映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「旅先でビール」 川本三郎

2008年05月31日 | 本(エッセイ)

「旅先でビール」 川本三郎 潮出版社

文学・映画・演劇など多方面にわたる評論家。
60代男性のエッセイ。
これがまた、年輪を感じさせるしっとりと落ちついた風情のあるエッセイです。
旅をして、非日常を味わうのがお好きなようです。
特に列車の旅。

わが北海道にも来ていただいていて、この本にあるのは、
「室蘭」、「遠軽・生田原・留辺蕊・足寄」そして、「函館」。
北海道に住んでいながら、私の知らないことも、ずいぶんと詳しく書いてあります。
室蘭はかつて製鉄で大変賑わいました。
今も続いているとはいえ、街はすっかり寂れた印象です。
日曜なども商店街はシャッターが下りたままの店が多く、
まるでゴーストタウンのようだと某作家が表現して、物議をかもしました。
そんな寂しい街の様子も、旅の風情のうちの一つとし、他の魅力あるたたずまいを紹介。
特に観光地でないところでも、いろいろと見るべきものはあるのだなあ・・・と感心。

著者の職業柄、映画に関係する話も多いのですが、
邦画の名作など・・・、う~ん、ちょっと残念ですが、
ようやくこの5・6年、映画を見始めた私にとっては、守備範囲から外れておりまして、
なかなか実感として納得できるものがなかったのが残念。

さて、川本氏は行く先々、駅前の食堂や居酒屋で飲むビールをこよなく愛しています。
普段の生活の中ではさすがに昼間からビールを飲むことはあまりないけれど、
旅先は、「非日常」であるので、昼間からビールを飲むことに抵抗感がない。
駅前の店は、そもそもそんな旅行者が多いので、
一人で入っても、そっとしておいてくれて居心地がいい。

列車の中や旅先で飲むビールは確かに格別です。
ふらりと、どこかに旅してみたいなあ・・・。
やっぱり、列車がいいですね。

満足度★★★★


「くちぶえサンドイッチ」 松浦弥太郎

2008年05月29日 | 本(エッセイ)

「くちぶえサンドイッチ」 松浦弥太郎 集英社文庫

中目黒の古書店店主にして、「暮らしの手帳」編集長。
40代男性のこの方のエッセイは、はっとさせられます。
散文なのに、詩の奥行きがある。
日常を描いているのに、生活感が無い。
若い頃ニューヨークに住んだこともある、という、そんなせいのはずもないのですが、スタイリッシュで清潔感がある。
・・・そう、なぜか清潔感。

彼自身のことを歌ったと思われる詩がありまして、
その中に、まさにこんな一文がありました。

「この男は、
質素といえど、不潔を嫌い、
いかなる時でも清潔にと思っている。
その手が土や砂でまみれていようと、
心の目で見て清潔であれば、他はどうでもいいとさえ思っている。」

なるほど、これは意識してそうなのでしょうか。
たとえば、女性と会ったその日のうちに、夜を共にするなんて話もいくつか出てきたりするのですが、ぜんぜんいやらしくない。
そのことについてはこんなことが書かれています。

「僕らの生活の中でもっとも日常的な美しさ、その一つが性愛なのです。
たとえば「嘘でもいいからやさしい言葉が聞きたい」。
なんて美しい言葉なのでしょうか。
性愛はそんな目に見えない、ふとしたところにあるのです。
性愛、それは閉ざさずにさわやかで心地よい歓びとして、
僕は大切にしたいと思っています。」

ほら、性愛について書いていながらこんなに爽やか。
なかなかまねできる文章ではありませんね。
すごい感覚です。
いえ、感覚というより生活信条なのか。

自分のあり方を信じている感じがします。
だからって、がむしゃらに突き進むのではなく、ふいと風にいなされて見せる。
自分の帰るところがわかっているからこその自由を感じます。

こんな男性は、ちょっとあこがれるなあ・・・。

満足度★★★★


天国の口、終りの楽園。

2008年05月27日 | 映画(た行)

(DVD)

