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映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

エリザベート1878

2025年05月03日 | 映画(あ行)

今まで保ってきたものが失われるとき

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オーストリア皇后エリザベートの、
1878年、40歳の一年に焦点を当てて描く物語です。

ヨーロッパ宮廷一の美貌と称されたエリザベートですが、
40歳ともなればさすがに衰えを隠せません。
けれど彼女は世間のイメージを維持するために奮闘。
コルセットでウエストを締め上げ、
オレンジスライスのみの食事でダイエットをし、
腰までの長い髪を誇ります。
しかし、そのような努力にも次第にむなしさを覚え始める・・・。

皇帝である夫の関心も薄れ(というより、彼は妻の存在の圧力にめげているようでもある)、
政治に口を出せば咎められ、
男性と気軽に口を聞くだけでも後ろ指を指される。
そして特にするべきこともない・・・。

これまでは若さや美しさのみの基準で存在価値を計られていた・・・。
それが失われつつある今、自分はどう在るべきなのか。
いろいろと考えてしまう40歳なのですね・・・。

 

実在のエリザベートは身長172㎝、ウエスト51㎝、体重は平均して43~47キロだったとか。
モデル並みの体型、Wikipediaでみたら確かに美人! 

そうしてもてはやされ続けたが故の、40歳の悩みなのだろうなあ・・・。
私のような凡人であれば、少なくともそちら方面の悩みはなくて済んだ・・・。

スタイルが良くて美人、何もしなくていいリッチな生活、名誉。
誰もが憧れ、うらやむような人にでも、悩みのタネは尽きない。
そういうものなんだなあ・・・。

<Amazon prime videoにて>

「エリザベート1878」

2022年/オーストリア・ルクセンブルグ・ドイツ・フランス/114分

監督・脚本:マリー・クロイツァー

出演:ビッキー・クリープス、フロリアン・タイヒト・マイスター、カタリーナ・ローレンツ、
   ジャンヌ・ウェルナー、フィネガン・オールドフィード

歴史発掘度★★★☆☆

女の幸福度★★★☆☆

満足度★★★☆☆


おしょりん

2025年04月26日 | 映画(あ行)

メガネ作りの始まりの物語

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作家・藤岡陽子が史実を元につづった同名小説を映画化したもの。

明治37年、福井県足羽郡麻生津村。
庄屋の長男・増永五左衛門(小泉孝太郎)のもとに、
むめ(北乃きい)が嫁いできます。

ある日、大阪で働いていた五左衛門の弟・幸八(森崎ウィン)が帰郷し、
村を挙げてメガネ作りに取り組まないかと提案します。
当時、メガネはまだ人々に知られていなかったのですが、
今後活字文化の普及により、必需品になっていくだろうと、幸八は見込んだのです。
はじめのうち反対していた五左衛門ですが、
やがて挑戦を決めて、村の人々を集め、工場を立ち上げます。

福井県の福井市、鯖江市で、日本製メガネフレームの95%を生産しているといいます。
鯖江市は世界最高水準の技術を有する世界的メガネ産地。
つまりここまでに成長したメガネ作りの始まりの物語。

まずは、時代を読んだ幸八さんの先見の明が功を奏します。
でもこの村ではメガネをかけている人など誰もいない。
そもそも、メガネってなんだ?という話。
雪深いこの村を豊かするためには、農業だけではないなにかが必要だと、
幸八は常々考えていたのです。

そして、それに挑戦をすると決めた五左衛門さんがまたすごい。
まずは金属加工のところから始めなければならず、職人を育てなければなりません。
ようやくまともな物をつくることができるようになるまで数年。
そんなうちにも、メガネフレームの素材の主流が変わっていく。
元は豊かだった五左衛門の家も田畑を手放し借金をして、
どんどん生活が苦しくなっていきます。
そんな中でも全責任を背負って前進する彼の姿勢はもう、尊敬するしかありません。
どこかであきらめ、投げ出してもおかしくはなかった・・・。

そうした頑張りが、今の福井のメガネ作りの元になったというのは、
いかにも感慨深いですね。
拍手!!!

そして本作、ほんのりとむめと幸八のロマンスが描かれているところが、ステキなのです。

いえ、実際には何もない。
けれど、互いの中に淡い思いがあったという物語性を入れたところが、良いなあ・・・。

 

<Amazonプライムビデオにて>

「おしょりん」

2023年/日本/120分

監督:児玉宣久

原作:藤岡陽子

出演:北乃きい、森崎ウィン、小泉孝太郎、かたせ梨乃、佐野史郎

歴史発掘度★★★★☆

ロマンス度★★★★☆

満足度★★★.5


「穴」小山田浩子

2025年04月21日 | 映画(あ行)

生命が尊い正体をあらわす

 

 

