映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「壁抜け男の謎」有栖川有栖

2011年08月31日 | 本(ミステリ)
新たな魅力

壁抜け男の謎 (角川文庫)
有栖川 有栖
角川書店(角川グループパブリッシング)


           * * * * * * * *

有栖川有栖氏のノンシーズものの短編集です。
つまり、お馴染みの火村准教授や江神部長などは出て来ないのですが、
非常にバラエティに富んでいて、
また新たな有栖川有栖氏の魅力を発見できる本です。

中でも「キンダイチ先生の推理」と「ミタテサツジン」は、
横溝正史と金田一耕助シリーズにオマージュを捧げた作品。
楽しいです!

「ざっくらばん」
・・・うっかり見過ごしそうですが、もちろん「ざっくばらん」が正しい。
けれど、初めからこんなふうに間違えて覚えてしまっていることって、たまにありませんか。
私は、それこそ推理小説につきものの最後の「大団円」を
ずっと「大円団」と覚えてしまっていて、
未だにどっちが正解だったのか混乱します。
今もわざわざ辞書で調べ直しました・・・。
まあ、とにかくこの作品はそうした思い違いで、
ある人の正体がバレてしまうというお話。
・・・やはり言葉は正確に覚えなければ!!


「ジージーとの日々」は、ミステリというよりはSFなのですが、
どこか郷愁を誘う作品。
「別冊ダ・ヴィンチ」に「ロボットをテーマにしたものを」と頼まれて書いたものだそうです。


最後の「恋人」は、『エロティシズム12幻想』という
官能小説のオリジナル・アンソロジーのために書かれた作品で、
確かに有栖川作品としては異色です。
正に官能小説ではありながら、幻想的で美しく儚い・・・。
へえ、さすが作家は、こういうこともできるのか・・・とちょっぴり驚かされます。

いつもトリックばかりを考えていたら、
時にはこういうミステリを離れたものを書いてみたくなるのでしょうね。
また、ミステリを離れても、作品を依頼する編集者のセンスもうかがえます。


巻末の解説は倉知淳さん。
さすがにここも作家の文章で、非常に楽しく読めて納得ができるのです。
とてもお買い得の本!!

「壁抜け男の謎」有栖川有栖 角川文庫
満足度★★★★☆

シャンハイ

2011年08月30日 | 映画(さ行)
魔都上海を堪能



              * * * * * * * *

1941年。太平洋戦争前夜、上海。
多くの映画作品の舞台になっていますね。
英・米・仏・独・伊・・・列強国の租界があり、日本軍が統制している。
そしてまた、もちろん中国のレジスタンスもありまして、
様々な国の利権・愛憎が渦巻く魔都。
これはもうドラマが生まれないはずがありません。

米諜報部員のポール・ソームズ(ジョン・キューザック)が、
友人であり同じく諜報部員のコナーの殺害事件を調査します。
事件をたどると不審な人物が浮かび上がります。

コナーの恋人スミコ(菊地凛子)・・・しかし、コナーの死後行方不明。

中国人実業家 アンソニー・ランティン(チョウ・ユンファ)

その妻 アンナ(コン・リー)・・・彼女はレジタンス組織に関わっているらしい。

日本人将校タナカ(渡辺謙)

ソームズは次第に美しいアンナに心惹かれていくのですが・・・。
物語は日米開戦、日本軍の真珠湾攻撃へ関連して進んでいきます。



魔都上海の雰囲気をたっぷり堪能しました。
そして、このように各国のトップスターの豪華競演・・・、
そういう意味では、グローバルなよい時代になりました。
コン・リーは見る度に思いますが、
欧米の美人女優に全く引けを取らない美しさがありますよね。
東洋の神秘と華やかさを合わせ持つ逸材だと思います。
チョウ・ユンファは貫禄を増しながらもダンディ。
そして、渡辺謙はもう完璧に世界のワタナベですね。
菊地凛子はこの物語のキーパーソンではありながら、
登場シーンはとても少ないのです。
最後まで謎の女。
・・・こういう役はちょっとお徳かも。



ただ、これら豪華俳優陣には納得なのですが、
サスペンス風味がさほど差し迫って感じられなかったこと、
男女間の情熱があまり燃え上がって見受けられなかったこと・・・で、
なにやら淡泊な仕上がりだったように思います。

それにしても、この時代の上海はやはり好きですね。
いつかまた、別のドラマを見たいものです。

「シャンハイ」
2010年/アメリカ・中国/104分
監督:ミカエル・ハフストローム
出演:ジョン・キューザック、コン・リー、チョウ・ユンファ、渡辺謙、菊地凛子

白いリボン

2011年08月29日 | 映画(さ行)
純真で無垢な心を守るように・・・



             * * * * * * * *

第一次世界大戦直前のドイツ、小さな村を舞台としたモノクロ作品です。
平和であるはずの農村。
しかし、そこに不可思議な事故・事件が連続しておこるのです。
村唯一のドクターが、木と木の間に張り巡らされた針金にひっかかり、落馬。
大地主である男爵家の納屋の床が抜けて、小作人の妻が死亡。
牧師の机の上には、小鳥が磔に。
男爵家の納屋の火災、息子の行方不明・・・

でもこれは犯人捜しの作品ではありません。
というか、最後までそれは、謎のままなのです。
けれども、これら男爵や、ドクター、牧師という
村のコミュニティーの権威である彼らの生活を中心に描き出すうちに、
それぞれの抑圧された状況が克明に浮かび上がってきます。
それは高潔でなければならないという思いにしばられた彼ら自身でもあり、
彼らに抑圧された村の人々であり、
また彼らの子供たちでもある。
こうした様子が見えてくるにつれて、
どんな事件があってもおかしくない気がしてくる・・・。
恐ろしい作品です。