2人の青年フリオとテノッチ、そして、人妻ルイサが幻の海岸”天国の口”まで旅をする、ロードムービー。
高校を卒業した親友のこの2人、かなり下心ミエミエで、人妻のルイサを旅に誘うのです。
ルイサは、夫が浮気を告白したことにショックを受け、その反動で2人と海岸へ目指すことにする。
あられもないセックスシーンや言動が多いですが、そんなにいやな感じはしません。次第に奔放な関係になっていく彼ら3人。
”天国の口”というのは、フリオとテノッチがとっさにでっち上げた海岸の名前だったのですが、
なぜか、そのものの名前の美しい海岸にたどり着く。
そこはまさに、天国の口であり、楽園であったわけですが、
その先は「現実」が立ちふさがっている。
楽園の時は終焉を告げ、2人は大人になる。

そして最後にわかること・・・。
ルイサの奔放さは、単に夫の浮気が原因ではなく、もっと大きな問題を実はかかえていたためだと・・・。
ああ、だからそんなに・・・。と、しんみりとしてしまうわけです。

フリオとテノッチ、この2人は実にいいです。
すっぽんぽんの姿が何度となく出てきます。
それが見所?とは言いませんが、
ガエル・ガルシア・ベルナルファンなら必見ですね・・・。

このように、一見破天荒な映画ではあるのですが、
それは自由気ままでなにものにもとらわれない、まだ、大人ではない彼ら。
そして、現実の生活をまだ見据えておらず、天国の口にいる彼ら。
・・・そういうものを象徴しているのでしょう。

この三人は、メキシコでも都市部に住む裕福な層という設定です。
その彼らが、田舎の風景の中を旅する。
時には軍隊がいて、
時には麻薬の取締りのための検問があって、
また時には親切な田舎の人々と出会う。
そういえば、ハリウッド映画に出てくるメキシコは、
いつも麻薬の生産地であり、銃の打ち合いの耐えないところ・・・、
なんだかそんな印象です。
でも、この映画で、等身大のメキシコを見たような気がしました。
確かに物騒ではあるけれど、純朴で温かい人たち。
美しい南国の海。
こんなところなら行ってみるのも悪くないかも。

2001年 /メキシコ/106分
監督:アルフォンソ・キュアロン
出演:ガエル・ガルシア・ベルナル、マリベル・ベルドウ、ディエゴ・ルナ


マディソン郡の橋

2008年05月26日 | クリント・イーストウッド

(DVD)

1995年作品ですか。
これは結構当時話題を呼びましたねえ。
10年とちょっと前。
当時の私としては、映画は子供をつれてドラえもんとか、ドラゴン・ボールがいいところ
・・・まあ、ようやくそんな時代が終わったあたり。
久しぶりに、まともな映画を見に行ったという、そんな作品だったのを覚えています。

今なら、メリル・ストリープはすっかりおなじみなんですけれど、
先日この「マディソン郡の橋」のヒロインが彼女だったことに改めて気づき、
見直してみる気になりました。
ごく片田舎の主婦フランチェスカと、旅人である中年カメラマン、ロバートのたった4日間の恋。
同じ主婦としては、このフランチェスカの閉塞感がすごくよく分かるのです。
妻と母親の役割だけを期待され、いつしか自分もそれになりきっていたのだけれど、ふと気づく。
自分自身はどこへ行ったのだろう、一人の女としての自分は・・・。
そんなところへ現れる旅人の彼は、まさに彼女を一人の女としてみる。
これがまた、運命の出会いなのでしょう。
まあ、陳腐な言い方をすれば、赤い糸で結ばれた本当の相手。
もしくは、神に裂かれて生まれてきてしまった、自分の半身。
燃え上がる二人の想い。
メリル・ストリープが日を追うごとに美しくなっていくのがわかります。

「不倫」と呼ぶにはあまりにも崇高であるように思えるのは、
この恋の決着の付けかたなんですね。
フランチェスカはこの4日間を胸に秘め、その思いを糧として、一生を終える。
2人はその後一度も会うことがない。
ただ、ロバートの死後、遺品が彼女の元に届けられるだけで。
彼の方も、同じくこの4日間を心の支えとして生きていたことが伺われます。
雨に打たれながら、じっと彼女を見ていた彼が思い出される・・・。

人の心というのは、なんと強靭なものでしょう。

この映画では、フランチェスカの息子と娘(どちらもすでに中年)が
母の遺品の日記を読み、始めてこのことを知る、という設定になっています。
母は「女」ではない、と信じていた彼らにとって、
これはひどい裏切り行為に思えるのですが、
日記を読んでいくうちに母の心情に心動かされていくのです。
久しぶりに見て、また改めて感動してしまいました。

