ブログ 「ごまめの歯軋り」

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書評 ジェームス・ワトソン、アンドリュー・ベリー著 「D N A」 講談社

2006年10月10日 | 書評
 現在のバイオテクノロジーのすべてが語られる

 2003年が、ワトソンとクリックが遺伝子の本体であるDNA(DeoxiriboNucleicAcid デオキシリボヌクレイックアシッド デオキシ核酸)の2重らせん構造を解明した記念すべき日1953年2月28日(ワトソンとクリックは遺伝子DNAの構造解明によりノーベル賞を受賞した)の50周年にあたることから、この本が企画された。ジェームス・ワトソンは1968年に「2重らせん」という本を著している(この本は本書の初め1/4にあたる部分に相当)。しかしDNAのセントラルドグマに沿ったその後の遺伝子工学の進歩は著しいものがあり、今日のバイオテクノロジーの進歩は社会の広範な問題(医療など)に及んでいる。本書「DNA」は遺伝子構造解明から今日にいたる生命科学の進歩を総覧し、今日的問題をレビューしている。
 
 私も学生時代を加算すると40年近くバイオテクノロジーの分野の周辺におり、その進歩を中で、横で見てきた。ひとつひとつの動きは熟知していたが天才の手になるレビューには興味が尽きない。この知的でエキサイティングなストーリに参画できなかった自分の無能が悔やまれるだけだ。本書は500ページほどの分厚い本で内容も多岐にわたるので、網羅的に紹介することも出来ない。しかし本書の持つ面白さを万分の一でも伝えられれば本書を購入されるきっかけになるのではなかろうか。専門的内容が多いのですべての人が理解できるとは思えないが、少なくとも科学に興味を持つ人なら是非読んでおきたい本である。


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