* * * * * * * * * * * *

仕事を辞め、夫の田舎に移り住んだ私は、
暑い夏の日、見たこともない黒い獣を追って、
土手に空いた胸の深さの穴に落ちた。
甘いお香の匂いが漂う世羅さん、
庭の水撒きに励む寡黙な義祖父に、
義兄を名乗る見知らぬ男。
出会う人々もどこか奇妙で、見慣れた日常は静かに異界の色を帯びる。
芥川賞受賞の表題作に、農村の古民家で新生活を始めた
友人夫婦との不思議な時を描く2編を収録。

* * * * * * * * * * * *

芥川賞受賞の表題作を読んで、やっぱり小山田浩子さん、好きだわ~って思ってしまいました。
先に読んだ「工場」がすごく好きだったので、
引き続きということで手に取りました。

 

一見ごく普通の主婦のごく普通の日常を描いたようでいて、
いつの間にか、どこか不可思議な別の世界へ迷い込んでしまったような感じ。

主人公の「私」は、夫の実家の隣にある家に引っ越してきます。
これまでは共働きといっても非正規職員だったのですが、
それなりに忙しい日々。
しかしこの度仕事を辞めて専業主婦に。
とはいえ、片田舎のこの家では、ほとんど何もすることがなく、
外出しようにも出かける先がありません。
隣家の姑も仕事をしているので日中は留守。
「私」は、世間の人々が忙しく働いているのに
自分だけ何もせずぼーっと一日を過ごすことに罪悪感を覚えます。

そんな、せわしない世間から逸脱した「私」が、
いつしか人の世の流れとは別の流れの中に漂うことになってしまったのかも知れません。
そこで見る、不可思議なけもの、穴、見知らぬ男、子どもたち・・・。
みな愛おしい・・・。

本巻の巻末解説で、笙野頼子さんが、こんな風に書いています。

「多くの人は切り替わりを待ちわびるけれど、
それはふいに来てそのまま時間刑に。

理不尽や不可解が実は環境であること、
死者が、というより今まで見えなかった人や物が見える日が来る事、
また、どんなにきつくてもその中で生命が尊い正体をあらわす事。」

 

いやあ、さすが物書きさんの見方は鋭い。
これこそが本作の本質を端的に表わしているなあ・・・と感服しました。
私などどうすれば本作の魅力を語れるのか、ぜんぜん分かりません。

 

ともあれ、すべての登場人物や、生き物、出来事が意味を持って配置されている。
小説とはこうありたいという見本のような・・・。


「穴」小山田浩子 新潮文庫

満足度★★★★★


明日を綴る写真館

2025年04月05日 | 映画(あ行)

写真には撮る者の心が写る

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名バイブレイヤーとして知られる平泉成さん、80歳にして初の映画主演作。
ちょっと意外な感じですが、そうなんだあ・・・。

 

気鋭のカメラマンとして活躍する太一(佐野晶哉)。
端からの評価はとても高いのですが、自分では納得していない様子です。
ある時、さびれた写真館を営む鮫島(平泉成)の撮影した一枚の写真に心奪われ、
華々しいキャリアを捨てて、鮫島に弟子入りすることにします。

太一は他人に関心を持たず、淡々と写真をとります。
だから人物を撮るのは苦手。
そんな彼が、写真館を訪れる客1人1人と対話し、
被写体と深く関わっていく鮫島の撮影スタイルに
気づきを得ていきます。

太一には子供の頃見て忘れられない写真がありました。
満開の桜の木の下にたたずむ後ろ姿の女性。
その時、太一には美しい音楽が流れてくるのが聞こえたのです。
誰が撮ったのかも分からない、展覧会で見たその写真が、
彼がカメラマンを目指したきっかけなのでした。

音楽が流れる写真。
太一はそれを目指していたのですが、
自分の撮る写真から音楽が聞こえてきたことはない。

子どもの頃から両親にまともに愛されたことがないと思っている太一は、
自分の生い立ちのせいで、そんな写真を撮ることができないのか、
とも思うのです。

また、鮫島夫妻に温かく迎えられた太一ですが、
実はこの写真館を本来継ぐべきひとり息子は
とうに家を出て、疎遠になっている。

こちらの鮫島と息子の確執も又、問題なのでした。

いずれにしても、対話の不足が根底にあるのです。
ゆっくりと本当の気持ちを話し合うこと。
そうして、ほどけていくものが確かにある。

太一役の佐野晶哉さんは、えーと、“Aえ!group”のメンバーですか。
なかなかいい感じです。

<WOWOW視聴にて>

「明日を綴る写真館」

2024年/日本/104分

監督:秋山純

原作:あるた梨沙

脚本:中井由梨子

出演:平泉成、佐野晶哉、嘉島陸、咲貴、黒木瞳、市毛良枝

家族の対話不足度★★★★☆

満足度★★★☆☆


違国日記

2025年03月29日 | 映画(あ行)

