映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

フレンチアルプスで起きたこと

2015年08月30日 | 映画(は行)
やんわりと現実を受け入れていく妻の物語



* * * * * * * * * *

スウェーデンからフランスのスキーリゾートへ来た一家。
一日目、家族揃ってくたくたになるまでスキー。
5日間の日程ですが、それはとても充実した家族の時間になるはずでした。

ところが二日目、ホテルのテラスでの昼食時。
スキー場ではあえて雪崩を起こしていたのですが、
その時のそれはちょっと大きすぎた。
家族のいるテラスに、もうもうとした雪煙を上げてそれは迫ってくる!
その時、なんと父トマスは
妻と子供たちをおいたまま、一人で逃げ出してしまったのです。
幸い雪崩はホテルを襲う直前で停止。
辺りが真っ白な雪煙に包まれただけで済んだのですが、
その後おずおずと戻ってきたトマスに、妻子の視線が冷たい・・・。
そしてそのいや~な空気は次第に増していくのです。



家族を率いる父親像の崩壊。

そしてまた、トマス自身の自尊心の崩壊・・・。

夫婦の信頼の崩壊。

そして家族の崩壊・・・。

まさにこれこそ雪崩状態ですね。
その事件を聞かされた友人夫婦も、
後ほど
「あなたもいざとなったら私を置いて逃げ出しそう」
などと言って喧嘩を始める始末。


口論している姿を子供たちに見せたくないと思うトマスとエバの2人は、
ホテルの部屋のドアの外で話したりするのですが、
うっかり鍵を持たずに閉めだされたりもする。
シリアスな家族の危機ではありながら、
ユーモアたっぷりに描かれているので、笑ってしまうところも。



確かに、私達は無意識に
夫や父親には家族を守り導く役割を期待しているところがあるようです・・・。
でも、そうはいっても一人の普通の人間であるわけですしね・・・。
こんなみっともないところも含めて、
でもやっぱり子供たちの父親だし、愛して結婚した相手なのだと・・・
これは、やんわりと現実を受け止めていく妻の物語であったのかもしれません。


ラストシーンまで見た後の教訓。
とっさの時には誰もが正しい判断を出来るわけではない。
と言うかむしろできない。
だからそのことを後で非難したりするのはやめましょう!!


「フレンチアルプスで起きたこと」
2014年/スウェーデン、デンマーク、フランス、ノルウェー/118分
監督:リューベン・オストルンド
出演:ヨハネス・バー・クンケ、リサ・ロブン・コングスリ、クリストファー・ヒビュー、クララ・ベッテルグレン、ビンセント・ベッテルグレン
リアルな家族像★★★★★
満足度★★★★☆

「映画にまつわるxについて」西川美和

2015年08月29日 | 本(エッセイ)
監督が語る映画のあれこれ

映画にまつわるXについて (実業之日本社文庫)
西川 美和
実業之日本社


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横綱、裸、眠らぬ猫、夜の闇―気鋭監督が切り取る35の風景。
主演女優とフォークリフトの免許を取り、ワンカットのためにネズミを育てる。
増殖する本に苦悩し、深夜に出会った男の行方を案じ…。
取材や脚本の執筆、撮影など映画制作現場でのエピソードをはじめ、
影響を受けた映画や本、作家について、鋭い観察眼で描く。
『ゆれる』『夢売るふたり』など、国内外で高く評価される映画監督の初エッセイ集。


* * * * * * * * * *

映画監督、西川美和さんの映画にまつわるエッセイ集。
これはもう、文句なく買い!!です。
特に映画制作現場でのエピソードなどは、
普段私達が目にできることではありませんから、非常に興味深いですね。
若くして監督デビューした方なので、そのための苦労もあるようです。


映画「ゆれる」の撮影中、俳優香川照之さん、オダギリジョーさんとのやりとり。
新人監督は俳優さんに育てられるという側面もあるみたいですね。
いかにも頼もしい俳優さんの素顔もウレシイ!!


また、西川監督が松たか子さんと一緒にフォークリフトの免許を撮るくだりも必見です。
松たか子さんが「夢売るふたり」のほんのワンシーンのために
わざわざ免許をとったそうなのです。
ついでなので、という感じで西川監督もお付き合い。
しかし、講習を受けている何日間か、
周りの人たちは松たか子さんに誰も気づかなかったのだとか。
まあねえ・・・まさか名だたる女優さんが
フォークリフトの免許を取りに来るとは思いませんよね・・・。
ちょっと似てるかな?くらいのことは思ったかもしれないけれど・・・。
そもそも松たか子さんを知らないのでは?と思ったりもしたのですが、
試験後、西川監督が事実を明かすと皆驚いていたというので、
知らないわけではなかったようなのです。
女優さんは自在にオーラを消すことができるのかもしれません・・・。


こんな風に映画のほんのワンカットのために、
大変な準備が必要だったり、すごく予算がかかったり・・・
そんなことがあるので、脚本を書くのも気を使うようです。
撮影用のフィルムとデジタルの違いなど、
私は全然わかっていませんでしたが、違うものなんですねえ・・・。
でも今は非常に技術が発達したので、さほど変わらないようですが、
でも、費用的には雲泥の差、ということのようです。
何にしても興味深いことばかり。
楽しい本です。

「映画にまつわるxについて」西川美和 実業之日本社
満足度★★★★★

ホビット 決戦のゆくえ

2015年08月28日 | 映画(は行)
莫大な財宝が解き放たれる時



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ホビット、シリーズ3部作最終章。
前作で竜のスマウグが眠りから覚めて復活。
ふたたび湖の町に襲いかかる。
しかしバルドの放つ矢に撃ちぬかれ・・・。
このスペクタクルシーンが冒頭。
意外にもあっさりとスマウグは倒れてしまいます。
しかし実はこのことは
本作で語られることのほんの前哨であったことがわかります。
竜が倒れれば平和が戻るのか・・・。
否!!