1995年/アメリカ/135分
監督:クリント・イーストウッド
出演:メリスル・ストリープ、クリント・イーストウッド、アニー・コーリー、ヴィクター・スレザック


つぐない

2008年05月25日 | 映画(た行)

最近の中では、特に見たいと思っていた作品です。
なんといっても、恋愛ものが好きなのは、女性ならわかっていただけると思う・・・。
しかも、これは私が愛してやまない「プライドと偏見」のジョー・ライト監督と、キーラ・ナイトレイ。
ついでに言うと、このたび、やっと、札幌東宝プラザのスタンプラリー6個を完走いたしまして、見事招待券獲得。
いや~、なかなか、普段なら見ないものまで見たというしんどいラリーでした・・・。
でも、会員カードのスタンプもついでにたまったので、本日そちらでも、もう一枚招待券ゲット!。
めでたい。

さて、前置きはこれくらいにしまして、
イアン・マキューアンの「贖罪」を原作とするこのストーリーは、1935年イギリスが舞台。
上流階級タリス家の美しい屋敷、美しい庭。
・・・いよいよ舞台は整った、という感じですね。

姉セシーリアと妹ブライオニー。
そして、使用人の息子ロビー。
この3人は小さい頃からいつも仲良く遊んでいたのでしょう。
身分の差も何も関係なしに。
映画ではそこまでは描かれていないのですが、十分想像がつきます。
けれど、長じるにしたがって、無邪気にあそぶことができなくなってしまった。
身分の差と男女を意識し始めたから。
それで、セシーリアはあえてロビーを避けるようになっていた。
けれども、13歳の妹ブライアニーはまだ、そこまでの意識が無い。
そしてほのかにロビーには憧れを持っている。


ある夏の日、それはよくない出来事が重なりあって起こった最悪の日。
ブライアニーは、
何か言い争う姉とロビー、
ロビーが姉へ宛てたみだらな手紙、
そして、図書室での2人の愛の行為を目撃してしまうのです。
性へのおそれ、無知、嫉妬
・・・このような混乱した意識のために、
ブライアニーは従姉妹の強姦犯人をロビーだと嘘を言ってしまうのです。

無実のまま、刑務所へ入れられ、戦場へ送られることになるロビー。
4年の後、ブライアニーは自分のついた嘘により、
ロビーの人生を狂わせ、姉との仲を引き裂いてしまったことを理解し、
自責の念に駆られている。
この罪をつぐなうすべはあるのだろうか・・・。
13歳という微妙な年齢を考えると、ブライアニーを責めることはできません。
切なくてやるせない・・・。

フランスの戦場のロビー。
彼は所属の部隊からはぐれ、仲間と3人で海岸の本隊を目指してさまようのですが、ようやくたどり着いたその海岸でのシーン。
約5分半の長回しのシーンになっています。
バックに観覧車などがあって、
多分戦争の前は、遊園地も兼ねた平和な海水浴場だったのでしょう。
今は、帰還するための兵士で埋め尽くされている。
喧騒のなかを黙々と歩き抜ける。
戦闘のシーンでもないのに、執拗なほどのその長いシーンの意味は、最後にわかるでしょう。
彼にとっての、これもまた運命の一日だからです。

不幸な男女の物語に加えて、ここでは、戦争がまた、みなの運命を狂わせている。
年齢別のブライオニーを演じた3人が、すごく自然につながっていました。
・・・すべて、同じ髪型、というのはやりすぎのような気もしますが・・・。

また、タイプライターの音が、時には心臓の鼓動のようにリズムを刻む。
蜂の羽音がリアルに響いたり。
ピアノ曲も、美しくも緊張をはらんだメロディ。
音にもかなり神経を使った作品と思います。

2007年/イギリス、フランス/123分
監督:ジョー・ライト
出演:キーラ・ナイトレイ、ジェームズ・マカボイ、シアーシャ・ローナン、ロモーラ・ガライ
「つぐない」公式サイト


「その日暮らし」 森まゆみ 

2008年05月24日 | 本(エッセイ)

