映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「我が家のヒミツ」奥田英朗

2018年07月31日 | 本(その他)

家族の「常識」なんかない。

 

我が家のヒミツ (集英社文庫)
奥田 英朗
集英社

* * * * * * * * * *


結婚して数年。
自分たちには子どもができないようだと気づいた歯科受付の敦美。
ある日、勤務先に憧れの人が来院し…(「虫歯とピアニスト」)。
ずっと競い合っていた同期のライバル。
53歳で彼との昇進レースに敗れ、人生を見つめ直し…(「正雄の秋」)。
16歳の誕生日を機に、アンナは実の父親に会いに行くが…(「アンナの十二月」)。
など、全6編を収録。
読後に心が晴れわたる家族小説。

* * * * * * * * * *


奥田英朗さんの「家族」の小説、短編集。
同様に家族を題材にした著者の短編集は「家族日和」、「我が家の問題」とありまして・・・
あ、調べてみたら私はちゃんと読んでいましたね。
どちらもお気に入りの本。
そして本巻も、またお気に入りの本となりました。

★「正雄の秋」では、53歳で同期のライバルとの昇進レースにやぶれた正雄の心境を描きます。
もはや出向する他なく、すっかり意欲をなくしてしまった彼を、妻は責めたりしない。
むしろこれまでが忙しすぎたのだから、少しのんびりできていいじゃない・・・と。
彼女の慰め方も押し付けがましくなく、さりげない配慮と愛情が伺われていいのですよねえ・・・。
出世に失敗したっていいじゃないですか。
こんな奥さんをもらえたことこそが人生の勝利ですよね。

★「手紙に乗せて」は、53歳の妻を亡くした夫の様子が、
社会人2年目の息子・亨の視点で描かれます。
父親の落ち込みようがあまりにもひどく、
ろくに食事もろくにノドを通らない様子なのが心配になってしまう亨。
でも実は彼自身も母を亡くし大きな喪失感の中にいます。
そんな時彼は気づく。
周りの人は葬儀の時にはお悔やみを述べ、気遣いをしてくれるけれど、
同じ年くらいの若い人たちは何日か経てばもうすっかり忘れたように普段どおりの態度になる。
けれど、家族を亡くすという同様の体験をしたある程度年配の人ほど
時間が経っても気遣いを見せる。
それは「家族を失う」という体験の有無の差で、
そうした経験がない人にはその辛さを想像できないのだ、ということ・・・。
確かにそうだなあ・・・と、私も今の歳になって思い知るのであります。
それにしても、亡くなってここまで家族を落ち込ませるなんて、
なんてステキな妻であり母であったことでありましょう・・・。
そんなことも偲ばれます。

★「妻と選挙」
作家の妻が突然、市会議員選挙に出馬することになるというお話。
あれ?と思ったのですが、以前作家の妻がランニングに夢中になる話があったのでは?(「我が家の問題」)
もしかして続きの話でしょうか。
この本はすでに手元にないと思うので、確認できません・・・。
が、いづれにしても妻の「生きがい」を作家も認めていくという方向性がなんともウレシイのですよ。
作家自身は次第に本も売れなくなっていて落ち目・・・という状況で
逆に妻を応援しようとするあたりが特に。
これまでの一般的な「小説」なら、絶対に反対することになりそうな気がするのですが。
古い「常識」にとらわれず新たな「家族」のあり方を展開していくところが、
このシリーズの良さなのだと思います。
そしてまた、どうやらこの本は「家族」とともに生きる
自分自身の教科書のようなものに思えてきてしまいましたよ・・・。
どれも幸せな読後感。
オススメです。

「我が家のヒミツ」奥田英朗 集英社文庫

満足度★★★★★


最後のランナー

2018年07月30日 | 映画(さ行)

ある金メダリストのその後

* * * * * * * * * *


1924年パリオリンピック、400メートル走で金メダルを獲得したエリック・リデルの
その後のエピソードを実話をもとにして描いた作品。
この方は、1981年「炎のランナー」の映画でモデルになった方だそうで、
そちらの作品は見ていないので、ぜひ見てみたくなりました。



敬虔なクリスチャンであるエリック・リデルは、
それが故に、オリンピックの100メートル走の決勝が日曜日に行われたため
出場しなかったことでも話題となりました。
そんな彼は、宣教師として生きる道を選択し、
オリンピックの翌年中国の天津へ渡ったのです。
彼は布教活動の傍ら、人道支援を行ったり、中国の子どもたちに勉強を教えたりして、
地元の人々の信頼を得ていきます。

1937年、中国は日本軍の占領下に。
リデルは妻と子どもたちを妻の生地カナダへ帰したのですが、
彼は残り、他の欧米民間人らと共に収容所へ入れられてしまいます。
リデルが金メダリストであることが収容所指揮官の耳に入り、リデルにレースを申し入れ、
体力をつけるようにと多くの食料が与えられたのですが、
リデルはすべて他の収容所の人々に分け与えてしまいます・・・。
ただでさえ劣悪な環境下、リデルは指揮官に余計な不興を買ってしまい、
体を壊すことになってしまいますが・・・。

