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映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「ミステリと言う勿れ15」田村由美

2025年03月24日 | コミックス

ライカさ~ん、本当にもう会えないの???

 

 

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ついにライカと迎える桜の季節に整は…!?
入院中のライカの願いで、整は自身が通う大学のキャンパスを案内することに。
そうするうち、かつて構内で起こった不可解な転落死の謎を知って…!?
そして、ついに訪れる桜の季節に
ライカが整へ告げた言葉は…

* * * * * * * * * * * *

 

お待ちかね、「ミステリと言う勿れ」最新刊です。

本巻の表紙はライカさん。
表紙イラストが整くんでないのは、ガロくんにつづいて二人目。
ライカさんは、本作には欠くことができない重要な登場人物なのですが・・・。

 

まずは前巻の続きで、ライカに大学キャンパスを案内する整くん。
そして、かつて構内で起こった不可解な転落死の謎の解決編。
思いも寄らない顛末の末に起こった転落死。
その後のとある人物の行動によって、一層謎が深まってしまっていた・・・。
「ミステリと言う勿れ」とは言いながら、これは立派なミステリですよねえ・・・。

 

さて、ところでいよいよ春。
桜が咲き始めます。

ということはつまり、整くんとライカさんの別れの時。
この後はおそらく2度と会うことはないであろう二人。
・・・ここの詳しい説明は記さないでおきますので、
ぜひ本作のはじめから読んで確認ください・・・。

その最後の二人で過ごす夜に、ライカさんが言うのです。

「キスしてもいいだろうか」

ハッとして、戸惑い、逡巡する整くん。

なんとここから丸5ページ、足かけだと7ページ、
整くんが無言で悩んでしまう図がつづきます。
普通の漫画では考えられない構図。
これまで描いてきた整くんの描写の実績があればこそ、できることだと思います。

いや、ただ単に整くんがウブだから悩んで答えられないのではなくて、
「千夜子」という女性のことを思うからこそなんです。

でも初キッスのチャンスをみすみす逃した整くん。
切ないな~。
そしてその先は、切ないを通り越して、本当に悲しい・・・。

ライカさんは、消えてしまいました・・・。
その喪失感はまことに大きい。

 

それで、本作15巻なんですが、つまりこの15巻で、
整くんがライカさんと出会ってから3か月しかたっていないってことなんですよね。
うそ~。
まことに密な3か月ですね。
整くんはほとんど週に1度くらい何らかの事件に遭遇しているのでは・・・?

そして今になってまだ、語られていない大きな秘密があるらしいというのに又驚かされます。
ライカさんが最後に言い残したこと。

「天達先生に気をつけろ」

なんだかこの秘密は知りたくない気がするけれど・・・。
おそらくガロくんが追っている真実とも関係してくるのでしょう。

ますます、目が離せなくなりそうです。

 

「ミステリと言う勿れ15」田村由美 フラワーコミックスα

満足度★★★★★


「本なら売るほど 1」児島青

2025年03月10日 | コミックス

本と人がもう一度出会い直す場所

 

 

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ここは、本と人とがもう一度出会い直す場所。

ひっつめ髪の気だるげな青年が営む古本屋「十月堂」。
店主の人柄と素敵な品ぞろえに惹かれて、今日もいろんなお客が訪れる。

本好きの常連さん、背伸びしたい年頃の女子高生、
不要な本を捨てに来る男、夫の蔵書を売りに来た未亡人。

ふと手にした一冊の本が、思わぬ縁をつないでいく――。
本を愛し、本に人生を変えられたすべての人へ贈る、珠玉のヒューマンドラマ!

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本好きの者のためのコミック。
私も好きだわ~。

街の小さな古本屋「十月堂」は、ひっつめ髪の気だるげな青年が店主。
元々あった古書店を店主が閉めるというのを聞いて、
そのまま買い取って店を続けることにしたのです。
そのエピソードについては、巻末の一話として収められているので、それもお楽しみ。

 

冒頭の一話では、十月堂がとある老人の遺品整理として、
老人の蔵書を買い取りに行きます。

そこには驚くほどの多数の本が本棚に収らないものまであふれかえっていて、
しかも内容が充実していて、保存状態もいい。
文芸誌ばかりではなくサブカルまでそろっていて、
十月堂はこの老人の見識の広さに圧倒されます。
もしや研究者だったとか?と思いきや、普通の郵便局員だったとか。
生涯独身で、ひたすら本と共に過ごしたのであろう老人。
十月堂は、生きているうちにこの人と会ってみたかった・・・と思うのです。
でも、本を選ぶ刻限も迫っているし、
店は狭く予算も限られているので多量の本を買い取ることもできない。
そんな中でも精一杯吟味して買い取る本を選ぼうとする。
亡き老人へのリスペクト。

しみじみ来ます。

とにかくこのエピソードにぎゅっと心をつかまれまして、
ゆっくり大事に読みたくなってしまいます。

続巻が楽しみです。

 

「本なら売るほど 1」児島青 KADOKAWAハルタコミックス

満足度★★★★★


「詩歌川百景 4」吉田秋生

2024年10月23日 | コミックス

下手な親ならいない方が・・・

 

 

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幼き日に生き別れた兄弟と、突然の再会。

町が登山道整備で揺れるなか、新成人として水神祭りを終えた和樹。
友人の類や類の妹・莉子そして和樹自身も
将来のことを考え始めていたがそんな折、
和樹と守の育ての義母が亡くなりその葬儀の日に現れたのは・・・?

