ブログ 「ごまめの歯軋り」

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読書ノート 斉藤貴男著 「民意のつくられかた」 岩波書店

2012年05月02日 | 書評
民意偽装・調達・操作のテクニックー原子力安全神話の結末 第12回 最終回

7) 捕鯨とナショナリズム
 2010年6月ガンジールで行なわれた国際捕鯨会議では、商業捕鯨を一部容認するマキエラ議長の斡旋は実らず流会した。実質日本人は鯨を食う習慣は戦後の一時期だけであって、いまでは誰も鯨などは食わない。そして捕鯨船団も乗り組み員もいない状況で、調査捕鯨は殆ど水産庁だけの国家業務になっている。水産庁はもはやナショナリズムと捕鯨を結びつける点で動いているに過ぎない。鯨を乱獲し資源枯渇を招いた日本の捕鯨がいまや、もっともらしく「科学的な天然資源の管理」を叫んで適切な捕鯨再開を主張しても、圧倒的多数国の捕鯨反対国の環境派や文化的差異の壁を切り崩すことは出来なかった。グリーンピースの「英雄的売名行為」の前に調査捕鯨の実施も出来ない状態である。アメリカの200海里から漁船を締め出すという脅しに捕鯨中止に追い込まれた日本に援助を示す国はいない。政府の得意な世論調査でも鯨を食いたいという人は少ない。これでは盛り上がらないのは当然で、今では捕鯨問題は「海の靖国神社問題」となっている。
(完) 


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