ブログ 「ごまめの歯軋り」

読書子のための、政治・経済・社会・文化・科学・生命の議論の場

9歳の孫による「命の日記」 読んで下さい 

2010年12月13日 | 時事問題
asahi.com 2010年12月13日5時56分
石綿肺のおじいちゃんと最後の夏休み…9歳の孫が日記
 アスベスト(石綿)による健康被害が出た兵庫県尼崎市のクボタ旧神崎工場の近くに住み、じん肺の一種の石綿肺を患っていた男性が、国による救済を待たずにこの秋、69歳で亡くなった。夏休み中、見舞い続けた9歳の孫娘は、大好きだった祖父が病と闘う姿を日記につづっていた。

(7月27日〉 ちょうしんきでおじいちゃんの心ぞうの音をきかせてもらった。ドックンドックンいっていた。
(8月16日〉 おじいちゃんはいきぐるしくなって、きゅうきゅう車で病院にはこばれてそのまま入院しました。肺に水がたまっていたそうです。それを針をさして少しぬいてバイキンがいないかけんさした。楽になって夕方から17日の朝までゆっくりとねむれた。
〈8月25日〉 なにもしなくてもしんぞうがバクバクして、しんどかったそうです。
〈8月28日〉 しょくよくもあまりなくて、おすしも3つしかたべませんでした。「おいしい?」ときくとちいさな声で「おいしい」といってニコッとわらいました。
〈8月31日〉 おばあちゃんと病院にいきました。いつもかえる時におじいちゃんとあく手をしてからかえります。おじいちゃんのあく手の力で元気かどうかわかります。きょうは、つよかったです。またあしたもおみまいにいきます。 おわり
和奏さんはいま両親に「看護師さんになりたい」と話している.

肉親による「命の授業」  この子はきっとやさしい、強い子になると思う。

読書ノート 鶴見俊輔著 「思い出袋」 岩波新書

2010年12月13日 | 書評
米国体験と戦争体験を出会った人々と本との思い出の中に語る 第6回

2003年「ぼんやりした記憶」

①駆けくらべ:
自分にとってしっかりした思想というものはあると思う。この戦争で日本は負けることは分っていた。
②つたわる・つたわらない:
定義にこだわると難渋する。新渡戸稲造の自分流の定義でする学問の楽しさ。
③あふれ出るもの:
自由闊達な頭脳は定義からあふれ出る。人と物の境界を取り掃払うアニミズム。
④ピンでとめられるか:
原爆投下が今では、東京戦争裁判のうしろにアメリカの文明に反する行為がはっきり見える。
⑤わかれ道のあるままに:
夏目漱石が「文学論」で示した課題は、半世紀後にリチャールズの「意味の意味」論につながっている。
⑥オール・タイム・ベスト:
片岡義男「オール・タイム・ベスト」とは自分のこれまで読んだ本のベストを挙げよということだ。ベストテンは①水木しげる「河童の三平」②岩明均「寄生獣」③宮沢賢治「春と修羅」④オーエン「ソングオブソング」⑤魯迅「故事新編」⑥司馬遷「史記」⑦夏目漱石「行人」⑧トルストイ「神父セルゲイ」⑨ドストエフスキー「カラマンゾフの兄弟」⑩マーク・トウエン「ハックスベリー・フィン」なおこれは正気の逆順であるという。
⑦かわらぬものさし:
「何とかはもう古い」という、流行を追うように文明は階段状に上ってゆくという考えが日本人知識人には強い。ところが文明人の帝国主義が滅ぼした先住民の立場から文明批判を続けるクローバー家もいる。
⑧ゆっくりからはじまる:
2001年同時テロの後アメリカは全体主義に傾いた。すこしづつ軍国主義に回帰する今、ゆっくりと歩くことが文明批判を確実に準備する。
⑨政治史の文脈:
人を殺したくないという感情は、「良心的兵役拒否」、「反日分子」という言葉よりも前にある。
⑩はみだしについて:
作田啓一は太宰治の文学の本質は東京人と田舎人の間にある「恥じらい」であるという。「甘え」も日本文化の視点になる。
⑪犀のように歩め:
釈迦の言葉に「犀のように歩め」があるが、灯台となるような道を照らす人になれということである。編集者もそうだ、目利きが少なくなった。
⑫ポーの逆まわし:
ただでくの坊としての自分があるという感覚が年取った自分の前にある。
(つづく)


文藝散歩 永井荷風 「断腸亭日乗」

2010年12月13日 | 書評
永井荷風42年間の日記 個人主義者の孤独な生 第61回 最終回 

永井荷風著 磯田光一編 摘録「断腸亭日乗」岩波文庫 第44回 

1958年(昭和33年 荷風80歳)
1月元日 晴れ、正午浅草、飯田屋またはアリゾナにすというワンパターンの記事となる。

1959年(昭和34年 荷風81歳)
1月から3月1日までは、天気と正午浅草のみ
3月2日 病臥 10日まで家を出ず。
3月11日 もう浅草にも行かず、正午大黒屋(市川八幡駅前)食事の記事のみとなる。そして4月29日で日記は止む。

これで「断腸亭日乗」は終ります。長い間ご静聴有難うございました。明日からは永井荷風の随筆集を開きます。
(完)

筑波子 月次絶句 「江村初冬」

2010年12月13日 | 漢詩・自由詩
師走未央新酒遅     師走未だ央ならず 新酒遅し

菊残猶有傲霜枝     菊残り猶を 霜に傲る枝有り

陽斜田畝紅柿熟     陽は田畝に斜に 紅柿熟し
   
正是橙黄橘緑時     正に是れ 橙黄橘緑の時


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(韻:四支 七言絶句仄起式  平音は○、仄音は●、韻は◎)
(平仄規則は2・4不同、2・6対、1・3・5不論、4字目孤平不許、下三連不許、同字相侵)

CD 今日の一枚 プロコフィエフ 「交響曲第1番、第6番」

2010年12月13日 | 音楽
プロコフィエフ 「交響曲第1番、第6番」
ムスティスラフ・ロストロポーヴィッチ指揮 フランス国立管弦楽団
DDD 1988 ERATO

プロコフィエフ(1891-1935年)はロシアの生まれ、ペテルスブルグ音楽院に学び、リムスキーコルサコフに作曲法を学んだ。交響曲第1番は1917年の作品でいかにもモーツアルト的。旧ソ連時代には形式主義だと批判を受け、曲風の変更に苦しんだ。指揮者のロストロポーヴィッチは世界一流のチェロ奏者である。