* * * * * * * * * * * *


「詩歌川百景」新刊です。

本作の大きなテーマの一つは、
「血がつながっていても、親子関係はうまくいくわけではないし、
余計やっかいなことになることも多い」
というふうに言えると思います。

気持ちが通じ合わなければ、他人なら別れてそれでけりがつく。
けれど、血のつながりは切っても切れなくて、
いつまでもどこまでも呪いのようにつづいていく・・・。

例えば価値観がまるで違う、妙とその母。
子どもに対する愛情が欠如しているとしか思えない、和樹らの母。

本巻ではそういうことを踏まえつつ、
血のつながりではなくて「縁」があってつながった人々の
絆というか和を改めて考えさせられます。

下手な親ならいない方が良い。
皆で見守りながら子どもを育てて行くという新たな認識が、
世間で広がれば良いなあ・・・と。

 

それで本巻では、母の再婚(何度目でしたっけ?)のため、
離ればなれになってしまった和樹の弟、智樹が登場します。
彼は、母の連れ子として新たな男と共に暮らすことになったのですが、
すぐに母に捨てられて養護施設に入れられてしまった・・・。
それですっかりすさんでしまう。

母と共に暮らすことに危惧を覚えた和樹は、母と共に暮らさない選択をし、
よい養父母を得てとりあえず安全な生活を手に入れていたわけです。
ただし、生まれて間もないもうひとりの弟と共に。

それでどうも智樹は、和樹のことを恨んでいるらしく・・・、
というストーリーに見せかけて、どうもそう単純な話でもなさそう・・・
というのが、なかなかうまいストーリー運びですね。

なんだかんだと言っても、ある時期までは仲良く共に育った兄弟。
悪意ばかりが増幅していくわけでもないのですね・・・。
智樹にはよい「縁」の出会いが訪れなかった、そういうことなのでしょう。

それにしても彼らの母親が酷すぎ!!

 

本作にも、「海街diary」関係者が頻繁に登場。
それにしても、すずちゃんとそのダンナは話の中には出てくるのに、
直接的には登場しないのですね。
著者がそういう方針を貫くことにしたようですね。
残念。
ぜひ見たかったのに~。

 

「詩歌川百景 4」吉田秋生 小学館フラワーコミックス

満足度★★★★☆


「ミステリと言う勿れ 14」田村由美

2024年07月08日 | コミックス

エア整くんの冒険

 

 

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とある事件の取り調べを通じて、整と知り合った大隣署の刑事・池本。
ある日妻子と実家に向かう途中、土砂崩れでトンネルに閉じ込められる。
そこには複数の男女が取り残されていて…

池本が謎に迫る一方、トンネル事故のニュースをTVで見た整は…?

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ウレシイ、久能整くんの最新刊。

本巻は、池本刑事がメインのストーリーです。
そういえば、青砥警部、風呂光刑事というふうに、
整くんゆかりの大隣署刑事たちの
個人事情を交えた事件の話が進んできていたのでした。

池本さんは、奥さんと生まれて間もない息子とで、
奥さんの実家へ向かうドライブの途中、
土砂崩れでトンネルに閉じ込められてしまうのです。

同じく閉じ込められたのは他の車に乗っていた人々。
しかしどうやらその中に、危険人物がいる。
池本さんは近頃すっかり整くんに感化されていて、
こんな時整くんならどう考えるか、と考えを巡らせるのがクセになっているのです。
それなので、このストーリーには実在しない「エア整くん」が登場して、推理します。

 

なんともユニークな登場の仕方でした。
ちょうどその時、当の本物の整くんは、
友人レンくんと共に、人間チェスのコマとなってイベントに参加しているのでした・・・。

だから本作については池本さんの活躍なのですが、
なぜか事件後に整くんは池本さんにお礼を言われてしまう。
「エア整くんのおかげでなんとかなったよ」と。
わけが分らずきょとんとしてしまう整くん。
ナイスです。

 

そしてまた新たな章では、整くんは彼の大学構内にライカさんを案内します。
そこで20数年前に2人の学生が不審死するという事故(?)があり、
その真相をたどるというストーリーが始まります。
今回は残念ながら「つづく」ということで・・・。

近いうちにライカさんはもう出てこなくなってしまうのでしょうか。
なんだか淋しくて残念です。

 

「ミステリと言う勿れ 14」田村由美 フラワーコミックスα

満足度★★★★☆


「ミステリと言う勿れ 13」田村由美

2023年09月17日 | コミックス

連続と知られていなかった、連続殺人事件

 

 

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刑事・風呂光の祖母の知人が富山で橋から転落して亡くなってしまう。
整は、プライベートでその事故について調べていた風呂光に意見を求められ、
富山を訪れることに。
しかしそこで、思わぬ人々、そして事件に遭遇し--!?

