医療に関する提言・レポートfrom MRIC by 医療ガバナンス学会(2011年8月17日) 「救急患者の受け入れ拒否ではない、受け入れ不能なのだ」 多田智祐 武蔵浦和メディカルセンター ただともひろ胃腸肛門科 より
6月29日交通事故で車にはねられた38歳の女性が、12病院から受け入れを断られ、2時間も処置を受けられず翌日骨盤骨折による出血性ショックで死亡した。これを受けて7月14日埼玉県中央メディカルコントロール委員会が検証結果を公表し、「医療機関の受け入れ態勢と収容先を決める救急連絡が不十分で搬送に手間が掛かり、死亡の可能性が高まった」と結論し、「今後市内24箇所の2次救急医療機関に対して専門外でも一時的に収容してもらうよう依頼する」とのことです。この患者さんの場合には、緊急手術が出来る3次救急医療機関に即座に収容されなければ救命困難であったと思われる。にもかかわらず専門外の2次救急医療機関に搬送できても、救命できたかどうかは怪しい。一番困るのは手術の出来ない2次救急医療機関である。一時保管場所では無いはずで人命の責任が持てないのである。3次救急医療機関は人口100万人当たり1箇所しかない。1次救急医療機関とは「夜間休日診療所」のこと、2次救急医療機関とはいわゆる「救急指定病院」のことである。レントゲンや心電図、血液検査,点滴などは行なえるが,当直医師は1人程度であり専門医は日毎に異なる。3次医療機関では複数科に医師が常駐しているので緊急手術に対応できる。「専門外でも一時的に2次医療機関に収容する」というのはあまりにおざなりな対応であり、そこで時間を潰していても救命にはつながらない。「複数の2次救急で受け入れ不能ならば、ただちに3次救命へ運ぶ、埼玉なら東京の医療機関へ連絡する」というのが現実的な指針では無いだろうか。問題は3次救急機関へのアクセスが制限されていることである。メディアはすぐに「たらい回し」とか「受け入れ拒否」という表現を使うが、これは実情をよく見た表現では無い。
6月29日交通事故で車にはねられた38歳の女性が、12病院から受け入れを断られ、2時間も処置を受けられず翌日骨盤骨折による出血性ショックで死亡した。これを受けて7月14日埼玉県中央メディカルコントロール委員会が検証結果を公表し、「医療機関の受け入れ態勢と収容先を決める救急連絡が不十分で搬送に手間が掛かり、死亡の可能性が高まった」と結論し、「今後市内24箇所の2次救急医療機関に対して専門外でも一時的に収容してもらうよう依頼する」とのことです。この患者さんの場合には、緊急手術が出来る3次救急医療機関に即座に収容されなければ救命困難であったと思われる。にもかかわらず専門外の2次救急医療機関に搬送できても、救命できたかどうかは怪しい。一番困るのは手術の出来ない2次救急医療機関である。一時保管場所では無いはずで人命の責任が持てないのである。3次救急医療機関は人口100万人当たり1箇所しかない。1次救急医療機関とは「夜間休日診療所」のこと、2次救急医療機関とはいわゆる「救急指定病院」のことである。レントゲンや心電図、血液検査,点滴などは行なえるが,当直医師は1人程度であり専門医は日毎に異なる。3次医療機関では複数科に医師が常駐しているので緊急手術に対応できる。「専門外でも一時的に2次医療機関に収容する」というのはあまりにおざなりな対応であり、そこで時間を潰していても救命にはつながらない。「複数の2次救急で受け入れ不能ならば、ただちに3次救命へ運ぶ、埼玉なら東京の医療機関へ連絡する」というのが現実的な指針では無いだろうか。問題は3次救急機関へのアクセスが制限されていることである。メディアはすぐに「たらい回し」とか「受け入れ拒否」という表現を使うが、これは実情をよく見た表現では無い。