それは竜が守っていたエレボールの莫大な財宝が
解き放たれたことを意味するのです。
信頼の厚いドワーフ部族の長であったはずのトーリンは、
友情や名誉を犠牲にしても財宝を守ろうとする“竜の病”に侵されてしまう。
そして湖の民やエルフたちまでもが
金を目当てに押し寄せてくる。
これって逆に言うと竜がこれまで平和を守っていたようにも思えてしまいます。
人、いえ、人のみならず生きるものすべての“欲”こそが、
災いの種ということですね。
さすが、長く読み継がれてきた物語は深いです。



そしてまたエレボールの門前で欲にまみれた彼らが一触即発の時、
冥王サウロンに操られたオークの大群が押し寄せる。
5つ巴の大混戦スペクタクル。
いやあ、さすがに最終章を飾るにふさわしい。
こういうところは劇場の大スクリーンでみるべきでしたね・・・、
残念。



しかしこのような混乱のさなか、
ホビットのビルボはあくまでも友を思い信念の道を行きます。
トーリンとの友情を信じ、アーケン石をエルフと人間たちに引き渡してしまいながらも、
再びトーリンのもとに戻るなどという大胆なことを・・・。
でもそれこそが彼らしいのですね。
殺伐とした戦闘シーンばかりが続く本作の、
唯一心が熱くなるシーン。



レゴラスは相変わらず身軽でカッコイイです。
崩れ落ちる岩を足場にピョンピョンと渡り歩く離れ業。
ラストの方では「ロード・オブ・ザ・リング」につながる旅のことも匂わせるところがまた心にくい。

ホビット 決戦のゆくえ ブルーレイ&DVDセット(初回限定生産/3枚組/デジタルコピー付) [Blu-ray]
イアン・マッケラン,マーティン・フリーマン,リチャード・アーミティッジ,エバンジェリン・リリー,リー・ペイス
ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント


「ホビット 決戦のゆくえ」
2014年/アメリカ/145分
監督:ピーター・ジャクソン
出演:イアン・マッケラン、マーティン・フリーマン、リチャード・アーミテージ、エヴァンジェリン・リリー、リー・ペイス

スペクタクル度★★★★★
満足度★★★★☆

奇跡の2000マイル

2015年08月26日 | 映画(か行)
人の助けがあったからこそ



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1977年、ラクダと犬を共にオーストラリアの砂漠2000マイル(3000キロ)を
一人で踏破した女性の実話です。



オーストラリア中央部のアリス・スプリングス。
働きながらラクダの調教を学び、旅の準備を整えたロビン。
特に冒険家というわけではありません。
何かの記録をつくろうとしたわけでもない。
ただ、やってみたかった。
この骨太の女性役にミア・ワシコウスカが挑みます。



4頭のラクダと愛犬・ディギティと共に町から旅立ったロビン。
目指すは西へ遥か2000マイルの海岸です。
ロビンはもともと人付き合いが苦手と見えます。
旅の前に訪ねてきた友人たちのおしゃべりにも、やや辟易した様子。
しかしその先、嫌でもたった一人きりの旅になるわけですが。
犬というのはかなり気持ちが通じ合う相手です。
だから彼女の一番の相棒はディキティ。
そしてラクダたち。
彼女はこの仲間さえいれば十分と思っていました。



一日平均32キロを歩くことになります。
始めのうちそんな彼女の最も大きなストレスは
時折やってくるカメラマンのリックなのです。
一人でいたいのに。
うるさい。
目障り・・・。
そんな気持ちがありありと。
しかしナショナルジオグラフィックスから旅の資金を得た交換条件として、
写真を撮ることを承諾したので、追い返すわけにも行きません。
長い旅の間には、孤独と毎日毎日果てしなく続くキツイ歩行に
挫けそうになることも・・・。
そんな時には、この彼と会うことすらもありがたく思えてくる。
まあ、そんなもんでしょう。
けれど終盤、彼女には最も大切な相棒を失うことになりますね。
胸が塞がります。
様々な困難をのりこえて7ヶ月、ようやく海岸へたどり着いた感激もひとしお。
海が眩しい!!

もちろん彼女は一人でこれをやり通した。
でも、彼女はこれは自分一人の力で成し遂げたわけではないということを
噛み締めたのではないでしょうか。
案内をしてくれたアボリジニ。
途中で出会った人々。
そして嫌っていたはずだったカメラマン。
いろいろな人達の助けがあったからこそやり遂げることが出来た。
そんなところで彼女自身もこの旅で変わったのだろうと思います。
今でこそ、女性の一人旅、しかもこのような冒険めいた行いも
そう珍しくはありません。
けれど1977年。
その頃なら、これはかなり思い切った行動だったと思います。
エンドロールで紹介される実物の彼女の写真を拝見すると
これがなかなか、美しい方です。
確かに「絵」になります。



以前、「裸足の1500マイル」という作品を見ました。
それは同じくオーストラリアを、子供たちが1500マイルを踏破する物語。
やはり私は、こういったロード・ムービーが好きなのですワ・・・。
ロード・ムービーというよりも冒険。
サバイバル。
リース・ウェザースプーンの「わたしに会うまでの1600キロ」も、もちろんみますよ~。