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「ミステリと言う勿れ」の第13巻。
前巻から始まった「富山編」の続きです。

 

刑事・風呂光の関係から、富山を訪れた整くん。
前巻のラストで海岸に倒れていたのは、
人気トラベル雑誌の記者・望月のようでしたが・・・?

 

はい、それは確かに彼で、凍死しているのを発見されたのです。
連絡を受けて現場に駆けつける、流刑事。
ちょうどその時、整くんはその流刑事の家に泊めてもらっていて、
常ならよその人の家では眠れないのに、
なぜか朝までぐっすりと寝てしまっていた・・・。

ふむふむ、ミステリファンとしてはこの辺に怪しさを感じるわけなのですが・・・?

だがしかし、より怪しいのは望月とコンビで動いていて、
いつもいいように望月に使われていた蕪木ですよね。
この2人は、結局何者なのか・・・!?

 

次第に見えてくる2人の奇妙な関係性。
そして望月の異常性。
本作にはなかなか恐ろしいサイコキラーが登場するので、油断なりません。

 

結局の所、ガロくんたちが追っている「星座」と関係した一連の事件と
本作は関係があるのか、ないのか。
まだまだ全貌が見えません。

映画化された「広島編」と合わせて、こちらも「富山編」として
ご当地シリーズを今後も続けてほしいです。
そして本作の映画化も!

とすると、流刑事、望月と蕪木役に誰を当てるか。
そういう想像も楽しい。

 

「ミステリと言う勿れ 13」田村由美 フラワーコミックスα

満足度★★★★☆

 


「艮(うしとら)」山岸凉子

2023年08月05日 | コミックス

科学では説明のつかないもの

 

 

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出版社に勤める樋口晶子は霊能者・由布由良の取材をすることに。
半信半疑ながら、気になることを言われて……。
表題作『艮(うしとら)』のほか
『死神』『時計草』『ドラゴンメイド』の怪異・恐怖ストーリー3作品を収録。

* * * * * * * * * * * *

山岸涼子さんのちょっと恐い話。

 

一番印象深いのはやはり、表題作「艮(うしとら)」。
「うしとら」というのは、北東の方角を指します。

出版社に勤める樋口晶子は夫と娘、3人家族。
最近家を新築し、育児休業を終えて職場復帰したばかり。

しかし夫は単身赴任になってしまい、娘は病気がちで保育園を休みがち。
つまりは晶子自身も仕事を休まねばならず、非常に心苦しい。
そしてまた、彼女自身も体調が最悪で・・・。

こんな切羽詰まった状況にあるとき、
晶子は仕事でとある霊媒師の所に取材に行きます。

自称・インチキ霊媒師というくらいの怪しげな人物なのですが、
ほんの少しの「みる力」はあるらしく、晶子をみて、こう言う。
「あんたの家、勝手口が“うしとら”の方角にあって、鬼門が開いている」と。

今までそんなことを気にしたこともない晶子ですが、
家に帰って調べてみれば本当に勝手口が北東の方角にある。
まさにこの家に入ってから、イヤなことばかりが起こると思い当たるのです・・・。

 

 

作中の晶子は、風水等に闇雲にのめり込むようなタイプではなく、
むしろ合理的な考え方ができる人物。
だけれども、科学的根拠は何もない話であっても、
自らが体験する、この悪いことばかりの連鎖との関係を想像せずにはいられない。

なんだか分かる気がするのです。
私も普段は無宗教、無信心ではあるものの、
縁起やら霊魂やらを全く否定しているわけではない。

ましてや窮地に陥っているときには、
ほんのわずかな光にもすがりたくなるものですしね。

本作ではこれが単に晶子の思い込みではなくて、
実際に「悪しき」ものが家に入り込んでいた、
と言う設定になっているわけですが・・・。

 

思い込みなのか。
それとも今の科学では説明のつかない何かなのか。

そういうはざまにある本作は、やはり山岸涼子さんの得意とするところ。
好きな一作です。

 

「艮(うしとら)」山岸凉子 モーニングKC

満足度★★★★☆

 


「詩歌川百景 3」吉田秋生

2023年07月01日 | コミックス

温泉町のドラマ

 

 

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穏やかな山間の温泉町を揺さぶる、事件。
老舗温泉旅館「あずまや」で湯守見習いとして働く青年・和樹の頼れる幼なじみ類は、
冷静で優秀でお年寄りにもやさしい林田家の「最強の長男」。
そんな彼をおとしめる投書が・・・!?

