映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

いわさきちひろ展

2013年05月15日 | 美術展
子どもたちが見つめるものは・・・?



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いわさきちひろ(本名松本知弘(まつもと・ちひろ、旧姓岩崎)1918年12月15日 - 1974年8月8日、女性)は、
こどもの水彩画に代表される福井県武生市(現在の越前市)生まれの日本の画家・絵本作家である。
左利き。 つねに「子どもの幸せと平和」をテーマとした


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道立近代美術館で行われている「いわさきちひろ展」へ行きました。
いわさきちひろさんの絵は大好きで、画集も持っているのですが、
考えてみたらこの画集は、いわさきちひろさんの没後まもなく、記念出版されたものだったと思います。
・・・ということは40年近く前?!
最近開いたことがないので、どんなことになっているものやら、
にわかに不安になって来ました。



さてそんなわけで、この度拝見した作品も、
ほとんど見知っているものでしたが、やはりナマはいいですね。
子どもたちのぷっくりしたほっぺや指・・・。
なんだか、生き別れた自分の子供と対面したみたいな・・・、
懐かしさといとおしさがこみ上げてきて、
ちょっぴり泣けました。
こんなところで涙を拭う人も珍しいと思いますが・・・。


子供達のあの表情、特に眼がなんともいえません。
黒目がちの・・・というか
絵としては、単に四角い薄い黒色なのですが・・・。
どの絵も大げさにニッコリ笑っていたりはしません。
どちらかといえば無表情に近い。
でもその眼が、なにも考えていないようでいて、
深淵を見つめているようにも思える。
単純にデフォルメされていながら、
こんなにも本当の子供に近いというのが、やはりスゴイです。
そしてもちろん、
水彩のぼかし、にじみの美しさ。
私はうんと若いころ、こんなイラストの絵本作家になりたい
などと夢見たこともあるのですが。
しかしいわさきちひろさんは、
元々の確かなデッサン力があるからこその、この作品なわけで・・・。
そう簡単に真似できるものではありません。


ご主人は日本共産党衆議院議員を務められた松本善明氏。
氏が奥様のことを描いた著書も、遠い昔に読んだことがあったはず・・・。
いわさきちひろさんはこの優しい絵柄とは違って、
たぶんかなり意志の強い方と思われるのです。
若かりし頃の自画像のデッサンなどをみて、ますますそう感じました。


いつか、「ちひろ美術館・東京」と
長野にある「安曇野ちひろ美術館」へも行ってみたいものです。



美術館前庭風景

レオナール・フジタ展

2008年08月15日 | 美術展

さてと、たっぷり、フジタを予習したところで絵の鑑賞と行きましょうか。
札幌の道立近代美術館です。
この、フジタの写真、知らない人が見たらコメディアンかと思っちゃいますね。
その特異な風貌でも、パリで目立っていたのでしょうね。
本人の話によると、貧乏時時代、床屋にいけなくて、自分で髪を切ったらこうなった、ということですよ・・・。
へー。じゃ、エーと、質問です!
藤田嗣治とか、レオナルド・フジタとか、いろいろ呼び方があるみたいなんだけど、なぜ?
つまりですね、藤田嗣治は本名、というか、日本名ですね。
レオナルドは、英語読み。
レオナールがフランス読み、ということなんじゃないかな???
藤田は1959年にカトリックの洗礼を受けて、このときにレオナール・フジタと改名しております。
なるほど、フランス人なんだからフランス読みすべきなんでしょうね、やはり。

彼の作品はしばし、「すばらしき乳白色」と絶賛されるということですが・・・。
はい、裸婦像のその肌の色合いなんですね。
このたび間近で見たのでよくわかるけれど、油彩なんだけど、すごく薄いですね。
よくごってりと絵の具が盛り上がった絵があるけど、それとはぜんぜんちがう。
なんだかやわらかくて、触ってみたいような感じのする、肌だなあ・・・。
その色を出す技法は、フジタは誰にも教えなかったので、未だにわからないそうですよ。・・・科学的には分析されているようですが。
私は、足元に猫がいて、のけぞる感じで仰向けに寝ている裸婦像が好きだなあ・・・。金色の髪がベッドの下のほうに波打って流れている。このリラックスした感じ。
「構図」と「闘争」の大作も迫力がありましたね。
そのための下絵の一つ一つも、すごいと思いました。
こういうのも、男性モデルを使うんだよね・・・。
そ、そうだと思うけど・・・。
マッチョな人をさがすんだろうなあと思って。ヌードだし、女性モデルよりさがすの大変そう・・・。
なに考えてんだか・・・。それはともかく、このマッチョな男性の筋肉の描き方は、やはり日本画を思わせる部分がありますね。
そうそう、中に仁王様を思わせるものもあった。
それから、カトリック洗礼後の宗教画も、すごくいいですね。
三人の女性を描いた「花の洗礼」はすごくいい。
女性好みではありますがね。
この、優しい淡い色使いはやはり日本人のセンスだなあ・・・。
これは思わず、絵葉書を買っちゃいました!
最晩年には、自ら教会を設計して建てて、壁画やステンドグラスも作っちゃった。
壁画を完済させて、まもなく亡くなったということですよ。
レオナルド・ダ・ヴィンチを意識したと思われる「最後の晩餐」の場面もありますね。
それで、画家生命を燃やし尽くしたんですねえ・・・。
ぜひ行って実際にみたい気がします。
現地で見るそれはまた特別な感慨がありそうな気がする・・・。

彼の作品には猫もたくさん出てきますね。
そうなんです。猫好きにはたまりません。
私は「猫(闘争)」というのが好きです。
たくさんの猫が飛んだりはねたり、すごい躍動感で、ただかわいいだけじゃない、猫の野生が良く表わされている。
フジタの猫の絵ばかりを集めた画文集も出ていて、実は私はそれを持っている。えっへん。

エーと、それで、結構マジに解説を読んで回ったんだけど、予習したような、戦争画についてはふれていなかったなあ・・・。
うん、まあ、絵の評価とは直線関係ない話ではあるけどね・・・。
実際、そういう絵は残っていないの?
終戦後GHQが押収してアメリカにもっていかれちゃって、
でも、今は「無期限貸与」という形で東京国立近代美術館にあるそうだよ。
でも、一般公開はされていないらしい。
どうも当時のことは、みんなほじくりたくないらしくて、ひっそり隠してあるという感じだなあ。みなさん、たたけばホコリの出る体・・・。
う~ん、でもフジタの戦争画なんて、見たいような見たくもないような・・・って、複雑なところだね。
とりあえずは、このような大きな展覧会が開かれることになって、フジタの知名度も少しは上るでしょう。
戦争画のうんぬんかんぬんも、もうこだわる人もいなくなってるということだね。
というか、今の日本の美術界は、あえてそれには触れず、純粋に絵を楽しんでもらうことにした、ということなんでしょう。それは正しい選択ではあるよ。
もし、さらに興味があれば、彼の生涯についても調べてみてね・・・というくらいのところかな。

全く余談ですが、美術館は冷房効きすぎなんで、上着をお忘れなく!!