白いリボンというのは、牧師が彼の子供に巻き付ける“罰”を意味する白い布です。
“純真で無垢な心を守ることができるように”と、腕にその布を巻く。
しかし、その牧師自身が、とうに純真で無垢な心などなくしたように見受けられる。
男爵しかり、ドクターもまた・・・。
本当は彼ら自身がそのリボンを巻くべきなのでしょう・・・。
いえ、彼らにはすでに、見えないリボンが巻かれていると見なすべきでしょうね。


ではこの作中、子供たちは純真で無垢かというと、そうではないのです。
彼らは彼らで、こうした大人たちの行動を見知っている形跡がある。
時には大人たちの抑圧された心情のはけ口にされている子供たちもまた、
大きな抑圧を背負っており、
無表情で言葉少なの彼らもまた、不気味で謎の存在なのです。


解説によると、この作品、
ファシズムに向かうドイツの状況を正に象徴しているというのですが、
そこのところはよくわかりません。
けれど、こういう構図は現代にもそこらにありそうな気がする。
そういう普遍的な意味があるからこそ、
万人の共感を生み、数々の受賞につながったのでしょう。



白いリボン [DVD]
ミヒャエル・ハネケ
紀伊國屋書店



2009年/ドイツ・オーストリア・フランス・イタリア・ドイツ/144分
監督:ミヒャエル・ハネケ
出演:クリスティアン・フリーデル、エルンスト・ヤコビ、レオニー・ベネシュ、
デトレフ・ブック、アンネ=カトリン・グミッヒ

うさぎドロップ

2011年08月27日 | 映画(あ行)
イクメン奮闘記。けれど、子育ては一人ではできない



            * * * * * * * *

宇仁田ゆみさんコミックの映画化ですね。
実のところ、あまりにホンワカしていそうなこの作品、
さほど期待はしていなかったのですが・・・。
でもかなりのめり込んで楽しく見てしまいました。


27歳独身のダイキチ。
ある日、祖父の葬儀で女の子がひとりぽっちで淋しくたたずんでいるのを見かけます。
なんとその子は、祖父の隠し子。
親族一同でその子をどうするか、揉め始めるのですが、
それを見かねたダイキチは、つい勢いで
自分が引き取る!!と言ってしまいました。
さあ、それから悪戦苦闘のダイキチの子育てが始まります。

りんちゃん。6歳。
お父さんが亡くなったわけですから、一番ショックを受けているのは彼女ですよね。
女の子を守ろうとするダイキチは騎士(ナイト)です。
行きがかり上だろうが何だろうが、
そういう気持ちを持っている男子っていいなあ・・・。
しかし、「幼稚園と保育園はどう違うんだ・・・」
なんてつぶやいているのには一抹の、いえ、大いなる不安が・・・。
一見無関心で冷たい妹が、
素っ気なくもアドバイスをくれるのがナイスです。



ダイキチがりんを連れて満員電車に乗ったり、
街を駆け抜けるシーンが何度も繰り返されます。
これぞ、育児はきれい事じゃない。
毎日毎日がこんな戦争のような日々の繰り返し。
そういうメッセージが伝わってとてもよかった。
私も仕事を持ち、保育園にお世話になった口なので、
こういうことは切実によくわかります。
まあ、だからこそ並以上にこのストーリーには肩入れしたくなるのかもしれません。

ダイキチはサラリーマンですが結構有能で、
周りからも期待されているようなのですね。
でも、今の勤務ではりんを通常の保育園に通わせるのは無理。
そう思い定めると実にあっさり、定時で帰ることができる部署に転換を願い出ます。
うじうじ悩んだり、りんを手放すことを先に考えたりしない、
このきっぱりしたところが、なんてカッコいいんでしょう!! 
しかしそうではありながら、
ダイキチは時折ファッション誌のモデルとダンスをする夢想にかられたりします。
それはカッコいい松ケンを映し出すファンサービス?と思いきや、
当のその人物が、りんの保育園友達の母親(シングルマザー)だったりする心憎さ。
意外なところに伏線がはってあるので、あなどれません。



そしてまた、ダイキチはとにかく一人でがんばろうとしますが、
結局いろいろな人に助けられていきます。
そのシングルマザーであったり、
妹、父母、職場の人たち。
「親になると強くなるのかと思ったら、そうではなくて臆病になる。」
「子育ては一人じゃできない」
今大切なメッセージがこもった、ステキな一作です。
そして芦田愛菜ちゃんの単に可愛いだけではない迫真の表情の数々。
参りました・・・!!

2011年/日本/113分
監督:SABU
原作:宇仁田ゆみ
出演:松山ケンイチ、香里奈、芦田愛菜、桐谷美玲、

「仏果を得ず」 三浦しをん 

2011年08月26日 | 本(その他)
伝統芸能と今様の恋愛模様

仏果を得ず (双葉文庫)
三浦 しをん
双葉社


                * * * * * * * *

文庫化を心待ちにしていた作品ですが、
三浦しをん作品にして思い切り題材が渋いです。
文楽=人形浄瑠璃に情熱を注ぐ青年のストーリー。

そもそも、私は文楽など見たこともない・・・。
それで、物語にはついて行きがたいかもと少々不安でしたが、
その心配はぜんぜんありませんでした。
最近、何かの映画に文楽の1シーンがオーバーラップで使われていたなあ、
と思いだしたのは「最後の忠臣蔵」でした。
そうそうあのときに、人形浄瑠璃って、一度きちんと見てみたいとは思ったのでした。