コミュ障女子vs不安定少女

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ヤマシタトモコさん同名漫画の映画化です。

大嫌いで疎遠だった姉をなくした35歳独身の小説家・高代槙生(新垣結衣)。
葬儀の席で、姉の1人娘15歳・朝(早瀬憩)に
無神経な言葉を吐く親族たちの態度に我慢ならず、
勢いで朝を引き取ることにしてしまいます。

そもそも槙生は人とのコミュニケーションが苦手で、
感受性の強い10代少女との同居は、
勢いで決めてしまったものの、不安でしかありません。
しかし、親友の奈々(夏帆)や、元恋人・笠町(瀬戸康史)に支えられて、
なんとか2人の生活が始まります。

一方、この度中学を卒業し、高校生となる朝は、
人なつっこい性格ながら、母親の影響もあるのでしょうか、
自分のやりたいことも周囲を気にして踏み出せないところがあるようです。

性格がまったく異なるこの2人、案の定なかなか理解し合えないのですが、
それでも日々の生活の中でかけがえのない関係を築いていきます。

 

槙生は、昔姉から
「夢みたいなことばかり考えてないで、ちゃんと現実を見なさい」
と常に言われたことで傷ついて、姉を嫌っていたのでした。
それでも槙生は、自分らしさを貫いて、ファンタジー小説を描くようになったわけ。

しかしはじめから姪の朝に、姉が大嫌いだったと宣言するものだから、
当初の2人の関係はいかにもギクシャクしてしまいます。

朝にとっての母、つまり槙生の姉は、ごく普通に優しく愛情深い母親。
ただ少し、「普通」のあり方から外れることを避ける傾向があったくらい。

1人の人間でありながら、槙生から見た「姉」の像と、
朝から見た「母」の図はまったく異なっている。
けれど、2人がそのことを理解し受け入れていく過程こそが本作ということになりましょう。

終盤、槙生が自分の母親から姉妹2人の子どもの頃の話を聞いて、
二人の性格や関係性が今のようになってしまっていたわけが
おぼろげながら浮かび上がる、というところがミソです。
あくまでもおぼろげながらということで正解とは限りませんが。

15歳・朝は、両親を亡くしたばかりというだけではなくて、
その年齢からも、純粋で脆くて危なっかしい。
そういう雰囲気を早瀬憩さんがしっかり演じていました。
えーと、「ブラッシュアップライフ」や「虎に翼」にも出演? 
あらやだ、気づいていませんでした。
今後有望な方だと思います。

 

若干のコミュ障で、片付けも料理も苦手。
自立している35歳ながら、朝よりも子供のようなところがある槙生も、
新垣結衣さんが魅力的に演じています。

 

<WOWOW視聴にて>

「違国日記」

2024年/日本/139分

監督・脚本:瀬田なつき

原作:ヤマシタトモコ

出演:新垣結衣、早瀬憩、夏帆、小宮山莉渚、染谷将太、瀬戸康史

年代ギャップ度★★★★☆

満足度★★★★☆


ANORAアノーラ

2025年03月12日 | 映画(あ行)

夢から覚めるとき

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先日授賞式があった第97回アカデミー賞、作品賞受賞作。

ストリップダンサーのロシア系アメリカ人のアニーこと、アノーラ(マイキー・マディソン)が、
店に来たロシア人富豪の御曹司、イヴァン(マーク・エイデルシュテイン)と知り合います。

2人は次第に親しくなって、彼がロシアに帰るまでの七日間、
アノーラは15000ドルの報酬で契約彼女となることに。
パーティーや、ショッピング、贅沢三昧で遊び尽くした2人。
その勢いで、2人はラスベガスの教会で衝動的に結婚してしまいます。

ロシアにいるイヴァンの両親は、息子が“娼婦”と結婚したとのウワサを聞いて、猛反発。
すぐに結婚を取り消しさせようと、2人の元へ屈強な男たちを送り込んできます。

 

大富豪のバカ息子と、その贅沢な暮らしにつられてしまった女の子の恋愛ごっこ・・・。
はじめのうちのこんなシーンは、実のところちっとも面白くないのです。
面白いのは、この2人の元に3人の男たちが乗り込んできたところから。

イヴァンの両親の命を受けてやって来たアルメニア人司祭と、その手下。
何も乱暴しようとするわけではありません。
とにかく2人を説き伏せて結婚をなかったことにしようと説得に来た。
しかし、あろうことかイヴァンが自分だけさっさと逃亡してしまうのです。

わけが分からないアノーラはとにかくイヴァンに付いていこうとするのですが、
2人に逃げられてはどうにもならなくなってしまうので、
男たちに取り押さえられてしまいます。
抵抗して大暴れ、騒ぎまくるアノーラに大の男3人が四苦八苦。
高価な置物などが飾られた部屋はめちゃくちゃ・・・。
ようやく落ち着いたところで男3人とアノーラは、イヴァンを見つけ出して話し合うべく、
車で彼の立ち寄りそうなところを探し回ることに。
そこからは、4人のロードムービーのようになっていきます。

そんな中、次第に冷静さを取り戻していくアノーラ。
さて・・・。

 

乗り込んできた3人の男の中の1人、イゴールは、1人冷静で、
静かに成り行きを見守っているように見受けられます。
ちょっと気になる存在でもある。

そして最後に、ロシアからラスボス到着。
この成り行きは、予想が付いたことではありますが、まったく興味深い。

結局、愛する2人が障害を乗り越えて結ばれる、
などという話では全くないところが気に入りました。
とにかく、楽しめます!!