このような環境下でこそ人間性が現れてくるものですよね。
走ることで鍛えた体力と、神に支えられる不屈の情熱と信念が、
常の人にはできないことをもやってみせたように思います。
けれど人の力には限界もあるということか・・・。



日本軍による収容所で、サディスティックな指揮官に苦しめられる欧米兵・・・
というストーリーは多いですね。
日本人としては見るのが辛いけれど・・・戦争とはこうしたものです。
立場を違えて同様なこともあったに違いありません。
でも本作中には、収容されている者たちに同情を寄せて
善意を見せる日本兵たちも登場するのがウレシイところです。

かつてオリンピックで栄光を手にしながらも、その後の運命は必ずしも明るいわけではない。
一人ひとりのドラマがそこにあるのでしょう。
ずしりと胸に響くドラマが・・・。


<ディノスシネマズにて>
「最後のランナー」
2016年/中国・香港・アメリカ/96分
監督:スティーブン・シン
出演:ジョセフ・ファインズ、ショーン・ドウ、エリザベス・アレンズ、小林成男
歴史発掘度★★★★★
満足度★★★★☆


ひるね姫 知らないワタシの物語

2018年07月29日 | 映画(は行)

夢と現実のリンク

* * * * * * * * * *

東京オリンピックが間近に迫った夏。
岡山の片田舎に、車の改造ばかりしている父と暮らす女子高生ココネがいました。
最近常に眠くて、居眠りしては夢を見ます。
しかし次第にその夢のファンタジー世界と現実が重なり合っていくのです・・・。
そんな時、父が突然逮捕され、東京へ連行されてしまいます。
ココネは父を追い、幼馴染の大学生モリオと東京へ向かいますが・・・。

ココネはこの不思議な夢とリンクした旅を通して、
いままで知らなかった父と亡き母の物語を知ることになります。
それまで夢の中に出てくるエンシェンという少女を自分だと思っていたのですが、
それは本当はそうではなかったのですね。
そして父は母のことを少しも話してくれないと思っていたのですが、
それも、そうではなかったのでした。

作中、機械に魔法をかけると、機械が一人で動き出す・・・という描写がありまして、
これこそは昨今の「自動化」なのです。
運転しなくても、車が勝手に目的地までたどり着く。
なるほど、これこそが現代の魔法。
魔法の呪文はパッドに書き込むのです。
現実とファンタジー世界をマッチしてよく練られたストーリーを、
たっぷり楽しませていただきました。



ココネの威勢の良さもいいですし、
彼女をフォローするモリオも、その頼りなさと、でも「頑張らねば!」という心意気がステキで、
まさしく今様の男女の姿ですね。
いい感じです。



エンディングロールでようやく語られる父と母の出会いのシーンもシャレています♡
ところで、夢の世界の「鬼」に相応するのは、
現実世界の「何」だったのでしょう・・・?
今ひとつはっきりしないというか、それは私達に与えられた宿題なのかも・・・。

吹き替えのキャストがまた豪華。
日本のアニメシーンは、本当にスバラシイ!
エンディング曲を高畑充希さんが「ココネ」名で歌っていましたね。
絶叫調ではありませんが、やはりうまい!



<WOWOW視聴にて>
「ひるね姫 知らないワタシの物語」
2017年/日本/110分
監督・脚本;神山健治
声:高畑充希、満島真之介、江口洋介、古田新太、高橋英樹

夢と現実のリンク度★★★★☆
満足度★★★★☆

 


「あの家に暮らす四人の女」三浦しをん

2018年07月28日 | 本(その他)

新しい家族の形

あの家に暮らす四人の女 (中公文庫)
三浦 しをん
中央公論新社

* * * * * * * * * *


ここは杉並の古びた洋館。
父の行方を知らない刺繍作家の佐知と気ままな母・鶴代、
佐知の友人の雪乃(毒舌)と多恵美(ダメ男に甘い)の四人が暮らす。
ストーカー男の闖入に謎の老人・山田も馳せ参じ、
今日も笑いと珍事に事欠かない牧田家。
ゆるやかに流れる日々が、心に巣くった孤独をほぐす同居物語。
織田作之助賞受賞作。

* * * * * * * * * *

刺繍作家の佐知は、古びた洋館に母・鶴代二人暮らしだったのですが、
一年ほど前から、佐知の友人二人も住むようになり、現在4人暮らし。
そのゆるやかな日常をユーモアを交えて描いています。
でも、本作、なんとなく常の三浦しをん調とは違うなあ・・・と感じられたのです。
語り手は登場人物の誰でもなくて、第三者らしい。
そしてそれが結構シビアに彼女らを観察しているようにも感じられ・・・。
しかし、このことにはしっかりとした理由があったのですね。
物語の後半以降でそれが明かされるのには驚かされます。
何しろ、カラスやらカッパやら、不思議なものが登場してきて、
それが現実的なストーリーをぶち壊すかと思えば、そうはならず、
不思議に馴染んでしまう。
これぞ著者の底力というものか・・・、
恐れ入ってしまう私なのでした。