オーストラリアやアメリカはやはりサスガに広いですね。
日本も北から南まで歩けばそれなりに距離はありますが、
何日もも民家も水場もないなんてことはまずありませんものねえ・・・。
ラクダの調教にも挑んだミア・ワシコウスカ。
さぞかし撮影も大変だったろうと思えますが、ステキでした。
本作35ミリのフィルムカメラが使われたというのですが、
その貴重さ、大変さは、
西川美和さん「映画にまつわるxについて」を読んでいればよくわかります。
オーストラリアの果てしない大自然を、くっきりと写し取りたかったのでしょうねえ・・・。
そして、もちろんそれは成功しています。
しかし、行けども行けども荒涼とした乾いた大地。
同じ距離でも日本の美しい自然の中なら
さぞかし気持ちは癒やされると思いますけれど・・・



「奇跡の2000マイル」

2013年/オーストラリア/112分
監督:ジョン・カラン
原作:ロビン・デビッドソン
出演:ミア・ワシコウスカ、アダム・ドライバー、ローリー・ミンツマ、ライナー・ボック

冒険度★★★★☆
満足度★★★★★

「旅するように読んだ本」 宮田珠己

2015年08月25日 | 本(その他)
愉快な本の大陸へ、いざ

旅するように読んだ本: 墨瓦鑞泥加書誌 (ちくま文庫)
宮田 珠己
筑摩書房


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旅と同じ目線で読書をする。
本を読むのと同じ目線で旅をする。
これが宮田スタイル。
こうして読んだ45冊の本を、
旅をするときにこだわりたいテーマに分けて紹介する斬新な読書案内。


* * * * * * * * * *

著者は旅行にまつわるエッセイも多く手がけていますので、
本書も旅の本かと思いきや、
旅と同じ目線で本を読むということで、図書の紹介になっています。


本書文庫化の前のには
「はるか南の海のかなたに愉快な本の大陸がある」
という題名だったそうで、著者としてはこちらのほうがお気に入りのようです。
確かに、読後改めて見ると、こちらのほうが本の雰囲気がでているかな?と思います。
というのも、ここに紹介されているのは、
古今東西の変な(?)こだわりの本。
私達には未知の文化のこと、
勘違いだらけのとんでもない本、
常識が覆されるような驚きに満ちたもの、
空想の地図の本等々・・・
著者の知的興味と好奇心をくすぐる本が満載。
私などほとんど小説とたまに新書を読むくらいなので、
めったに手に取らないものが多いのですが、
でもこういった向きの話は嫌いではありません。
黄金の国と言われた"ジパング"は、本当はどこの事だったのか。
なぜそう呼ばれるようになったのか・・・。
など、興味のつきない話題も。


そしてまた著者の語り口が実に軽妙で、
この本自体が楽しい読み物になっているのです。
例えば著者は空想の地図が好きというのですが
小野不由美さんの「十二国記」に触れてこんなことを言っています。

「十二国記」は地図が描けていない。
でも小説はうまい。
人間が書けている。
けど地図が描けていない。
ダメでしょ。
地図が描けてなきゃ。
って、にわか評論家の態度はデカイよ。


自分で反省しちゃってるし。
こんなふうで、とにかく楽しいです!!


「旅するように読んだ本」宮田珠己 ちくま文庫
満足度★★★.5

ホビット 竜に奪われた王国

2015年08月24日 | 映画(は行)
レゴラスの一人勝ち



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本作、実は公開時に劇場で見たのですが、
すっかり寝入ってしまい、ブログ記事を書けるだけストーリーを把握できませんでした。
そこでこのたびリベンジ。
3部作のうちの中間ということで、ストーリー的にもちょっとたるんでいたのか、
それともいかにもむさ苦しいオッサンばかりが登場するので、
どうにものめり込めなかったのか・・・。
???


さて、内容としては、ホビットのビルボが
13人のドワーフとともに、かつてのドワーフの王国エレボールを取り戻すための旅をしているところでした。
巨大なクモの群れに囲まれたり、
エルフの牢獄にとらわれたり・・・。
実際困難に満ちた道のりです。



本作で一番面白かったのは、
そのエルフの里から樽に乗って激流を下るところ。
それも、オークとの闘いを交えつつ。
そこにまたあの、エルフのレゴラスが登場するんですね。
激流を行くドワーフたちの頭を踏んづけながら水面を飛び回る身の軽さ。
カッコイイ!!
スピーディでスリルに満ちていて、
よくぞまあ、こんなシーンを作り上げたこと・・・と、
これは手放しで感心してしまいました。
レゴラスと、原作には登場しないというエルフの女戦士タウリエル。
いや実際、本作でこの二人が登場しなかったら、
あまりにも地味で怒ってしまうところでした。





ラストの竜(スマウグ)登場シーンもハラハラしますね。
この声がベネディクト・カンバーバッチさんだったというのですが、
若干声が加工されていて、あまり本人を感じさせる声ではありませんでした。
この巨大な竜は、実は室内では非常に身動きしづらそうなのですよね。
で、いっそこのへんでもうストーリーが終わってしまうのでは?
という辺りで唐突に「つづく」となります。



まだまだスマウグを倒すには力不足。
そしてガンダルフも危機的状況で、こちらも決着を見ていない。
ということで、やっぱり続きは見なくてダメですね。



それにしても背景として出くるニュージーランドの風景がなんとも壮大で、
毎度のことながら見とれてしまいます。
この風景だけでも一見の価値がある。
ほんと。

ホビット 竜に奪われた王国 [DVD]
イアン・マッケラン,マーティン・フリーマン,リチャード・アーミティッジ,オーランド・ブルーム
ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント


「ホビット 竜に奪われた王国」
2013年/アメリカ/161分
監督:ピーター・ジャクソン
出演:イアン・マッケラン、マーティン・フリーマン、リチャード・アーミテージ、ベネディクト、エヴァンジェリン・リリー、オーランド・ブルーム

レゴラスの身の軽さ★★★★★
満足度★★★.5

福福荘の福ちゃん

2015年08月22日 | 映画(は行)
少年のまま大きくなってしまったようなピュアさ



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森三中の大島美幸さんが、なんとオッサン役で主演を果たしたことで話題になった本作。
興味ありますね!



