映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

われらが背きし者

2017年07月06日 | 映画(わ行)
飛んで火に入る夏の虫・・・



* * * * * * * * * *

英国人、大学教授のペリー(ユアン・マクレガー)と妻ゲイル(ナオミ・ハリス)は、
モロッコでの休暇中、
ロシアン・マフィアのディマ(ステラン・スカルスガルド)と知り合います。
ディマは国際的なマネーロンダリングに関係し、
彼のみならず家族の危機にさらされています。
そこで彼は、重要な情報の入ったUSBメモリをペリーに託し
MI6に渡すよう依頼しようと思い、ペリーに近づいたのです。
交換条件として、ディマと家族の安全を保証することとして・・・。
そんなことに巻き込まれるのはゴメンだとペリーは思うのですが、
彼の家族、妻や子どもたちの命がかかっていると言われると、
断ることができません。
ペリーを引き止めていた妻も、ついに同意してしまいます。
MI6のヘクター(ダミアン・ルイス)は、この取引に乗り気で、
ロシアン・マフィアと英国政治家との癒着をなんとか暴こうとするのですが、
上司の許可が降りず、独断でことを進めようとしますが・・・。



まず冒頭、モスクワで、ある一家が全員惨殺されてしまうシーンから始まります。
そしてモロッコ。
一体どういう話しなのかとドギマギしてしまうのですが、
冒頭で殺されたのはディマの知人一家。
それで、ディマは次は自分の番だと悟るのです。
私たちもディマの動きには本当に家族の命がかかっているのだと、
恐れおののき納得させられます。
そのためには必要不可欠なインパクトのあるオープニングというわけでした。



レストランでいきなり親しげに話しかけてくるディマはいかにも怪しげで、
ペリーもかかわらないほうがいいのに・・・と、見ている私たちは思うのですが、
飛んで火に入る夏の虫とでもいいましょうか、
あえて危ない方へ行ってしまうということもときにはあるものですね。



さて本作の題名「背きしもの」は、
つまり組織に背き、情報を売り渡そうとするディマのことと思われますが、
でも、登場人物それぞれのことでもあるようなのです。



ペリーはこの時妻とうまく行かなくなっていたのですが、
どうも彼の浮気がもとであるらしい。
つまり、妻に背いたわけです。

そして、MI6のヘクターもまた、
上司、つまりは組織に背いてことを進めようとしている。



そんな彼らをつなぎとめるものは「信義」です。
正しいと思うことを貫くためには
多少の危険にも躊躇なく足を踏み入れる。
そしてそれができるのは互いを信じるからこそ。
ディマは確かに悪事に手を染めていた人物ではありますが、
彼が家族を思う心はホンモノだろうと、ペリーは信じたのですね。
プロではない一般人のペリーを主役としたことで、
感情移入しやすく、とても面白く拝見しました。



われらが背きし者 [DVD]
ユアン・マクレガー,ステラン・スカルスガルド,ダミアン・ルイス,ナオミ・ハリス
Happinet


「われらが背きし者」
2016年/イギリス/109分
監督:スザンナ・ホワイト
原作:ジョン・ル・カレ
出演:ユアン・マクレガー、ステラン・スカルスガルド、ダミアン・ルイス、ナオミ・ハリス、ジェレミー・ノーサム

サスペンス度★★★★☆
信義度★★★★☆
満足度★★★★☆
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わたしは、ダニエル・ブレイク

2017年03月27日 | 映画(わ行)
心が失われた制度



* * * * * * * * * *

イギリス北東部、ニューカッスル。
ダニエル・ブレイクは大工ですが、心臓病を患い、
医者から仕事を止められています。
そのため、国から給付を受けようとするのですが、
理不尽で複雑な制度でうまく手続きが取れず、窮地に立たされます。

そんなときに彼はシングルマザーのケイティと知り合います。
彼女もまた孤立無援で二人の子どもを育て、生活するのに大変な思いをしているのです。
ダニエルは何かと彼女を気遣い援助するようになりますが・・・。



お役所仕事のあまりにも紋切り型で血の通わない対応に、
見ていても腹が立って仕方がありませんでした。
パソコンの扱い方もわからないダニエルに、
申請はネットからでなければダメなどという。
病気のための給付が受けられないのなら
(そもそも医者から仕事を止められているというのに)、
求職活動をすれば失業給付が受けられるという。
つまり職を探しているというポーズだけでいいのですが、
正直なダニエルは本気で職を探し、
採用したいと言われて断らなければならなくなったりもする・・・。



イギリスだから、というわけではないですよね。
おそらく日本も制度は同じようなもの・・・。
これまで実直に仕事をし、税金を納めてきたのに、この仕打ちは何だ!!
けれどもダニエルにできる精一杯の抵抗は、
人を殴ったりすることではなくて
役所の壁にペンキで大きく抗議文を書くことだけ。
それも、夜中にこっそりではありませんよ。
白昼堂々、衆目の面前で、しっかりと自分の名前を記します。
「わたしは、ダニエル・ブレイク・・・!」



自分は一人の人間だ。
しっかり敬意を払って対応せよ!