家に引きこもって刺繍を生業として暮らす佐知の心情には、
いろいろと共感できる部分があるのです。
間もなく40歳。独身。
刺繍にはかなりの思い入れがあり、プロ意識を持って行っているのだけれど、
多くの人はただの趣味の延長と思っていて苦労を理解してもらえない。
結婚したくてもそもそも出会いがない。
父親のことをなにも知らない。
母は今は元気だけれど先行きが不安。
穏やかな生活の中に、種々の悩みのタネが転がっている。
普段は見ないように、考えないようにしてはいるけれど・・・。
そうしたリアルな感覚がありますね。
でもそれは特に家族でなくても、友人同士でも共有しあえる。
いいなあと思います、こういう新しい「家族」的なあり方。
むしろ血のシガラミがないだけさっぱりとしているし・・・。
結婚ではない共同生活。
これからの時代、こういう形は多くなるかもしれませんね。

「あの家に暮らす四人の女」三浦しをん 中公文庫
満足度★★★★☆

 


8年越しの花嫁 奇跡の実話

2018年07月26日 | 映画(は行)

この献身的愛こそが、奇跡でなくてなんでありましょう・・・

* * * * * * * * * *

結婚を約束し、幸せの絶頂にいた二人、尚志(ひさし)(佐藤健)と、麻衣(土屋太鳳)。
ところが、結婚式の3ヶ月前、麻衣が原因不明の病に倒れ、昏睡状態になってしまいます。
尚志はバイクで片道2時間のところを毎日病院へ通い、麻衣の回復を祈り続けます。
数年後、麻衣は少しずつ意識を取り戻しますが、
記憶障害により尚志に関する記憶を失ってしまっていたのです。
尚志は自分の存在が麻衣の負担になっているのではと思い、別れを決意しますが・・・。

奇跡の実話。
この話が「奇跡」なのは、麻衣が数年の昏睡状態から回復したこともあるのですが、
それ以上に、麻衣を見守り続けた尚志の献身的な愛こそが奇跡のように私には思われます。
何年もの昏睡状態となれば通常は途中で諦めてしまうのではないでしょうか。
特に相手の両親から「もういい、あなたは家族ではない」などと言われたりしたら。
でもそれでも尚志は諦めないのですねえ・・・。
しかもその思いが報われてようやく麻衣の意識が戻ったのに、
自分のことをなにも覚えていないだなんて・・・。
あんまりです。
けれど黙って身を引いて、おまけに職場まで変えていたなんて。
そしてまた、昏睡状態の麻衣の携帯に動画メールを送り続けていた・・・
その動画のシーンでは涙、涙・・・。
本当に、こんな人が本当にいるなんてこと自体が大いなる奇跡でなくてなんでありましょう!!
まあ、何度改めて出会ったとしても、必ず好きになるに違いない、
尚志さんはそういう人であります!

「実話」と聞いていなければ、「そんな事あるわけない」と思うに違いない、
感動的な物語でした。
佐藤健さんの自動車整備工のツナギ姿がまたかっこいいのだわ~♡
「律くん」とはまた違った魅力。
土屋太鳳さんも、シーンによってはかなりの汚れ役、
素晴らしく演じていました。



8年越しの花嫁 奇跡の実話 [DVD]
佐藤健,土屋太鳳,北村一輝,浜野謙太,中村ゆり
松竹



<J-COMオンデマンドにて>
「8年越しの花嫁 奇跡の実話」
2017年/日本/119分
監督:瀬々敬久
脚本:岡田恵和
出演:佐藤健、土屋太鳳、北村一輝、杉本哲太、薬師丸ひろ子
奇跡の愛度★★★★★
満足度★★★★☆


未来のミライ

2018年07月25日 | 映画(ま行)

四歳児の成長を時を超えた冒険で描く

* * * * * * * * * *

待望の細田守監督によるアニメ。


四歳男児くんちゃんは、これまで両親の愛を一身に受けて満ち足りた生活をしてきましたが、
このたび妹が生まれて、お母さんといっしょに家に帰ってきました。

ところが、生まれたばかりの妹、ミライちゃんに両親がかかりっきりなので、
くんちゃんは不満を爆発させてしまいます。
そしてそんな時、くんちゃんは未来から来たという女子高生のミライちゃんと出会い、
ともに、時を超えた冒険をします。

四歳児くんちゃんのわがままぶりに、
子育てを経験したことがある方ならきっと、あるあると首を何度も振ったはず。
幼児のしぐさや行動が実によく表現されています。
でもこうして第三者的な目で見ると、決してくんちゃんをダメな子だとは思えません。
それというのも、くんちゃんは初めて両親の関心が自分から離れて、
なんとか自分の方を見てもらいたくて必死なのですものね・・・。



これまで自己中心に回っていた世界が、そうではなくて、
家族というつながりの中で、それぞれが生きていて、
自分もその中の一人であること、
そしてその中での自分の位置を認識すること・・・。
多分幼児にとっては、この認識が革命的な出来事なのだろうと思います。
それを物語にすると、本作のような壮大なストーリーになる。
特に、一人で電車に乗って東京駅へ行くという大冒険は、
自分というものが家族のつながりの中にまずある、という理解を得る大切な冒険なのです。
あの東京駅のシーンが素晴らしかった!!



