映画と本の『たんぽぽ館』

映画と図書のお気楽な感想・雑感をお届けする『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何を見ましょうか?

ポスター犬3

2012-03-31 19:00:00 | 工房『たんぽぽ』
子供の頃なりたかったのは・・・



子供の頃、大好きなものを詰め込んだ宝箱。
押入れの奥に仕舞い込んだその宝箱を
ひさしぶりに開いたような思いの広がる作品。
「マーガレットと素敵な何か」です。





本当は、トイプードルを作るつもりが
少し間延びして大人っぽい犬になってしまいました。
でもそれはそれで、
子供の頃憧れた、むく犬っぽくもあります。

この犬は後日また挑戦するつもり。

コメント (0) |  トラックバック (0) | 

RED レッド

2012-03-30 19:00:00 | 映画(ら行)
熟年パワー炸裂!!



                      * * * * * * * * * *

今、元気なのは女性と老人。
日本もアメリカも同様のようです。
今作冒頭は、こんな作品だったっけ?と思うくらいにのどかです。
初老の男(ブルース・ウィリス)が、役所の年金担当の女性が気に入って、
年金の小切手がまだ届かないとか何とか、口実を付けては彼女に電話をしている。
やっとデートの約束まで取り付けたのですが・・・。
その夜、彼の家は何者かに取り囲まれ、総攻撃を受ける。
しかし、そのかわし方がタダモノじゃない。
あんた、いったいナニモノ???



答えはすぐ出るのですが、つまり、彼フランクは元CIAの腕利き工作員。
今は引退して年金生活者なのでした。
しかし、彼を襲ったのもCIAとわかってきます。
かつてフランクが、ある極秘事項に近寄りすぎたために、暗殺司令が出たということなのですが・・・・。
フランクはかつて活躍した仲間と共に、CIAに立ち向かっていく・・・。
同じくお年を召した彼の元同僚が振るっています。

老人ホームに住まうモーガン・フリーマン。

湿地帯の隠れ家に住むジョン・マルコビッチ。

華麗な館に優雅に住まうヘレン・ミレン。

特にジョン・マルコビッチはややクレージーかかっていて、なぜかピンクの子豚のぬいぐるみを持ち歩く。
なんだこれは?と思っていると、
その中からとんでもないものが飛び出すといった具合。



REDとはすなわち
“RETIRED EXTREMELY DANGEROUS”(超危険な年金生活者)の意味なのでした。
ぴったりと身についた武器。
危機への対処法。
不屈の魂。
多少体力が衰えたとはいえ、いまどきの若いものが敵うわけありません。
という訳で熟年パワー炸裂の作品、
しかしなかなか映像はスタイリッシュでおしゃれ。
ユーモアも忘れません。
痛快に楽しめる作品でした。



RED/レッド [DVD]
ブルース・ウィリス,モーガン・フリーマン,ジョン・マルコヴィッチ,ヘレン・ミレン,カール・アーバン
ウォルト・ディズニー・ジャパン株式会社


「RED レッド」

2010年/アメリカ/111分
監督:ロベルト・シュベンケ
出演:ブルース・ウィリス、モーガン・フリーマン、ジョン・マルコビッチ、ヘレン・ミレン、メアリー=ルイーズ・パーカー、カール・アーバン
コメント (0) |  トラックバック (1) | 

「小さな男*静かな声」 吉田篤弘

2012-03-29 19:00:00 | 本(その他)
百貨店の迷宮=心の迷宮?