大島美幸さん演じる福ちゃんは、シャイでぽっちゃりの32歳。
塗装職人です。
面倒見がよくて、職場でも、住まいの福福荘の住人たちにも慕われているのですが、
恋愛には奥手。
というか、どうも女性恐怖症らしい。
そんなところへ、その女性恐怖症のもととなった初恋の人、
千穂(水上あさみ)が訪ねてきます。
カメラマンを目指している彼女は、昔の出来事を謝り、
福ちゃんの写真を撮らせてほしいというのですが・・・。



福ちゃんの周囲のとっても地味でサエない面々。
でもがんばって生きてるって感じがなかなかいいです。
本作の「福ちゃん」を、なぜあえて男性でなく女性を起用したか
というところが眼目ですね。
例えば福ちゃんの親友・シマッチ役の荒川良々さん。
この二人並ぶととても雰囲気がよく似ているのですが、
この荒川良々さんが「福ちゃん」でもおかしくはないと思う。

でもやっぱり、大島さんですね。
なんだろう、見かけはすっかり男性なんですが、やっぱりなんだか優しげだ。
笑い顔がいいから、千穂も写真を撮りたくなったのだろうし。

そして、どこか少年のまま大きくなってしまったようなピュアさもちょっぴり。
例えばモテなくてサエない男を演じられる男性はいくらでもいると思うのですが、
この「福ちゃん」の独特な味わいは、
やはり大島さんで成功のように思います。



さて、挿入歌が上條恒彦&六文銭「出発の歌」。
私のような年齢の者にとっては、
かつての青春時代を思い起こす懐かしの名曲。
もう、これだけで花丸付けたくなってしまいます。
本作を見た後、ついYouTubeで
懐かしのフォークソング三昧をしてしまいました・・・。

福福荘の福ちゃん [DVD]
大島美幸,水川あさみ,荒川良々
TCエンタテインメント



「福福荘の福ちゃん」
2014年/日本・イギリス・台湾・イタリア・ドイツ/111分
監督・脚本:藤田容介
出演:大島美幸、水川あさみ、荒川良々、芹澤興人、飯田あさと
ほのぼの度★★★★☆
満足度★★★. 5

「狛犬ジョンの軌跡」垣根涼介

2015年08月21日 | 本(その他)
孤高の犬

狛犬ジョンの軌跡 (光文社文庫)
垣根 涼介
光文社


* * * * * * * * * *

太刀川要が深夜に遭遇した異様な大きさの黒犬は、
半死半生の状態だった。
動物病院へ駆け込むと、不可解なことに判別不能の犬種で獣医も戸惑うばかり。
やがて始まった共同生活は、かたくなに孤独を貫く男の見慣れた風景を変えていく。
そして湧き起こる、ある疑惑の真相とは―。
ジョンの眼差しを通じて見つめる人の営み、滑稽さ、哀しみ。
淡く胸に迫る大人のファンタジー。


* * * * * * * * * *

本作はややジャンル分けに困りますが、
まあ、やはりファンタジーなのでしょうね。


太刀川は深夜半死半生の巨大な黒犬に遭遇し、
動物病院に駆け込むことになる。
犬種も、飼い犬か否かもわからないまま、自宅で療養させることになります。
非常に無愛想な犬ですが、状況の理解は抜群で、
本来獰猛そうに見えるのですが至っておとなしい。
この犬のいる状況にようやく慣れてきた頃、
太刀川は少し古い週刊誌である記事を見て愕然とします。
高校生3人が巨大な犬に襲われ、2人が死亡。
もう一人が重傷を負ったという。
その犬は現在逃走中。
場所はまさしく太刀川がこの犬を拾った辺りだったのです・・・。


数百年を神社の境内で過ごした狛犬が、ある事件を契機に実体化。
だからこそファンタジーなのですが、
時折この犬自身が人間を観察した独白が入っていまして、
そこがユニークです。
独身の太刀川のこと。
付き合っている女性のこと。
そこはちょっぴりユーモラスですが、
それにしてもこの犬の絶対的な孤独はまた、心をひんやりさせます。
太刀川自身のこれまでのことにも触れられていますが、
言ってみれば彼も孤独な一匹狼。
どこか似たような魂が引き寄せ合ったのかもしれません。


太刀川は付き合った女性は多いですが、結婚は考えられなかった。
けれどこの犬と彼女と公園へ散歩に行き、木陰でくつろぐ時・・・
むくむくと結婚したいという気持ちが湧き上がってきます。
本当にこんな日々がずっと続けば良かったのに・・・。


本作は犬好きの方にはたまりませんよ。
大型の無愛想な犬。
一見怖いくらいなのですが、でもおとなしくて頭がいい。
こんな犬と暮らしてみたいなあ・・・と思っていまします。
犬を飼ったことのある人でなければ描けない描写多々。

「狛犬ジョンの軌跡」垣根涼介 光文社文庫
満足度★★★★☆


この国の空

2015年08月20日 | 映画(か行)
わたしが一番きれいだったとき



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この日は、本作と「日本のいちばん長い日」の2本立て。
私の中では終戦記念日特集でした。