この家族の家がまた、なんともおしゃれでステキです。
階段のような家で、しかも小さな中庭まである。
こんな庭なら子供を安心して遊ばせられますよね! 
そしてそこにこれまた小さな木が1本生えていて、
どうやらここが魔法のゾーンになっているらしい。
以前王子さまだったという不思議な男が現れたり、
女子高生のミライちゃんが現れたりする。
この家は建築家のお父さんが設計した家で、
このたび在宅で仕事をすることになったお父さんが、家事・育児をこなし、
お母さんが仕事に復帰する事になったのです。
くんちゃんが生まれたときは、
お父さんは忙しくてほとんど家事も育児も手伝っていなかったので、イクメン初心者。
そういう心もとなさが上手く描かれていました。
つまりはお父さん、お母さんも手探りで「家族」という形を作っているようにも見えます。
子供だけでなく大人もまた成長過程ということか・・・。



ところで、「くんちゃん」の本当の名前は何というのでしょう。
そしてその漢字は?
わかったところでどうということはないかもしれないけれど、
知りたいなあ・・・。
ミライちゃんは、ちゃんと「未来」と命名した紙が貼ってあったので、
くんちゃんにもちゃんとした漢字名があるハズと思うのですけれど・・・。

それから声優陣がとても豪華なんですね。
お父さんの不慣れなイクメンぶりが星野源さんのイメージとぴったり重なりますし、
過去の“青年”のかっこよさはやっぱり福山雅治さんそのもの!!
なんだか、声を聞いているだけでもウレシイ作品でした。

<シネマフロンティアにて>
「未来のミライ」
2018年/日本/98分
監督・原作・脚本:細田守
声:上白石萌歌、黒木華、星野源、麻生久美子、福山雅治

幼児再現度★★★★★
家族の物語度★★★★★
満足度★★★★★


ラスト・フェイス

2018年07月24日 | 映画(ら行)

互いに支え合うも、すれ違っていく二人

ラスト・フェイス [DVD]
シャーリーズ・セロン,ハビエル・バルデム,アデル・エグザルコプロス,ジャレッド・ハリス,ジャン・レノ
ギャガ

* * * * * * * * * *


貧困国に医療援助資金を提供する組織に所属するレン(シャーリーズ・セロン)。
西アフリカ内戦地帯で医師ミゲル(ハビエル・バルデム)と出会います。
自らの危険を顧みず患者を救うミゲルに心をうごかされたレンは、
彼に惹かれていき、過酷な状況下で互いに支え合うようになります。
しかし、あることで次第にすれ違っていく二人の心・・・。


いくら患者に治療を施しても、新たな患者が運ばれてくるし、
治療の場所そのものが襲撃されたりもする。
残酷な傷つけられ方をした女性や子供・・・。
レンはあまりにも過酷な現実に、次第に無力感がこみ上げ、
これ以上何をやっても無駄と思えてきてしまうのです。


一方ミゲルはさすがにタフなんですね。
たとえ無駄に終わろうとも、とにかく眼の前の患者を救うことに真っ直ぐでブレない。
結局はそうした姿勢の違いなのだろうと思います。
そして、別れてから10年・・・。

本作は、アフリカ内戦の過酷な現実を訴えるドラマだと思うのですが、
ラブストーリーにもかなり重きをおいています・・・。
というより、実はラブストーリーで、背景にアフリカ内線があるだけ・・・?
というくらいなので、結局どちらも中途半端に終ってしまった。
結構女好きらしいミゲルが10年もの間一途にレンを思い続けていた、というのもなんだか嘘くさいし。


ジャン・レノはミゲルの同僚の医師で、さして重要な役回りではありません。
無駄に豪華なキャスト・・・。
せっかくのショーン・ペン監督作品ですが、日本未公開はやむなしというところか。

<WOWOW視聴にて>
「ラスト・フェイス」
2016年/アメリカ/131分
監督:ショーン・ペン
出演:ハビエル・バルデム、シャーリーズ・セロン、アデル・エブザルコプロス、ジャレッド・ハリス、ジャン・レノ

アフリカ内線を描く度★★★★☆
満足度★★.5


「暗幕のゲルニカ」原田マハ

2018年07月23日 | 本(その他)

ゲルニカに込められた思いを、しっかり見つめよう!

暗幕のゲルニカ (新潮文庫)
原田 マハ
新潮社

* * * * * * * * * *

ニューヨーク、国連本部。
イラク攻撃を宣言する米国務長官の背後から、「ゲルニカ」のタペストリーが消えた。
MoMAのキュレーター八神瑶子はピカソの名画を巡る陰謀に巻き込まれていく。
故国スペイン内戦下に創造した衝撃作に、世紀の画家は何を託したか。
ピカソの恋人で写真家のドラ・マールが生きた過去と、
瑶子が生きる現代との交錯の中で辿り着く一つの真実。
怒涛のアートサスペンス!

