映画と本の『たんぽぽ館』

映画と本を味わう『たんぽぽ館』。新旧ジャンルを問わず。さて、今日は何をいただきましょうか? 

「グラーグ57 上・下」 トム・ロブ・スミス 

2009年10月10日 | 本(その他)
グラーグ57〈上〉 (新潮文庫)
トム・ロブ スミス
新潮社

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グラーグ57〈下〉 (新潮文庫)
トム・ロブ スミス
新潮社

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これは、このミステリがすごい!2009年版 海外編第一位となった
あの「チャイルド44」の続編です。
これは私もかなり楽しみまして、続編とくれば、すぐに飛びつきました。
あの過酷な運命を乗り越えたレオ・デミトフに、
また更なる試練が待っていようとは・・・。
作者もかなり意地悪ですねえ・・・。

この作品を読もうとする方は、
やはり先に、「チャイルド44」を読むことをオススメします。
主人公レオと妻のライーサの関係を、まずしっかり把握した方が楽しめます。
そして、養女ゾーイのことも。


このストーリーは旧ソビエトが舞台。
徹底した共産主義下では密告が横行。
何の罪もない人が反逆者として捕らえられ、拷問に掛けられて、
根も葉もないことを「告白」させられたあげく、
投獄されたり処刑されたり。
レオはもと秘密工作員で、体制に加担する側だったのですが、
前作中で次第にこの国家体制に疑問を抱くようになり、
ついには自ら反逆の行動をとるようになる。
・・・このようにいうと、ちょっと難しそうなのですが、
何のことはない、
徹底したアクションストーリーで、
手に汗を握るスリルたっぷりの苦難をレオとその妻が必死で乗り越えていく
という、多分に映画に向きそうなストーリーなのです。


さて、今作では、なんと、
レオが凍て付くシベリアへ向かうことになります。
シベリアといえばいわずと知れた政治犯などの流刑の地。
そこの第57強制労働収容所が即ち「グラーグ57」であります。
レオは罪人ではないのですが、
ある人物を救い出すため、あえて囚人に成り代わってシベリアへ潜入します。
しかし、そこには以前レオに捉えられて
シベリア流しとなってしまった人々も多くいます。
レオの正体はたちまちのうちにばれて、
怖ろしいリンチ・拷問をうけることに・・・。
相変わらず派手な脱出劇へ、息もつかない速さで突き進んでいきます。


しかし、その奮闘もまた次にはむなしい結果につながってゆくなど、
全く退屈することのないストーリー展開。
下巻では今度はハンガリー、ブダペストに舞台が移っていきます。
レオに安息の日々は帰ってくるのか・・・。

いやはや、まったく、レオの奮闘には頭がさがります。
家族への愛が芽生えたレオは、やはり無敵ですね!
これはやはり、映画でぜひ観てみたいです。
リドリー・スコット監督のもと、クランクインも間もないとのこと。
(「チャイルド44」の方ですが。)

満足度★★★★★