昭和20年。
19歳里子(二階堂ふみ)は、東京の杉並で母と暮らしています。
隣家は妻子を疎開させた銀行支店長の市毛(長谷川博己)、一人住まい。
里子は何かと彼の身の回りの世話をするようになります。
日に日に戦況は悪化し、度々の空襲に脅かされる毎日。
「そろそろお年ごろね」と、周りの人に言われるのですが、
そもそも若い男性は皆戦争に行ってしまっている。
このまま自分は男性を知らないままに死んでいくのだろうか・・・
女として成熟しながらも、
持って行きようのない官能のうずきを彼女は持て余しているのです。
そんな彼女が、市毛に惹かれていくのも無理のないことでした。



ある夜、衝動的にトマトを市毛のもとに持っていく里子。
「冷やしておいて朝食べるよ」という市毛に
「いえ、今すぐに食べて」
直接的に言えない思いを伝える、名シーンです。

それにしても、関係ができた後の里子の
なんと甲斐甲斐しい市毛への気の使いよう。
これでは母も叔母もすぐに気がついたことでしょう。
わかりやすすぎ!!
けれど、このあまりにも奥さんみたいな気配りは馴れ馴れしさと裏表で、
私は男性にとって重荷なのではないかと、若干危惧を覚えてしまいました。
本作は市毛が新聞記者からの情報で14日のうちに日本の敗戦を知る
というところで終わっています。
けれどそれは市毛の妻子の帰宅を意味するわけで、
里子の複雑な心中を描写するところで終わっているのですが、
本作をみる限り絶対に里子の勝利にはならないだろうということを予感します。


「美しい。」
「君のことしか考えられない。」
男はそんなことを言いますが、
言葉で語れば語るほど不実が透けて見えるような気がする。
こいつはダメです。
どちらかを選ぶということができない。
奥さんが帰ってきても、きっとダラダラと関係を続けようとしますよ・・・。



でもまあ、本作でこの2人の行く末を思うというのは
実は必要ないことなんですよね。
「戦争」という抑圧された状況での男女の性愛を描いているわけなので。
つい下世話な想像までしてしまう、私でした。



それにしても、私、長谷川博己さんの大ファンで、
だからこそ本作を見ようと思ったわけですが、
こういう不実を匂わせる男の演技というところが、凄いんですよねえ・・・。
一方、二階堂ふみさんも、この肉感的なところが凄い。
変に可愛い子ちゃんでも清純でもなく、
肉体を持った女で、でもどこか透き通った精神性、
寄りかからない自己。
そんなものを感じさせる。
多くの映画監督が彼女を使いたい理由が分かるような気がします。


「わたしが一番きれいだったとき」、
朗読される茨木のり子さんの詩が、胸にしみます。

「この国の空」
2015年/日本/130分
監督・脚本:荒井晴彦
出演:二階堂ふみ、長谷川博己、富田靖子、工藤夕貴、利重剛、上田耕一

ミルカ

2015年08月18日 | 映画(ま行)
政治とは無関係でない、人の運命



* * * * * * * * * *

「空飛ぶシク教徒」と呼ばれたインドの国民的英雄
ミルカ・シンの実話に基づくストーリーです。
1960年、ローマオリンピック。
400メートル走で、インド代表のミルカはゴール直前で後ろを振り返ってしまい、
優勝を逃してしまいました。
帰国後、ミルカはパキスタンで開催されるスポーツ大会のインド団長に指名されるのですが、
拒否してしまいます。
インド首相秘書とミルカのコーチがミルカを説得するために、彼の暮らす町へ向いますが、
その列車の中で、コーチがミルカの半生を語りながらまた、
彼がパキスタンに抱く特別な感情をも説明するのでした・・・。



ミルカは少年時代、現在のパキスタン内に住んでいました。
けれど、インドとパキスタンの分離政策によって、その地はパキスタン領となってしまったのです。
宗教上の理由でその地にそのまま残ることは難しく、
村の人々はパキスタンの人々に略奪され命を落とし、
そんな中ミルカはかろうじて逃げ出して来たのです。
懐かしいはずの故郷の村なのですが、
パキスタンと聞くとその時の忌まわしい記憶が蘇ってしまう、そういうミルカでした。



人の運命というのは政治に大きく左右される物。
多くの戦争映画などは常にそれを訴えかけているわけですが、
そういうことを考えると、やはり安保法案については黙って見過ごしてはいけない・・・とふと思ったりして。



さて、だから確かに深刻なシーンもあるのですが、
インド作品の例に漏れず、やはり歌と踊り、ラブロマンスも挟み、
すごく楽しい作りになっています。
長いのに飽きさせない。
この辺はサスガです。



でも、この長さは、観る前にやはりちょっとの覚悟を必要とするのです。
この歌と踊りを省けばもう少しコンパクトにまとまるのでは・・・と思ったりもするのですが。
でもそうなるともうインド映画ではなくなってしまうかな?
多分インドの人々は、私達よりゆったりした時間の流れを過ごしていそうです。
その良さを活かして、これはこれでよし、ということにしましょう!