ということなんですね。
それを見ていた街の人達が拍手喝采。
ほんの少し溜飲が下がります。


それでもお役所はやはりお役所なので、
彼の主張が通るわけではありません。
収入が途絶え、いよいよ行き詰まってしまう彼ですが・・・。
そんなところへ、ケイティの娘である少女が訪ねてきます。

「あの時、私たちを助けてくれたでしょ。
どうか今度は、私たちに助けさせて・・・」



公平なはずの制度なのですが、
制度としての本来の「心」が失われている。
まずはそういうところがダメなのですが、
でも、人と人がしっかり向き合って心を通わせれば、
実はできることはたくさんあるということでもあります。


それにしても本作のラストがまたショッキングで、
涙がこぼれて仕方ありませんでした。


本作は、先に引退表明をしたケン・ローチ監督が
どうしても伝えたい事があるとして引退を撤回して取り組んだ作品とのこと。
私はこの10年くらいのケン・ローチ作品はほとんど見ていると思うのですが、
本作が一番好きかもしれません。

「わたしは、ダニエル・ブレイク」
2016年/イギリス・フランス・ベルギー/100分
監督:ケン・ローチ
出演:デイブ・ジョーンズ、ヘイリー・スクワイアーズ、ディラン・フィリップ・マキアナン、ブリアナ・シャン、ケイト・ラッター

社会問題度★★★★☆
満足度★★★★★
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わたしはマララ

2016年01月01日 | 映画(わ行)
命をかけても言わねばならないこと



* * * * * * * * * *

新年のトップは、この真っ直ぐ前を向いて力強く歩もうとする
一人の少女の物語がふさわしいと思いました。
2014年、ノーベル平和賞を史上最年少で受賞した17歳の少女、
マララ・ユスフザイのドキュメンタリーです。



パキスタンで、学校を経営する父と、文字の読めない母のもとに
長女として生まれたマララ。
パキスタンはタリバンが支配するようになり、
女性の教育を禁止するなどという暴挙に出るようになります。
そんな時、彼女はタリバン支配下の教育事情や暮らしのことを
ブログに綴り始めるのです。
そして、そのことをイギリスのテレビ番組がドキュメンタリーとして放送。
身元が知れてしまった彼女は、タリバンに命を狙われることになってしまうのです。
彼女がまだ15歳のその日、スクールバスで下校途中、
友人の少女たちをも巻き添えにし、マララはタリバンの銃撃を受け、
頭に大怪我を負ってしまうのです。
それでも、無事一命を取り留めた彼女は、再びの攻撃を避け、
現在は父母と二人の弟と共に、ロンドンに暮らしています。



そもそも女性が教育を受けないことは殆どあたり前という土地で、
彼女がこのような成長を遂げたことは、
ただただ、父親であるジアウディン・ユスフザイ氏のおかげなのです。
彼が学校を経営しているので、マララは小さな時からそこに自由に出入りし、
授業や、生徒たちのディスカッションを見聞きしていたといいます。
だからこそ、自分で考え自分の意見をはっきりと主張する、そんな風に成長しました。
そしてそんな彼女を父親も誇りに思っている。


マララの名の由来にも驚かされます。
それはある伝説で、
戦争の時に「勇気を持って敵に立ち向かえ」と皆を率いた少女の名前。
けれど彼女は、その時銃弾に撃たれて亡くなってしまうのです。
その伝説の少女とマララの運命が重なってしまうところがまた凄いのですが、
始めからその名を我が子に与え、
決して女だからと差別せずに教育したというそのリベラルな精神性に感嘆せずにいられません。



この伝説のシーンやマララの小さいころ、ジアウディン氏の昔のことなどは
アニメによって表されているのですが、これがまたいい効果をあげています。
別人を本人に仕立てた再現ドラマ風でないのがいい。
時には状況を単純化したアニメのほうが、
より私たちの感情を揺さぶります。


そんな彼女ですが、私生活は意外と普通の少女です。
ブラピが好きで、宿題に追われ、物理がちょっぴり苦手。
けれどボーイフレンドの話に明け暮れる級友たちとは、やっぱりちょっと距離がある感じ。
生まれ育ったふるさとの家に帰りたいけれども、今は無理。
そんな切なさを決して自分からは、ひけらかさない。


彼女のことを売名行為だとか、演説の原稿は父親が書いているのだろう・・・
などという人のことも本作では触れていました。
でも、彼女はまさに命をかけてこれを言っているのです。

「一人の子ども、一人の教師、一冊の本、一本のペンが世界を変えるのです。」

同じことが私たちにできるでしょうか? 
例えば級友がいじめにあっていても、我が身可愛さに見て見ぬふりをしていないでしょうか。
立派に教育を受けているはずの私たちがそれをできのは、恥ずかしい限り。

日本にいると、実感が無いのですが
「教育」は本当に必要だと思います。
未だに多くの地域で子供たちがさらわれ兵士に仕立てられていたりする現実を考えると・・・。
世界平和の鍵は「教育」にあります。
そしてこの彼女こそが「教育」の賜物、現の証拠。
まだ10代の彼女が、この先どんな人生を送るのか・・・。
この先も応援していこうと思います。

「わたしはマララ」
2015年/アメリカ/88分
監督:デイビス・グッケンハイム
出演:マララ・ユスフザイ、ジアウディン・ユスフザイ、トール・ペカイ・ユズフザイ
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わたしに会うまでの1600キロ

2015年09月03日 | 映画(わ行)
自分と向き合う3カ月



* * * * * * * * * *

さて、オーストラリアを行く「奇跡の2000マイル」に続いて
今度はアメリカ「わたしに会うまでの1600キロ」。
アメリカ西海岸を南北に縦断する「パシフィック・クレスト・トレイル」という遊歩道を
一人の女性、シェリル・ストレイドが踏破した実話の映画化です。
遊歩道なんていうとなんだか生ぬるく聞こえてしまいますが・・・
男性でも音を上げる険しい山道、酷暑の砂漠などもある
メキシコ国境付近からカナダ国境付近まで続く大変な道のりです。
本作のオフィシャルサイトに、その地図が
日本列島の大きさと比較できるように乗っていますので、ぜひご覧あれ。
日本縦断より長いです。