題材は渋いのですが、現代のストーリーです。
健が文楽の道に入ったきっかけは高校の修学旅行。
伝統芸能といっても全く関心がなかった健は、居眠りしていたんですね。
けれども「突然、だれかに石をぶつけられたように感じて」目をさます。
石のように感じられたのは、義太夫を語る老人の発するエネルギーだったのです。
舞台上のその老人こそ、現在の健の師匠であります。
そのときに彼は、文楽の世界に引き込まれてしまった。


文楽は、語り手と三味線、人形遣い、この三者の息がぴったりと合って作り出されます。
今作は、健がいきなり兎一郎という無愛想で変人とおぼしき三味線と組むようにいわれて、
戸惑ってしまうところから始まります。
古来の伝統芸能ですから、世襲となることが多いこの世界。
健は研修所を経てこの世界に入ったわけですから、
対人関係の気の使いようも並大抵ではありません。
でも、彼のキャラがいいですね。
前向きで元気で、苦労を苦労と感じさせない。
そうして、文楽の様々な演目や、その解釈を、
駆け出しの健の思いを通して、私たちに知らせてくれる手法はありがたいです。
そして、その実演シーンの迫力ある描写、
さすが三浦しをん氏の力量を感じるところでもあります。
こんな風で、渋くて堅いストーリーかと思えばご心配なく。
ちゃんと恋愛話も絡んでおり、楽しく読むことができます。
いきなり子持ちの女性に一目惚れ。
今も結婚しているのかいないのか、
それも聞き出せないままに、気持ちが燃え上がってしまいます。
また、健の住居も非常にユニークです!
伝統芸能に対して、この猥雑さたっぷりの生活感の取り合わせが何ともいえません。

なんにしても、一つのことに正面から粘り強く取り組む。
そういう人の姿は美しく、すがすがしいのです。
駅伝でも。文楽でも。

「仏果を得ず」三浦しをん 双葉文庫
満足度★★★★☆


トロッコ

2011年08月25日 | 映画(た行)
トロッコの行き着く先は・・・



            * * * * * * * *

先日は「おじいさんと草原の小学校」でケニアの歴史をかいま見ましたが、
今度は台湾の歴史を少々。


台湾人の父が亡くなったため、
敦少年は、母と弟と共に父のお骨を持ち、父の実家へやって来ました。
日本語を話す祖父に迎えられ、敦はそこで数日を過ごします。

敦は父が持っていた“トロッコと少年”が写った写真を祖父に見せたのですが、
そこに写った少年は父ではなく、祖父の子供の頃と解りました。



その昔、日本が台湾の山から木を切り出し運ぶために、
そのトロッコの線路を作ったのです。
少年だった祖父は、日本にあこがれ、
そのトロッコが日本につながっているように思えたのです。
また青年時の祖父は日本兵として働いたこともあったのですが・・・。


私は、韓国や台湾、日本の統治下にあった当時の人々には、
ただ嫌な思い出しかないのではないかと思っていました。
けれども、特にその当時子供だったような人には、
日本にあこがれた、そんな思い出もあるのだと知りました。
けれども、その後がいけません。
戦争で負けた日本は、さっさと撤退して知らぬフリ。
日本としてやりかけたことも、苦労をかけたり蹂躙したことも無視したまま・・・。
そうして、なにがしかの心の傷や、複雑な胸の内をもったままの人がいる、
ということです。
知っているつもりで、知らないことがまだまだたくさんありますね・・・。


仕事を持ち忙しく、いつもガミガミと怒鳴りがちな母に、
敦は若干の反感を抱いています。
けれど、父や祖父の生まれ育ったこの地で、
母の弱さや自らのルーツを知り、一回り成長していくのです。
泣きべそをかく弟の手を引き、山道を歩き通す敦は、もう立派なお兄さんでした!



緑の濃い台湾の村。
そこは日本の田舎とほとんど同質ですね。
異国という感じがしない。
全編を通して、
「そこにいないお父さん」が感じられ、ものさみしい気持ちが伝わってきます。
そんな中で子供たちが寂しさを忘れた一瞬。
それが緑の中をトロッコで駆け抜けるシーンです。
その鮮烈な高揚感。
素晴らしいシーンでした。

私には、中国語を勉強し、何かしら台湾と日本の架け橋となるような仕事に付く
敦君の将来が見えるような気がしました。
もうしばらく、おじいさんには長生きして欲しいですね!!

トロッコ [DVD]
尾野真千子
アミューズソフトエンタテインメント



「トロッコ」
2009年/日本/116分
監督・脚本:川口浩史
出演:尾野真千子、原田賢人、大前喬一、ホン・リウ、メイ・ファン

おじいさんと草原の小学校

2011年08月23日 | 映画(あ行)
老いてなお、草原の勇者で戦士



             * * * * * * * *

アフリカ、ケニアの実話を元にしたストーリーです。
イギリスの植民地支配から独立して39年たった2003年。
ケニア政府は無償教育制度を導入しました。
誰でも無料で小学校に入って勉強ができる。
ある田舎の小さな小学校は、さっそく子供が押し寄せて教室は寿司づめ状態。
そこへ一人の老人が、学校に入りたいとやってきます。
84歳のマルゲです。
彼は、政府から来た一通の手紙を持っているのですが、字が読めません。
この手紙はどうしても自分で読みたい。
だから字を教えてもらおうと小学校にやって来たのです。
学校はただでさえ定員オーバー。
無料といっても、それは子供たちのためで、
老人が小学校に入るなんて聞いたことも無い
・・・と、皆反対するところを、
教師ジェーンは老人の熱意に打たれて入学を許可します。