ミルカ [DVD]
ファルハーン・アクタル,ソナム・カプール,ディヴィヤ・ダッタ,アート・マリク
東宝


2013年/インド/153分
監督:ラケーシュ・オームプラカーシュ・メーラ
出演:ファルハーン・アクタル、ソナム・カプール、ディビヤ・ダッタ、アート・マリック、ジャプテージ・シン
歴史再認識度★★★★☆
満足度★★★★☆

「大きな音が聞こえるか」坂木司

2015年08月17日 | 本(その他)
少年は大志を抱く

大きな音が聞こえるか (角川文庫)
坂木 司
KADOKAWA / 角川書店


* * * * * * * * * *

退屈な毎日を持て余す高1の泳。
サーフィンをしている瞬間だけは、全てを忘れられる気がした。
そんなある日、泳は"終わらない波"ポロロッカの存在を知る。
「この波に乗ってみたい―」。
こみ上げる想いに、泳はアマゾン行きを決意する。
アルバイトや両親の説得を経て、退屈な日常が動き出す。
降り立った異国が出会ったのは、様々な価値観と強烈な個性を持った人々。
泳はもがきながらも、少しずつ成長していき…。


* * * * * * * * * *

本作、つまりは冒険の物語です。
高校生の泳(エイ)が、アマゾンへ行って、
ポロロッカの波でサーフィンをするという。
けれども、この冒険を志したところから本番までの準備段階、
そしてもちろん現地へ赴いてからのことも、とても丁寧に書かれていまして、
ただ、ダラダラと両親の庇護のもと生活していた泳の
成長の物語であることがわかります。
文庫としてはかなりのボリュームなのですが、あまりにも面白くて一気読み。
まさに、夏休みの読書にはうってつけです。


ところでポロロッカとは・・・。
詳しい理屈は私にも良くはわからないものの、
アマゾン河口などで大潮の時に起きる巨大な波のことで、
それは河を何キロにもわたって逆流していく。
それはもう、ほとんど「終わらない波」。
この波が退屈な毎日を送る泳の心に火をつけるのです。
すごい、行ってみたい!
そこでサーフィンをしたい!!


ちょうど泳の母の弟(つまり叔父)が仕事でブラジルにいるので、
現地の宿泊などは何とかなりそう。
それにしても、旅費は自分で何とかしなければ・・・。
そして、もちろん危険を伴うことでもあるので、両親を納得させなければならない。
(彼にはこれが一番重荷のようでしたが。)
そこそこ裕福な家のようなので、甘えれば旅費くらいは出してもらえたのかもとも思います。
でも彼はこの旅はそれではダメだと、始めから思ったのでしょうね。
はじめてのバイト。
いろいろな体験をして、働くことは人と人とが関わっていくことだとわかってきます。
引越し屋さんの荷物運びのバイトの下りなどは、
ちょっぴり「ワーキング・ホリデー」も思い出したりして。
実のところ本作、サーフィンの冒険物語というところで
「え?これが坂木司??」と思ったのですが、
こういう「お仕事」のくだりでは、
なるほど、やっぱりね。と思えたのでした。


そして念願かなってブラジルへ行けばもうラストかと思えば、
ここもまた、彼が参加することになったサーフィンのチームのことも詳しく書かれています。
まさに、人は一人では成長できない。
いろいろな人と人との関わりの中で成長していくわけですね。
それから、ブラジルという国の事情も少々。
日本がいかに豊かで平和かということもわかります。
アマゾン河の最も広い河口付近の川幅は、
東京~京都間の距離と同じくらいなどという話にも度肝を抜かれました。
それが河ですかい?!
すでに海なのではと思ってしまいます。
日本のスケールで考える事自体が間違ってますね。


少年は旅をすべきです。
たくましくなった泳くんが眩しい!!
ところでYouTubeなどを見ると実際、ポロロッカのサーフィンの映像を見ることができます。
青い海ではなく茶色に濁った大きな波。
川岸では木々が波になぎ倒されたりしています。
これは自然現象というよりむしろ災害だ。
しかし、それでもなおかつ波乗りをしてしまおうというガッツ、貪欲さ。
何にしても凄い、としか言い様がないですね。



「大きな音が聞こえるか」坂木司 角川文庫
満足度★★★★★

ジュラシック・ワールド

2015年08月16日 | 映画(さ行)
22年の歳月を感じながら



* * * * * * * * * *

ジュラシック・パークから始まるシリーズ4作目。
一作目は22年前、前作Ⅲ以来14年ぶり、
満を持しての4作目という感じですね。


その一作目を見た時は、CGによる恐竜の群れの光景があまりにも素晴らしくて、
感極まって涙までこぼしたことを覚えているのですが、
思えばそれ以来CGの技術は加速度的に進歩してきました。
今やどんなCGを見てもあたり前に思えてしまうというのが
逆に残念な気がするくらいです。



さて本作、そのジュラシック・パークの事故後、
同じ島で新たにオープンしたジュラシック・ワールドが舞台です。
恐竜の遺伝子から実物の恐竜を作り出すばかりではなく、
遺伝子操作により、さらに凶暴な恐竜、インドミナス・レックスを作り出しています。
しかし、その巨大かつ凶暴な恐竜が檻から逃げ出し、園内に大パニックが起こります。
主な登場人物は、スタッフのクレア(ブライス・ダラス・ハワード)、
飼育係のオーウェン(クリス・プラット)
そしてクレアの甥っ子で遊びに来ていたグレイ(タイ・シンプキンス)と
ザック(ニック・ロビンソン)の兄弟。



一作目の印象的なジュラシック・パークのメインの施設が
今や崩れ落ちる寸前の廃墟のようになっていて出てきたりするのが、
実際の22年の年月を感じさせてなかなか興味深い。
球体の乗り物ジャイロスフィアも、面白そうですね。



恐竜を生物兵器として利用できないかと画策する軍人まで登場するのがまた、手が込んでいますが、
実のところ恐竜相手なら遠慮無くミサイルも使えるわけですし、
あれだけの恐竜の餌代とか調教の手間を考えたら、
どうも実効性があるとは思えないんですけどね・・・。
ロボットを兵器化するほうがまだ現実性がありそう・・・。
が、しかし、ドサクサに紛れてこの新型恐竜のDNAが持ちだされてしまったわけで、
きっとこの続編が遠からずできるはず・・・。
次にはニューヨークかロサンゼルスあたりに恐竜が出現するかな?
「進撃のインドミナス・レックス」なんつって。