「その日暮らし」 森まゆみ 集英社文庫

エッセイ集です。
著者は、まあ、文筆業。
この本は、明日のことを心配するのではなく、
その日に必要なものだけで、今日という日を丁寧に暮らしたい、というコンセプト。
まさに、「暮らし」の本なのです。
3人のお子さんたちのこと、家のこと、アジア旅行のこと、エコロジーのこと・・・。

たとえば、著者がベトナムやインドへ行って感じるのは、人々誰もが、フレンドリー。
隔ての無い、人間関係を築いているということ。
大切なのは、施設などの形式的なバリアフリーでなく、
このような心のバリアフリーなのではないか、といっています。
たしかに、そういう部分はありますね。
日本のエレベーターでは人は、一時死んだように突っ立っている・・・と。

このように、感じ入る部分はあるのですが、この著者、お年は私とほぼ同じくらい。
仕事を持ち、3人の子供がいて、毎日忙しく、生活に追われている。
まさに、生活感たっぷりなのです。
・・・そこのところが、あまりにも自分と近いので、なんだか逆にあまりのめりこむ意欲がわきませんでした。

この本の解説者は、なんと我が敬愛するアーサー・ビナード氏。
しかし、さすがに彼はそんなところもうまい表現をします。

『・・・くだらないことも身の毛のよだつほどいやなことも、
ひとまず、肯定して包み込むのだ。
暮らしのもろもろでいっぱいになり、
飽和状態で七転び八起きを繰り返して頑張る。
そうしているのは、「生活者・森まゆみ」』

うーん、モノもいいよう。
というか、この技術はぜひ身に付けたいとも思う。

でも、実際正直なところは、私の好きな方向とは違うということで、
満足度★★★


ママの遺したラヴソング

2008年05月23日 | 映画(ま行)

(DVD)

高校も中退し、怠惰な生活を送っていたパーシーの元に母の訃報が届きます。
ニューオリンズの生家に戻ってみると、そこに住み着いていた二人の男性。
元文学部教授のボビー・ロングと
彼を慕う作家志望の青年ローソン。
2人ともアル中に近く、家の中の様子も荒れ果てている。
彼ら2人や、その他の多くの人たちが、パーシーの母を慕い、よく集まっていた様子。
しかし、祖母に預けられていたパーシー自身には母の思い出はほとんど無いので
す。
母の遺言とのことで、この3人が同居しなければならなくなります。
この2人には嫌悪感いっぱいのパーシーでしたが、
進学のため勉強の手助けをしてもらったりするうちに次第に打ち解けていく3人。

スカーレット・ヨハンソンが、ちょっと世をすねていて、
でもまだ青く瑞々しい感性を持った女の子の雰囲気をうまく表現しています。

また、ちょっと意外なのが、ジョン・トラボルタ。
イケイケの脂ぎったオジサン、というイメージでしたが、
(もちろん、うんと若い頃はかっこよかった!)
ここでは見事に人生を投げた枯れたオジサマでした。

おんぼろで散らかり放題の家が少しずつ整理され、磨かれ、塗りなおされて再生されていきます。
それと同時に彼らの関係も信頼に基づく良いものへと変わっていくわけです。

そして最後にパーシーが見つけた母の出さずに終わった手紙。
この中で、うれしい発見が。

「ママの遺したラヴソング」
この題名からイメージするところは、もう少し甘いものかと思っていました。
でも、実際はもう少し、現実的でアンニュイかな・・・?
イメージは違ったのですが、別の意味で、良かったと思うところです。

2004年/アメリカ/120分
監督:シェイニー・ゲイベル
出演:スカーレット・ヨハンソン、ジョン・トラボルタ、デボラ・カーラ・アンガー


棺おけリスト

2008年05月22日 | インターバル

先日見た映画、「最高の人生の見つけかた」は、
2人のがん患者である老人が、残された短い人生にやっておきたいことを書き出した、「棺おけリスト」にちなんだストーリーでした。
そこで、私も考えたのです。
もし私が今、余命数ヶ月と宣言されたとしたら、何をしようかなあ・・・と。
しかし、意外と思いつかないのは、普段からやりたいことやってるからかもしれません。
いやいや、本気で考えれば無いわけでもない。
以下が、現時点の私の「棺おけリスト」であります。


 ニューヨークへ行って、娘と自由の女神を見る。
ニューヨークは、今、娘の生活圏。
私はまだ行った事がありません。
月並みではありますが、実際に目の前で自由の女神を見たら、さぞかし感慨無量なのではないかと思います。
世界中で見たいところは数々ありますが、
ここは、娘が住んでいる、というところがやはりポイントですね。

 物置を片付ける。
古い本やら、ガラクタやら、昔の気恥ずかしい日記などが潜んでいる物置。
ここを片付けずには死ねない!
・・・これはちょっとリアルな話ですねえ・・・。

 お世話になった人に手紙を書く
ステキな絵葉書で、一人ひとりに思い出をこめてメッセージ。
・・・忘れ去られないための布石?