さて、次第にこの老人が何者かが解ってくるのですが、
このことには圧倒されます。
話はケニア独立の歴史に関わります。
イギリス統治下のケニア。
当時は様々な少数部族があったのですね。
イギリスに友好的で協力しようとする部族。
あくまでもイギリスを退け、自分たちの独立を勝ち取ろうとする部族。
そうした部族同士の内紛もありましたが、
イギリスに後押しされた部族が圧倒的に有利だったわけです。
マルゲは、自立を主張する少数の部族。
イギリスには絶対に従わない。最後まで抵抗する。
そのように仲間同士で誓いを立てます。
けれど戦いは敗れ、妻と二人の子を目の前で殺されてしまいました。
マルゲはイギリス側にとらえられ、
不服従の誓いを破るようにと責められて、ひどい拷問を受けます。
そのようにして、何年もの間収監されていた・・・。



一見柔和なこの老人の、うちに秘めた強い意志に心を揺り動かされます。
84歳の小学校入学は話題になり、
マスコミで騒がれたり、また、逆に嫌がらせをうけたりと様々な波紋を呼ぶのですが、
最大のことは、ジェーン先生の左遷でした。
そこでジェーン先生が大好きな子供たちは立ち上がります。
そして、マルゲもまた・・・!
彼は老いたりとはいえ、草原の勇士であり、戦士なのです。


どこの国にも悲しい歴史があるものですね。
けれどやはり、未来を作り出す子供たちの笑顔には救われます。
そしてどの子も等しく学べる環境があることはとても大事と、あらためて思います。



ちなみにこのマルゲ氏、最高齢の小学生としてギネス記録を持つのだとか。
(現在はすでに亡くなっています。)
厳しい現実が支える、感動の一作です。

「おじいさんと草原の小学校」
2010年/イギリス/103分
監督:ジャスティン・チャドウィック
出演:ナオミ・ハリス、オリバー・リトンド、トニー・キゴロギ、アルフレッド・ムニュア、ショキ・モガパ

にゃんこ3

2011年08月22日 | 工房『たんぽぽ』
しまねこ

                * * * * * * * *


いつものごとく、パーツから。


目は、プラスチックのそれ用の部品を使います。
でも、目をつぶっているのもいいんじゃないかな、と思えてきました。
表情も自分なりに作った方が楽しそうです。


上から


うしろから


よこから

この作品は早々に友人にプレゼントしまして、
既に手元にはありません・・・。

一枚のハガキ

2011年08月21日 | 映画(あ行)
死ぬも地獄、生きるも・・・


             * * * * * * * *

この作品の撮影当時、新藤兼人監督は98歳。
もちろん日本最高齢の監督ですが、この作品を機に引退宣言をされました。
この作品は、監督自らの実体験を元にした作品です。
「原爆の子」や「第五福竜丸」など、
骨太作品も多く残している監督の引退作にふさわしい作品。


戦争末期、中年ばかりが100名招集された部隊がありました。
上官がくじをひき、彼らの行き先が決められます。
松山啓太(豊川悦司)は宝塚となりましたが、
友人の森川(六平直政)はフィリピンへと決まりました。
その森川は、妻の友子(大竹しのぶ)から来た手紙を松山に預けます。
もし生きて帰ることができたら、ハガキは読んだと妻に伝えて欲しい、と告げて。

結局この100名のうち、生き残ったのは6名。
つまりはあのくじ引きこそが、生死を分けるくじ引きだったのです。
単にくじ運の良さだけで生き残ってしまった松山。
終戦となり帰ってみれば、
なんと妻と父が手に手を取って奔走し、家はもぬけの殻。
一人むなしい日々を送る松山は、
森川から預かったハガキを思い出し、彼の妻を訪ねます。

ところがこの妻も戦争でさんざんな目に遭っていました。
夫が戦死した後、その弟と再婚し婚家に残るのですが、
その弟もまた招集され戦死。
気落ちした父母も相次いで亡くなり、
水道も電気もない貧しい家にただ一人残され、
それでも必死に生きていたのです。


一体何のための戦争だったのか。
戦争に行くも地獄。
残るも地獄。
どれだけの人の運命がこのために狂ってしまったのか、
考えるだけでも恐ろしいですね。
戦地に行かないにしても、このような戦争体験のある映画監督は、
今となっては大変貴重な存在です。
実体験はやはり強いです。



私はこの作品で、大竹しのぶさんの女優魂を見ました。
迫力に満ちた呪詛のセリフの数々が、胸にしみます。
そしてまた、あの重い水桶をよくぞ運んでいました!! 
意地というか、ど根性ですね。


何にしても、苦難を乗り越え、また私たちは生きていく。
そういう力を与えてくれた気がします。
これは、この度の震災の復興にも通じるものがありますね。
おっと、
どうにもならない自然災害と、人が引き起こした戦争を
同じく論じてはいけませんが・・・。

「一枚のハガキ」
2011年/日本/114分
監督・脚本:新藤兼人
出演:豊川悦司、大竹しのぶ、六平直政、柄本明、倍賞美津子、大杉漣

「信長協奏曲 5」 石井あゆみ 

2011年08月19日 | コミックス
袋のねずみ・・・?

信長協奏曲 5 (ゲッサン少年サンデーコミックス)
石井 あゆみ
小学館


              * * * * * * * *

発売したてほやほやの第5巻!