さて、次々に襲ってくる危機一発で、深く考えているヒマがなかったのですが、
後で思い返してみると色々と突っ込みたくなる部分はあります。
後でじゃなくて、リアルタイムで「ウソ!」と思ったのは、
弟がマッチを持っていたというシーン。
今どきマッチを持ち歩く少年がいますか?
キャンプに来たのならまだわかりますが・・・。
間違ってライターを持っていることはあってもマッチはないでしょ・・・。
また、兄ちゃんの方も、オンナノコを追っかけることしか興味なさそうなのに、
意外にも弟思いだった・・・と、
まあ、それくらいまでならありそうですが、
なぜこいつがトラックを修理できるのか?
(バッテリーが上がっちゃって無理だろうと思えるのですが・・・)
それから一回のデートで破綻したというクレアとオーウェンなのですが
あまりの異常事態に錯乱したためか
いきなりのオーウェンのキスによってラブラブに。
あまりにも安直だなあ・・・
ということで恐竜シーンはまあ楽しめましたが
ストーリーは結構いいか加減だと思います。



でもまあ、面白いからいいか!!と納得できてしまうところが凄い。


「ジュラシック・ワールド」
2015年/アメリカ/125分
監督:コリン・トレボロウ
製作総指揮:スティーブン・スピルバーグ
出演:クリス・プラット、ブライス・ダラス・ハワード、ビンセント・ドノフリオ、タイ・シンプキンス、ニック・ロビンソン

恐竜の怖さ★★★★☆
満足度★★★.5


日本のいちばん長い日

2015年08月15日 | 映画(な行)
70年前に思いを馳せる



* * * * * * * * * *

1945年8月15日。
玉音放送により日本の戦争降伏が国民に知らさせるまでの
歴史の舞台裏を描きます。



戦局が厳しい状況にある昭和20年7月27日。
日本は連合国からポツダム宣言の受諾を要求されます。
降伏か、はたまた本土決戦か。
議論は紛糾。
結論が出ないまま沈黙の日本に対して、
広島・長崎に原爆投下されます。
ついには御前会議にて天皇の御聖断を仰ぎ、ポツダム宣言の受諾が決定。
国民には、天皇の玉音放送にて敗戦を知らせることになりますが、
あくまでも本土決戦を主張する陸軍将校たちが、
放送局と宮城を襲撃しクーデターを図る・・・。


70年前のこの緊迫した一夜。
確かに日本の一番長い日なのかも知れません。
もしこの時に玉音放送の原版が発見されてしまったら・・・、
歴史は変わっていたかもしれませんが、
私達の知っている歴史以上に悲惨だったことは確かです。



本作は、出演者それぞれの力の入った演技が見どころです。

高齢で耳が遠く、ほとんどヨレヨレではありながら、
しかし自分が今の日本の命運を決定づけるのだという覚悟、責任感が読み取れ、
だからといって悲壮感がないのがまたなんとも言えない味のある鈴木総理(山崎努)。



慌てず騒がず、どっしりと安定感のある陸軍大臣・阿南(役所広司)。
何があってもとりあえずこの人がいれば大丈夫という気になります。
日本最後の“武士”ですね。



思慮深く物静か。
自愛に満ちた気品の人、昭和天皇は本木雅弘。
一番初めにこの配役を見た時には「え?」と思ったのですが、
なんともはまっていました。
今は他の人は考えられません。



ひたすら真っすぐ信念を貫こうとする若き将校・畑中少佐には松坂桃李。
とにかく負けず嫌いなんでしょうねえ・・・。
ポツダム宣言受諾を決定したと聞いた時の彼の悔しさ、というよりも怒りですね、
額に青筋が立っていた、迫真の演技の松坂桃李さんに圧倒されました。


このように非常に重いトーンの中で、
どこかひょうひょうとした迫水書記官(堤真一)や
宮城の侍従たちのいかにも人がよく、緊迫の中にもふと緩む空気感、
それも良かった。


ところで本作は1967年、岡本喜八監督による同名作品の焼き直しということになります。
そちらのキャストは
鈴木総理に笠智衆、
阿南陸相に三船敏郎、
畑中少佐に黒沢年男、
ほかに宮口精二、山村聰、志村喬など・・・
さすがにそうそうたるメンバー。
私などの年ではやはりこちらのほうが「昭和」の手触りが生々しく感じられそうな気がします。
今度見てみようかなあ・・・。
(多分TVの放映で、みたことはあるはずですが)

「日本のいちばん長い日」
監督・脚本:原田眞人
原作:半藤一利
出演:役所広司、本木雅弘、松坂桃李、堤真一、山崎努

歴史発掘度★★★★★
満足度★★★★☆

想いのこし

2015年08月14日 | 映画(あ行)
“つながっていた”ことを確かめるために



* * * * * * * * * *

毎日を適当に楽しく暮らしていたガジロウ(岡田将生)は、
彼が車道に飛び出したことで、交通事故に巻き込まれてしまいます。
彼自身は奇跡的に無傷だったものの、4人が死亡。
しかし、何かしらこの世に想いのこしのあったこの4人は、
この地上にとどまっています。
他の人々には見えない、触れない、声も聞こえない。
…ところが何故かガジロウにだけは見えて、触れるのでした!!
彼らが残した貯金をもらうことで、
ガジロウは彼らの想いのこしを果たす手助けをすることに・・・。