本作の題名は、ズバリ主人公の名前そのものなのですが、
作中ではほとんど愛称、アニーが使われています。
しかし、終盤でその名前の意味を言うシーンがありまして、そこが又印象深い。
このドタバタ劇が、何やら美しいものとしての印象が残るのは、
この名前故でありましょう。

<シネマフロンティアにて>

「ANORAアノーラ」

2024年/アメリカ/139分

監督・脚本:ショーン・ベイカー

出演:マイキー・マディソン、マーク・エイデルシュテイン、ユーリー・ボリソフ、
   カレン・カラブリアン、バチェ・トブマシアン

ドタバタ度★★★★☆

満足度★★★★★


愛に乱暴

2025年01月31日 | 映画(あ行)

正気と狂気のはざま

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桃子(江口のりこ)は、夫・真守(小泉孝太郎)と共に、
真守の実家の敷地内に建つはなれで暮らしています。
子どもはいなくて、夫は妻に無関心。
義母・照子(風吹ジュン)とは表向きうまくいっているけれど、
桃子はストレスを抱えています。

桃子は手作り石けん教室の講師で、お小遣い程度の収入を得ているだけで、
ほとんど専業主婦。
手の込んだ献立を作り、人知れずゴミ置き場の掃除をしたり・・・、
丁寧な生活を心がけているのです。

しかし、薄々気づいていた夫の不倫がいよいよ表沙汰になり、
桃子の日常が徐々に平穏を失っていきます。

 

桃子の一番の心の重りになっていることは、子どもがいないということなのでしょう。
いつも庭に迷い込んでくる猫を気にしているようなのも、
子どもに向ける愛情を持って行く先がないから?などと思えたのですが。

次第に心の平衡を失っていく桃子を見ていると、
人の心の正常と異常、正気と狂気の区分が分からなくなってきます。
本来そんなことは線引きできるものではないのでしょう。

桃子がチェンソーを購入したときには実にゾッとしてしまったのですが、
まあ、スプラッタ作品にはなりませんので、ご安心を。

そして、いよいよもうダメか?というときに、
思いも寄らない人から言われたことが彼女をすくい上げます。

なるほど・・・。
さすが吉田修一作品。

実にうまく人の心をすくい取りますね。

<Amazonプライムビデオにて>

「愛に乱暴」

2024年/日本/105分

監督:森ガキ侑大

原作:吉田修一

出演:江口のりこ、小泉孝太郎、風吹ジュン、馬場ふみか、青木柚

 

心の不安定度★★★★☆

満足度★★★★☆


お母さんが一緒

2025年01月18日 | 映画(あ行)

最後まで登場しない母

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本作、舞台がほとんど旅館の一室で、会話によってストーリーが進んでいくということで、
舞台臭がプンプンする・・・と思ったら、やはりでした。

ペヤンヌマキ主催の演劇ユニット「ブス会」が2015年に上演した同名舞台をもとに、
橋口監督が自ら脚色を手がけ、
CS放送「ホームドラマチャンネル」が制作したドラマシリーズを
再編集して映画化したもの、とのこと。

親孝行のつもりで、母親を温泉旅行に連れてきた三姉妹。

長女・弥生(江口のりこ) 
美人の妹たちにコンプレックスを持っている。独身。

次女・愛美(内田慈)
優等生の長女と比べられ、自分の能力を発揮できなかった。独身。

三女・清美(古川琴音)
姉たちを覚めた目で見ている。
今結婚しようと思っているカレシを皆に紹介したい。

ということで、母を伴い温泉旅館に到着したところから物語は始まります。
さてしかし、お母さんは最後の最後まで画面には出てきません。
旅館の別室で過ごしているというテイで、
主に三姉妹の会話でストーリーが進んでいきます。

しかしこの3人と母親は、常からあまりうまくいっていない。
そもそも結婚が失敗だったと、なにかといえば愚痴る母は、
そのほかについても思考がすべてネガティブ。
どんなことにも文句を付け、姉妹らにも優しい言葉をかけたことがほとんどない。

そんな母親の影響が彼女らにも多少あるようで・・・。


長女はなんとも母親そっくりでネガティブ思考。
旅館に着いたそうそう、露天風呂に虫が浮いているとか、
部屋がかび臭いとか、さっそく文句の言い放題。


次女は常にできの良い長女と比べられることに嫌気がさしていて、
長女に対しての反感いっぱい。


三女は少し気楽な存在ではあるものの、
母と姉2人の言動の荒さに、イヤになっている。
結局現在は姉2人が家を出て、自分に母が押しつけられているのも納得できない。
しかしとにかく、せっかく家族みんなが集まる機会なので、
この際結婚したいと思う相手をみんなに紹介しようと、
カレシをこの旅館に呼び寄せるのです。