まずはいきなり、木下藤吉郎の改名のシーンがありますね。
織田軍を四軍団に再編成し、その大将に柴田勝家、丹羽長秀、明智光秀、木下藤吉郎が任命される。
その時、木下藤吉郎がすかざず、「皆さんの名前を一文字ずつもらって羽柴秀吉と名乗りたい」と申し出る。
つまりはおべんちゃらだよね・・・。
今まで秀吉はそんなに嫌いじゃなかったけど、
この本を読んだら、だんだんキライになって来ちゃったな・・・。
それはもう、彼がはじめから今川のスパイとして登場して来ちゃったこの作品の宿命で、しかたありませ~ん。
しかし、サブローは
「秀吉」ってのは有名な人と同じ名前だからいいんじゃない?
てなもんです。
脱力~・・・


さて、それからまた、この作品がタイムスリップものだったことを思い出させる人物登場!
松永久秀という小国の大名。
強面のこの男、いきなり派手な背中の彫り物を見せて登場!!
つまりはヤーさんなんですけど・・・
う~む、この世界、一体ナニモノの意図なのか、
平成の世と戦国時代にタイムポケットがあるんだねえ・・・。
人選も何か意味があるっぽい。
興味は尽きないけれど、まあ、ここは最後まで謎なのではないかな?
ただ、きっとすべての配置には意味があるんだよ。


一方、お市の方の長女茶々は、まだ赤ちゃんだけど、すごく活発!!
今あるイメージとしては、すごく活発なのは三女の方だけどね・・・。
秀吉の妻となるなら、茶々が活発というのは納得できる気もするね。


まあ、それはさておき、この巻ではサブロー信長、ピンチです!!
将軍足利義昭が各地の大名に信長討伐令を発した!!
それを受けて、同盟を結んでいた浅井家が寝返ってしまう。
朝倉・浅井両軍から挟み撃ち、袋のネズミとなる寸前のサブローの打った策は・・・!!

的確・迅速な状況判断と決断力。
リーダーの素質はこれですねー。


今回の表紙、横顔アップのサブロー信長は、さすがにもう高校生ではなく、
そこはかとなく思慮深く、貫禄があるようにさえも見受けられる・・・
できすぎですよー。
いや、もう既に、これが私たちの知っている信長ですから・・・
次巻は2012年初頭発刊ですって・・・。
うわあ、待ち遠しい。

「信長協奏曲 5」石井あゆみ 小学館 ゲッサン少年サンデーコミックス
満足度★★★★★

「信長協奏曲 4」 石井あゆみ

2011年08月18日 | コミックス
サブローとミッチー

信長協奏曲 4 (ゲッサン少年サンデーコミックス)
石井 あゆみ
小学館


             * * * * * * * *

本物の織田信長が「明智光秀」になっていた!
そういう衝撃的なところで、前巻は終わったのでした。
となれば、光秀はまず信長の配下になるわけですが・・・。
姿形だけでなく声もそっくりなんですよね。この二人。
それではまずいだろうということで、光秀は目だけを出した覆面姿で通すことにする。
肺を患っているので、皆さんに移さぬように・・・ということで。
いや~、それにしてもですよ、サブローにまともな知識さえあれば、
明智光秀とくれば心穏やかではないはずなんですが・・・。
だめですよ~、ぜんぜん。
彼は本能寺の変で信長を殺したのは「あいださん」だと思ってるし・・・。
頼みの綱、「現代」から持ってきた日本史の教科書も、この巻の中で灰になってしまった・・・。
いやあ・・・、全くどうなるんでしょうね。この二人。
ここで見る限りは光秀の方はぜんぜん野心なんかなくて、ひたすらサブローに協力的だし、
サブローも頼りにしてるよね。
二人だけの時はミッチーなんて呼んでる。
そもそも、本能寺の変で死ぬのはどっちなのか?という問題もあるよ。
まあ、今から心配しても仕方ないけどね。
この先の展開が楽しみだよねえ。


さて、先にご紹介したお転婆な信長の妹、お市さん。
彼女が浅井長政の元に嫁ぎますね。
娘が三人生まれるけれど、彼女自身は不幸なことになる。
でも、サブローのことだからそんなこと知るわけもない。
彼女は信長上洛に都合がよいので・・・ということで、兄のために嫁ぐ決心をする。
けなげだなあ・・・。
でも嫁いでも相変わらず元気いっぱいみたいですね。よかった・・・。


この巻のストーリーは、信長上洛(京都へ上がること)がメインですね。
それというのは、足利義昭が次の将軍になるよう、朝廷に取りなしをするため。
「将軍」という地位は、こんなふうで、足利家の誰かがなるもので、
実際の権力とはあまり関係がなかった。
だから、義昭が信長の働きに対して感激し、「副将軍」に付けてやるなんていっても、
「ふんっ!」てなもんです。
そうではなく、サブローは「天下布武」、
つまり武をもって天下を治めることを目指していたから!!
カッコいい!!
また、サブローはポルトガルから来た宣教師と会い、
京でキリスト教の布教をすることを許可したりします。
足利義昭は、将軍の自分を差し置いて何故信長がそんな許可を出すのか、と悔しがる。
いつの間にか京の実権は信長が握っているという・・・。
気づくのが遅いよね。
でも、このことがまた問題になっていくみたいですね・・・。
続きは次巻で!

「信長協奏曲 4」 石井あゆみ 小学館ゲッサンコミックス
満足度★★★★★


「信長協奏曲 3」 石井あゆみ

2011年08月17日 | コミックス
別にいーよ。草履はあっためなくて。

信長協奏曲 3 (ゲッサン少年サンデーコミックス)
石井 あゆみ
小学館


           * * * * * * * *

ささ、まず冒頭いきなり桶狭間の戦いに突入するのですが・・・。
非常にあっさりですね。
城の皆は信長が籠城するつもりだと勝手に思い込んで、ろくに準備もしていない。
しかし、信長は突如戦闘態勢に入り、今川義元ピンポイントで奇襲戦法。
あっさり勝利。
事が終わってから駆けつけた柴田勝家に
「よく食べて、よく寝て、戦のために力をたくわえておいてねって、いったじゃん。」
「・・・と、申されましたっけ?」
なーんてやりとりがあり、この脱力感がまた、何とも言えずにいいんだなあ。