小さな男*静かな声 (中公文庫)
吉田 篤弘
中央公論新社


                    * * * * * * * * * *
 
表紙は、おなじみクラフト・エヴィング商會のシンプルな装丁。
なんだか大事すぎて、しばらく読まずに積んでありました。


百貨店の寝具売り場に勤めながら、百科事典の執筆に勤しむ<小さな男>。
ラジオのパーソナリティで、日曜深夜一時からの生番組に抜擢された34歳<静かな声>こと静香。
この本はこの二人のことが交互に描かれています。
そしてまた、読んでいるうちにふと「あれ?」と思わせられるのは、
はじめ一人称で語られていた文章が、途中から三人称になるのです。
<小さな男>が自ら "私"を主語として描かれていたものが、
次の章からは第三者から見た"彼"が主語になる。
と、いうふうに。
なんだか不思議な感じです。
本人が幽体離脱して、中空から自分を見下ろして語っているような・・・。
ちょっぴり幻惑される雰囲気がありますね。



この二人には特につながりがなく、ひたすら交互に彼らの身の回りのことが描かれるのですが、
じきに二人をつなぐ人物が登場。
いえ、別に二人の間を取り持つとか、そういう意味ではありません。
このミヤトウさんは、<小さな男>と同じ「ロンリー・ハーツ読書倶楽部」に所属していています。
そしてまたこのミヤトウさんは<静かな声>の勤める放送局の売店に勤務していて、
<静かな声>と親しくなっていきます。
そんな経緯は知らぬことながら、<小さな男>は毎日曜深夜の<静かな声>の放送を楽しみにしている。
この三人の共通点はつまり「ロンリー・ハート」なのでしょう。
物静か、内省的。
友人と呼べる人は多分少ないのでしょう。
この3人が少しずつ互いの距離を狭めて、いろいろなことを語り合えるようになっていくのが、
とても心地よく感じられます。
私にとってはこの本全編が<静かな声>の深夜放送のように、
密やかに心地よく心に響いてきます。
この密やかな佇まいこそが、吉田篤弘氏の持ち味なんですよね〜。


ところで、<小さな男>が勤める百貨店の、寝具売り場までの道筋に、
痛く感銘(?)を受けてしまいました。
従業員はお客様用のエレベーターやエスカレーターは使用禁止と見えます。
(開店前や閉店後ならいいじゃないと、思えてしまいますが・・・。)
従業員用の通路があるのですが、この百貨店は、増築を繰り返したためか、その通路が迷路のよう
・・・ではなく、完全に迷路になり果てており、
まずは、入り口から自分の持ち場の6階寝具売り場にたどり着くまでが一仕事・・・。
過去にはこの迷路にはまり込んだまま行方不明となった人もいるとか・・・。
いやはや・・・。
私は、これは<小さな男>が、「やはり」とか「ついに」とか「すべて」とか、
言葉のイメージ=観念の迷路にはまり、
堂々巡りをしている有様を表しているかな・・・などと思いました。
やがて、そんな<小さな男>が、この迷路を自転車で駆け抜ける(夢の中ですが)。
何らかの行動が自分の周りの世界を変えて行く・・・
そんな意味があるのでは・・・などと。


何れにしても、また私の大切な一冊になりました。


「小さな男*静かな声」吉田篤弘 中公文庫
満足度★★★★★
コメント (2) |  トラックバック (1) | 

僕達急行 A列車で行こう

2012-03-28 19:00:00 | 映画(は行)
それぞれのライフ&ワーク



                 * * * * * * * * * *

鉄道オタク、すなわち“鉄ちゃん”の青年二人のストーリー。
昨年12月になくなった森田芳光監督の遺作となりました。
ほのぼのとユーモアに満ちたストーリーの展開に、浸りました。