 栗本薫さんに会って、こっそり、グイン・サーガの結末を聞く。
そうですよ。
この結末を知らずに死ぬのは、あまりにも心残りではありませんか!。

 夫と南の海へ行って、思う存分たそがれる。
「めがね」の映画では、「たそがれる」ためには本も読んではいけないのだ。
う~ん、それは私には難しすぎる。
私にとって、何にもしない一日とは、本を読む一日という意味であります。
南国の風通しのいい部屋で一日本を読んでいられれば幸せ・・・。
ただしこれは期間限定だからいいのであって、
毎日が永遠にそうだったら、さすがにイヤになりそうだな。
「夫と」というのは結局、あまり話をしなくても気を使わなくて済むから・・・。
一人ではやっぱり寂しいし。

 猫を飼う
今、犬はいるんですけどね。
猫を飼ってみたい。
写真取りまくって、猫ログを作ろう。
三毛猫がいいなあ。
名前はビリ。
犬でも猫でも次に飼うものの名前はビリと決めている。
急がなくてもいい。
ビリッけつでも、味噌っかすでもいいんだよ。
ゆったりスローライフで生きよう・・・という気持ちをこめて。


・・・こんなもんかなあ。
それほど経費はかからなさそうではありませんか。
でも、これを本当に実現してしまったら、本当にぽっくり行きそうなので、
やはり、リストだけにしておきましょう。
5年おきくらいには書き換えも必要そうだ・・・。

 


チャーリーとパパの飛行機

2008年05月20日 | 映画(た行)

(DVD)

少年チャーリーは、クリスマスプレゼントにパパから真っ白い飛行機の模型をもらいました。
本当は自転車が欲しかったのに、ちょっぴりがっかりのチャーリー。
その模型飛行機は、軍のパイロットであるパパの手作りのものだったのですが・・・。
がっかりするチャーリーにパパは誕生日に自転車を買ってくれると約束したのですが、その日が来る前に事故で亡くなってしまうのです。
悲嘆にくれるママ。
チャーリーはまだ「死」というものがよく分からず、受け入れることができません。
そんな時、パパの模型飛行機が自分の意志があるように飛ぶのに気がつきます。
動力も仕掛けも何もないのに空を飛ぶ。


軍では飛行機の飛ぶ秘密を解き明かそうと、飛行機を持っていってしまい、あれこれ調べようとする。
それを取り戻そうと、研究所に忍び込むチャーリーと親友の女の子、メルセデス。
ちょっとした冒険ファンタジーですね。
でも、大掛かりなCGシーンも無く、
(もちろん、模型飛行機が飛ぶシーンはCGですけど)
比較的地味なつくりのファンタジーです。

父親を失った喪失感を埋め合わせるかのように、
父のイメージそのものの飛行機が、少年の気持ちを癒し、再生させていく。
こんなきれいな奥様とかわいい子供を残して、さぞかし心残りでありましょう・・・。
だからといってこれはそのパパの魂が飛行機に乗り移るとか、そういうオカルト的なことでもないのです。
飛行機はパパが天から託した、希望の象徴なのかもしれません。

ここに登場するチャーリーの親友、メルセデスが、なかなかイカシた女の子。
教室にネズミを持ち込んでみんなを大騒ぎに持ち込んだり、
夜中にチャーリーを乗せて自転車をこいでみたり。
こういう「生きる力」のあふれた子は好きです。
物語にアクセントを添えています。

2005年/フランス/100分
監督:セドリック・カーン
出演:イザベル・カレ、ロメオ・ボツァリス、ヴァンサン・ランドン、ニコラ・ブリアンソン


「ブルータワー」 石田衣良

2008年05月19日 | 本(SF・ファンタジー)