そうして、信長の次なる目標は美濃。
美濃は道三、義竜と引き継がれて、今は道三の孫に当たる竜興が治めているのだけれど、
こいつはどうにもならないぼんくらなので、つけいる隙はありそう・・・。
サブローは、直接家臣の竹中半兵衛に信長の使いと称して対面し、
この鉄壁の守りを誇る稲葉山城をちょうだい、なんていうのですが、
もちろん、「はい」なんていうわけがない。
ここはやはりまじめに戦略を練って落とさないと・・・。


一方、例の木下藤吉郎・・・。
彼は今川のスパイだったわけですが、いわば彼の失敗によって、今川勢が敗れたんですよね。
そうなんだ。
だから彼は今度はどこぞの配下としてではなく、
個人的にいつか信長を蹴落としてやろうという野心に燃えるわけなのです。
それで、このたびの稲葉山城の攻略にも、
一晩で砦を作り上げるという功をあげ、徐々にのし上がっていく。


そんな少し前の、有名なエピソードがありましたね。
信長が外へ出ようとして草履をはくと、何だか温かい。
さてはおぬし、この上に腰掛けていたな! と藤吉郎を責めると、
藤吉郎は、殿様のために草履を温めていました・・・と、
胸元を広げ、泥でよごれたところを見せる・・・という。
そのシーンがちゃんとあるんだけどね。
実は藤吉郎はホントに、草履の上に腰掛けちゃってる。
サブローは、草履が温いことに気がついて
「まるでついさっきまで誰かがこの上にいたかのような・・・」
藤吉郎は、すかさず温めていました・・・と、いいわけ。
胸元までは見せなかったんだね。
サブローいわく、
「まあ、気が利くのはいいことだけど、別にいーよ、草履はあっためなくて。
外歩いているからね。
何踏んでるかわかんないから、あんま、ふところとかに入れないほうがいいよ。」
と、素っ気ない。
この人は、もし正直に「スミマセン、つい座ってました」といっても
「温まってちょうどよかったよ。アンガトサン」
くらいのこといったかもね。
よい方にも悪い方にも感動が薄いんだけど、
基本的にはすごくまっとうでいい奴だよね、サブローは。
顔もさっぱりとお醤油顔だけど、性格的にもごく淡泊って感じ。
でも時にきっぱりとした決断力と行動力があるので、そういうところが魅力だなあ・・・。


そうこうするうちに、意外にも頭脳戦で信長は美濃を手中にします。
まあ、この人は歴史には全くうといけれど、バカではないんだよね。
そして、なんと巻末でまた意外な人物の登場!
それは第1巻で、はじめの数ページに出てきただけだった本物の信長!!
彼はこれまでのサブロー信長の活躍を見知っていて、何とか力になりたいと申し出る。
おお! この人はもう最後まで出てこないのかと思ってました。
でも、なかなかいい奴じゃないの。
「ここまでご苦労さん」とか言って、いきなりまた立場を入れ替えようとしない辺りが・・・。
そうなんだけどね・・・しかし、問題が。
なんと、彼は今「明智光秀」と名乗っているんだよ~!
さあ、どうなる!?

「信長協奏曲 3」石井あゆみ 小学館 ゲッサン少年サンデーコミックス
満足度★★★★★

「信長協奏曲 2」 石井あゆみ 

2011年08月16日 | コミックス
驚きの斉藤道三の出自

信長協奏曲 2 (少年サンデーコミックス)
石井 あゆみ
小学館


            * * * * * * *

さて、2巻目です。この本の表紙がすてきだよね。
表紙を横向きに使っているのが目をひきます。
この巻、サブローがこの時代にタイムスリップして以来、
淡々と時が過ぎるので、後は歴史をたどるだけ・・・と油断していたら、
いきなり虚を突かれるんだよね。
「美濃の蝮」と呼ばれ恐れられている斉藤道三と会見するんだけれど・・・。
斉藤道三は、信長の妻、帰蝶のお父さんだよね。
はい、義理のお父さんということになります。
その岳父と会うというのに、サブローは遅刻したあげく、
冠婚葬祭すべてOKという彼の思い込みで、高校の制服を着ていたりする。
その彼を一目見た道三は・・・!!
驚くべき道三の出自の秘密が明かされます・・・。
ネタ晴らししちゃいたいけど、この意外性は、実際に味わって欲しいので秘密です。
う~ん、そうなのか。
驚きでもあり、切なくもあるところだよね・・・。
まあ、とにかく、信長は道三という心強い後ろだてを得て、ますます勢力を強めていくわけだ。


信長の弟、信之との確執もあるね。
元々嫌われちゃってる・・・とサブローは解っていて、
でも一緒に天下を取るためがんばろう、なんていうんだけれど、
とにかく兄が嫌いな信之は、反抗心をあらわにして結局自滅。
一方、妹もいるよね。
そうそう、ここは今特に重要です。
妹お市、サブロー呼ぶところのおいっちゃんは、お転婆でお兄ちゃん大好き。
いつもサブローにひっついているおしゃまな子。
NHK大河ドラマでもお馴染みなので、うれしい!!