町工場の一人息子である小玉(瑛太)は、鉄道でも特に“鉄”が好き。
大手企業サラリーマンの小町(松山ケンイチ)は、鉄道でも特に“風景を見ながら音楽を聞く”のが好き。
二人は共通の趣味が縁で知り合い、交友を深めていきます。
だからといって、くどくど鉄道の薀蓄ばかりが披露される物語ではありません。
二人はそれぞれの仕事にも真摯。
でも、仕事が命!というほどでもなく、今風の若者像等身大という気がします。
そして彼らの恋愛観においても、のめり込み過ぎないサラリとした感じ。
もちろん彼女は欲しいし、振られれば落ち込みもするのですが。
小町は付き合っていた彼女に「私と鉄道とどっちが大事?」などと言われてしまうのですが、
そりゃ聞くほうがバカ。
今時の青年は自分のライフスタイルを大事にするのですよ。
すなわち鉄道のほうを・・・。
いえ、それは何もオタク青年に限らず、女子も自分のライフスタイルが大事と思う人が多いと思う。
・・・だからこそ、独身男女が増えているわけで。
実のところ、結婚30ウン年の私は、
そういうのが嘆かわしいとは全然思いません。
羨ましいくらいです。
だからといって、結婚生活がうまくいっていないわけじゃないですよ。
でも、一人ひとりが自立して、好きなことするためにしっかり仕事もして・・・、
そういう世の中も悪くはないなあ、と。
その上で、気が合う人ができたら、結婚してみてもいいじゃないですか。
・・・と、自分で書きながら思うのですが、
確かに私の若かりし頃からすると、世間の「結婚観」自体も変わってきたんですね。



この二人の付き合い方の距離感もいいのです。
同じ“鉄ちゃん”でも、好きな方向は随分違う。
けれどお互いはそれを認め合って尊重しています。
そしてまた、“鉄ちゃん”が縁で人の輪が広がっていく。
小玉の家の工場の経営難、
小町の会社の経営事情、
そういうことが絡まりあいながら進展していくところも小気味良いですね。



私もどこかへ鉄道の旅がしたくなってしまいました。
桜の花が咲くような季節がいいなあ・・・。
小町は雪の北海道がいいなんて言っていましたが。
(私しゃこりごり。)
列車の旅は、ビールを飲んだり、お弁当を食べたりできるし、
本を読んでも快いリズムになぜか集中できる。
車窓の景色もよし。
音楽もよし。
私も大好きです。
でも実際に乗るのはせいぜい年に1〜2回かなあ・・・。



さて、小町が出会ったあずささんは、私は初めから「合わない」と思ったのですけれど、
その恋の行方も、お楽しみに。

「僕達急行 A列車で行こう」
2011年/日本/117分
監督・脚本:森田芳光
出演:松山ケンイチ、瑛太、貫地谷しほり、笹野高史、伊武雅刀、松坂慶子
コメント (2) |  トラックバック (7) | 

アメリ

2012-03-26 19:00:00 | 映画(あ行)
好奇心に輝く、くりくりの瞳!



                   * * * * * * * * * *

くりくりと好奇心に満ちた瞳が抜群に印象的で可愛らしい、オドレイ・トトゥの代表作。
大好きな作品なので、このへんで一度記事にしてみましょう・・・と。


冷淡な父と神経質な母に育てられ、いつも一人きりで空想の中で遊んでいたアメリ。
やがてモンマルトルのカフェで働き始めますが、
うまく人との関わりを持つことができません。
そんな時、駅でなんだか気になる青年を見かけます。
彼女はある日一大決心をするのですね。
いつまでもカラに閉じこもっていてはだめ。
ちゃんと人と関係を持たなければダメだ!!
そうして彼女が人に仕掛ける計画(というよりもイタズラに近い)は、とてもユニーク。
でも人と関わるようでいて、実は自分を晒さず、
密かにそれは実行されます。


例えばカフェの常連客とタバコ売り場の女性を仲良くさせてしまったり、
性格の悪い八百屋の主人の家に忍び込んでささやかなイタズラを仕掛けたり。
家に引きこもっている父親には、彼の大事にしているドワーフの置物を旅に出して、写真を届けたりします。
時には大胆でさえある彼女の行動なのですが、
しかし、自分のことになると、からきし臆病。
一目惚れの青年ニノに近付くチャンスはいくつもありながら、
結局最後の勇気を搾り出すことが出来ずに見逃してしまう。
さて、この風変わりなアメリの恋の行方は???