「ブルータワー」 石田衣良 徳間文庫

石田衣良のSF作品。
実は、どんな話なのか見当もつかないまま、読み始めたのですけれど・・・。
いきなり、脳腫瘍で余命数ヶ月という主人公、周司登場。
いえ、残された数ヶ月をどう生きるかとか、死ぬ前にやりたいことをやる、
・・・なーんていう話ではありません。ご安心を・・・。

彼は時々発作的に、たえがたい頭痛におそわれる。
あるとき、その頭痛からさめてみると、自分が全く別の場所にいることに気づく。
なんと、そこは彼がいた場所から、200年後の世界。
自分はシューという人物で、そこでは脳腫瘍などではなく、健康体。

しかし、問題は、その世界は「黄魔」と名づけられた、致死率90%のインフルエンザウイルスの蔓延する世界であるということ。
そのウイルスにより、世界の様相は一変している。
それまでの国家は、ほぼ壊滅。
のこされた人々はウィルスの進入を防ぐために作られた巨大なタワーにのみ生息している。
そこは、完璧な階層社会で、富と権力を持ったわずかな人々が最上層階に住み、そこから下るにつれ、貧しい層となっていく。
文字通り、住居の高度が、地位の高度となっている。
下層に行くほど治安は悪く、ウイルスにさらされる危険も大きい。
ただ、タワー内部に住める人はまだ良い方で、
最悪にはそこにも住むこともできず、絶えず感染の危険がある最下層の人々もいる。
この、あまりにもひどい格差に、当然唯々諾々と従う人ばかりではなく、今まさに、下層の反乱軍がタワーの支配者と戦うため、革命が勃発しようというタイミング。

シューは最上層の住人なのですが、何とかことを治め、
またウイルスに対抗することはできないかと命がけで動くことになるのです。
現在と未来を行き来しつつ、彼は次第に、自分がすべきことを見出していく。
ここでは、意識だけが時を行き来します。
現在と未来の彼を取り巻く人々の不思議な符合。
未来において、救世主として歌い継がれる、彼の伝説。
久しぶりにわくわくさせられる、SFの醍醐味がありました。

ブレスレットのライブラリアンすなわちスーパーコンピューターなのですが、
ホログラムで像を浮かび上がらせ、持ち主の質問や要求に答えてくれる。
・・・これ、いいですねえ。こんなの、欲しいです!

満足度★★★★


最高の人生の見つけ方

2008年05月18日 | 映画(さ行)

ジャック・ニコルソンとモーガン・フリーマン。
この大御所2人の出演ということで、楽しみにして見に行きましたが、期待以上のものでした。

実直な自動車整備工カーターと、豪放な実業家エドワード。
病院で同室となった2人は、癌のため同じく余命半年と宣告を受けるのです。
そこで2人は、バケット(棺おけ)リストを作成。
つまり死ぬまでにやっておきたいことをリストとして書き出し、一つずつ実行しようというもの。
この映画の原題が、本当はこの、「バケットリスト」なんですね。

大富豪であるエドワードの資金力にモノを言わせ、片端から実現していく。
しかし、真っ先にやってみたのが、スカイダイビング、というのが恐れ入ります。
憧れのスポーツカーでカーチェイスをしてみたり、
アフリカでライオン狩りをしてみたり・・・、
まさに少年の日からの夢を実現させていくのです。
2人の楽しそうな顔!!


映画の中でこんな問いかけがあります。
自分の死ぬ日を知りたいかどうか。
ほとんどの人が知りたくない、と答えるそうですが、
ナレーションのカーターは、知りたいという。
それは、死ぬ時がわかっていれば、その日までにやりたいことができる、ということなんですね。
けれども、たいていの場合は死ぬ日などわからないもの。
2人には残酷な宣言ではありますが、
とりあえずは余命ということで、図らずも死を迎える時期もおよそ検討がついてしまった。
これはむしろラッキーかも知れない、と思えてしまいます。
死の宣言を受けていながら、妙にあっけらかんと作ってあるこの作品。
でも、だからいいんですよね。
これはいわば、こんな風に死を迎えてみたい、という私たちの夢なのだから。


