佐渡の翼

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玉林寺(佐渡畑野)     投稿者:とある旅人

2010年06月06日 06時00分17秒 | 佐渡及び首都圏近辺の面白観光スポット
佐渡では能舞台というものは神社の境内にあるのが通常だ。ところが畑野にある玉林寺とは、その能舞台を備える島内唯一のお寺だそうで、そのことを知る島民は少ない。私はまずそのお寺の場所を確認してみることにした。ネットのマピオンで調べたら、この寺は畑野中学校のすぐ近くに位置している事が分かった。私はその地図を見ながら、寺の電話番号をプッシュした。すると住職の御内儀らしきお方が電話にでた。私が場所を尋ねると、この女性は、「どちらの方向からおいでになりますか?」と問うた。私が「真野から行くんですよ」と答えると、「そしたらのお~、畑野の駐車場のあるとこを右斜めに入ると」と言いながら、延々縷々と場所の説明を始めたが、どうにも要領を得ない。同じ事を繰り返し言いながら堂々巡りをしているのだ。最後は自分自身、訳が分からなくなったらしく、住職さんに助けを求めた。すると住職さんは「なんだっちゃあ~おめえ~」と電話の奥でつぶやきながら、「しょうがねえなあ~」とでも言いたげな口調で「え~とお、県道南線を走りますと、まず西町の交差点が見えてきます。そこを過ぎるとこんどは中町に至りますが、その少し手前に右斜めに入る道があります。目印は床屋さんと駐車場です。その道を進んで下さい。そうするとやがて熊野神社が見えてきます。その隣が玉林寺です」と実に明快にお答えになった。さすがは住職だ、実に説明の手際がいい。私は「よく分かりました」と言って電話を切った。 

2月中旬のとある日に私はこのお寺を訪ねてみた。小雪が散らつく中、山門の前に佇むと、立派な鐘楼があった。丁度相川の時鐘楼によく似た外観だ。山門をくぐり、本堂に向かって歩いて行ったがどこにも能舞台らしきものは見えなかった。おかしいなあ~と思いつつ、住職の住まいの方に足を向けたら番犬が二匹「ワオーン」と吠え始めた。私はこのワンちゃんに向かって「能舞台ってどこ?」と尋ねてみたが返答は「ワンワンワア~ン」であった。住居に向かって「すいませえ~ん」と何度呼びかけてもうんともすんとも言わなかったので、諦めて車に戻ろうとしたら、住居の方から「お~い」という住職さんの声が聞こえてきた。私は大慌てで住職さんの方に走りより、「この寺には能舞台があるって聞いて来たのですが」と言うと、住職さんは右手の基礎石だけが残された1画を指差しながら、「能舞台はかれこれ10年前に壊れて無くなってしまいました。そこがその跡です」と言った。吾潟の伊豆神社の能舞台のように、がけ崩れのために崩落したわけでもないのに、意外と脆い建物だったのかもしれない。玉林寺の幻の能舞台だった。




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