この青年ニノとアメリは、どことなく同じ雰囲気を漂わせています。
ニノは瞬間写真撮影コーナーで捨てられている失敗写真をコレクションしています。
そしてその前の趣味は、生乾きのコンクリートに付けられた足跡のコレクションだったとか・・・。
それを知った時のアメリの目の輝き。
まさしく、彼女もそういうことが大好きそうですもんね。
本当にお似合いの二人なのです。
彼女がニノに仕掛けるイタズラも実にユニークで素敵だけれど、いかにも遠まわし・・・。
全くやきもきさせられます。
映像は全体に濃い色調ですが、決してけばけばしくない。
このあたりがさすがにフランスのセンスですね。
アメリのワカメちゃんみたいなヘアスタイルのいつもどこか跳ねているのもご愛嬌。


好奇心たっぷりで世の中を見て、行動しよう。
そして人とつながろう。
案外に世の中は面白い・・・と、思えてきます。
やっぱり、素敵な作品でした。

アメリ [Blu-ray]
ジャメル・ドゥブーズ,マチュー・カソヴィッツ,ヨランド・モロー,オドレイ・トトゥ
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント


「アメリ」
2001年/フランス/121分
監督:ジャン=ピエール・ジュネ
出演:オドレイ・トトゥ、マチュー・カソビッツ、ヨランド・モロー、ドミニク・ピノン
コメント (0) |  トラックバック (1) | 

シャーロック・ホームズ シャドウゲーム

2012-03-25 19:00:00 | 映画(さ行)
悪ガキ同士がそのままおじさんに



                * * * * * * * * * *

待ってました、シャーロック・ホームズのシリーズ第2弾。
ホームズ=ロバート・ダウニー・Jrと、
ワトソン=ジュード・ロウのやんちゃな関係が更にヒートアップ。
謎解きのミステリというよりは、むしろアクション大作的性格のほうが強くなって来ました。
ホームズの恐ろしいほどの頭脳の回転は、映像で表現されています。
くどくど言葉での説明なんかありません。
うっかりすると、こちらがついていけなくなってしまいそうなくらいですが、
そのようにほんの一瞬の間に、あらゆることを見てとり、次に来ることを想像する
・・・そういうイメージがすごく納得できます。



さて、物語はヨーロッパ各地で連続爆破事件が起こるというところから。
ホームズは初めから、これはモリアーティ教授が黒幕と見ています。

天才数学者であり作家である教授。
現に彼は世界大戦を勃発させようと、これらのことを画策していたのです。
ラストのホームズVSモリアーティ教授の直接対決のシーンはすごかったですね。
チェスのシーンもすごかったですが、チェスのように、格闘技を互いにシュミレーションしつつ対決が進むなんていうのは・・・。
人並み外れたIQを持つ者同士の、なんだか未来戦を見るような感じでした。
こういう場合はいかに虚を突いた動きが出来るか、
それが勝負ということなんでしょうね。


しかし、モリアーティ教授の行動は、多分に今日的で恐いくらいです。
世界で多発するテロ活動。
世界大戦が勃発して喜ぶのは結局武器商人だ。
今作ではホームズがその目論見を辛くも未然に終わらせるのですが、
結局世界が一次大戦へなだれ込むのは、歴史が証明しているわけですから・・・。



今作ではワトソン医師が結婚をするのですが、
ホームズはそれが面白くなくて、ささやかな嫌がらせというか抵抗を試みます。
いやはや、頭脳では天才ながら、まるで子供のような・・・。
悪ガキ同士がそのままおじさんになってしまったかのような、この二人。
この持ち味が今作の魅力。
もうこのキャスティングは他には考えられませんね。
ジプシー娘シムは、スウェーデン版「ドラゴン・タトゥーの女」のノオミ・ラパス。
ユニークな配役もナイスでした。