結婚を目前に控えていたルカ(木南晴夏)、

野球部のマネージャーをしていたケイ(松井愛莉)、

退職した消防のことが気になるジョニー(鹿賀丈史)、

そして小学生の息子を一人残したユウコ(広末涼子)。


やはり、一人息子を残したユウコのところのシーンには泣かされます。
この息子・幸太郎は、
母の生前から何かちょっと心を閉ざしているようなところが感じられるのです。
母の葬儀でも涙も見せない。
父は早くに亡くなっているので身寄りのない幸太郎は施設へ入るべきなのですが、
本人が拒否して、たった一人で暮らしているのです。
一体なぜ・・・?
そんな息子を見守るだけで、何もすることができない母の虚しさ。
けれどここの広末涼子はことさら悲嘆に暮れた表情を見せません。
どこか諦めきったように淡々としている。
いくら泣き叫んだところでもうどうにでもなるわけでなし。
見守ることだけに徹すると悲壮な決意をしたようでもある。
そしてそれはまた、この子ならきっと大丈夫、
ちゃんと生きていけると信じているようでもある。
彼女がオーバーに悲しみの表情を見せないことが、
何故か余計に見ている私の涙を誘います。
「この子を何とかして」と頼んだガジロウは、
ちっとも頼りにならなさそうだし・・・。
けれど、ちゃらんぽらんだったガジロウが、
彼ら一人一人の想いを叶えて行くうちに次第に成長していくわけで・・・。
次第に変わっていくガジロウの心もまた、見どころです。



結局彼ら4人は何かを成し遂げたかったというわけではなくて、
自分が誰かとつながっていたこと、
これからもその誰かの中に残ることを確認したかったのではないでしょうか。
ユウコも、いまいち息子と正面から向き合えたように思えていなかったから、
息子の将来が心配というよりも、
息子にとっての自分の位置を確かめたかったように思います。
何にしても切ない物語でした・・・。

想いのこし [DVD]
岡田将生,広末涼子
TOEI COMPANY,LTD.(TOE)(D)


「想いのこし」
2014年/日本/118分
監督:平川雄一朗
原作:岡本貴也
出演:岡田将生、広末涼子、木南晴夏、松井愛莉、巨勢竜也、鹿賀丈史

切なさ★★★★☆
満足度★★★★☆

ミッション・インポッシブル ローグ・ネイション

2015年08月13日 | 映画(ま行)
全然ダレずにまたすごい



* * * * * * * * * *

ミッション・インポッシブルもシリーズ5作目になるのですね。
しかし、今回のが全然ダレずにまたすごい。
CIAやKGBなど、各国のエリート諜報部員が結成した無国籍スパイ組織“シンジケート”。
イーサン・ハント(トム・クルーズ)が所属するIMFの解体の危機にありながら、
シンジケート、MI6との三つ巴の争いになっていきます。



予告などでよく流れていたこの、イーサンが軍用機の外部につかまったまま空をとぶシーン、
スタントなしで行ったというのが凄いですよね。
しかもなんとこのシーンは冒頭、ほんの導入シーンなのです。
先が思いやられます・・・。



“シンジケート” の謎の美女は、どうやらMI6の潜入スパイのようなのですが、
冒頭のところでイーサンを救います。
しかし、どうにも真意が読めずに疑わしい・・・。
この辺りも、ずっと引っ張りますねえ・・・。


それにしても印象深いアクション・危機一髪シーン満載。

オペラ上演中の劇場のシーンはスリルたっぷり、否応なく盛り上がります。
ちょうど“誰も寝てはならぬ”の曲のところでクライマックス。
要人を狙撃しようとする者が3人。
それをイーサンが阻止しようとするわけですが、いくらなんでも分が悪い。
どーすりゃいいんだよ、
さすがに逡巡します。



バイクのチェイスシーンも凄い迫力。
こういうシーンはもう見慣れているつもりだったのですが
上には上があるモノです。
このスピード感はタダモノではない。


そして絶望的な水中シーン。
実際トム・クルーズが6分間息をせずに撮影したというのですが・・・
全く命がいくつあってもく足りない感じ・・・。



誰が敵か、味方か・・・。
いや敵も味方もない。
その時々でそれぞれが自分の利害で動くだけ。
そんな中で、固く信頼の絆で結ばれているIMFイーサンのチームが
なんと安心感があってたのもしいこと。
気持ちが熱くなります!!



CIAのオッサンが言っていました。
イーサンのチームは、自分勝手過ぎる。
たまたま運良く成功しているだけ。
後始末が大変だ・・・。
いやはや、モロに本音。
本作ストーリーの弱点を皮肉に突いてくれますねえ。
その気持もわかります。
けれども、例えば本作、
最後にイーサンがシンジケートの莫大な資金源を明らかにして抑えた。
このことでどれだけのテロや犯罪や武器・麻薬の密輸を阻止できたか、
そのことを思えば、多少の事後処理の費用なんてね・・・
(マジにこんなこと考えても仕方ないか・・・)



トム・クルーズ、相変わらずの命がけアクション満載ですが
この方現在53歳!!
タフですね。
そしてまだまだ年齢を感じさせないナイス・ガイ。
例えばブラッド・ピットやレオナルド・ディカプリオの若き日は、
丹精でそりゃーステキでしたが、
近頃はすっかり貫禄をつけていいオジサン。
まあ、シブイとはいえますが・・・。
でもトム・クルーズは変わらずにカッコイイです!! 
やっぱりカッコイイのが好き!!


「ミッション・インポッシブル ローグ・ネイション」
2015年/アメリカ/132分
監督:クリストファー・マッカリー
出演:トム・クルーズ、ジェレミー・レナー、サイモン・ペッグ、レベッカ・ファーガソン、ビング・レイムス

アクション度★★★★★
満足度★★★★★