ところで、ふとサブローは考えるのです。
天下を取るって、一体どうすりゃいいんだ?
今さら、それはないでしょ・・・とは思うけれど・・・。
この時代、室町幕府は一応続いていて、
京都に足利義輝が将軍としてちゃんといるんだね。
その将軍という地位は、朝廷によって任命されるわけ。
サブローは何も知らずに、また部下たちから「うつけもの」呼ばわりされちゃうんだけれど、
まあ、この場合私もサブローを笑うことはできません・・・。
よくわかっていなかったかも。
でもね、サブローのすごいのは、じゃあ・・・といきなり思い立って、
部下20人ばかりを連れて京都へ「修学旅行」に行ってしまう。
京都まではよその領地も通らなければならないし、
普通は非常にやっかいなはずなんだけどね・・・。
しかも京都ではアポもなしにいきなり将軍に対面して、刀をもらってきたりする。

変に当時の常識とか概念がないことが逆に幸いとなっているわけだ。
お土産の「生八つ橋」は売ってなかったけどね・・・。
しかしまあ、天下を取るための手続きとか道のりのようなモノは、
何となく見えたではありませんか。
そういうことです。


さて、というところで、いよいよ桶狭間の戦いに突入します。
今川義元との戦いなんだけど・・・。今川勢4万・・・。
例の前巻で出てきた木下藤吉郎が、この今川のスパイで、
信長側の様子を探っていたのだけれど・・・。
彼にもサブローの行動は予測不能。
なーんにも考えていないように見えるサブローだけど、
さすが現代っ子、情報の重要性をよく知っている。
彼はやりますよ!
次の第3巻にも驚きがあります!!

「信長協奏曲 2」 石井あゆみ 小学館 ゲッサン少年サンデーコミックス

満足度★★★★★


「信長協奏曲 1」 石井あゆみ 

2011年08月15日 | コミックス
私たちの知らない信長

信長協奏曲 1 (ゲッサン少年サンデーコミックス)
石井 あゆみ
小学館


            * * * * * * * *

この題名は、信長"コンツェルト"とお読みくださいね。
タイムスリップ時代劇といえば、今なら「JIN」を思い浮かべる方が多いと思いますが、
この作品、現代の高校生がいきなり戦国時代へタイムスリップ。
なんとそこで、織田信長として生きることになります。
けれど、ただ史実をなぞるのではなく、時に意外な展開を見せ、油断がなりません。
あまりにも面白かったので、夏休み特集として一気に5日連続、
一巻ずつご紹介しまーす!!(現在月刊少年サンデーに連載中。5巻まで)


さて、まずは第1巻です。
サブローは、運動神経がいいことだけがとりえの、やる気のない高校生。
その日の日本史の授業は、こんな感じ。
「本能寺の変を引き起こした首謀者は明智光秀・・・」などという先生の話も、
何も聞いていないサブロー。
その先生に「本能寺の変を起こしたのは?」問われて
「あ・・・、あいださん?」などという始末。
その放課後、いきなり彼は時を超えます。
気がつけば、時代劇の撮影かと思われる馬上の少年が目の前に。
しかも、なんと彼はサブローとうり二つ。
彼は織田信長と名乗り、
「自分は体が弱く、この乱世では身が持たない。
しばらく安息な地で静養したいので城をぬけだしてきたけれど、身代わりになってくれ。」
と頼み、あっという間に立ち去ってしまいます。
刀を預けられ、残されたサブローは「かっちょいい~~」と本物の刀にただみとれている。
大丈夫か、コイツ、と思ってしまうよね。
そうした波乱の幕開けですが、ここまでわずか10ページほど。
実にスピーディです。


この物語の面白さを支えているのは、このサブローの変なキャラだと思う。
彼は勉強には不熱心で、自らなにかに前向きに燃えるタイプではないよね。
世間のしきたりなどにも無頓着。
いきなりこんな見も知らないところへ紛れ込んでも、おろおろしたり悲嘆に暮れたりしない。ま、いいか・・・と飄々と現実を受け止めている風。
とりあえず「殿」とよばれて、城へ連れて行かれたのは幸いですけれど。
袴も付けない着流しスタイルは、当時でもだらしなく思われちゃう。
急におかしな言動になってしまった信長を
周りの人は「気が触れたか?」と危ぶむのだけど、誰も別人だとは思いもしない。
信長には美濃の斎藤道三の娘、帰蝶という妻がいるのだけれど、
今までかまってもらえず寂しがっていた彼女を「でえと」と称して、
外に散歩に行ったりするのです。
彼はあくまでも「彼」自身。
無理にお殿様ぶったりはしないし、話す言葉も現代の口語。
そういうかまわないところが実にいいよね。


さて、全く歴史オンチの彼も「信長」の名前くらいは知っていた。
自分は信長の身代わりなんだから、天下をとらねばならない・・・!
と、いきなりそう思い定めます。
意外と律儀で、人から頼まれるとイヤと言えないタイプ・・・?
でも、信長が「天下をとる」というのは少し違うような気も・・・。
だけど、天下を取ろうとしていたのは確かだと思うから、これでいいんだよ。
そうだね。まあ、サブローは、多少のあやふやさにも無頓着。
とにかく目標はできた。
言動が多少変だけれども、元気で行動力があり、
偉ぶらず人の心にまっすぐ飛び込んでいく「信長」は、何故か人望を集めていきます。


そんな折、織田家に人質としてやってきたのは、ふっくら顔の上品そうな少年。
松平竹千代君。
サブローは何かと竹千代を誘い、遊び相手になってやったりします。
歴史好きな人ならピンと来ると思うけれど、
この少年こそが、後の徳川家康。
歴史オンチのサブローにとってはただの少年なんです・・・。


そんなこんなで、瞬く間に2年。
信長の父、信秀が病死。
いよいよ18歳信長が家督を継ぐことに。
しかし天下統一どころか、いまだ織田家は尾張国内をも統一できていないのです。
そんな巻末で、また、意外な人物の登場!
木下藤吉郎と名乗る、怪しげな男です。
私たちの思っている秀吉とは何だかイメージが違う。
一癖ありそうなこの男は、信長の味方になるとは思えない不吉な予感・・・。
一抹の不安を匂わせ、第一巻は終わりです。
非常に先が気になりますね。
信長を知る人なら本能寺の変の信長の死もよく知っています。
けれど、作者はあえてそういう知識のまるでない、サブローを主人公に据えました。
このことが物語を非常に面白くしています。
信長を知らないサブローが、どのような信長を生きるのか。
果たして、歴史は私たちの知っている歴史どおりに動くのか。
次巻では、さっそく驚きの展開があります!