ポンポンとああ言えばこう言うという姉妹たちのやりとりがとにかく面白い。
しかし、そこまで言っちゃあお終いでしょうというところまで軽く踏み込んでしまう。
普通の友人付き合いならこの時点でアウトかもしれません。
けれどそうならないのが家族なんだなあ・・・。
ついその後には、互いに共感して慰め合ったりもする。
おかしなものです。

 

清美のカレシ、タカヒロ(青山フォール勝ち)がまた
存外にイイ奴なんで、このムコ様は思いがけない拾いものだと思います。

 

<Amazon prime videoにて>
「お母さんが一緒」

2024年/日本/106分

監督:橋口亮輔

原作:ペカンヌマキ

脚本:ペカンヌマキ、橋口亮輔

出演:江口のりこ、内田慈、古川琴音、青山フォール勝ち

罵り合い度★★★★☆

家族度★★★★☆

満足度★★★★☆


大綱引の恋

2025年01月08日 | 映画(あ行)

地域再生

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鹿児島で400年以上の伝統を誇る川内(せんだい)大綱引を題材にしています。

 

35歳独身の有馬武志(三浦貴大)は、東京に進学、大手企業に就職するも挫折し、
川内の実家に戻って来ています。
今は、父の建築会社を手伝っていますが、
大綱引の師匠でもある父から、早く嫁をもらってしっかりした後継ぎになれと言われています。
ある日武志は、韓国人研修医、ジヒョン(知英)と知り合い、心を通わせるように。

またそんな頃、母、文子が定年退職を宣言し、家事を放棄したため、
やむなく武志と父、妹(比嘉愛美)で家事を分担しますが、
母への不満、不信感を募らせていきます。

さて、いよいよ年に1度の一大行事である大綱引の日が迫ります。
この行事の大役の一つを武志は務めたいと思っているのですが、
そのためには役員から選ばれなければならないのです・・・。

 

こうした地方の伝統行事を描くときに、
1度東京へ出て、夢破れて戻って来た若者が登場する、
というのはお定まりみたいになっていますね。
まあ、都会に出たからこそ、地元の良さがよく分るということなのかもしれません。

 

武志は、東京での仕事に失敗したというわけではなくて、
リーマンショックで会社がダメになったためにやむを得ず帰ってきた、
ということではあるのです。
でも、父の仕事仲間や近隣の人々からの人望もあり、
彼なりに前向きに頑張っています。
しかし、父は彼を認めようとしない。
1度自分の会社を継がないで東京へ行ってしまったのに、
のこのこ帰ってきたということが気に入らないのです。

そんな、父と息子の確執を描きつつ、
次第に大綱引の行事へ向けて話は盛り上がっていく・・・。

ただ単に綱引をする、というわけではなく、いろいろな手順や決まり事があって、
まさに、続けていかないとそれっきり途絶えてしまいそう。
見ているだけでも血湧き肉躍る感じになりそうです。

それと、母親が60になったのでおかみさんも母親も止める!と宣言して、
仕事の事務方からも家事からも手を引いて、外出がちになってしまったというのには、
拍手してしまいたくなったのですが、実はそれにも事情があったのでした。

けれどこの家の家事を、しぶしぶながらも他の家族みんなで公平に分担して、
ナントカこなせるようになっていく様は、見事でした。
主婦も、たまにはストライキ、やってみるべきかも。

武志の幼馴染み、典子(松本若菜)は、バツイチの子持ちですが、
実は武志に思いを寄せているらしいのも、ちょっと切なくてステキでした。
自衛隊員、と言うのもナイス!!です。

 

・・・、と、色々見所があって、大綱引というすばらしい伝統行事も知ることができて、
一見の価値ありです。

 

<Amazon prime videoにて>

「大綱引の恋」

監督:佐々部清

出演:三浦貴大、知英、比嘉愛美、中村優一、松本若菜

 

伝統行事を知る度★★★★★

家族愛度★★★★☆

満足度★★★★☆


アンダー・ユア・ベッド

2024年12月21日 | 映画(あ行)

異常なストーカーではあるけれど

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家でも学校でも、誰からも必要とされず、
存在自体を無視されていた男・三井直人(高良健吾)。
学生時代には、誰からも名前すら覚えてもらえません。
しかし、たった1人、「三井くん」と名前を呼んでくれた女性・佐々木千尋(西川可奈子)のことを
忘れることができません。

11年後、三井は千尋との再会を夢見ていましたが、ついに彼女を見かけます。
しかし彼女にはかつての快活さはなく、
暗く沈んで、まるで別人のようになっていました。
そこで、三井の千尋への純粋な思いは暴走をはじめます。