* * * * * * * * * *

本作、文庫化を待っていました。
図書館に予約しようと思っても、そのあんまりな待ち人数の多さにめげました。


スペイン内戦を描いたとされるピカソの大作「ゲルニカ」。
本作はその創作当時のピカソとその愛人ドラ・マールの様子、
そして2001年9月11日以後のアメリカ、2つの舞台を交互に描いています。
瑶子はMoMA(ニューヨーク近代美術館)のキュレーターで、
9.11同時多発テロで夫を失っています。
そのこともあり、国家・民族間の憎しみや争い、戦争の悲惨さを描く「ゲルニカ」には
人並みならない思い入れがあるのです。
そこで、ぜひ現在スペインにある「ゲルニカ」を借り入れて
ニューヨークで展覧会に展示したいと思う。
しかしこの絵のこれまでの来歴や、この絵に付加された様々な人々の思惑が、
そのことを非常に困難にしているのです。
はたして、瑶子の願いは叶うのか・・・? 
彼女自身の拉致などサスペンスフルな展開もあり、
原田マハさんらしい美術界を題材としたエンタテイメントに仕上がっています。


さて、しかし本作はどこまでが事実でどこからが創作なのかと私は訝ってしまったのですが、
巻末になんと池上彰氏による解説がありました。
つまり、パウエル国務長官が国連安保理のロビーで記者会見を開いたときに、
その後ろに位置する「ゲルニカ」のタペストリーに暗幕が掛けられていた、
ということこそが、原田マハさんに本作を書く動機を与えた「事実」である、と。


この絵の前で「イラク攻撃」の話はできなかった・・・、
というのは多少なりとも「恥」を知っている人がいたということでもあり、
良いことなのやら悪いことなのやら判断が付きませんが、
「ゲルニカ」が反戦のシンボルとなっていることは確かですね。
ピカソのこと、ゲルニカのこと、楽しみながらたっぷり学習させていただきました。

「暗幕のゲルニカ」原田マハ 新潮文庫
満足度★★★★☆


ジュラシック・ワールド 炎の王国

2018年07月22日 | 映画(さ行)

恐竜より厄介な人の欲

* * * * * * * * * *


「ジュラシック・ワールド」の続編です。
このシリーズはずっと見ているので、
最近CG駆使の特撮ものはあまり見なくなっている私ですが、
なんとなく見てしまう・・・。



ジュラシック・ワールドのあったイスラ・ヌブラル島は、
前回の事件により閉鎖されて、
残された恐竜たちがその本能に従って生き延びていたのですが、
火山の活動が活発化し、大噴火の予兆が見られるようになってきたのです。
そこで恐竜たちを救い出すために
前作に登場したオーウェン(クリス・プラット)とクレア(ブライス・ダラス・ハワード)が行動を起こします。
しかし、彼らの協力者であるはずの者たちは、単に恐竜を救いたいという意志だけではなく、
金儲けや軍事利用等の目論見を抱いていた・・・。

本作の宿命的テーマとも言えるかもしれませんが、
本当に厄介なのは恐竜そのものよりも人の欲なんですね。
つねに“欲望”が、事態を面倒な方へ導く。

島から連れ出すことができた恐竜は全体のうちの僅かです。
炎に包まれた島に残された恐竜たちを船から眺めるシーンには
ちょっと泣きそうになりました。
それで、島から連れ出された恐竜はアメリカ本土に運ばれます。

草原や森のなかの恐竜もいいけれど、屋敷の中で暴れまわる恐竜というのもスリルたっぷり。
しかも最強のハイブリッド恐竜、インドラプトル・レックス。
これは怖い。
長い爪が少女メイジーに届きそうになる下りは、ほとんどエイリアンにも近かったですが・・・。
ちょっと作りすぎて、恐竜ロマンからは遠くなってしまったかな?

またこの少女にもある秘密があり、そのことがまた後に大きな影響を及ぼすことになるというストーリー運びは
よくできていたと思います。
オーウェンになついている“ブルー”がまた、いいですよね! 
なんだかどんどん愛着が湧いてきます。
でもこんな頭の良い恐竜を敵に回したらやっぱり怖いなあ・・・。

まあ、しっかりと楽しませていただきました!



<シネマフロンティアにて>
「ジュラシック・ワールド 炎の王国」
2018年/アメリカ/128分
監督:J・A・バヨナ
出演:クリス・プラット、ブライス・ダラス・ハワード、レイフ・スポール、ジャスティス・スミス、ダニエラ・ピネダ、イサベラ・サーモン

恐竜への共感度★★★★☆
満足度★★★★☆


ベイビー・ドライバー

2018年07月20日 | 映画(は行)

ミュージカルのようなカーチェイス

* * * * * * * * * *


天才的ドライビングテクニックを持つ“ベイビー”(アンセル・エルゴート)は、
犯罪者の逃亡を手助けする「逃がし屋」をしています。
もともと犯罪者には向かないタイプなのですが、彼のボス・ドク(ケビン・スペイシー)に弱みを握られて、
手伝わざるを得なくなっているのです。
ベイビーは子供の頃の事故の後遺症で耳鳴りに悩まされていますが、
音楽を聞くことで紛らわせています。
そのため、常にiPodとイヤホンを離しません。



冒頭、銀行強盗犯を乗せたベイビーの運転する車とパトカーのカーチェイスのシーンは、
みごとにベイビーの聞いている音楽とシンクロし、
まるでミュージカルのようなおしゃれな場面となって、一気に引き込まれてしまいました。



さて、ドクとの約束の期間が切れて、
ベイビーはこれでさっぱりと汚れ仕事から足を洗えると思ったのですが、
ベイビーの腕の良さを見込んだドクは彼を脅し、
また次の仕事に巻き込んでしまいます。