「信長協奏曲 1」石井あゆみ 小学館 ゲッサン少年サンデーコミックス

満足度★★★★★

ツリー・オブ・ライフ

2011年08月13日 | 映画(た行)
命と思いを受け継ぎながら・・・



               * * * * * * * *

予想どおり、ちょっと難物の作品でした。
不覚にも、ちょっぴり居眠りもしてしまったのですが・・・
でも、今になって思い起こすといろいろと考えさせられる部分が・・・・。


ストーリーらしきものはあるにはあります。
1950年代半ば、テキサスの田舎町が舞台ですね。
オブライエン夫妻と、子供たち。
その長男ジャックが語り手となっています。
父親(ブラッド・ピット)は、男が成功するためには“力”が必要といい、
また、非常に厳格でもある。
「善人なんかにはなるな。人の食い物にされる」・・・と。
ジャックはそんな父が苦手なのです。
アメリカ作品らしく、父と息子の確執がここにもあります。
少年ジャックにとっては、
この家庭内で絶対的権力を持つ父がすべてで、従うほかはない。

さてそんなシーンの合間に、
大人になり成功した実業家となった“現在”のジャック(ショーン・ペン)の姿が挿入されます。

また、不意に天地創造と思われるシーン、
生命の誕生のシーンなども挿入されますが、
つまりはこれらすべて、壮年ジャックの心の中の風景をそのまま描き出したもの、
といえるのかもしれません。
結局実業家として成功した自分。
子供の頃、反発していた父が望んでいた未来。
なんだかんだと言っても、父の命と思いを引き継いで、ここに自分がいる。
こんなふうにして、繰り返し繰り返し、
私たちは命と思いを親から子へ引き継いで来たのだろう・・・。




さてこの作品、宗教つまりキリスト教が、バックボーンにありますね。
特に、ヨブ記が引用されていました。
実は私、つい先頃「ふしぎなキリスト教」という本を読んだばかり。
いろいろな映画の中で描写されるキリスト教を、
イマイチよくわかっていないと自分でも感じられるので、読んでみたのです。
とても解りやすく書いてあったのですが、
どうにも巧く消化できず、ブログ記事は断念した次第・・・(^^;)
そんな中で、旧約聖書のヨブ記についても触れられていました。

            * * * * * * * *

ヨブは神を信じ、人一倍正しく生きていました。
神、ヤハウェは、彼を試すために、財産を奪い、子供を全員死なせてしまった。
でも、ヨブはまだ神を信じていた。
「神は、与え、神は奪う。
神が与えるものを感謝して受け取るべきなら、苦難も同様に受け入れよう」と。
すると、ヤハウェは今度はヨブの健康を奪う。
ヨブはひどい皮膚病になりホームレスになってしまう。
ヨブの友人たちは、
「お前は何か罪を犯したからこんな目に遭うのだ。隠していないで罪を認めろ」と、
彼を責め、去って行ってしまいます。
ヨブはさすがにたまらなくなり、神に呼びかける。
「神様、あなたは私に試練を与える権利があるのかもしれないけれど、これはあんまりです。
私はこんな目にあうような罪を一つも犯していません」
するととうとう、ヤハウェがヨブに話しかけるのです。
「わたしはさんざん苦労して天地を作ったのに、何を言うか・・・」
みたいなことをくどくど・・・。
でも最後にはヨブを健康に戻し、
また息子や娘を授け、財産も前より増えて、長生きした・・・と。
何だか最後はとってつけたようなハッピーエンドなんですが、
何にしても過酷な話です。
本では、ヨブの踏んだり蹴ったりの運命は、
ユダヤ民族の受難そのものだ・・・という話しになるのですが、
まあ、ここではそれは別の話。

とにかく、私たちが生きていく上ではどんな苦難もアリ。
それは神の試練で、そのような場合にも私たちは神を信じていなくてはならない。
疑ってしまったらそれで終わり。
―――という話なのです。

             * * * * * * * *

さて、そこでジャックの弟の事故死を思い出します。
神の試練で子供を死なせてしまったヨブと、オブライエン氏が重なりますね。
ちょうどその葬儀の時にも、牧師さんがヨブ記の話をしていました。
ジャックが弟の死を思うとき、
ヨブ記を思い出さずにはいられないのだと思います。
あれは神が与えた試練だったのだろうか・・・。
とすれば、父が職を失ったこともまた・・・?
そして、天地を創造し私たち人間を作り出した、神と神の意志についても、
思いを巡らさずにいられません。
だからこそ、この作中に天地創造や生命の誕生のイメージが挿入されている。
決して脈絡がないわけではないのですね。

こんなふうに、何度問うても答えのない問いを、壮年のジャックは繰り返している。
ラストの海岸のシーンは、正しく生きた私たちがたどり着く“約束の地”でしょうか。


だから私たちも、この作品で答えを得られないのは当然だと思えてきました。
ジャックと共に、人生を考えるための作品なんですね。
世の中、何が役に立つか解らない。
このようなことが解るのに、この本が大いに助けになりました。




「不思議なキリスト教」橋爪大三郎×大澤真幸 講談社現代新書
ふしぎなキリスト教 (講談社現代新書)
橋爪 大三郎,大澤 真幸
講談社


ツリー・オブ・ライフ
2011年/アメリカ/138分
監督・脚本:テレンス・マリック
出演:ブラッド・ピット、ショーン・ペン、ジェシカ・チャステイン、ハンター・マクラケン