三井は千尋の家のすぐそばで熱帯魚店を開き、
その階上の居所から、千尋の家を監視しはじめたのです。
千尋は結婚して、夫と赤子との3人暮らし。

三井は、千尋を盗撮、盗聴しはじめ、
やがてついには家に侵入してベッドの下に潜み、
夫婦の営みまでを監視しはじめたのです・・・。

三井はもう間違いなくストーカーと化しているのですが、
その異常性にかすかに共感できる気がしてくるのも、本作の不思議なところ。

三井が千尋の家を監視して分ったのは、彼女が夫から酷い暴力を受けているということ。
ひどく憤りを感じる三井ですが、そもそも自分がやっているのも違法行為だし、
暴力を止めに入りたくても、自分の腕力にまったく自信がない。
ベッドの下で、ひたすら耐えているだけの情けないやつなのです・・・。

三井の願いは、ただ千尋のそばにいたい、近くで彼女の存在を感じていたい、
ということのみ。

そもそも学生時代に会っていたはずの千尋は、
三井のことをまったく覚えていなかったのです。
そんな相手に過剰に思い入れて、でも何も言い出せず何もできず・・・。
異常で情けない男の物語。

 

なかなかに心揺さぶられます。


<Amazon prime videoにて>

「アンダー・ユア・ベッド」

2019年/日本/98分

監督・脚本:安里麻里

原作:大石圭

出演:高良健吾、西川可奈子、安部賢一、三河悠冴

ストーカー度★★★★☆

透明人間度★★★★☆

満足度★★★.5


アネット

2024年12月07日 | 映画(あ行)

愛か、狂気か

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ロック・オペラ・ミュージカル(?)
兄弟バンド、スパークスが執筆したオリジナルストーリーをベースにしているとのこと。

それがもう、斬新でユニークで衝撃的って、
うーん、うまい表現が見つかりませんが、とにかく、
映画表現の世界もここまで来たかという、一見の価値がある作品。

スタンダップコメディアンのヘンリー(アダム・ドライバー)と
一流オペラ歌手のアン(マリオン・コティヤール)が出会い、恋に落ちます。
そして間もなく2人の間に女の子・アネットが誕生。
幸せいっぱいのはずなのですが、ヘンリーは愛に閉じ込められているように感じ始める。

ヘンリーのトークショーはあまりにも話が過激で乱暴なために客が離れていき、
一方アンの人気はますます上昇。
次第にすれ違う心を埋めるかのように、船の旅に出た家族ですが、
ある嵐の夜に事件が・・・。

大波に翻弄される雨で濡れた船の甲板で、
狂ったように踊る男女のシーンはなんとも危うく恐ろしく、印象的でした。

まだ赤子のうちに母を亡くしてしまったアネット。
しかし、そのアネットに奇跡が。
なんと美しい声で歌い始めたのです・・・!

 

実は、生まれたときからアネットは「人形」のすがたで描かれているのです。
なんの予習もなしで見始めたので、ここのところでまず驚きました。
もちろん登場人物たちには、生身の赤ん坊に見えているのです。
でも最後まで見て行くとその意味が分ります。

赤ん坊であるのに、歌をうたう。
その並みではない奇跡の子どもを表わしているということもあるのでしょうけれど、
それよりもアネットは、ヘンリーの思いのままに使われる「操り人形」
という意味を含んでいると思われます。

ヘンリーはお金儲けのためにアネットを歌わせ、興行で大もうけをするのです・・・。

そんなアネットが、終盤に父ヘンリーを断罪するときにのみ、
生身の人間の姿となります。
この時に初めてアネットは己の意志を強く持つということ。
それまでは、父の操り人形であったというわけで・・・。

ファンタジーであるような、寓話であるような・・・、
そう、怪談でもあるかな。
けれどとても現実的でもあります。

恐るべし。
映画の新たな可能性を見たような気がしました。

ほんの少しですが、古舘寬治さんや水原希子さんが出てきたのも嬉しかった!

 

<Amazon prime videoにて>

「アネット」

2020年/フランス・ドイツ・ベルギー・日本・メキシコ/140分

監督:レオス・カラックス

脚本:ロン・マエル

出演:アダム・ドライバー、マリオン・コティヤール、サイモン・ヘルバーク、
   デビン・マクダウェル、古舘寬治、水原希子

音楽性★★★★☆

ミラクル度★★★★☆

満足度★★★★★


海の沈黙

2024年11月25日 | 映画(あ行)

本当の美とは

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倉本聰氏が長年にわたり構想したという物語の映画化です。

 

世界的に著名な画家、田村修三(石坂浩二)の展覧会で、
作品の一つが贋作と判明します。
関係者の誰もが本物と信じて疑いすら抱いていなかったものを、
作者である本人がこれは自分が描いたものではない、と表明したのです。