しかし、タッグを組んだメンバーが悪かった・・・。
あまりにも危険で凶暴な連中。
ベイビーが出会った運命の女性デボラ(リリー・ジェームズ)をも巻き込み、
事態は最悪の方向へ転がっていきます。

カーチェイスのある映画は数多くありますが、
こんなふうに音楽と素晴らしくマッチしたものはありませんでしたね。
銃撃シーンでは銃声さえもビートを刻んでいた。
いやはや、しびれます。

ベイビーはデボラと自分のために、心ならずも「犯罪」を犯すことになってしまうわけですが、
それにしても、常に一般市民は巻き込まないようにと心配りをも忘れない。
誰彼かまわず撃ちまくるギャング映画とも一線を画しています。
そしてまた、そんな優しさが後にきちんと自分に戻ってくるあたりがウレシイ。
本作、あらすじを見ただけではわからない魅力があって、これはオススメです。



ベイビー・ドライバー [DVD]
アンセル・エルゴート,リリー・ジェームズ,ケヴィン・スペイシー,ジェイミー・フォックス,ジョン・ハム
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント



<WOWOW視聴にて>
「ベイビー・ドライバー」
2017年/アメリカ/113分
監督:エドガー・ライト
出演:アンセル・エルゴート、リリー・ジェームズ、ケビン・スペイシー、ジェイミー・フォックス、ジョン・ハム

音楽との親しみ度★★★★☆
満足度★★★★.5


「狩人の悪夢」有栖川有栖

2018年07月19日 | 本(ミステリ)

とっちらかった事件

狩人の悪夢
有栖川 有栖
KADOKAWA

* * * * * * * * * *


人気ホラー作家・白布施に誘われ、
ミステリ作家の有栖川有栖は、京都・亀岡にある彼の家、「夢守荘」を訪問することに。
そこには、「眠ると必ず悪夢を見る部屋」があるという。
しかしアリスがその部屋に泊まった翌日、
白布施のアシスタントが住んでいた「獏ハウス」と呼ばれる家で、
右手首のない女性の死体が発見されて…。
臨床犯罪学者・火村と、相棒のミステリ作家・アリスが、
悪夢のような事件の謎を解き明かす!

* * * * * * * * * *

この本、図書館予約で順番が回ってくるまでに1年以上かかりました。
ふう・・・やれやれ。
まあ、このシリーズの人気が伺えるわけで喜ばしいことではあります。


本作ではアリスが人気ホラー作家・白布施にまねかれ、
京都の彼の家を訪れたその地域で、事件は起こります。
片田舎の一本道が、前夜の雷に打たれた倒木により、一時通行不能となっていた。
・・・ということで、この殺人事件の犯人はこの地区内にいた数人の中にいることになります。
これもある意味、絶海の孤島、雪の山荘に匹敵する舞台。
火村はこの事件を見て「とっちらかった事件」と称します。

右手首のない女性の死体。
そこに残された男の左手の手形。
飾り物の弓と矢による殺人。
運び出された男の遺体。
持ち去られたスマホ。
一定時間通れなかった道。

ヒントになりそうな事柄は散見されるけれど、どうつながるのかがわからない。
火村はこれを、犯人が予測不能な事態に振り回されて
ジタバタした挙げ句のことだと推理しますが・・・。

うーん結局、読んだ印象もとっちらかっていたというか、
ちまちましていた感があります。
私はやはりミステリの醍醐味は、たった一つの事実が明かされることによって、
他のこともすべて説明がついてしまうという劇的な謎解き。
本作はちょっとそれには遠かったかな・・・。
だからこのシリーズに関しては、もう少し単純な短編のほうが好きかもしれません。
火村とアリスの会話が続けばそれだけでOKという気持ちもあるにはありますが・・・。

図書館蔵書にて
「狩人の悪夢」有栖川有栖 角川書店
満足度★★★☆☆


TEAM NACS PARAMUSHIR 信じ続けた士魂の旗を掲げて

2018年07月18日 | 舞台

知られざる戦闘

TEAM NACS 第16回公演PARAMUSHIR ~信じ続けた士魂の旗を掲げて Blu-ray豪華版
TEAM NACS
アミューズ

* * * * * * * * * *


2018年 
原案・演出:森崎博之
脚本:林民夫

1945年8月15日。
太平洋戦争において日本がポツダム宣言を受諾し無条件降伏した日。
しかし、この物語はそこから始まります。
当時の日本の最北端の孤島「幌筵島」。
「ぱらむしる」と読みます。
なんだか意味不明の題名だと思ったら、この島のことだったんですね。
千島列島のカムチャツカ半島に一番近いところに、
この幌筵等と占守(シムシュ)島があります。
ここに対米の日本軍基地があったのです。


8月15日、天皇陛下の玉音放送。
ここでは電波が悪く、しかも聞き取れたとしてもその真意はわかりにくい。
兵たちは、さらに「死ぬ気で頑張れ」という意味かと思ったりしたのですが、
それでも、終戦となったということが次第に理解されていきます。
そこで武装解除を始めた矢先、突如ソ連軍が攻め入ってきたのです。
兵士たちは戸惑いながらも、再度気持ちを奮い立たせて、立ち上がる・・・。