「世界一の美女とキスをする。」
この希望の実現の仕方は、この映画のうまい落としどころ。
それから、エドワードの秘書トーマスも、ここではキーパーソン。
彼は、憎まれ口を聞きつつも、実は、エドワードが嫌いではないようです。
そんなふとした温かみもいい。
ちょっと落ち込んだような時に、また見てみたい映画です。

2007年/アメリカ/97分
監督:ロブ・ライナー
出演:ジャック・ニコルソン、モーガン・フリーマン、ショーン・ヘイズ、ロブ・モロー

「最高の人生の見つけ方」公式サイト


めがね

2008年05月17日 | 映画(ま行)

(DVD)

ゆるゆるの癒し系。
「かもめ食堂」が好きだった方にはオススメですが、それ以上にドラマがないストーリーなので、退屈と思う方もいるかもしれません。
私はといえば、ちょうどここの所疲れ気味で、この日は映画を見にでかけようと思っていたのですが、なんだかだるくて、家でのんびりしたい気に。
そうしてみたこの作品は、実にその気分にマッチしてました。

ある春の日、タエコはケータイもつながらないという田舎の海辺の町にやってきます。
美しい海とのどかな風景のほかには、なんとも気の抜けたように何もないところ。
あまり人が来ると困るという民宿「ハマダ」のご主人。
日がな海辺でカキ氷を振舞うサクラさん。
しょっちゅう授業に遅刻し、さぼる高校教師。
なぜかタエコを追ってきた青年。

彼らがぼ~っと海を眺めながら、カキ氷を食べたり、ビールを飲んだり。
しかしなぜか皆さん、姿勢正しいのですよね。
「たそがれる」ことを儀式にしているかのように・・・。

私も、この風景にたっぷり「たそがれ」させていただきました。
この明るい南の海辺で飲むビールは確かに格別のものがありましょう。
氷アズキも、おいしそう・・・!
この、みんなで海老にかぶりつくシーンは、思わずのどが鳴ります。
ズルイです!

せかせか、忙しい気分の時にこれを見たら、
「だからどうなんだっ!」といいたくなるかもしれませんので、ご注意を。

2007年/日本/106分
監督:荻上直子
出演:小林聡美、市川実日子、加瀬亮、もたいまさこ


live image 7

2008年05月16日 | コンサート

今晩は、Live image (ライブ・イマージュ)7 に行って来ました。

コンサート記事は久しぶりだなあ・・・。
クラシックコンサートも時々行きますが、何しろその方の知識は全くおざなりなので、まともな記事が書けません。
本日は、理屈抜きで楽しめましたので・・・。

このシリーズコンサートは開始から8回目。
札幌にも毎年来るこのコンサートは、私は多分4回目ではないかな?
このコンサートを知らない方でも、ヒーリングCDとして売れている"image"はご存知でしょう。そこによく収録されているアーティストたちのコンサートです。
本日の札幌公演がツアー最終日ということで、大変な盛り上がりでした。おなじみのラスト曲「情熱大陸」。いつまでも拍手を続けていたかった・・・。

本日の出演者は・・・

松谷卓、小松亮太、宮本笑里、加古隆、羽毛田丈史、元ちとせ、古澤巌、ゴンチチ。

今回初出演だったのは、バイオリンの宮本笑里さんと元ちとせさん。
宮本笑里さんって、あのオーボエ奏者の宮本文昭氏の娘さんですって!
バイオリンの腕もさることながら、すばらしくかわいい!!
天は2物も3物も与えちゃうんですね・・・。
そんなだから、一つも当たらない人が出ちゃうんだよ・・・ブツブツ。
また、こんなところで元ちとせさんを見られると思っていなかったので、すごく得した気分です。
歌もすばらしかったなあ。
あのコブシの転がり具合。また、声も迫力。

私が大好きなのは、これも定番曲の「パリは燃えているか」なんですが、本当に、何度聞いても、あの、重苦しい時代の雰囲気、そのまま感じ取れちゃって、のめりこんでしまいます。このピアノ奏者加古隆さんは、あれ、何でムツゴロウさんがピアノ弾いてるの?と思ってしまう風貌なんですが・・・。

小松亮太さんのバンドネオンも大好きだし、ゴンチチの軽妙な語り口も楽しい。
古澤巌さんはお茶目なオジサマだし、羽毛田丈史さんのプロデュース才能にはいつも舌を巻く。松谷卓さんの今回の曲Stargazerはステキにスリリング。
大型スクリーンに映し出される映像は、音楽のイメージをいやおうなく盛り立てる。
でも、時には目をつぶって自分だけのイメージを大事にしたいと思うこともあります。

札幌では初夏に向けて浮き立つ季節。(今日はちょっと寒かったですが)
この時期恒例のこのコンサートは、ぜひまた来年も行きます!!


