ブログ 「ごまめの歯軋り」

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検察大阪特捜部の犯罪 検証不十分

2010年12月29日 | 時事問題
asahi.com 2010年12月29日5時0分
最高検、村木氏に直接謝罪へ「いつでも、どこへでも」
 最高検の池上政幸刑事部長が、村木氏の代理人の弁護士に「いつでもどこへでも、直接おわびに伺いたい」と連絡したという。具体的な日程は年明けに調整する。 村木氏は27日、弁護士を通じて「事実と異なる調書が大量に作成された過程や組織の機能の在り方が十分検証されていない」と批判し、検証過程で自分への聴取がなかったことも「非常に残念」とするコメントを発表。弁護士は同日、不当逮捕に対して国家賠償を求める訴訟を起こすとともに、村木氏への直接謝罪を最高検に求めていた。

桜吹雪の肩に大見得を切る「遠山の金さん」の時代を清算しなさい。誤認逮捕、拷問、自白、一方的推測によるでっち上げ裁判と明治時代以前の奉行所感覚をいまだに引き摺る検察庁の反省は甘い。

読書ノート J・S・ミル著 「自由論」 岩波文庫

2010年12月29日 | 書評
個人の自由と多様な才能が社会の発展の原動力 第1回

 本書の冒頭の見開きに、J.Sミル (1806 - 1873年)が無条件に共鳴した思想家ヴィルヘルム・フォン・フンボルト(1767-1835年)の言葉を引用している。フンボルトはドイツ人文主義を代表する思想家でプロシア文化に貢献したが、その著書「イデーン」で次の言葉を述べている。 「本書に展開されたあらゆる議論が直接に起因する重大な指導原理は、人類があたうかぎり多種多様な発展を遂げることが絶対的に必要であると云うことに帰着する」 思想史的な位置づけは後ほど行うとして、この結論はスチュアート・カウフマン著 「自己組織化と進化の論理」に述べられた進化のセオリーと極めてよく一致している。道徳哲学や社会哲学においてミルが功利主義者であることは論を待たない。ジェレミ・ベンサム(1748 - 1832年)のいう「最大多数の最大幸福」が最高の目的であった。しかしミルはこれに終わるものではなく、「ベンサム論」ではこれを批判して「我々は功利または幸福はあまりに複雑なまたは不確定な目的であって、いろいろな第2次目的の媒介を借りなくては決して狙うことは出来ない」といった。制度が最大多数の最大幸福をもたらさんが為には、何よりもまず社会の構成員の人間としての発展がなくてはならないということを「経済学原理」において述べている。それはやがて個性の重視となる理想主義になるのだ。すなわち第1原理としての功利主義に、「人間としての成長」、「諸能力の調和ある発展」という理想主義的色彩が加わる。(つづく)

文藝散歩 永井荷風著 野口富士夫編 「荷風随筆集」 岩波文庫

2010年12月29日 | 書評
永井荷風の江戸文学趣味と淫靡な世界 第16回

向嶋(昭和2年5月)
 文人墨客の地と言われた川向こうの向島は、荷風の時代においてさえ、久しい昔からすでに雅遊の地ではなかった。昭和2年三鷹の禅林寺に移されるまでは森鴎外の墓は向島の弘福寺にあった。1年に1回は向島の弘福寺を訪れ、向島から浅草を歩いては江戸往昔の文化を追慕し青春の回想に浸るのである。向島に移り住んだ幸田露伴の「爛言長語」を引いて隅田堤の桜をめで、江戸時代の寺門静軒の「江戸繁昌記」、塩谷宕陰の「遊墨水記」で補うのである。儒家林述斎の詩「墨上漁謡」をひいて、花の散った若葉のころの墨堤を賞する。これは柳北の「花月新誌」と同じ意見であると云う。墨田川の葭蒹蘆荻の繁茂は江戸時代の蜀山人が作を例証に挙げる。葭蒹葉秋冬になると白葦黄茅の景を作り特に文雅の人を喜ばす。寺門静軒の絶句「江頭百詠」を引くてダメ押しとする。この辺は荷風の漢文の知識の深さを誇示するかのようである。社会学者の実証研究のように次から次へと先人の引用に暇が無い。そして最後に「墨田川の水流は既に溝涜の汚水に等しきものとなったが、それでも旧時代の芸術があるがためにいまなお一部の人には幾分の興趣を催す。今の文明は西洋文化の模倣、仮借に他ならないが、甚だしい軽薄である。咀嚼するに時間がなさ過ぎる。自己籠薬中の物にすることこそ大切であろうに」と結論する。
(つづく)

筑波子 月次絶句 「歳晩書懐」

2010年12月29日 | 漢詩・自由詩
霜鬢匆匆惜歳闌     霜鬢匆匆と 歳闌を惜しみ

今年無事幸平安     今年無事 幸に平安たり

梅枝馥郁常多蕾     梅枝は馥郁と 常に蕾多く
  
家計貧窮嚢裡寒     家計は貧窮 嚢裡寒し


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(韻:十四寒 七言絶句仄起式  平音は○、仄音は●、韻は◎)
(平仄規則は2・4不同、2・6対、1・3・5不論、4字目孤平不許、下三連不許、同字相侵)

CD 今日の一枚 R・シュトラウス 「室内楽全集ー3」

2010年12月29日 | 音楽
R・シュトラウス 「室内楽全集ー3」
①「ホルンとピアノの2重奏」作品11
②ホルンとピアノのための「アンダンテ」「セレナーデ」「フーガ」「ガヴォット」
ホルン:ヨハネス・リツコフスキー、ピアノ:ウォルフギャング・サヴァリッシュ
DDD 1983-1987 ARTS


現代音楽作曲家と思われるR・シュトラウスにこのような古典的なジャンルがあったことは発見である。