8月15日を過ぎても続いていた戦争のこと・・・。
確か以前「野のなななのか」という作品でも触れられていましたが、すっかり忘れていました。
北海道民としては、しっかり心に刻んでおくべきことでした。

本作にはTEAM NACSの5人だけではなく、大勢の俳優さんも出演。
特に缶詰工場の女性たちの歌声は涙を誘うところです。
TEAM NACSそれぞれの役柄は・・・

★小宮少尉(森崎博之)
 父親や兄弟たちも名だたる軍人。
 それで彼も周囲からは期待されているのですが、本人はそういう器ではないと思っている。
 本来温厚で軍人には向かないタイプ。

★桜庭上等兵(安田顕)
 南方戦線で九死に一生を得て帰還。
 しかし、東京の空襲で妻子は亡くなっており、生きる意欲を失っている。
 しかしこの度のことで、また「戦う」ことの意義を見出していく。

★田中二等兵(戸次重幸)
 孤児で、各地を転々とするも、ようやく小樽で愛する人とめぐりあい結婚。
 間もなく子供が生まれるというところで召集された。
 なんとしても生きて帰りたいと思う。

★水島軍曹(大泉洋)
 典型的な帝国軍人であったが、一度終戦を知ってからは戦うことの意義を見失い、
 考えが変わる。

★矢野整備兵(音尾琢真)
 以前激戦地で、臆病なために最先端に立たず、
 幾人もの戦友の死をただ見ているだけだったことをひどく悔いていおり、
 この場を自分の命の捨て場と思いつめている。

これらの立場の違う5人がたまたま寄せ集まってチームを組むことになりますが、
ほんのひととき、互いの身の上を語り合う穏やかな時間を過ごします。
彼らが、今更ながら命をかけても守ろうと思ったものとは・・・。
実に見ごたえのあるドラマ。
私はやはり安田顕さんの熱演にしびれました。


ということで、TEAM NACSのシリーズは一応ここでおしまいです。
次作はぜひ、ナマで見てみたいものです・・・

歴史発掘度★★★★★
満足度★★★★★


セラヴィ!

2018年07月17日 | 映画(さ行)

お仕事シネマ

 

* * * * * * * * * *


ベテランウェディングプランナーのマックス(ジャン=ピエール・バクリ)は、
これまで30年に渡り多くの結婚式を手がけてきました。
でもそろそろ引退を・・・と考えてもいる昨今です。
さて、マックスはピエールとヘレナというカップルの依頼で、
17世紀の城を式場にしたゴージャスな結婚式のプロデュースを引き受けます。
本作はその、目が回るように忙しい結婚パーティーの一日を描きます。

マックスはそのパーティーが滞りなく行われるよう、全てにおいて目を光らせるのが役割。
式の進行、食事の用意、イベントの準備・・・、まあ総監督ですね。
さてしかし、その日、
ピンチヒッターのウェイターはシワシワシャツに変なひげで現れ、
ミュージシャンはワンマンショー気取り、
挙げ句にメイン料理の肉が腐っていたりして・・・
てんやわんやのトラブル続き。
それでも、さすが敏腕のマックス。
パーティー客にはなにも感づかせず、あくまでもドタバタは裏方のみで、
ようやく終盤までこぎつけますが・・・。
しかしそんな矢先に・・・!!

実に様々な役割のスタッフの総力で事が進んでいく。
ほとんどの仕事はそうしたものでしょう。
一人だけがいくら頑張ってもだめだし、欠ける人がいてもダメ。
全体を見渡して支持をする人も大事。
大きな会社などでは気づきにくいかもしれませんが、
こうした一夜限りのイベントだとそういう事がよくわかります。
働くことのメンドウくささと、しかしそれでもやり遂げたときの達成感、一体感、
良いものですよねえ。
ユーモアたっぷりに包まれた、ステキなお仕事ストーリーでした。



マックスの、目立ちすぎないのだけれど穏やかで実直な感じが良いなあと思います。
彼はスマホでメールを打つのが苦手で、変換ミスが非常に多いという。
フランス語でも変換があるのか?と思いますが、
多分候補がたくさん出てきて、よく見ないで決定しちゃうのでしょうね。
そんな弱点も、愛嬌といいますか、周りのスタッフから見ると親しみやすかったりするわけです。



スタッフに移民らしき人々を加えて、彼らが音楽を披露する場面があったりするのにも
「現在」のフランスが現れています。
本当に、今や多民族国家なんですね。
新郎の3時間のスピーチはさすがにひどいと思いましたが、
あちらのパーティーは本当に夜を徹して行うのですね・・・
スタッフは本当に大変そう・・・


<ディノスシネマズにて>
「セラヴィ!」
2017年/フランス/117分
監督:エリック・トレダ、オリビエ・ナカシュ
出演:ジャン=ピエール・バクリ、ジャン=ポール・ルーブ、ジル・ルルーシュ、バンサン・マケーニュ、アイ・アイラダ
お仕事ストーリー度★★★★★
満足度★★★★.5


「花桃実桃」中島京子

2018年07月16日 | 本(その他)