また、北海道小樽では全身に入墨を施した女性の死体が発見されます。

 

この二つの出来事に関係する人物、それが津山竜次(本木雅弘)。

彼は若い頃、新進気鋭の天才画家と称されながら、
ある事件をきっかけに人々の前から姿を消しました。

かつて津山の恋人で、現在は田村の妻である安奈(小泉今日子)は、小樽へ向かい、
2度と会うことはないと思っていた津山と再会を果たします。

画壇を追われるようにして、姿を消していた津山。
彼は画壇に向けた思いをたたきつけるように、これまで絵を描き続けていたのです

すなわち彼が描き続けていたのは、「名画」とされているものの贋作。
それが、贋作とバレないどころが本物を凌駕する「美」を放っている・・・。

絵画における「本物」とはいったい何なのか。
描いた人物なのか、それとも、作品それ自体なのか。
贋作という判定を受けた途端にその絵が放っていた「美」は損なわれてしまうのか・・・? 
そうであれば絵の価値とは一体・・・?

私たちがいかに「権威」とか「金銭的価値」を基準に物事の判断をしているのか、
考えさせられます。

しかしまた、津山はここに至ってようやく、
自分自身の「美」を追求しはじめる。

というのが、テーマの一つ。
そしてもう一つ、サブストーリー的にあるのが大人の愛ですな。

安奈は田村の妻ではありますが、とうに愛情は薄れ現在別居中。
ただ田村が安奈を「妻」の座に縛り付けておきたいが為だけに、
離婚もできないでいるのです。
そんな中、安奈は過去の男、津山が忘れられない・・・。
けれど長く案じていた津山の居所が知れたとしても、
その胸にまっすぐに飛び込んでいけるほどの若さはない。

分別がありすぎる大人というのも、やっかいなものです。

一方、津山の方も彼女への思いを胸底に秘めたまま・・・。
けれど、世捨て人のようなこれまでの彼の人生、
女体への入墨を施すことなども仕事のひとつで、
何やらなまめかしい事情(情事?)もないわけではない。
ふむ。
やはり大人の愛ですな。

倉本聰人気でしょうか、映画館はご年配の方でいっぱいでした。

 

<シネマフロンティアにて>

「海の沈黙」

2024年/日本/112分

監督:若松節朗

原作・脚本:倉本聰

出演:本木雅弘、小泉今日子、清水美砂、仲村トオル、菅野惠、石坂浩二、中井貴一

 

美を考える度★★★★☆

大人の愛度★★★★☆

満足度★★★.5


あまろっく

2024年10月04日 | 映画(あ行)

一家の「あまろっく」とは?

* * * * * * * * * * * *

通称「尼ロック」と呼ばれる尼崎閘門によって、水害から守られている兵庫県尼崎市。

39歳近松優子(江口のりこ)は、リストラでこの尼崎の実家に戻って来ました。
実家は父(笑福亭鶴瓶)が小さな鉄工場を営んでいて、母はすでに他界しています。
優子は仕事ができて、それについてもプライドがありすぎるほどあったのに、
次の仕事は見つからず、結局定職に就かないまま
ニート状態で数年が過ぎてしまいます。

そんなある日、「人生に起こることは、何でも楽しまな」が信条の脳天気な父が、
再婚相手として20歳の早希(中条あやみ)を連れてきます。

家族団らんにこだわり、楽しもうとする早希。

自分より年下の“母”に戸惑う優子。

やがて、ちぐはぐでかみ合わない共同生活が始まります。
しかし、ある悲劇が起こり、優子は家族の本当の姿に気づきます。

経営者に甘んじて、まともに仕事らしい仕事もしない父。
「俺はこの家の尼ロックだ」、「俺はこの会社の尼ロックだ」と公言して、
寝転んでいるか、誰かとおしゃべりをしているか。
けれど本当に人がいいので、周囲の人には好かれているのです。

それにしても、そんな人物が20歳の女性と結婚とは・・・!
しかも、笑福亭鶴甁さんと中条あやみさんって、
ムリムリムリ・・・と、思ってしまうわけですが。
早希さんはよほど家族の愛に飢えていたと思われますね・・・。

ところが、思いがけない展開にビックリ。
人と人とのドラマは本当に予測がつきません。
あれだけイヤミなほどにツンケンしていた優子も変わっていきます。

水害から町を守るために作られたという尼ロック。
その説明から入っていく本作。
ステキな町の物語でした。

<Amazon prime videoにて>

「あまろっく」

2024年/日本/119分

監督・原案:中村和宏

脚本:西井史子

出演:江口のりこ、中条あやみ、笑福亭鶴瓶、松尾諭、中村ゆり、駿河太郞

変な家族度★★★★☆

郷土愛度★★★★☆

満足度★★★★☆


あの人が消えた

2024年10月01日 | 映画(あ行)

