映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「プリズン・トリック」 遠藤武文

2009年10月07日 | 本(ミステリ)
プリズン・トリック
遠藤 武文
講談社

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本年度江戸川乱歩賞受賞作品。
本の帯に「乱歩賞史上最高のトリックだ。」とあるのにつられて、
購入したのですが・・・。
正直言ってこれは、わざわざ本にすべきものではないように思えてしまいました。


刑務所内での密室殺人。
始めは素晴らしくいいのです。
交通刑務所の日課を淡々と綴る。
このスケジュールがトリックに絡んでくるのだろうと予想される。
ちょっとした緊張感があります。
そして事件発生。
密室。
そして不可解な入れ替わり。
うん、十分に興味をそそります。
ここまではいい。


しか~し、謎を提示するだけなら誰でもできますよね。
それをいかに最後までひっぱって、
驚きかつ納得できる結末に導くのが腕のみせどころ。
ところが、このストーリーはその先があまりにもお粗末。
次から次へと視点となる人物が入れかわり、誰が誰やらわかりづらい。
しかも人物に魅力がなくて、感情移入すべきところがない。
それでもとにかく謎解きまでこぎつけなければ
・・・という一心で耐えて読みつづける。
なるほど、確かに解答はありましたが、なんだか感動がない。
読んでるうちに、どうでも良くなってきてしまっていました。
中盤以降は、いかにも締め切りに間に合わないので
適当に仕上げてしまったという感じ。


選考委員の評も巻末についていますが、
キズだらけ、穴だらけと、皆さん感じているようです。
にも関わらず受賞となったのは、著者の「志の高さ」だというのですが・・・。
少なくとも私はそのようには感じませんでした。
こんな本を出版するのは、
1600円も出してこの本を購入する者への裏切りではないでしょうか。

全く別の意味で、騙された・・・と感じてしまう作品でした。

満足度★☆☆☆☆

(本来ボツ特集モノですが・・・・・・。)