただの自殺ではなく何やら思惑がありそう。
そしてその男と対峙する女性刑事。
彼女は以前、説得に失敗し、相手を自殺させてしまった経験が・・・。
21階から地上を見下ろす映像が、高所恐怖症気味の私にはキビシイのです。
終始緊迫感に満ちた作品です。



さて、まずこの男の正体。
30億円のダイヤモンド強奪の罪で収監された元刑事のニック(サム・ワーシントン)です。
しかし彼は無実で、濡れ絹を着せられていたのです。
警官でありながらこのような境遇に貶められるというのは、最大の屈辱でもあります。
彼はいつかこの無実を晴らし、その裏のからくりを暴いて見せようと、
綿密に計画を練っていたのです。
ついに、父の葬儀の隙をつき脱獄。
その後いきなりこのホテルのシーンです。
彼は何をしようとしているのか、ドキドキしますね。
彼はここで飛び降りるかのように振る舞い、
群衆やマスコミの注目を集め騒ぎを起こすことで、別の何かを成し遂げようというのです。
別動隊となるのは、彼の弟ジョーイとその彼女。
こちらの動きもスリルたっぷり、ハラハラします。


さて一方、彼に指名されて交渉人となったのはリディア(エリザベス・バンクス)。
彼女はニックと話をするうちに、彼の無実を確信していきますが・・・。



文字通りの崖っぷちに立ち、
そしてまた、人生上の崖っぷちでもある。
この計画に失敗すれば、どのみち墜落死か、
脱獄囚として射殺か・・・、
運が良くても刑務所に逆戻りで人生をそこで費やすのか・・・。

起死回生、命がけの大博打。

ユニークで、目が離せないですね!!
これぞ映画の醍醐味、でした。



最後の最後に、これは本当にかなり以前から綿密に練られた計画であることがわかるんですよ。
ちょっと虚を突かれた感じで、
う~ん、ここでもやられてしまいました・・・。

「崖っぷちの男」
2012年/アメリカ/102分
監督:アスガー・レス
出演:サム・ワーシントン、エリザベス・バンクス、ジェイミー・ベル、アンソニー・マッキー、エド・バーンズ