今回、このコンサート記念ということで変なものまで売っていたんですよ。
「いまんじゅう」(おまんじゅう) に 「イマァーメ」(ドロップ)。
やるもんですね。
やっぱり「いまんじゅう」は買って来るべきだった・・・と、今ちょっと後悔しております。

 

 


ブロークン・フラワーズ

2008年05月14日 | 映画(は行)

(DVD)

主人公は中年のおじさまドン・ジョンストン。
若い頃はもてもてで、付き合った女性も数知れず。
コンピューター関係の仕事も成功して生活には困らない。
そんな矢先、一緒に住んでいた恋人が彼に愛想をつかして出て行ってしまった。
そこへ届いた一通の手紙。
20年前に別れたけれど、その後、妊娠しているのがわかって一人で出産。
その息子は今は19歳
・・・と、そんなことが書いてある。
けれど差出人の名前が書いていない。
戸惑うドン。
さて、そこにおせっかいな隣人ウィンストン登場。
なんと、ドンには心当たりの女性が5人。
ただし、一人はすでに死去。
ウィンストンの計らいで、ドンは、
彼女たちに逢って真相を確かめる旅に出るのです。

ドンは、なんと言うか、
もう、やりたいことはやりつくしてしまったという感じで、投げやりになっています。
でも、ここで面白いのは、
ウィンストンが、「こうするべき」ということには「イヤだ」というくせに、
気になるものだから、結局その言葉に従って行動してしまう。
ピンクの花束を持って元カノの家を訪ねる。
なにやら終始ポーカーフェイス。
感情が外に出ないこのドンなのですが、
そんなところに、妙におかしみと悲しみを感じてしまいます。
4人の女性は、それぞれの境遇もまちまちながら、
結構今を満足して生活しているよう。
・・・で、結局手紙の主は判明しないのです。
息子の存在自体も、真偽がわからないまま。

けれども、ひょんなことから、彼が自分自信で口に出した言葉、
「過去も未来もどうでもよくて、大切なのは今」・・・ということ。
映画はここで、唐突に終わってしまうのですが、
私の想像では、この後彼は出て行った恋人を呼び戻すのではないかと・・・。

なぜかウィンストンお勧めの「旅のお供」の音楽、エチオピアンジャズの調べは、
アメリカの風景には、なんともミスマッチ。
しかしそれが、不思議な雰囲気を醸していました・・・。

2005年/アメリカ/106分
監督:ジム・ジャームッシュ
出演:ビル・マーレイ、ジェフリー・ライト、シャロン・ストーン、フランセス・コンロイ


ラストラブ

2008年05月13日 | 映画(ら行)

(DVD)

物好き、というべきかも知れませんが、田村正和さん、嫌いじゃないので、つい見てしまいました。
88年TVドラマ「ニューヨーク恋物語」のスタッフが再集結してつくったとのこと。
そうそう。見てましたよ。
井上陽水の「リバーサイドホテル」が強烈に印象的で。
それにしても正和さんは、何を演じても正和さんですよねえ。

ここでは、彼はニューヨークのサックス奏者。
妻の病死により、生きがいをなくし、日本に帰国。
音楽からはきっぱり離れている、という設定。
そこに接近するのが伊東美咲演じる県庁職員の結(ゆい)。
なんと年齢差34歳のカップルのラブ・ストーリー。

うーん、ダンディではありますが、やはり、正和さんはもうお年です・・・。
森迫永依ちゃんが娘役でしたが、はっきり言って、これは孫。
どうなのかなあ、せめて、もう少し若い人が主役でも良かったかも。
しかし、これは他の人ではそもそも成り立たなかった企画なのだろうなあ。
つまり、私のような物好き狙いか・・・?
命を懸けてサックスを吹く、そして、燃え尽きる・・・。
泣くほどの感動はありませんでした・・・。

2007年/日本/110分
監督:藤田明二
出演:田村正和、伊東美咲、細川茂樹、阿部進之介