* * * * * * * * * * * *

お待ちかね、「詩歌川百景」3巻目。

 

本巻は林田類クンが中心といっていいでしょうか。
前巻で、類が思いを寄せているのは妙ではなくて、剛ということが判明しました。
類は一生このことは胸に秘めて生きていくつもりだったようです。
ところが、類は家族のことでもっと困難を抱えている。
類の母が怪しげな新興宗教にはまり大金をつぎ込んでしまっていたのです。
父は単身赴任で離れて暮らしていたので、分かっていなかった・・・。
また、類の妹はそんな出来事を父からも兄からも
秘密にされたことが不本意でオカンムリ。

また、類にとっては従兄弟に当たる男がいかにも悪意に満ちた嫌なヤツで、
さらに類の生活を脅かそうとする・・・。
しかし、責任感の強い長男気質の類は、
すべての困難を自分で背負って何とかしようとするわけで・・・。

でも、彼を取り巻く人々はそんなことをすべて理解して、彼に手を差し伸べます。
そういう所がやっぱりいいんですよねえ・・・。

類も、一生秘密を引きずるのはやめにして、和樹と妙には剛を好きなことを打ち明けるのです。
もっともその時には二人とも、もう気づいていましたが。

 

一見のどかそうな温泉町にも様々なドラマがありますね。

また、本巻には鎌倉で暮らすあの姉妹の関係者も登場。
そういうのがなんとも嬉しい!

いろいろなことがあって、少しずつ成長していく和樹くんをもっと見守っていきたいです。

 

「詩歌川百景 3」吉田秋生 フラワーズコミックス

満足度★★★★☆


「戦争は女の顔をしていない1」原作スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ 小梅けいと

2023年02月20日 | コミックス

戦争に加わった女性達

 

 

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ソ連では第二次世界大戦で100万人をこえる女性が従軍し、
看護婦や軍医としてのみならず兵士として武器を手にして戦った。
しかし戦後は世間から白い目で見られ、
みずからの戦争体験をひた隠しにしなければならなかった――。
500人以上の従軍女性から聞き取りをおこない戦争の真実を明らかにした、
ノーベル文学賞作家の主著。

* * * * * * * * * * * *

かつてのソ連軍に従軍した女性達500人以上から聞き取りを行って書かれた本作。
私はちょっとズルをして原作本をスルーし、
マンガ化された本作の方を手に取りました。

 

第二次世界大戦の時の話ですので、まさに今聞き取りをしなければ、
生存者はいなくなってしまうというようなギリギリのタイミング。
というのも、彼女たちは自らの体験をなかなか
人には語ろうとしなかったためなのですね。

それは女性に限らず、戦闘の前戦に立った経験のある方、共通の意識のように思います。
それはつまり、いかに戦争のためとは言え、
人を殺してしまった体験は、深く心に傷を残すことなのだと思います。

 

本作中では、狙撃手として活躍した女性が、
一番始めのときには人を殺してしまったということにひどく衝撃を感じたけれども、
その後はそのように思わなくなったと語っています。

確かに、その都度動揺していたら、戦闘に加わることはできないでしょう。
攻撃を受けて死んでいく人々も、攻撃をする人々も、
戦争に於いては人間性を剥奪されていくのです。

このようなことは男女の別なく起こること。
本作は、女性ならではの出来事ももちろん語られています。

 

「洗濯部隊」として駆り出された女性達。
兵士達の衣服等を洗濯するという役割で、
武器を持って闘うというわけではありませんが、
シラミを殺す薬剤を使うために凄まじい悪臭がして、
手には湿疹ができ、爪が抜け落ち、重い洗濯物のために脱腸になる者も・・・。
そして兵士達には下に見られてバカにされ、下手をすると妊娠までさせられる・・・。

戦闘員であれば、男子と同じ厳しい行軍に耐えなければなりません。
そして、女子として物資の配慮もなし。
男物の下着、生理の手当の用品もない・・・。
こういうのは男女平等ではないですよね。

こんな中でも、祖国のため、勝利のため、男子と変わらずに困難に耐えてきた女性達。
実に貴重な聞き取り調査です。
圧巻です。

 

「戦争は女の顔をしていない1」原作スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ 小梅けいとKADOKAWA

満足度★★★★☆

 


「ミステリと言う勿れ 12」田村由美

2023年01月27日 | コミックス

富山のご当地ミステリ、始まり~!

 

 

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観察力の高さゆえに、トラブルや事件に巻き込まれがちな大学生・久能整。

ある日、とある事件で整を取り調べたことのある刑事・風呂光のもとに不穏な知らせが届き…!?

新たな謎が浮かび上がる新エピソード、開幕!