そもそも、彼女がこの旅を思い立ったのは
母親(ローラ・ダーン)が亡くなり、その虚しさから逃れるために
麻薬とセックスに溺れ、夫と離婚することになってしまった。
そんなどん底の自分から立ち直ろうと思ったのがきっかけです。
映画は、長く険しい道のりを描写する傍ら、
シェリルの脳裏をよぎる過去のフラッシュバックを描写することにより、
彼女がこのような旅に出るまでの出来事をたどることができるようになっています。
シェリルにとって母親は道標であり希望の光だったのでしょう。
暴力をふるう夫と別れシングルマザーとして2人の子どもを育てながら、
いつも明るく前向きだった母。
その母の望む姿こそが自分のあるべき姿だと思っていたシェリルにとって、
母の死は自分の生きる方向を見失うことでもあったのです。



だがしかし、これまで彼女は山歩きの経験も何もなかったのですね。
バックパックに荷物を詰め込みすぎて立ち上がるのもやっと・・・、
歩き始めた直後にすでに後悔。
おまけに靴のサイズが合わずに大変なことに・・・。
テントを張るのも四苦八苦。
うーん、せめてベテランに少しはノウハウを学ぶべきでしたね・・・。
まあ、途中できちんとアドバイスしてくれる方もいて、良かったですが。
でも、いかにもそういう勢いだけで、というところが女性らしいし、
その後呆れるほどの困難に遭いながらも諦めなかったというのが、
やはり女性ならではという気がします。
でも女性の一人旅。
ガラガラヘビよりもむしろ“男”が怖いこともあるのが、辛い。



よろよろといかにも心もとなげな彼女の歩みが、
次第にしっかりしたものに変わっていきます。
大自然の中を一人歩む時、
母と過ごした幸せな時間、そして母の死と、その後の自分の惨めな姿
・・・いろいろなことが頭に浮かんできます。
良いことも悪いことも、全て太陽の光にさらされて、昇華していくような・・・。
そしてまっさらな自分に戻れそうな、そんな気がしてきます。



でも、本作の邦題は、いかにも「自分探し」の旅を強調しすぎていて、
あまり好きではありません。
原題は“WILD”といたってシンプルです。



作中「コンドルは飛んで行く」の曲がずっと見え隠れしていますが、
ラストでやっと実のサイモンとガーファンクルによる曲がかかります。
そういう演出もステキでした!!



そしてまた、エンドロールで実のシェリル・ストレイドさんの写真が紹介されるのですが、
これがまた、目に力のある美しい方。
ロビン・デビッドソンさんと共通の雰囲気が感じられました。


「わたしに会うまでの1600キロ」
2014年/アメリカ/116分
監督:ジャン=マルク・バレ
出演:リース・ウェザースプーン、ローラ・ダーン、トーマス・サドスキー、ミキール・ハースマン、ギャビー・ホフマン

旅の過酷度★★★★☆
達成感★★★★★

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ワン チャンス

2015年01月01日 | 映画(わ行)
諦めない「力」は、周りの人々の支えがあるからこそ生まれる


* * * * * * * * * *

さて、せっかく元旦なので、今日は少し明るい作品をご紹介することにします。

2007年、イギリスの人気オーディション番組「ブリステンズ・ゴット・タレント」で優勝し、
一介の携帯ショップの店員が一躍世界的歌手になったという、
あのポール・ポッツの実話です。



オペラにはちょっと苦手感のある私ですらも知っている、ポール・ポッツ。
オーディション番組で一躍脚光を浴びたことも知っていましたが、
こうして映画作品としてみると、また一段と親しみを感じます。



イギリスの片田舎。
容姿も冴えず内気な性格で、いつも虐められていたポール・ポッツ。
彼は歌うことが大好きで、オペラ歌手になるという密かな夢を抱いています。
しかし家は豊かではなく、音楽留学なども考えられない。
通常そういうことを学ぶためには莫大なお金がかかります。
共産圏なら別かもしれませんが・・・。
しかし彼は、街の小さなイベントでしたが、
オペラを歌い賞金を獲得して、イタリアでオペラを学ぶ機会を得ます。
そこで彼は水を得た魚のように学び、いろいろなことを吸収しますが、
最大のチャンスの時に極度に緊張してしまったために失敗。
そして失意の帰国。





こんな風に何度も挫折を繰り返しながら、
彼は周りの人々に見守られ、励まされて
ついにあの番組に出場することになるわけです。
父母はもちろんですが、ケータイのメールから交際が始まった恋人や、
ケータイショップの店長も・・・。
もっとも、お父さんの心境はやや複雑のようでしたが。
決して諦めないことはもちろん必要ですが、
その力は一人で湧いてくるものではないのですね。
彼を認め、応援してくれる周囲の人々がいればこそ、
また立ち上がる力が湧いてくるのだと、本作は訴えています。



「誰も寝てはならぬ」は、 荒川静香さんのフィギュアスケートに使われた曲で
私達にも馴染みが深いですが、
ポール・ポッツ氏自身の大好きな持ち歌でもあります。
本作中でそのオペラシーンのストーリーが
チョッピリ説明されていたのも嬉しかった。


ポール・ポッツは、ジェームズ・コーデンが演じていますが、
歌はすべてポール・ポッツ本人が吹き替えています。
う~ん、あの伸びやかな美声をまた聞きたくなってしまいましたねえ・・・。

ワン チャンス [DVD]
ジェームズ・コーデン,アレクサンドラ・ローチ,ジュリー・ウォルターズ,コルム・ミーニイ,ジェミマ・ルーパー
ギャガ


「ワン チャンス」
2013年/イギリス/103分
監督:デビッド・フランケル
出演:ジェームズ・コーデン、アレクサンドラ・ローチ、ジュリー・ウォルターズ、コルム・ミーニー、ジェミマ・ルーパー
「夢を追う」度★★★★★
満足度★★★★☆
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ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!

