別に佐渡に限った話では無いが、とりわけ佐渡では、和洋中何でもござれの食堂が目に付く。こういう食堂は、客の多彩なニーズに応えられるというメリットの反面、一つ一つのお料理の質が低下し、quorityの高さを求める客の要望に応えきれないと言うリスクを背負う事になる。これが地元常連客密着型の店舗ならばそこそこ営業を継続できる。だが、舌の肥えた観光客や帰省客も相手にしなければならないレストランとなると事情は違ってくる。激戦区の都会で様々なコスパの高いお店を食べ歩くOL達は、お料理の感想を気軽に自身のブログや食べログなどに掲載する。お店側もそうした指摘や要望を真摯に受け止めてサービスや味の向上に役立てている。それゆえ東京では、「うちのお店の料理が不味いと書かれたのがけしからん」と、食べログ側に噛み付いたと言う話はあまり聞かないし、その種の記事削除を訴えて勝訴したと言う話も聞かない。唯一、今年の1月に佐賀県で、ある居酒屋店主が「食べログ掲載当時の店の外観と現在のそれとが全く違う事に対しお客から苦情が絶えない」との理由で食べログ側に記事削除を求めて訴え、勝訴したという事例があるくらいだ。この居酒屋店主は、「それを個人ブログに書くのは一向に構わない、しかし食べログは影響が大き過ぎるから訴えた」と語っていた。
そうした流れの中で、食通の島外客も相手にしなければならない佐渡の何でも屋レストランは、厳しい客の評価に晒され続ける事になる。観光案内本で紹介されれば観光客の来訪は増える。来訪者が増えるのはいいのだが、時に厳しい客の評価の標的になるリスクも高まる。そうした客が増えた結果皮肉にもそれが裏目と出た典型例が、30代前半女性に辛口記事を食べログに投稿された某人気レストランであろう。しかし、ステーキ、サラダ、グラタン、ハンバーグ、ピザが美味い、お寿司が美味い、天丼、海鮮丼、野菜天丼、鰻重、釜飯、うどん、刺身定食、鍋料理も美味い、そしてデザートもホームメイドで充実、そんなお店は都心の一流ホテルのビュッフェレストラン(例えば京王プラザホテルのグラスコートなど)かデパートの特別食堂くらいしかあるまい。このお店が京王プラザホテル並みの調理スタッフを擁し、そして全国から優良な食材を集める調達網を有しているのであろうか?このお店は自前のホームページ(HP)を公開していない。東京の一流店は例外なくお店独自のHPを作成し、そこで旬のコースメニューや価格を公表して集客に努めている。このIT化時代、それはもう当たり前の事なのだが、このお店はまだそれを実行していない。両津梅津の「漁場」さんのように、「当店の海鮮料理に使用するお魚は全てその日に水揚げされた佐渡産の魚介類だけを使用しておりますので、海の時化等の状況で新鮮な魚介類の入荷が無かった時は海鮮丼などの提供が出来ない場合がありますので予め御了承願います」と言うような文言をHP上に掲載するくらいの覚悟があっても良いのではないだろうか?
一方、そんな食通観光客の厳しい舌に耐え抜くためにメニューの数を絞り、1)和食、2)寿司、3)洋食、4)ステーキ、5)中華などに特化した専門店を展開しているお店は例外なく繁盛しているし彼らからの評価は高い。1)ならば宿根木の「菜の花」や畑野の「神楽」、2)は佐和田の「りきすし」や真野の「寿司正」、3)は両津の「彩花亭」や佐和田の「アングランパ」、4)は真野の「こさど」や佐和田の「シェ・モリタニ」、5)は佐和田の洛陽や小木のや志満であろう。
余談だが、何でも屋とは言えないが、鮨屋がラーメンをも提供するお店が筆者の知る限り佐渡には二店舗ほどある。新穂の「長三郎」と吉井の樋口食堂である。いずれも東京では考えられないような営業形態であり、観光客の好奇心を大いにくすぐる存在だ。お味のほうは、読者諸姉諸兄が実際にお店に食べに行って判断して頂きたいと思う。