* * * * * * * * * * * *

「ミステリと言う勿れ」新刊です。

新エピソード。

風呂光刑事の元に、富山の祖母から連絡が入ります。
風呂光も親しかったある女性が亡くなり、警察は事故死としたのだけれど、
祖母はそんなはずはない、と言うのです。
誰かに殺されたのかもしれないから、調べてほしい、と。

管轄も違うし、すでに事故と断定されたのなら、風呂光が出る幕はありません。
けれどやむなく、一般人としての立場で富山に向かうことにした風呂光。
そして、整くんの協力を仰ぐことに・・・。

と言うことで、富山が舞台のご当地ミステリの始まり始まり~!

整くんは本巻始めでは岐阜のスキー場にいるのです。
以前知りあい、家庭教師をすることになった三つ子の別荘に招かれたとのことで。
整くんとスキーなんて、なんとも意外な組み合わせだけれど、
整くんは子どもの頃北国で暮らしたことがあるので、スキーは少しできるという。
ところが、普通なら3ターンくらいで降りてくるところを
何度も何度も折り返してなかなか降りてこられない・・・。
いやあ、ここのところでは私、個人的に大いにウケました。
私と全く同じなんですもん。
やっぱり、スピードが恐いのよね・・・。

 

風呂光のお祖母さんは、以前教師をしていて、
今もなお多くの教え子達が彼女を慕ってやって来ます。
厳しくも子ども思い。
大抵の物語ならこんな時、お祖母さんをひたすら優しくいい人に描くと思うのですが、
整くんの観察眼はもっと鋭い。

「立場が強い人、言葉が強い人は、本人の知らないうちに他人を屈服させてる時があります。
ところが、屈服させた相手をそんな弱いことでどうするんだ、
って責めることがあるんです」

自分の母と祖母がうまくいっていないことに思い当たる風呂光。
自分が警察官なのだから、整くんを名探偵にして自分がワトソンになってはダメだ、
と祖母に言われてしまった彼女ですが、
自分で納得し、前へ進み始めます。

作中ほんの小さな一コマだけれど気になるところがありまして、
風呂光が雑誌ライターの青年と親しげに話しているところを見てしまった整くんに生じた「?」。
何? この感情は何? 
ううむ・・・・。

 

それはさておき、本巻中最も感動的な場面は、
整くんが富山の雨晴駅近くの海岸から眺めた光景。
海岸に立ちながら雄大な立山連峰が眼前に迫っている。
そばには義経伝説の残る岩。

この壮大な光景を、整くんはスマホのビデオ通話でライカさんに送ります。
こんな風景をライカさんと一緒に見たいと思っていたところに、
彼女から電話がかかってきたのです。
見開きページの整くん。
素晴らしー!!

義経伝説のあるこの場所に整くんを立たせたのは、
著者、絶対に菅田将暉さんを意識していますよね。

あー、このシーン映画で見たい。
(今進められている映画は、このエピソードではなくて広島編なのだけれど)

 

それと今回、整くんが時々レンくんを思い出したりしているのもよい感じです。
どんどん広がっていく整くんの世界。

今回の謎は、実は深まるばかりでちっとも解決に向かっておらず、
次巻が非常に待ち遠しい!!

 

「ミステリと言う勿れ 12」田村由美 フラワーコミックスα

満足度★★★★★


「ミステリと言う勿れ 11」田村由美

2022年12月25日 | コミックス

ガロくんのピンチ!!

 

 

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同級生のレンに「怪しげなバイト」に誘われた整。
しかしその裏には何か秘密がありそうで…!?
一方、姉の死の真相を追うガロ達は、謎の心理カウンセラー・鳴子に迫る――!!

急展開の11巻!

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1月には第12巻が出るようですので、少し急ぎました。
まずはこの表紙。
表紙のイラストが整くんでないのは初めてです。
ガロくんですね。
記念すべき、表紙初登場。

 

さてこの11巻は、短編集とでも言いましょうか、
前作の誘拐事件の少し落ち着いた時期の話から始まります。

同級生のレンくんに「一緒に変なバイトしない?」と誘われた整くん。
巻き込まれ型の整くんは一応抗うのですが、なぜか押し切られてしまう。
レンくんの押しの強さが整くんにはちょっと苦手なのですが、
でも自分からは積極的に人と交わろうとしない整くんには、よい相棒ですよね。

さて、そのバイトというのは、とある学校の敷地内に埋めてあるはずの
「タイムカプセル」を探し出す、というもの。
おちゃらけているようで、レンくんは意外と切れ者。
整くんとの推理がうまくハマって、無事バイトの仕事を果たすまでが描かれます。

さて、私の持っているこの第11巻初版。
ページの入れ替わりミスがあったことで話題になりました。
このエピソード「失われた時を重ねて」の中の、
P41とP42が逆になっているのです。
それを知らずに始めに読んだときに、若干流れが不思議な感じがしたのですが、
まさかそういうことだったとは・・・!
でも実際にはストーリー進行上の問題はないようです。