「シャーロック・ホームズ シャドウゲーム」
2011年/アメリカ/130分
監督:ガイ・リッチー
出演:ロバート・ダウニー・Jr、ジュード・ロウ、ノオミ・ラパス、ジャレッド・ハリス、レイチェル・マクアダムス
コメント (2) |  トラックバック (2) | 

「龍神の雨」 道尾秀介

2012-03-24 19:00:00 | 本(ミステリ)
反転の妙

龍神の雨 (新潮文庫)
道尾 秀介
新潮社


                 * * * * * * * * * *

「カラスの親指」で道尾秀介さんにクラっと来た私は、
今作も引き続き読んでみましたが、またやられましたね。
騙されまいと思いつつ、著者のミスリードに、ついはまってしまいました。


ここには2組の家族というか、兄弟が登場します。
事故で母を失い、継父と3人で暮らしている添木田蓮と楓。
両親を亡くし、継母と暮らしている溝田辰也と圭介。
どちらも、期せずして血のつながらない人を父と呼び、母と呼ばなければならなくなったという境遇に加えて、
その義父母が疎ましくてたまらない。
特に、蓮は継父に対して殺意すら抱いているのですが・・・。

ついに実行されてしまう殺人。
継母が実母を殺したのではないかという疑惑・・・。
辰也の仄暗い意志はどこまで行くのか・・・。

ううむ、やっぱり陰湿になってきた・・・
このストーリーに救いなんかありえない・・・、
と、本当にそう思ったのですよ。
途中までは。


ところが・・・!!
写真のネガが一瞬にして反転するかのように、事実が逆転していく。
この勢いが素晴らしい。


けれど今作、完全なるハッピーエンドとまでは行かず、
ちょっぴり苦さが残るあたりもさすがで、
それでこそ、「竜神の雨」の題名にふさわしいのです。


この結末について、解説で橋本満輝氏は言っています。
「沖縄のハブの話」
「クレーン車が切断した電話線の話」
「荒川の下流に流れ着いた男性の遺体の話」
唐突なエピソードと思われるこれらは、本では語られない良い未来への布石なのではないかと。
私も指摘されるまでもなく、そんな気がしまして・・・。
死体が発見されたのはむしろ僥倖。
死因がはっきりすればあるいは・・・と思うのですが、どうなんでしょう?
何れにしても、私たちは自分で想像をふくらませるしかないんですけどね。


それにしても圭介君は、お兄ちゃんよりよほど大人でした!

「龍神の雨」 道尾秀介 新潮文庫
満足度★★★★☆
コメント (1) |  トラックバック (0) | 

キャット・ピープル

2012-03-22 19:00:00 | 映画(か行)
心の病か。真実か。

                * * * * * * * * * *

1942年作品。
ホラー映画の古典名作。
先日読んだ「蜘蛛女のキス」の本の中でそのストーリーが語られていたのに興味を持ち、見てみました。


造船会社に務めるオリヴァー。
ある日動物園の黒豹の檻の前で、美しい女性イレーナと知り合います。
やがて二人は心惹かれ合い結婚。
ところが、イレーナはオリヴァーにキスさえも許そうとしない。
イレーナはセルビア出身なのですが、
彼女の出身の村には恐ろしい伝説がありました。
かつて猫族という邪悪な人々が住んでいたその村。
猫族の女は人間と結ばれると豹に変身し、その相手を食い殺すという・・・。
彼女は自分がその猫族の末裔だと信じていたのです。
これは彼女の単なる思い込み、心の病なのか?
はたまた、恐ろしい真実なのか?
精神科医も登場するこの作品、最後の最後までイレーナの正体を明かしません。
豹の“気配”のみ匂わせて姿を映しださない。
そういう所でミステリアスな雰囲気を盛り上げるのに成功しています。


