赤泊から海岸道路を東へと車を走らせると、筵場を経て、やがて多田に到る。ここから畑野の長谷寺へと向かう県道へと左折し、浜河内の集落を抜けてヘアピンカーブを登りきった所の右手に、「西龍寺」の案内看板が見えてくる。ここを右折し、しばらく山道を進むと左手にお寺の屋根が見えた。訪問当日は、お彼岸の中日だと言うのに、朝から名残雪が舞い散り、住職さんが季節はずれの雪かきに追われていた。筆者がこの住職さんに「このお寺は何で有名なのでしょう?」と尋ねたら、彼は「お大師さんで有名なんです」と答えた。お寺の右脇に大師堂があり、その隣に熊野神社があった。少し離れた丘の上には石動神社もあるそうだ。大師堂に安置された大日如来は椿尾の石工五兵衛の作である。
このお寺は、元々は多田の荒町にあり、多田城主の祈願所だったが、火災にあってからは、山の上のこの地に移動した。境内には滾々と清水が湧き出ているそうだが、生憎の雪に阻まれ、それを見ることは叶わなかった。お天気がよければ、男山、女神山、そして対岸の越後の山並みを見渡せる眺望のよい所である。是非共新緑の頃に訪ねて欲しいお寺の一つである。