 

私個人的には次の、バレンタインデーにライカさんと整くんが
商店街を巡り歩く話が好きでした。
バレンタインデーに初チョコレートゲットした整くん、おめでとー!!
けれどいずれ消えゆくライカさんのことを思うとちょっと悲しい。

 

そして、ラストに、表紙デビューしたガロくんがいよいよ登場。
ガロくんは、姉の死と関わりのある謎の心理カウンセラー・鳴子の動向を探っているのです。
なんとあろうことか、彼のマンションの天井裏に忍び込むという。
しかしなんと、相手はその上をいっている。
ガロくんに最大のピンチが襲います。

鳴子のこと、これまでに出てきた「星座」に関わる事。
謎めくばかり。
待たれる次巻!!

 

そして本巻は、おまけも豪華です。
「ゼクシィ」の付録に掲載されたという整くんの番外編と、
著者が本作のテレビドラマ撮影現場を訪れたレポが収録されています。
とにかく美味しい。

 

「ミステリと言う勿れ 11」田村由美 小学館フラワーコミックスα

満足度★★★★★

 


「ミステリと言う勿れ10」田村由美

2022年12月09日 | コミックス

自分の子供を殺されないためには、他人の子供を殺さないこと

 

 

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10巻は青砥編クライマックス!

娘を誘拐された刑事・青砥と行動を共にすることになった整。

しかし事件は、8年前に青砥が冤罪を起こした未解決事件へと繋がってゆき…!?

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この度、TVドラマ「ミステリと言う勿れ」の映画化が発表されました!

めでたい!!
ということで、そういえばこのブログの続きをアップするのを忘れていたことに気づきました。

 

娘を誘拐された刑事・青砥の話が途中のままでした。
犯人は、とある人物の子供を誘拐したので、
子どもを返して欲しければ別の家の子供を誘拐するように、
と指示していたのです。

つまりそのようにして、被害者でありつつ加害者でもあるという3組の家族と
それを仕組んだ人物+整くんが一同に会することになる。
そして、驚くべきことに青砥と整くんが誘拐するようにと指示された子供は、
すでに死んでいたのです・・・。
すべてを天秤にかけて、その軽重で価値を計ろうとする犯人の真の意図とは???

 

本作ちょっとややこしいというか、わかりにくいです。
犯人のねじれた心は、計り知れないけれど、
あくまでもまっすぐに正しい愛情を持って
人と対峙しようとする青砥刑事と整くんは健在。

 

さて、映画はおそらくテレビでは抜けていた
広島の狩集家の遺産相続に絡んだ物語が取り上げられると思います。
コミックでは3巻~4巻に収録されています。
確かに、映画化するならこれ!というおどろおどろしさもあるストーリー。
楽しみです!!

 

「ミステリと言う勿れ10」田村由美 小学館フラワーコミックスα

満足度★★★.5

 


「耽美とヒロイン 漫画化! 世界文学」

2022年10月31日 | コミックス

珠玉

 

 

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名作文学を読みやすくマンガにするという企画は1960~70年代にはおなじみでした。
紫式部、アンデルセン、グリムといった世界中の作家の名作を原作に、
昭和時代から多数生み出されてきた名作文学マンガの作品群から、
選りすぐりのコラボレーションを選出します。

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名だたる少女漫画家が描く、名作文学のアンソロジー。
私、本巻の広告を見て、これを読まずにしてなんとしよう!!と思い、
即購入してしまいました。
私のような年代の者にとっては、まるで夢のようなラインナップです。

収録作は・・・

萩尾望都×アンデルセン「白い鳥になった少女」

水野英子×グリム「サンドリヨン」

牧美也子×紫式部「花陽炎 (源氏物語)」

美内すずえ×樋口一葉「たけくらべ」『ガラスの仮面』作中劇より

坂田靖子×ペロー「お妃と眠り姫」

文月今日子×ルイ・エモン「白き森の地に」

山岸凉子×グリム「ラプンツェル・ラプンツェル」

佐藤史生×ボーモン夫人「美女と野獣」

 

私の大好きな方ばかりということもあって、大半は読んだことのある作品なのですが、
でもよくぞこの豪華メンバーを集めてくださいました!!と、
この企画に拍手を送りたくなります。

特に、美内すずえさんの「たけくらべ」は「ガラスの仮面」の劇中劇のシーンです。
北島マヤが美登利を演じています。
やってくれますねえ・・・。
そういう手もあったか。
感服。

 

それぞれのストーリーは原作を忠実になぞったわけではなくて、
作者が自由に想像の翼を広げて独自の解釈をしたり、
続きのストーリーを描いたりしています。

 