そしてまた、彼女を変身させるのは“情欲”なのか、それとも“嫉妬”なのか、
そんなところも微妙で興味深いですね。
というのも、オリヴァーの同僚であるアリスの存在。
夫とアリスの親しげな様子を見てから、明らかに彼女の様子が変貌するのです。
そうでなければ案外彼女は平凡な妻になれたのかも・・・。
しかし、オリヴァーの心がアリスの方に向いていってしまうのは当然ですよね・・・。
キスさえもできないのなら、なんのために結婚したのだか・・・。
不満に思わないわけがない。
そしてまたアリスはさっそうとしたキャリアウーマンですし・・・。


闇に潜む黒い影。
でもこれは、イレーナに限ったものではないのかも。
殿方、ご用心を。
どんな女性にも、心の奥底に黒豹を飼っているかもしれませんよ・・・。

キャット・ピープル [DVD]
アラン・オームズビー
ユニバーサル・ピクチャーズ・ジャパン


「キャット・ピープル」
1942年/アメリカ/73分
監督:ジャック・ターナー
出演:シモーヌ・シモン、ケント・スミス、トム・コンウェイ
コメント (0) |  トラックバック (0) | 

マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙

2012-03-21 19:00:00 | 映画(ま行)
燃え尽きて、白い灰になる・・・



                * * * * * * * * * *

まだ記憶に新しい、1979年、イギリスで初の女性首相となった
マーガレット・サッチャーの半生を綴ります。


この作品は、とうに引退し老いたマーガレット86歳と、
若き日のマーガレットの政界進出から挫折までを交互に映し出していきます。
マーガレット・サッチャー役のメリル・ストリープは、今作でアカデミー賞主演女優賞を獲得しましたが、それも納得。
バリバリの首相時代もさることながら、頼りなげな一老女の姿があまりにもリアルで、目を奪われます。
実際街角で彼女があの姿で歩いていても、
周りの人はメリル・ストリープだとは気づかないでしょうね。
以前にもどこかで書いたかもしれないのですが、
老けメイクの技術がこんなにも進化していますが、若返りメイクはどうなのでしょう・・・? 
どちらかと言うと、そういうメイクの技術の粋を見てみたい気がしますが・・・。
一瞬でもいいから20歳の頃の、あのみずみずしくハリのあるお肌を味わってみたい・・・。
お面かぶればって?・・・(T_T)




さてと、本筋とは関係ないことをくだくだ書いてしまったのですが、
つまりどうも私としてはこの作品、感動のツボがわからないのです・・・。
サッチャー氏は、女でも政治ができると男性に見せつけたくて政界に乗り出したわけではないですよね。
ただ自分の信念があって、それを貫き通した結果であっただけ。
もちろんこの映画でも“女ながらにすごいことを成し遂げた”みたいな描き方をしているわけではありません。
一時代前ならともかく、今時、「女だから」、「女なのに」・・・という視点はないだろうと。
(ただし、女であるがゆえの余計な苦労はあったようです。)



では、今作の肝は何なのか。
う〜ん、そこのところがよくわからない。
例えば、彼女は結婚するときに夫となるデニスに「食器を洗って一生を終えるつもりはない」とはっきり言います。
デニスはそういうところもよく承知した上で、プロポーズしました。
この旦那様はとてもチャーミングです。
この人がいたから、仕事を続けられたのだ、という部分はとても説得力があります。
ところが86歳のマーガレットは、かなり記憶もあやふやになっており、
数年前にすでに亡くなった夫の幻影に話しかけるのです。



私はこのマーガレットの痴呆に近い状況というのは、
マーガレットの燃え尽きた結果なのではないかと思います。
あれですよ、あれ。
やりたいことを精一杯やり尽くして、燃え尽きて、真っ白い灰になるというやつ・・・。
この作品の若いころのシーンは彼女の残り火。
ここで思い出せる限りを思い出し、燃焼し尽くしている。
彼女の政治生命は、常に彼女を支える夫と共にあったのではないでしょうか。
彼女の思い出=残り火を燃やし尽くすことによって、
ようやく夫の死を受け入れられるようになったのではないかと・・・。

などと私の勝手な解釈を差し挟むくらいしか語るすべがなく、
どうもお粗末さまでした・・・!