人間いたるところに青山あり

花桃実桃 (中公文庫)
中島 京子
中央公論新社

* * * * * * * * * *


43歳シングル女子、まさかの転機に直面す―
会社勤めを辞め、茜は大家になった。
父の遺産を受け継いだのである。
昭和の香り漂うアパート「花桃館」で、へんてこな住人に面くらう日々が始まって…。
若くはないが老いてもいない。
先行きは見通せずとも、進む方向を選ぶ自由がある。
人生の折り返し地点の惑いと諦観を、著者ならではのユーモアに包んで描く長編小説。

* * * * * * * * * *

43歳。
男女にかかわらず、この年代は微妙な時期なのかもしれません。
若くもなく老いてもいない。
人生80年としても中間地点。
一応の道のりは見えているけれども、このまま続けて行くべきなのか。
他の道への可能性は・・・?
といろいろ考えてしまう時期。
けれど男性なら出世の道半ばで、やり直そうと思うことは少ないかもしれないし、
専業主婦ならまだまだ子供の行く先を見守らなければならない時期か。
本作主人公茜は、シングル女子で、
会社で出世を考えるほど仕事熱心にはなれないし、
後輩には疎ましがられている・・・というところで、
まさに人生半ばの「憂い」に陥っていたわけです。
そういえば私も、一応仕事は持っていたのですが、退屈さを禁じ得ず、
ホームヘルパーの資格をとってみたりして、
「転職」へ気持ちが揺れたりしたのもこの時期だったような・・・。
まあとにかくそんな時、茜の父が亡くなり、
オンボロのアパート「花桃館」が遺産として残されたのです。
茜はこれを機に、自身もその一室に住み込んで大家業に専念することに。

そこでアパートの住人と茜との間の様々なやり取りがユーモアを交えて描かれています。
家賃を滞納している気弱そうな青年とか、
父一人、子3人の賑やか家族、
そして父の愛人だったらしいお婆さんとか・・・?! 
はたまた、不思議な老夫婦も・・・???


また茜は、高校時代の同級生・尾木が営む閑古鳥のなくバーに時々通うようになります。
彼はバツイチでこの度塾の講師を辞めての転身。
茜と尾木の微妙な心の変化にも注目ですよ。
茜はもともと人との付き合いがそれほど好きというわけではなく、
時にはメンドクサイとも思う。
お節介焼きというタイプでもない。
けれど、「大家」という立場に次第に充実したものを感じるようになっていきますね。

まさしく「人間いたるところに青山あり。」
正しい読みと解釈は作中で教養ある尾木くんが解説していますので、
ぜひ確認してみてくださいね。

図書館蔵書にて (単行本)
「花桃実桃」中島京子 中央公論新社
満足度★★★★☆


ボン・ボヤージュ 家族旅行は大暴走

2018年07月14日 | 映画(は行)

バカバカしくもスリル満点

* * * * * * * * * *


夏休みのバカンスでドライブ旅行に出かけたコックス家。
整形外科医のトムと妊娠中の妻ジュリア。
9歳の長女リゾンとわんぱくな息子ノエ。
そして招かれざるトムの父親ベン。
いや、確かに・・・。
すべての災難の元凶はこのとぼけた父親にあるのかも・・・。



トマ自慢の新車で出発したのはいいのですが、
最新のAI機能搭載の新車が時速160キロのスピードで固まったまま、制御不能になってしまうのです。
折り悪くガソリンを満タンにした直後・・・。
恐怖の高速道路爆走!!



無能な警察官、脳天気なカーディーラー、愛車を傷つけられて怒り狂う変な男、
そして何故か後部座席に見知らぬ女・・・。
カメラはこのひたすら走り続ける車と家族を追っていきます。



それにしてもとんでもない車ですが、
昨今の自動運転への傾倒を皮肉ってもいるようです。
実際、ここに狂いが出たら、どうすればいいのでしょう・・・??



無能な警察官とは言いましたが、彼らも一応やるべきことはやってくれたのですよね。
高速道路を封鎖し、一応他の車との接触は避けられるようにしてくれた。
料金所の狭いレーンも160キロの猛スピードで通過! 
これはすごい。
しかし、さらなる行く手では車が大渋滞を起こしていて、この車の群れはどけきれなかった。
さあ、どーする!!



緊急時にもかかわらずお馬鹿な家族やその他の会話につい吹き出してしまいますが、
それにしても猛スピード、ノンストップの車の暴走はスリルたっぷり。
いやはや、文句なく楽しませてもらいました。

ボン・ボヤージュ~家族旅行は大暴走~ [DVD]
ジョゼ・ガルシア,アンドレ・デュソリエ,カロリーヌ・ヴィニョ,ジョセフィーヌ・キャリーズ,スティラノ・ルカイエ
ギャガ



<WOWOW視聴にて>
「ボン・ボヤージュ 家族旅行は大暴走」
2016年/フランス/92分
監督:ニコラ・ブナム
出演:ジョゼ・ガルシア、アンドレ・デュソリエ、カロリーヌ・ビニョ、ジョゼフィーヌ・キャリーズ、スティラノ・リカイエ

暴走度★★★★★
スリル度★★★★☆
満足度★★★.5