2014年11月23日 | 映画(わ行)
遊び心たっぷり



* * * * * * * * * *

一晩で12軒のパブをめぐる「ゴールデン・マイル」に失敗したことが忘れられないゲイリー。
再挑戦するために当時の仲間4名を集め、故郷ニュートンヘイブンへ向かいます。
そんなことが嬉しいのは、高校生のまま大人になったようなゲイリーだけで、
あとの4人はむ昔のよしみで付き合っただけ・・・。
最初の2・3軒はどうにも意気が上がりません。
一人なんか禁酒をしたと言って水を飲んでる・・・。
イギリスの田舎町のパブ・・・そのちょっぴり鄙びた佇まいがいいですよねー。
そんなところで飲むビール。
確かに美味しそう・・・。
もっとも、本作、店の中はみな現代風に改装されて
どの店もみな同じスターバックス風、
・・・なんて皮肉を効かせていましたが。



さて、始めの内こんなふうで、これは酔っぱらいが仕出かすお馬鹿な騒ぎの物語・・・?
と思い始めた頃に事件が起こります。
なんだか町の人々の様子がおかしい・・・。
見た目は普通の人間なのですが、実は機械じかけの“ブランク”で、
いつの間にか町の人々の大部分が入れ替わっているらしい・・・。
そして自分たちも身の危険を感じ始めます。
はじめの目的通りパブ巡りをしたほうが怪しまれないのではないか・・・
ということで、5人はパブ巡りを続けるのですが・・・・。



いつの間にか宇宙の侵略者と戦う物語になってました。
そんな中でもゲイリーはパブ巡りを諦めない。
いくつになっても、子供みたいに馬鹿なことを馬鹿と知りつつやってしまう。
そこが人間の愚かさでもあり、また愛しい部分でもあるわけですね。
ま、いいんじゃないでしょうか・・・。



ワールズ・エンド/酔っぱらいが世界を救う! [DVD]
サイモン・ペッグ,ニック・フロスト,パディ・コンシダイン,マーティン・フリーマン,エディ・マーサン
NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン


「ワールズ・エンド 酔っぱらいが世界を救う!」
2013年/イギリス/108分
監督:エドガー・ライト
出演:サイモン・ペッグ、ニック・フロスト、パディ・コンシダイン、マーティン・フリーマン、エディ・マーサン、ロザムンド・パイク

酔っ払い度★★★★☆
満足度★★★☆☆
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嗤う分身

2014年11月12日 | 映画(わ行)
しびれるほどにユニーク!!



* * * * * * * * * *

ドストエフスキー原作の不条理スリラー
・・・という触れ込みに惹かれまして、拝見。


気が小さくて人付き合いも不器用、
目立たない男サイモン(ジェシー・アイゼンバーグ)。
向かいのアパートに住む同僚のハナ(ミア・ワシコウスカ)を
密かに望遠鏡で覗き見るのが唯一の楽しみという全くサエない男。

しかしある日、サイモンの職場に彼と瓜二つの男、ジェームズが入社してきます。
彼は明るく、人との会話も流暢で、女あしらいも上手い。
そしていつしか、ジェームズがサイモンの位置に入れ替わって行く・・・。



本作の場の設定がなんとも独特です。
時代も場所も不明。
サイモンの会社は情報処理の会社らしいのですが、
とにかくレトロです。
コンピューターはある。
けれど二時代前くらいの感じ。
オフィスの雰囲気もこれはもう二時代どころではなく100年前くらいの感じ。
デジタルのはずなのですが、
完璧にアナログの雰囲気。
そして、本作すべてが夜なんですね。
日が差し込んでくるシーンがひとつもない。
そう言えば冒頭の電車の中のシーン、
あれは出勤時のことでしたが、地下鉄だったんですね!! 
陰影に隈取られた映像は、カラーではあるものの、ほとんどモノクロに近い。
というところがまたレトロな雰囲気を醸し出しているわけです。
そして、登場人物たちがとにかく無表情。
特にサイモンは・・・。
そんな中で、ただ一人、日向に咲く花のように生きた存在感を見せるのが、
ハナなのであります。
そりゃ憧れるのも無理はない。



さてしかし、突然現れたジェームズとは何者なのか?
おそらくは、普段サイモンが「こうありたい」と願っている自分なのでしょう。
しかし、ここまで瓜二つで、
どうしようもないくらいにダサいスーツまで同じなのに、
そのことを誰もふしぎに思わない。

そして何故か彼らには、この2人の区別がちゃんと付くようなのです!! 
それはもう、片や有能男のオーラを放っており、
片や存在感ゼロの透明人間みたいな男、
ということなのでしょう。
サイモンは入社7年になるというのに、
彼のことをきちんと認識できている人がほとんどいない。
ついには会社のデータから彼のIDが消えてしまえば、
もう誰も彼のことをこの会社の人間だと認めてくれない。
ここのくだりは、個人を人間としてでなくIDで管理してしまう
昨今の風潮への痛切な皮肉にもなっているわけです。


「こうありたい」と願っていたはずの自分に、
「ホンモノ」の自分が抹消されていく・・・。
これはつまり、逆に言うと、
自分は自分のままでいいのだ・・・ということでしょうか。
それとも、自分の中に、別の自分が潜んでいることへの警鐘・・・?
実は誰も他人のことなどちゃんとわかってはいないということ?
まあ、そういう答えは、見た人それぞれの中にある。
そういう作品なのでしょう。
いろいろな思いが巡って・・・だから面白い。
でも、ハナが初めて本当のサイモンの「心」を知るシーンが、
やはりジーンと来ます。



望遠鏡で覗いていた相手が自分に向かて「バイバイ」と手を振り、
その直後飛び降り自殺をする、
ということの繰り返しも効果的でした。


さてそれからまた本作で驚いたのが、突如流れる日本の昭和歌謡。
“SUKIYAKI”つまり、坂本九の「上を向いて歩こう」には
ほとんど泣きそうになりました。
しかし、それだけではなく、
なんとジャッキー吉川とブルーコメッツ「草原の輝き」、「ブルーシャトー」!!
なんと懐かしい!!
しびれるくらいに、ユニークな作品でした!!