ラストシーンでは、彼女はお茶碗を洗っていましたね。
彼女が捨てた生き方を、いま、新たに始めたのだと思われるそのラストは素敵だと思いました。


「マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙」
2011年/イギリス/105分
監督:フィリダ・ロイド
出演:メリル・ストリープ、ハリー・ロイド、ジム・ブロードベント、アンソニー・ヘッド

コメント (2) |  トラックバック (7) | 

「戸村飯店青春100連発」 瀬尾まいこ 

2012-03-20 19:00:00 | 本(その他)
中華料理店の息子二人。それぞれ青春してます。

戸村飯店 青春100連発 (文春文庫)
瀬尾 まいこ
文藝春秋


                        * * * * * * * * * *

坪田譲治文学賞受賞作。
まずは冒頭第一章を読んで「あれ?」と思いました。
これは割と最近読んだことがある!
実業之日本社文庫「Re-born 始まりの一歩」というアンソロジーに収められていた一作でした。
その続きがあるとは知りませんでした。


大阪、下町の庶民的中華料理店"戸村飯店"の長男と次男、ヘイスケとコウスケの物語です。
男二人の兄弟という点では、「間宮兄弟」を連想してしまいますが、
あのように地味な「オタク」ではなくて、もっと青春してる二人です。
仲が良いかといえば決して良くはない。
二人はタイプがぜんぜん違うのです。
兄ヘイスケは二枚目で要領がいい。
人当たりはいいけれど、でも店を手伝ったりはしない。
高校を卒業するやいなや、さっさと東京へ出てしまう。
一方弟コウスケは、単純、一直線。
店は文句も言わずよく手伝い、
なんとなくこの店の後を継ぐことになるんだろうなあ・・・と思っている。
密かに兄はずるいと思いつつ。



表面上はまさにそう。けれど実は、
兄ヘイスケは、この家の中でひとり異質であるような気がして馴染めずにいたのです。
作家になると言って東京の専門学校へ行ったのも、単に家を出るための口実。
学校はひと月いただけですぐに辞めてしまいました。
そしてカフェでアルバイトを始めます。
ここで食べ物屋さんを選んだというあたりで、無意識なりの彼の心中が見える気もしますが・・・。


さて、コウスケの方も高校3年の三者面談で「店のあとを継ぐので進学はしない」と言うと、
なんと父親がいきなり怒り出した。
「誰が店継いでいいといった、勝手に甘えるな!」という具合。


どうしていいかわからなくなってしまったコウスケは、
特に親しく語り合うような間柄ではない兄弟ながら、
上京したきり一度も帰らない兄のもとに、相談に行ったりします。


この二人にはそれぞれに魅力があって、ついついはまり込んでしまいます。
彼らが自分の道を見出していくわけですが、
その意外な成り行きも、なんだか納得できちゃうのです。
人生ってそうだよね。
そうじゃなくちゃつまらない。
語り口はユーモラスですが、しっかりとした芯があって、
なんだか生きる勇気が湧いてきます。
東京ではなく、大阪がホームグラウンド。
そこもポイント高いですね。
コウスケが自分とは全く別のタイプ、北島くんと親しくなっていくのも微笑ましい。
そして私が思ったのは、ここのお父さん、お母さんは幸せだなあ・・・ということ。
いい息子たちではありませんか。
まあ、親父さん自身も、当然のように息子に店を押し付けたりしない、
そういうところが、男気いっぱいで素敵です。
こういう親だからこその息子たちではありますね。
大満足の一冊でした。

「戸村飯店青春100連発」瀬尾まいこ 文春文庫
満足度★★★★★
コメント (0) |  トラックバック (0) |