一体何を見せられているのか

* * * * * * * * * * * *

宅配会社の配達員・丸子(高橋文哉)。

彼の配達受け持ち区域の中に、「次々と人が消える」とウワサされるマンションがあります。
丸子はほとんど毎日のようにそのマンションを訪れるうちに、
怪しげな住人の秘密を知っていきます。
ある日、そのうちの一軒に魅力的な女性・小宮(北香那)が越してきます。
どうやら、その人は丸子が好きなアプリ小説を書いている当人らしい。

しかし、その後、小宮の姿が消えてしまいます。
丸子は小説家を目指す職場の先輩・荒川(田中圭)に相談。
怪しい住人の正体や小宮の行方を探り始めます。

作中で荒川が、
「寿司屋にマグロ食いに行ったら、ガパオライスがでてきた」
というたとえを多用します。
それくらいに、話の展開が予想外というかちぐはぐということ。

まさしく本作自体もその通り。
いなくなった女性の行方と、怪しげな住人の正体をさぐるミステリ的作品
かと思って見始めたわけですが、ところが・・・?

いや、これは素っ頓狂な警察のストーリー・・・?
戸惑いつつそんな状況を受け入れて、それを楽しみ始めた矢先に・・・。

ストーリーは勝手に二転三転。

本作のすべてが伏線、と、予告映像にあった意味が、
最後まで見てやっと分ります。

たくらみに満ちたストーリー。
ヤラレタ~。
最後の最後もまた、意表を突かれること間違いなし。

水野監督は、あのTVドラマ「ブラッシュアップライフ」を演出した方か。
なるほど~。

 

<シネマフロンティアにて>

「あの人が消えた」

2024年/日本/104分

監督・脚本:水野格

出演:高橋文哉、北香那、坂井真紀、袴田吉彦、菊地凛子、中村倫也、染谷将太、田中圭

予測不能度★★★★★

満足度★★★★☆


あんのこと

2024年09月25日 | 映画(あ行)

衝撃の結末ですが・・・

* * * * * * * * * * * *

売春・麻薬の常習犯、21歳、香川杏(河合優実)。
ホステスの母と足の悪い祖母との3人暮らし。

子どもの頃から、母に殴られて育ち、小4で不登校。
12歳で母の紹介で初めて体を売る・・・。
今も、そうして稼いだお金を母にむしり取られてしまうような毎日。

そんな彼女が、人情味あふれる刑事・多々羅(佐藤二朗)と出会ったことで、
更生の道を歩み出します。
また、多々羅の友人、ジャーナリストの桐野(稲垣吾郎)も
なにかと力を貸してくれるようになります。

 

本作、実話に基づいているということで、また少し胸が締めつけられてしまうのですが・・・。

小学校4年までしか学校に行っていない。
ということで、ろくに漢字も読めないような杏。
これもひとえに育児放棄&虐待の母親の責任ではありますが・・・。
しかしこのままではまったく彼女の未来が見通せない。
杏の腕にはリストカットの傷跡がいくつもあります。

そこへ、ちょっと風変わりでお節介な刑事登場。
多々羅は本気で杏の未来を心配し、
母親の元から引き離したり、薬物を止めるための会に誘ってくれたり。
実はその会も、多々羅が主催していたりします。
そして、桐野の世話で杏は介護の仕事に就きます。
夜間の学校へ通い、漢字や算数を勉強したりもする。
何事にも真摯で意欲的です。
きちんとした仕事について、誰かの役に立っているという自信が
彼女に勇気を与えているようです。
そして、きちんと彼女を見守ってくれる人の存在も。

暗いどん底の世界に埋没していた彼女ですが、
実は若い彼女の中には、ちゃんと前進しようとする力が眠っていたのです。
その日のことをノートに書き留め、薬を使わなかった日の丸印の数を更新し続けていた杏。

 

そこまでは実に順調で、これは1人の少女の更生の物語なのね・・・と思ったところへ、
暗雲が立ちこめます。
いきなりコロナ禍に突入。
学校は休みになってしまうし、介護の仕事はバイトの者は待機になってしまいます。



そして何よりも、杏にダメージを与えたのは多々羅の真実。
いやあ・・・まさかまさかですね。

こういう話だとは思いもよらず・・・そしてそのままラストに突入。
言葉をなくします。

 

下手な小説以上に現実は不可解で厳しい・・・。
せめて何か少しでも希望の光を見たかったのですが・・・。

いや、でもやり方次第では、杏のように自力では這い上がることができない人も
闇の世界から救い出すことは可能だということですよね。
そこの所に、意義を見出したいと思います。

私、河合優実さん、気に入ってしまいまして。
今、NHKの連続ドラマにも出演していますね。
今後、大いに有望な方だと思います。

 

「あんのこと」

2024年/日本/113分

監督・脚本:入江悠

出演:河合優実、佐藤二朗、稲垣吾郎、河井青葉、早見あかり

悲惨な生い立ち度★★★★★

更生度★★★★☆

満足度★★★★☆