「嗤う分身」
2013年/イギリス/93分
監督:リチャード・アイオアデイ
原作:フョードル・ドストエフスキー
出演:ジェシー・アイゼンバーグ、ミア・ワシコウスカ、ウォーレス・ショーン、ノア・テイラー、ヤスミン・ペイジ

レトロ度★★★★☆
不条理度★★★★★
満足度★★★★☆
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わたしは生きていける

2014年09月30日 | 映画(わ行)
自立して“生きていける”



* * * * * * * * * *

出生時に母親を亡くしたアメリカの少女デイジー(シアーシャ・ローナン)。
イギリスの叔母やいとこ達と一夏を過ごすために、単身イギリスへやってきます。
仕事に忙しい父親には愛されていないと感じており、
いつもヘッドホンで音楽を聞き、
けばい化粧で精一杯虚勢を張り、
人を受け入れようとしない・・・。


この冒頭、なんだか「思い出のマーニー」を思い出してしまいました。
このトゲトゲしいデイジーを変えていくのは、マーニーならぬ3人のいとこ達。
特に長兄のエディー(ジョージ・マッケイ)には、
出会ってまもなく恋心が芽生えます。



イギリスの美しい田園風景。
そして、あんなにおもいっきり嫌味でいけ好かない態度のデイジーを嫌いもせず、
遊びの誘いをするこの兄弟たちの純朴さ。
そういうものが彼女の凍りついた心を少しずつ溶かしていきます。



さて、ここまではどこにでもありそうなストーリー。
しかし、なんと突如ロンドンでの核爆発テロをきっかけに、
第3次世界大戦が勃発。
デイジーたちは軍に拘束され、離れ離れとなってしまいます。
「何があっても、きっとここに戻ってくるんだ。」
別れ際のエディーの言葉を胸に、
デイジーは軍の施設を脱出し、危険に満ちたサバイバルの旅に出る・・・。



いったい何がどうなって、どことどこが戦争になったのか。
そういうことは一切語られません。
つまり、政治や国際情勢などにはほとんど関心がない子どもたちにとっては、
戦争はそういうものなのかもしれません。
ある日突然やってくる地震や津波と同じようなもの・・・。
叔母は戦争が始まる前に出張で家を出ており、
この困難に子どもたちだけで立ち向かわなければならなかったのです。
というか、仕事に忙しい叔母は家事も何もかも、
子どもたちの世話もほったらかしで、
初めからいないのも同然でした。
にも関わらず、しっかりいい子たちに育ちましたよねえ・・・。
いや、そもそもこんなに多忙なこの人が、
なぜこんなど田舎に住んでいたのかが最大の謎・・・。
まあ、ネットで情報さえ入れば仕事には十分だった、ということか・・・。



もしかしたら本作は、
現在、オトナなどは少しも頼りにならないのだ。
だから自分で生きていかなければならないのだ
・・・という、少年少女に向けた密かなメッセージなのかも・・・。



それにしても、人ときちんと向きあおうともしなかったデイジーが、
まだ幼い従姉妹をかばいながら、生き抜くための旅をする
・・・この目覚ましい成長ぶりが胸を打ちます。
人を生かすのは愛と希望なのだなあ・・・。
ラストが甘くなり過ぎないところも、気に入っています。
無事エディと再開し、
今度はエディに頼りっきりの生活になる・・・
という流れを避けたかったのかもしれません。
デイジーはもはや誰の助けも必要とせずに、“生きていける”のでした。


エディー役のジョージ・マッケイは、
つい最近「サンシャイン 歌声がひびく街」にも出ていました。
一見してハッとするほどのハンサムではないけれど、なんかいいですよね。
こういう感じ、結構好きなのです。
また、別の作品でもぜひお会いしたい!!


「わたしは生きていける」
2013年/イギリス/101分
監督:ケビン・マクドナルド
原作:メグ・ローゾフ
出演:シアーシャ・ローナン、ジョージ・マッケイ、トム・ホランド、ハーリー・バード、ダニー・マケボイ
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私の男

2014年07月19日 | 映画(わ行)
氷に閉ざされた地で



* * * * * * * * * *

禁断の衝撃作・・・ともいうべき作品です。


「地獄でなぜ悪い」と「ヒミズ」で
二階堂ふみさんには衝撃を受けていたので、
本作もきっとやってくれるに違いないとほぼ確信を持っていました。



北海道出身の熊切和嘉監督らしい前半部分の舞台。
奥尻島の災害で10歳にして孤児となった少女・花が、
遠縁の男・淳吾(浅野忠信)に引き取られます。
この子供時代の花は山田望叶さんが演じているのですが、
イメージとして確かに二階堂ふみさんの子供時代っぽいばかりでなく、
魂が抜けたように表情がないのがスゴイと思いました。
特に、淳吾のあるセリフに反応した時の目が、忘れられないのですが、
あとから思えばなるほど、
少女はその時にすべてを見抜いていたということになるのです・・・。
う~ん、これだからぼんやり見ていられない。



二人は北海道紋別の田舎町で暮らします。
冬には流氷が訪れ、流氷がこすれあってギシギシ音を立てている。
・・・というか流氷は見に行ったことはありますが、
こんなに間近で見たことはないので、こんな音は初めて聴きました。
この臨場感はスゴイ。
成長した花に、二階堂ふみさん、バトンタッチ。
この町で、孤独な二人が、互いの心の隙間を埋めるように
心ばかりか体をも寄せあっていく。
男が幼女を引き取り成長すると男女の関係になっていく
・・・というのはそれだけでも隠微なのですが、
実はそれ以上のインモラルが潜んでいます。
血の雨が滴るシーンは、やはり衝撃的でした。





やがて町の世話役的老人が流氷の上で死体で発見され、
その後この二人は東京に出ます。
しかし、生活は荒び、家の中はほとんどゴミ屋敷。
花は服装だけは身ぎれいにし、普通にOLとして仕事に出ていますが・・・。


