映画と本の『たんぽぽ館』

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「戦争は女の顔をしていない1」原作スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ 小梅けいと

2023年02月20日 | コミックス

戦争に加わった女性達

 

 

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ソ連では第二次世界大戦で100万人をこえる女性が従軍し、
看護婦や軍医としてのみならず兵士として武器を手にして戦った。
しかし戦後は世間から白い目で見られ、
みずからの戦争体験をひた隠しにしなければならなかった――。
500人以上の従軍女性から聞き取りをおこない戦争の真実を明らかにした、
ノーベル文学賞作家の主著。

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かつてのソ連軍に従軍した女性達500人以上から聞き取りを行って書かれた本作。
私はちょっとズルをして原作本をスルーし、
マンガ化された本作の方を手に取りました。

 

第二次世界大戦の時の話ですので、まさに今聞き取りをしなければ、
生存者はいなくなってしまうというようなギリギリのタイミング。
というのも、彼女たちは自らの体験をなかなか
人には語ろうとしなかったためなのですね。

それは女性に限らず、戦闘の前戦に立った経験のある方、共通の意識のように思います。
それはつまり、いかに戦争のためとは言え、
人を殺してしまった体験は、深く心に傷を残すことなのだと思います。

 

本作中では、狙撃手として活躍した女性が、
一番始めのときには人を殺してしまったということにひどく衝撃を感じたけれども、
その後はそのように思わなくなったと語っています。

確かに、その都度動揺していたら、戦闘に加わることはできないでしょう。
攻撃を受けて死んでいく人々も、攻撃をする人々も、
戦争に於いては人間性を剥奪されていくのです。

このようなことは男女の別なく起こること。
本作は、女性ならではの出来事ももちろん語られています。

 

「洗濯部隊」として駆り出された女性達。
兵士達の衣服等を洗濯するという役割で、
武器を持って闘うというわけではありませんが、
シラミを殺す薬剤を使うために凄まじい悪臭がして、
手には湿疹ができ、爪が抜け落ち、重い洗濯物のために脱腸になる者も・・・。
そして兵士達には下に見られてバカにされ、下手をすると妊娠までさせられる・・・。

戦闘員であれば、男子と同じ厳しい行軍に耐えなければなりません。
そして、女子として物資の配慮もなし。
男物の下着、生理の手当の用品もない・・・。
こういうのは男女平等ではないですよね。

こんな中でも、祖国のため、勝利のため、男子と変わらずに困難に耐えてきた女性達。
実に貴重な聞き取り調査です。
圧巻です。

 

「戦争は女の顔をしていない1」原作スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ 小梅けいとKADOKAWA

満足度★★★★☆

 



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