冒頭、萩尾望都さんの「白い鳥になった少女」は、
実は私の中でかなり印象に残っていた作品でした。
アンデルセン童話を元にしています。

虚栄心に満ちて他者を見下す傲慢な少女インゲは、
ある日大きな水たまりを渡ろうとするときに、靴を汚すのがイヤで、
持っていたパンを踏み石代わりにして歩いてしまいます。
するとそのパンを踏みつけにした姿のまま、
水中に引きずり込まれて、身動きできなくなってしまうのです。
水中で、自分が羽をむしって飛べなくなったハエにまとわりつかれたり、
不気味な生き物が張り付いてきたり・・・。
この気味悪いシーンが、結構当時の私に刺さったのですよね・・・。
しかしそれでも、このときのインゲは自分の行いを悔いてはおらず、
ちっとも哀しそうでもない。
ただ無表情にお腹がすいた、せめて体が動けばいいのに・・・などと思うだけ。
そしてまた、別に人を殺したわけでも、ものを盗んだわけでもないのに、
なんでこんな目にあわなければならないのかと憤っているのです。
それが、ついに彼女が自分の行動を悔いるのは、
インゲの運命を童話で知った子どもが、インゲを哀れんで流す涙を見たとき。
その涙がインゲの心を変えるのです。
不気味で、やがて美しい物語。

 

坂田靖子さんの「お妃と眠り姫」は、「眠り姫」の続きの話ということになっていまして、
眠り姫の嫁ぎ先のお妃様が、なんと「オーガ」だったという・・・。
つまり人間ではなくて、怪物なんですね。
オーガは人を食ったりする野蛮な存在なのですが、
坂田靖子さんが描けばなんともほっこりとユーモラス。
本作では、最後はちょっぴり哀しくもあるという、
まことに坂田靖子さんでしか描けない世界感の物語。
秀逸です。

 

そのほかも、読み応えたっぷり。
私には大切な一冊になりそうです。

「耽美とヒロイン 漫画化! 世界文学」 立東舎

※図書の家、山田英生編集

満足度★★★★★


「ミステリと言う勿れ 9」田村由美

2022年10月02日 | コミックス

都合良くニブい

 

 

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入れ替わりを続ける双子の姉妹の「見分け」を依頼された整。
しかし彼の気づきが、鳩村家に潜む危険な事実をあぶりだす――!!

双子編完結の第9巻!

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「ミステリと言う勿れ」第9巻。
前巻の「双子の見分け方」を依頼された整くんの続きの話から始まります。
さすが整くんはこの双子の謎をみごと解き明かしてしまう。
これはそういう平和な話かと思えば、なんとその謎を解いた先に危機があったのです。
この子どもたちを守ろうとした亡き母の杞憂が、結局は現実のものとなってしまった・・・。
整くんたちはエンジンもなく朽ち果てた船に乗せられ、
海に出て沖合に置き去りにされてしまうのです・・・。

全く、整くんの行く先に事件あり。

余談ではありますが、終盤、この船と“ガロくん”の船が接近し、
ガロくんは「オレと一緒に行かない?」とまでいうのですが、
整くんは「自分だけ行けないでしょ、子供もいるんだし・・・」などと言う。
「都合よくニブい」とつぶやくガロくん。

いやいや、整くんがガロくんの真意を分かったとしても、きっと一緒に行くとはいいませんでしょ。
整くんはすでに人々の当たり前の社会の中の住人として
居場所ができあがっているところなのですから・・・。

 

さて、この話は解決となりまして、次は誘拐事件の話に入ります。
整くんは、大きな荷物を抱えて必死に辺りを見回している男性を見かけます。
彼は公衆電話のベルが鳴るとそれに出て、次の行き先を指示されているらしい。
これは整くんでなくてもピンときますが、まるで子供を誘拐された親のような・・・。
整くんは心配のあまりこの男性に付き添って何カ所かの公衆電話を探して歩くのですが、
男性はこれが誘拐事件だとは最後まで言わないのです。

そんなことのあった別のところで、誘拐事件が勃発。
誘拐されたのはなんとあの青砥刑事の娘!! 
そしてへの犯人からの指示は、
「娘を返してほしければ、別の子供を誘拐しろ」とのこと。

さあ、どうする?!

苦み走ったいい男、青砥刑事は、
整くんがいつも事件に関わるのをあまり良く思っていなかったのですが、
彼の洞察力には一目置いているのです。
図らずもこのエピソードではこの二人がペアとなって事件を解決していくという、
まことにおいしいストーリー。

 

「ミステリと言う勿れ 9」田村由美 フラワーコミックスα

満足度★★★★★

 


「ミステリと言う勿れ 8」田村由美

2022年09月06日 | コミックス

ライカさんの事情、整くんの事情

 

 

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久能整、美術館で事件に遭遇!?
なぜか事件に巻き込まれては、いつの間にか謎も人の心も解きほぐしてしまう
大学生・久能整。(くのう ととのう)
今回、ライカと美術館に訪れた整が遭遇したのは、
武器を手に押し入ってきた、"何か"を探す男たちで――!?
整の思考が冴え渡る、新展開の第8巻!