「私の男」という題名でもわかる通り、
本作、実は二人の関係を支配しているのは女のほうなのです。
いみじくも幼い花に向かって淳吾はこういっていた。
「今日から俺はおまえのものだ。」
決して「おまえは俺のものだ」ではなく。



女は自分のために流氷の海に飛び込むこともいとわない。
そうした“生きる”ことに貪欲な彼女の怪しい魔力に、
男はなすすべなく絡め取られ魂を抜かれていくしかない・・・。
氷に閉ざされた地で起こる隠微で悲惨な出来事。
インパクト大。
そして怖いですね・・・。


「私の男」
2013年/日本/129分
監督:熊切和嘉
原作:桜庭一樹
出演:浅野忠信、二階堂ふみ、高良健吾、藤竜也、モロ師岡

インパクト★★★★★
満足度★★★☆☆
(作品のデキと好みは別ということで、ご勘弁を・・・)
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笑の大学

2014年06月11日 | 映画(わ行)
チャーチルの握った鮨なんか食えるか

* * * * * * * * * *

三谷幸喜作舞台脚本を自身で脚色、映画作品としたものですが、
監督は務めていません。


舞台は昭和15年。
世情不安定、今しも日米開戦の幕が開けようとする寸前。
警視庁保安課検閲係向坂(役所広司)と
検閲を受ける脚本家たちの面談室が主な舞台。
ある日、劇団“笑の大学”の座付作家・椿(稲垣吾郎)が
次回上演予定の自らの脚本を持ってやってきます。
向坂は“笑い”を一切解さない男で、
椿の台本をビシビシ叩いていきます。
台本がここの検閲を通らないと、上演することができないのです。
しかし椿は向坂の無理難題を引き受け、翌日には直した原稿を持ってくる。
そんなことが1日、2日、3日・・・と続いていくのですが、
通い詰めるうちに不思議な連帯感を抱いていく二人。
お笑いには一切興味がなかった向坂が、密かに椿の劇場に足を運んだりもするのです。


「思想統制」という重い時代を描きつつ、
人情とお笑いでホロリとさせるシャレた一作。
役所広司さんの笑いながら怒るという演技が見もの。
そして稲垣吾郎さんの一途で生真面目な好青年ぶりがなかなかいいんだなあ。
彼の“闘い”ぶりをご覧あれ。


劇中劇といいますか、椿の書いている台本が面白そうなんですよ。
始めはなんと「ジュリオとロミエット」。
そう、「ロミオとジュリエット」のパロディなんですね。
ところが向坂が、「敵国毛唐が主役の劇などまかりならん」というものだから、
金色夜叉の「貫一とお宮」に置き換えることになってしまいます。
この劇も是非通しで見てみたかったですね・・・!

笑の大学 スペシャル・エディション [DVD]
三谷幸喜,三谷幸喜
東宝


「笑の大学」
2004年/日本/121分
監督:星護
原作・脚本:三谷幸喜
出演:役所広司、稲垣吾郎、高橋昌也、小松政夫

反骨度★★★★☆
ユーモア度★★★★☆
満足度★★★☆☆
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180°SOUTH

2013年09月06日 | 映画(わ行)
きわめてメッセージ性の高いドキュメンタリー



* * * * * * * * * *

まず登場するのは、有名なアウトドアブランド
「パタゴニア」、「ザ・ノース・フェイス」の創業者である
イボン・シュイナードとダグ・トンプキンス。
この二人は60年代の終わりに一緒に南米パタゴニアの旅をしています。
ほとんど人跡未踏のその地を、様々な困難に見まわれながら、
彼ら自身の冒険心と体力に任せて旅をした。
この旅こそ、彼らがアウトドアブランドを立ち上げたきっかけとなったわけです。


さて、現代のアメリカ青年ジェフ・ジョンソンが、
この二人の旅の記録を見て、
同じパタゴニアの旅の追体験をしようと思い立ちます。
ジェフはこの壮大な自然の旅で何を思うのか・・・、
すばらしいドキュメンタリー作品です。


ジェフは船でパタゴニアに向かう途中、
アクシデントで一旦イースター島に上陸します。
そこで、ひとつの文明が環境を破壊したために、
文明も滅びなければならなかったという島の歴史を知ります。
このことが本作では非常に重要なメッセージとなっているのでした。


たどりついたパタゴニアは、実際ほとんど手つかずで、
昔イボンとダグが旅したその時のままのように思えます。
けれどもその近辺では
工場の排水が海を汚し、川にはダムが作られようとしている。
自分達の便利さと引き換えに環境を破壊し尽くした結果どうなるのか・・・、
ジェフはイースター島の歴史とひき比べずにはいられません。
ところどころアニメも挟んで、
非常にメッセージ性の高い作品になっていると思います。
そのために、雄大なパタゴニアの風景もたっぷり入っています。


そしてまた、イボン・シュイナードは
この自然を守るため、パタゴニアの土地を買い集めているということを初めて知りました。
アメリカ人が土地を買いあさっているということで、
地元では非難の声もあるのだとか。
確かに、自然を守るというのは都会人の身勝手なのかもしれません。
本当は地元の人々は開発を望んでいるのかも。
でも地元でも開発を苦々しく思う人がいることも確かです。
もしかしたら、このパタゴニアが、
地球上で最後に残された自然の聖域となってしまうかもしれません。
そうならないことを祈りつつ・・・。


本当の「旅」とはこういうことなんだなあと痛感。
でも、ほとんど体力勝負。
ある程度の資金とあり余る時間が必要だ・・・。
う~む、まねできない・・・。
やはり私にできるのは「観光」止まり(T_T)
そして、本作はぜひ劇場の大画面で見るべきでした! 
失敗!!

