原発安全神話は崩壊した、原発から脱却することは可能だ 第2回
1) 「原発で何が起きたか」 田中三彦 科学書翻訳家(バブコック日立で原子炉圧力容器設計に従事) (その1)
想定外の津波さえ来なかったら福島第1原発事故は起きなかったろうか。この考え方は菅総理の浜岡原発停止要請においても引き継がれ、「津波対策を施せば、2,3年後には原発は再開できる」という含みを残している。しかし本当に津波のせいで原発事故が起きたのだろうか。本章では僅かに公開された事故直後の原発データよりそれを検証する。3月11日午後2時46分地震が発生し運転中の第1号機ー第3号機は自動的に緊急停止したが、2時46分外部電源が喪失した。非常用ディーゼル発電機が起動したが、その50分後大津波により非常用ディーゼル発電機が冠水し午後3時37分「全電源喪失SBO」という危機的状態に陥った。翌日12日午後3時36分、福島第1原発第1号機の原子炉建屋の最上部にあるオペレーションフロワーが水素爆発で吹き飛んだ。14日の昼前には3号機でより大ききな水素爆発が起きた。15日早朝には4号機で火災が起き、同時刻には2号機の圧力抑制室付近でも水素爆発が起こった模様である。
これら一連の爆発において、なぜ地震発生から僅か25時間たらずという早い時期に1号機の爆発が起きたのあろうか。3月20日過ぎごろから原子力災害対策本部が首相官邸サイトにアップした運転パラメータに、異常に早い原子炉水位の下降データがあった。地震発生後12時間(12日深夜2時45分)に,原子炉水位が、核燃料棒最上部(TAF)まで僅か1m30cmのところまで下がっていた。(通常運転ではTAFまで約5mの水位がある) 約20-30トンの水が失われた。2号機、3号機の原子炉水位の下がり方も異常であったが、3号機の水位降下は特別に著しかった。燃料棒むき出し状態に迫っていた。福島第1原発1号機は沸騰水型(BWR)である。冷却材は水で、原子炉で発生した水蒸気がタービンを回転させ発電する仕組みである。原子炉圧力容器内の冷却材は70気圧、温度は285度である。第1号機(電気出力46万kw)の原子炉圧力容器は直径が4.8m、高さ20mである。この圧力容器が格納容器(ドライウエル)の中にすっぽり入っている。格納容器(ドライウエル)の周りには巨大な圧力抑制室(ウエットウエル、サプレッションチャンバー)を付帯する。格納容器と圧力抑制室は蛇腹状のベント管8本で結合されている。原子炉圧力容器を結ぶ配管が破断した場合、圧力抑制室は「冷却材喪失事故(LOCA)」が起きても蒸気を水に変えて吸収できるだけの容量を持っている。格納容器を設計圧力約4気圧で設計温度約140度に保つ仕組みがサプレッションチャンバーである。ところが第1号機の圧力が約7.4気圧に上昇下のはなぜだろう。圧力抑制室が機能しなかったためではないか。格納容器の圧力上昇により国はベント開放を強行し、放射性物質の大気放出となった。
(つづく)
1) 「原発で何が起きたか」 田中三彦 科学書翻訳家(バブコック日立で原子炉圧力容器設計に従事) (その1)
想定外の津波さえ来なかったら福島第1原発事故は起きなかったろうか。この考え方は菅総理の浜岡原発停止要請においても引き継がれ、「津波対策を施せば、2,3年後には原発は再開できる」という含みを残している。しかし本当に津波のせいで原発事故が起きたのだろうか。本章では僅かに公開された事故直後の原発データよりそれを検証する。3月11日午後2時46分地震が発生し運転中の第1号機ー第3号機は自動的に緊急停止したが、2時46分外部電源が喪失した。非常用ディーゼル発電機が起動したが、その50分後大津波により非常用ディーゼル発電機が冠水し午後3時37分「全電源喪失SBO」という危機的状態に陥った。翌日12日午後3時36分、福島第1原発第1号機の原子炉建屋の最上部にあるオペレーションフロワーが水素爆発で吹き飛んだ。14日の昼前には3号機でより大ききな水素爆発が起きた。15日早朝には4号機で火災が起き、同時刻には2号機の圧力抑制室付近でも水素爆発が起こった模様である。
これら一連の爆発において、なぜ地震発生から僅か25時間たらずという早い時期に1号機の爆発が起きたのあろうか。3月20日過ぎごろから原子力災害対策本部が首相官邸サイトにアップした運転パラメータに、異常に早い原子炉水位の下降データがあった。地震発生後12時間(12日深夜2時45分)に,原子炉水位が、核燃料棒最上部(TAF)まで僅か1m30cmのところまで下がっていた。(通常運転ではTAFまで約5mの水位がある) 約20-30トンの水が失われた。2号機、3号機の原子炉水位の下がり方も異常であったが、3号機の水位降下は特別に著しかった。燃料棒むき出し状態に迫っていた。福島第1原発1号機は沸騰水型(BWR)である。冷却材は水で、原子炉で発生した水蒸気がタービンを回転させ発電する仕組みである。原子炉圧力容器内の冷却材は70気圧、温度は285度である。第1号機(電気出力46万kw)の原子炉圧力容器は直径が4.8m、高さ20mである。この圧力容器が格納容器(ドライウエル)の中にすっぽり入っている。格納容器(ドライウエル)の周りには巨大な圧力抑制室(ウエットウエル、サプレッションチャンバー)を付帯する。格納容器と圧力抑制室は蛇腹状のベント管8本で結合されている。原子炉圧力容器を結ぶ配管が破断した場合、圧力抑制室は「冷却材喪失事故(LOCA)」が起きても蒸気を水に変えて吸収できるだけの容量を持っている。格納容器を設計圧力約4気圧で設計温度約140度に保つ仕組みがサプレッションチャンバーである。ところが第1号機の圧力が約7.4気圧に上昇下のはなぜだろう。圧力抑制室が機能しなかったためではないか。格納容器の圧力上昇により国はベント開放を強行し、放射性物質の大気放出となった。
(つづく)