映画と本の『たんぽぽ館』

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エレファント・マン

2017年08月16日 | 映画(あ行)
人権は守られているか



* * * * * * * * * *

往年の名作ながら、見たことがなかったのです。
この度ようやく視聴。
1980年作品にしてモノクロ。
というのも舞台は19世紀末ロンドンなので、
その時代の雰囲気がよく現れています。
実在した奇形の青年ジョン・メリックの物語。


外科医トリーブス(アンソニー・ホプキンス)は、
見世物小屋でエレファント・マンとしてさらし者になっている青年を見出し、
研究材料として、自分の勤めている病院へ連れてきます。
その青年ジョン・メリック(ジョン・ハート)は、
始めのうち知的障害かと思われていたのですが、
唇の変形のため言葉がうまく発音できないだけで、
読み書きもでき、聖書を愛読する温厚な青年であることがわかります。
ただ病のためのそのあまりにも得意な容貌のために、
人間扱いされず、悲惨な人生をこれまで送ってきていたのでした。
しかし病院でも医師会で実験動物のように衆目に晒されたり、
貴族たちの自慢のために多くの人と面談をさせられたり・・・。


まだ今のような“人権”意識の希薄な、こんな時代があったわけですね・・・。
ただし、法律はともかく、
私たちの意識は当時とあまり変わらないのかもしれません。


作中では、この病院の婦長さんがステキでした。
彼女は初めから彼の容貌にはこだわらず、
通常の入院患者と同様にジョンに接します。
ある時は、トリーブスに
「彼はサーカスのときと同じように、病院でも見世物になっていますよ」
と苦言を呈するのです。
いいですよねえ。
こういう人。


このような実話に対して、今の社会は本当に少しでも良くなっているのか・・・? 
そんなことを意識しながら見たい作品です。
また、ジョン・メリックと対面したときの人の反応やその対応に、
もろにその人の人間性がでますよね。
そんなところが少し怖い。


蛇足ながら、実際のジョン・メリックについて少し調べてみました。
出生時には身体に異常はなかったのですが、
生後21ヶ月頃から異常が発生。
変形した容貌ながらも小学校までは出たそうです。
読み書きができるのは当然ですね。
その後、体の変形のため仕事につくこともままならくなり、
救貧院に入るのですが、そこでの待遇があまりにもひどく、
22歳のときに自ら奇形者の見世物興行に入ったとのこと。
作品と同じく外科医に見出され、社交界でも有名な存在となります。
27歳没。
その後の調べでは自殺というわけではなさそうだ・・・と。
現在の医学では「プロメテウス症候群」であろうと解明されています。


「エレファント・マン」
1980年/アメリカ・イギリス/124分
監督:デビッド・リンチ
原作:アシュリー・モンタギュー
出演:ジョン・ハート、アンソニー・ホプキンス、アン・バンクロフト、フレディ・ジョーンズ
WOWOW視聴にて
人間性発露度★★★★★
満足度★★★★☆


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