ワンエイティ・サウス 180°SOUTH [DVD]
イヴォン・シュイナード,ダグ・トンプキンス,ジェフ・ジョンソン,マコヘ,ティミー・オニール
キングレコード


「180°SOUTH」
2009年/アメリカ/87分
監督・脚本・編集:クリス・マロイ
出演:イボン・シュイナード、ダグ・トンプキンス、ジェフ・ジョンソン、
キース・マロイ、ティミー・オニール

大自然度★★★★★
メッセージ性★★★★★
満足度★★★★★
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ワールド・ウォーZ

2013年08月19日 | 映画(わ行)
究極のゾンビ映画



* * * * * * * * * *

突如発生した謎のウィルスが瞬く間に世界中に広がり、
各国の政府や軍隊も壊滅状態。
もと国連捜査官で伝染病調査や紛争国の調査役を勤めた経験のある
ジェリー・レイン(ブラッド・ピット)が国連事務次官に呼び出されます。
このウィルスのワクチン開発のため、情報収集調査隊に同行してほしいというのです。
人をゾンビ化させるこのウィルスの対抗策とは・・・!?



本作はつまり、ゾンビ映画なんですね。
ゾンビ映画といえばかなりB級臭が漂うものですが、
このスケールの大きさ、ゾンビ映画の究極といってもいいかもしれません。
ウィルスのナゾ解明に最も近いとされる科学者が、
初めのほうであっさりと死んでしまうのですよ。
うひゃ~、ど、どうするつもりなんだ???
と焦ってしまいますが、
ここからが、ブラピの腕の見せ所となるわけです。
彼は優秀な国連捜査官であったわけですが、
特別に強靭な体力とか卓越した格闘技術を持っているというわけではありません。
ただ人より感が良くて勇気がある。
なかなか魅力がありますね。



ゾンビといえば何やらノタノタよろよろ歩くイメージですが、
ここに出てくるゾンビたちの動きの素早いこと。
エルサレムの防護壁のシーンは、予告編でも何度も拝見していましたが、
実際スゴイです。
あんなにわらわらと押し寄せてこられたら、ほんとに怖い・・・。
それと旅客機のシーンもすごかったですね。
機体に穴が開いて、そこから吸い出されてしまう人々(いえ、既にゾンビでしたが)。
これで無事にすむわけがありませんが、
実際、迫力に満ちていてスゴイシーンでした。



ストーリーもゾンビもスピーディー。
ゾンビって要するに何なのさ?
などと考える暇も与えないってくらいで、
だからこそ成功しています。
解決策も、結構ユニーク。
そこで一役買うブラピが、ただの体力自慢でないところをのぞかせて、
良かった。



「ワールド・ウォーZ」
2012/アメリカ/116分
監督:マーク・フォースター
原作:マックス・ブルックス
出演:ブラッド・ピット、ミレイユ・イーノス、ダニエラ・ケルテス、フアナ・モコエナ、アビゲイル・ハーグローブ
緊迫度★★★★☆
満足度★★★★☆
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藁の楯

2013年04月29日 | 映画(わ行)
四面楚歌、疑心暗鬼



            * * * * * * * * *

孫娘を殺害された政財界大物・蜷川(山崎努)が、
新聞に、犯人の顔写真に「この男を殺してください」と添えて広告を出した。
その賞金がなんと10億円。
身の危険を感じたその男、清丸(藤原竜也)は、福岡県警に自主。
警視庁警備部SPの銘苅(大沢たかお)、白岩(松嶋菜々子)ら5名が、
東京の警視庁まで清丸の護送の任務に就くことになる。



本作は予告編を見た時から、是非見ようと思いました。
凶悪犯を命をかけて守らなければならいという矛盾。
この設定自体が、面白さを約束しているようなものです。
これを見ずしてど~する!!と、思わせられます。



さて、予想通り、まず一般市民が清丸を狙ってきます。
殺人未遂でも相応の報酬を出すと蜷川が表明するので、
余計にエスカレート。
しかし、銘苅はいいます。
「何の訓練も積んでいない一般市民は怖くない。
恐ろしいのは、訓練を積んでいるプロだ。」
…つまり、犯人と彼ら5名を守るために周りを取り囲んでいる
パトーカーの警官、機動隊・・・、
それこそが最も危険というショッキングな方向に話が進んで行くわけです。



法を守るための警察だとて人の子。
お金のためなら・・・。
もちろん、全部がそうではありません。
でも大勢の中にはそんなことを思うものが一人や二人・・・、
絶対います。
彼ら護送チームは、やむなく護送車による大編隊から離れるのですが、
なぜか彼らの現在地が筒抜けで、ネットで流されているのです。

この5人の中に内通者がいる・・・!



四面楚歌と疑心暗鬼のなか、銘苅はどのように任務を遂行するのか。
任務のためには、彼に襲いかかるものを倒さねばならず、
この殺人犯のために一人、また一人と犠牲者が増えていく。
こんな奴を守る意味があるのか。
いや、いっそのこと、このままこいつを殺してしまえば・・・と、
そういう気にならないほうがおかしいですよね。
しかし、いやしくも法治国家。
あくまでも法に委ねることこそが正義、と
最後まで己に言い聞かせることができるかどうか、
そういうことを問うているのです。


ひたすら寡黙で実直、冷静な銘苅が、最後に見せる激情。
う~ん、見せますね。
大沢たかおさん、さすがです。
松嶋菜々子さんもかっこよかったなあ・・・。
同じ女性としても憧れます。
そして、なんといっても犯人役の藤原竜也さん、
これぞはまり役。
しおらしくしているかと思えば、あどけなく笑ってみせたりもするけど、
それ、笑うところじゃないよ。
やっぱりどこか壊れていて、決して相容れることができない青年。
こういうのがぴったしハマってしまうんですねえ。
怖いですねえ。
というわけで、期待にそぐわず、
とても面白く拝見しました。