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ミステリと言う勿れの第8巻。

ライカさんと整くんが美術館を訪れるところから始まります。
が、整くん行くところに必ず事件が起こる・・・。
だんだんコナンくんっぽくなってきましたね。
おかしな男たちが現れて、ある短歌の続きを知っているか?と迫るのです。
ここのエピソード自体はなんだかあまりピンとこないのですが、
例によって整くんの脱線話は妙に納得させられるものばかり。

 

「引きこもり」のことについて、整くんはこんなふうに言います。

「引きこもりは引きこもりそのものがいけないわけじゃないと思うんです。
引きこもっている方が性に合って生きやすいって人もいる。
学校は構成する人間によっては楽しい場所にも地獄にもなります。
地獄が解消されないなら休むしかなくなります。
ただその場合、継続して授業が受けられること、それが絶対重要になります。
どこにいても同じように勉強できる。資格も取れる。そうあってほしいです。

・・・・

同じように大人の引きこもりも、社会と断絶することが問題なんだと思います。
引きこもったままできる仕事がある。
どんな状態にいても働く方法がある。
だったらいいのにと思う・・・。
その人に会った働き方ができる。
その多様性がほしいです。」

ちょっと長くなってしまいましたが、本当にそうだなあ・・・と思います。

 

それで本巻で重要なのは、そのあとのこと。
ついにライカさんの正体が明かされるのです。
ライカさんと彼女の妹だという千夜子さんとの関係。
そこで彼女たちのつらい過去のことが明らかに。
本来ここはえ~っ!!と驚くべきところなのですが、
テレビドラマを見てすでに知っていたので、驚けなくて残念。
同様に整くんの過去のことも語られていますが、
大体想像はついていましたよね。

・・・ということで、やたら数字の暗号を使って話しかけてくるライカさんを
始めはウザいと思っていましたが、
次第に好きになってきて、
春にはいなくなってしまうということが妙に淋しく感じられるのでした。

 

そして盛りだくさんの本巻、新エピソードに突入。
整くんに、とある双子の女児、どちらがどちらなのか見分けてほしいという依頼です。
さて、どうなりますやら。

 

「ミステリと言う勿れ 8」田村由美 フラワーコミックスα

満足度★★★★☆

 


「ミステリと言う勿れ 7」田村由美

2022年08月03日 | コミックス

ぼっちえのき

 

 

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いつの間にか謎も悩みも解きほぐす、解読解決青年・久能整。

大学教官の天達(あまたつ)にバイトに誘われて山荘を訪れるも、
思わぬ事件に巻き込まれて…!?

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さて、整くんの第7巻。

天達先生に請われて、バイトとして、とある山荘を訪れた整くん。
ここに集まった人々でちょっとした謎解きイベントをするというのです。
その雑用係としてやって来た整くん。
しかし、天達先生から頼まれたのであれば、単なる雑用係が目的とは思えませんね。
イベントの謎をついうっかりすらすらと解き明かしてしまう整くんですが、
実は本当の謎は別にあった・・・。

このエピソードもTVドラマ化されているのですが、
大きく違うのはドラマでは刑事の風呂光さんも一緒に来ているところ。
う~む、さすがにそこは必要ない気がしますが。

 

この原作で注目すべきは、同じく天達先生にスカウトされた整くんと同期のレンくん。
彼がまたユニークなのです。
ぐいぐいと人に迫って来るタイプ。
気が利いてくるくると動く働き者。
思っていることはズバズバ言う。
整くんとは真逆のタイプで、多分整くんには苦手なタイプ。
けれど、彼もまたなかなか鋭いところがあって、
本作では2人の推理がものをいいます。

レンくんは、整くんはウザいと言われるくらい色々余計なことまで良くしゃべるけれど、
実は自分の身の上については、ほとんど話さないことに気がついています。
整くんが「トマトのサンドイッチはべしゃべしゃしてイヤだ」と、
自分の好みを話したことだけで、
心を開いてくれたように思って、嬉しく思うレンくん。
いい感じです。

ちなみに、私も整くん同様の理由で、トマトのサンドイッチは苦手。
しかるに、忘れられないのは、「あしたのジョー」の矢吹丈が
トマトのサンドイッチが好きだというシーンがあるのですよ。
そこは私、うそ~と思って、ショックでした・・・。

話がそれました。
このレンくんは人の見た目から連想する密かな呼び名をつける名人。
それで、整くんのことを「ぼっちえのき」と言うのです。
なるほど~!

 

あえてこの2人を呼び入れたのは、おそらく天達先生の計算なのでしょう。
整くんにとっては、初めての「いなくならない」友だちができた
と言っていいのではないでしょうか。

どっさり作ったカレーを、結局誰も食べられなかったのは残念・・・。

 

「ミステリと言う勿れ 7」田村由美 フラワーコミックスα

満足度★★★★☆