「藁の楯」
2013年/日本/124分
監督:三池崇史
原作:木内一裕
出演:大沢たかお、松嶋菜々子、岸谷五朗、伊武雅刀、永山絢斗、藤原竜也、山崎努

自己矛盾度★★★★★
サスペンス度★★★★☆
満足度★★★★☆
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私が、生きる肌

2013年01月24日 | 映画(わ行)
愛なのか。憎しみなのか。



            * * * * * * * * *

ペドロ・アルモドバル監督作品ではありますが、
これまでとはちょっと様子が違います。
アルモドバル監督とくれば、まずは情念・・・というのが私の印象。
しかし今作はもちろん、人の情念なくしては語れませんが、
かなり猟奇的といいますか、恐ろしくもあり、官能的でもあります。



形成外科医であるロベル・レガルは、画期的な人工皮膚の研究をしていますが、
なぜか自宅に監禁した美女で、その人体実験を行なっているのです。
その人工皮膚というのも、遺伝子操作を利用した倫理規定に抵触する禁断の実験。
彼には自動車事故で皮膚が焼けただれた妻がいて、
元々は、今はなきその妻のために始めた研究であったのでしょう。
しかし、いったいこの女性は誰なのか? 
私たちは次第にその戦慄の真実を悟っていきます・・・。



アントニオ・バンデラス演じる医師は、常に冷静なのですが、
次第にマッド・サイエンティストの様相が見えてきます。
彼の胸のうちにあったのは、もともと復讐。
しかし、終盤ではほとんどそれがわからなくなってきますね。
愛なのか、憎しみなのか。

一方、悲劇の女性は、
誰も踏み込めない心のなかの自分を保つことを日々自分に言い聞かせ続けていた。
加害者は自分の立場を当然と思い、自分の罪をじきに忘れてしまうけれども、
虐げられた側は、決してそれを忘れない。
そういう真理はあると思います。

それにしても、ちょっとゴクリと生唾を飲んでしまうようなシーンあり。
強烈でした・・・。



レガル医師宅に飾られた多くの絵画が印象的です。
女性の裸体を描いたのもが多いのですが、
それは写実的なものではなく、近代的にデフォルメされたもの。
(不勉強で、誰の絵とも言えず、すみません・・・)
とても印象的です。
冒頭、監禁された女性のシーンでは、まるでダリの絵のようだと、私は感じましたが・・・。

私が、生きる肌 [DVD]
アントニオ・バンデラス,エレナ・アナヤ,マリサ・パレデス,ジャン・コルネット
松竹


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松竹


「私が、生きる肌」
2011年/スペイン/120分
監督:ペドロ・アルモドバル
原作:ティエリー・ジェンケ
出演:アントニオ・バンデラス、エレナ・アナヤ、マリサ・パレデス、ジャン・コルネット、ロベルト・アラモ

官能度★★★★☆
衝撃度★★★★★
満足度★★★★☆
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ワン・デイ 23年のラブストーリー

2012年06月26日 | 映画(わ行)
心のつながりの強さと美しさ



* * * * * * * * * 

それは、大学卒業の7月15日から始まります。
真面目でしっかりもののエマ(アン・ハサウェイ)と、
自由奔放で恋多きデクスター(ジム・スタージェス)。
二人は、恋人でなく友人として付き合うことにするのです。
それから、二人の毎年の7月15日のことが順に映し出されていきます。


まるで時間の定点観測。
あるいは人生の早送り。
でも、確かにこういうのは今までなかったですね。
時代が移り変わり、年令を重ねていく二人のさまを追うのは、大変に興味深いものがありました。



23年間変わらないのは、エマの思い。
実は彼女はそれ以前からデクスターに憧れていたのです。
けれども、彼女が恋人でなく友人の立場に留まろうとしたのは成功。
もしあそこで「恋人」になってしまったら、
他の多くの女性と同様にあっという間に別れて忘れ去られていたでしょう。
しかし、この選択は、非常に辛い選択でもありました。
彼女はこの思いを断ち切ろうと、他の男性と付き合ったりもするのですが・・・。


一方、デクスターの年齢の重ね方は、なかなかドラマチックです。
彼は若くして、あるTV番組の司会者として脚光を浴びました。
しかし、それはいかにも低俗な番組で、おバカな司会者として見放されるのも早い。
お酒と女に溺れ、身を持ち崩してヤサグレていくデクスター。
こういうストーリーだと、女性が大きく変わっていく事の方がありがちに思うのですが、
今作は、男性のほうが大きく変わりますね。
彼はまあ、それまで人生順風満帆。
なんでも思う通りに進んできたのでしょう。
けれど、大きな挫折を経験してひと周り大きくなります。
そしてそんなさまを、時には苦言を呈しながらも
じっと見守ってくれたエマの真の価値に気づくようになる。
彼がエマを本当に必要に思うのは、エマよりも随分後なのではないかと思います。
そんな気持ちを持ったまま別の女性と結婚してしまったから、
うまくいくわけもないのですよね。


23年間ひたすらに彼を思う気持ちを持ち続けたエマの、
いじらしくはかなげなのに強い有りようが、ひたすら胸をつくのです。
年令を重ねてますます美しくなっていくエマ。
いいですよね。
しかしまた、終盤の思いがけない出来事に胸が塞がれる・・・。
デクスターに同調して、ただただショック。



そして、どん底から立ち上がった時のデクスターは、
なんだか突き抜けたようにこざっぱりしていて、ああ、いいなあ、と思いました。
この長い年月の中では一番いい。
またここで一皮むけて変身してしまうデクスター。
人生って深いです。
余韻たっぷりのラストもよし。
堪能しました。


「ワン・デイ 23年のラブストーリー」
2011年/アメリカ/107分
監督:ロネ・シェルフィグ
原作:デビッド・ニコルズ
出演:アン・ハサウェイ、ジム・スタージェス、パトリシア・クラークソン、ケン・ストット、ロモーラ・ガライ


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