三浦仁。まんま、「じん」と読ませる。
どんなプロボクサーなのだろうか?
所属する「三迫(みさこ)ジム」を検索。
1993年12月24日、なんとクリスマス・イブの日に、この世に生を受けている。
年齢、21歳と10か月。青森県上北郡おいらせ町(まち)出身。
「おいらせ」と言えば、「奥入瀬川」。調べてみると、その名の通り、町を清流で有名な奥入瀬川が横切るかのように、ゆったりと流れている。
東北新幹線の最寄りの駅が近くにあり、成人式の日や、「試合が流れてしまって、ぽっかり気持ちも、取っていた休みも開いてしまったんで、気分を切り替えようと」帰郷して、故郷の澄み切った青空や、ヒンヤリとした、しかし心温かくなる空気を思いっきり吸い込んで、帰京したりしている。
「やっぱり、東京は馴染めなくって」と、本人、苦笑い。
「どこが? って、あの人ごみがねえ、どうにも慣れないんで・・・」
慣れないらしいのは、ツイッターの短い文章も。
「今日わ」と、出てくる、出てくる。「後楽園ホールド」とも。
クリンチの、間違いでもないようだ。
ひょっとして、ジム先輩の岩井大のように、受け狙い??
「うわっはははは」と、当人、大笑い。
「友達みんなに言われるんですよ、ソレ。受けなんて、狙ってません。ボクの、打ち間違いです。気を付けようと、思っているんですが、はははは」
今の三迫ジムに在籍は正解、と想う。
青森県など、地方のボクシングジムに在籍していたら、練習相手に不足し、試合のたびに旅費と宿泊費がかかる。ヘタすると、いや、しなくても、その必要経費引いたら、プロとは名ばかり。ファイトマネーが間違いなく、赤字・自腹に転じてしまう。
それよりなにより、マッチメイクの際に、とんでもないハンディキャップを背負うハメになる。
後楽園ホールを、「ぼくらにとっては、高校野球の球児の憧れ、甲子園みたいなもんです」という、上京して前日計量なども含め、ビジネスホテルに2泊して試合に臨む北海道から九州、沖縄から来た選手や会長ら、何人にも、いままで折に触れて実情を聞いてきた。
ソロバンはじくと、戦う選手も、育てる方も、どちらも大変な苦労が分かる。
かといって、地方の体育館に日本に倒れに来たとしか思えない、タイのボクサーを招へいして、絵に描いたようなノックアウト劇を、劇的に!見せても、ボクシング好きの肥えた目のなかで、シラケる客は多い。
本当に強くなり、チャンピオンを目指したいのなら、いろんなタイプのボクサーとスパーリングが出来る東京の大手のジムか、その周囲の関連ジムに優るものは無い、のが否応の無い現実だ。
三浦に友人が多いのは、彼のツイッターを見ていると、良く分かる。故郷に悪友もいそうな、明るいノリが、写真からあふれ返って、飛び出してきそうだ。
人口こそ、現在合併したあと、2万5155人もいるが、「とんでもない、田舎ですよお」と、明るく言う。んでも、ヒトが多いゴミゴミはイヤ。
カッコ良い写真もある。
デビュー戦が行われた2014年4月16日。試合会場の後楽園ホールには、故郷の友人たちが多く駆けつけ、熱烈応援した。
以来、テンポ良く試合をこなしていき、ここまで6戦して、6勝。無敗で、KOひとつ。
数々の試合写真や、彼のツイッター、さらに三迫ジムでのスパーリングの様子も、動画でしっかり見た。何度も、繰り返して・・・。
右ストレートも、きれいに良く伸びきっているし、すぐさま放つ左右のコンビネーションも優れている。
これじゃあ、負けなしは、当然だろう。
彼もまた、アマチュア時代を経験。戦績は、8戦して、4勝4敗。1つのKO勝ちがある。
ボクシングを始めたのは、高校からだと言う。中学校は、地元の百石中学校。
「それ、ももいし、と読むんです」
現在の総生徒数、3学年合わせて、268人。年々、その人数は減りつつある。
ーー進学した高校は、地元の百石高校か、硬式野球で有名な三沢高校と思って調べたら、どちらにもボクシング部、無いんですよねえ
「そうです。ボク、ガッコの成績が、あまり良くなかったもんで、はははは・・・なもんで、八戸(はちのへ)工大一高へ入ったんです。アソコだと、ボクでも余裕で入れるんで」
合格したものの、8月、9月まで、どの部活にも入らず、「ぶらぶらしてました。このままじゃあ、中退するかもなあ」と思いつつ。
それがボクシング部に入ってから、ぶらぶらは股間だけ。毎日、イキイキ。
この部、甲子園に顔を出す硬式野球部並みに強い。
インターハイによく勝ち上がって出るし、東北大会でも優勝した過去有り。個人では、ソウル・オリンピックや、世界選手権にまで出た”強拳”の先輩もいる。
三浦も、インターハイに出場。その試合会場で、強豪名門の「南京都高校」の選手だった市村蓮司を見かけている。
「強いのがいるぞって噂は聞いてたんで。でも、まさか、今度の東日本新人王を争うことになるとは、想像もしてませんでしたが」
彼もまた、津軽弁は出てこない。実は、家に帰ると、津軽弁も、丸出しになる。
ツイッターをくっていくと、可愛い女の子と頬すり寄せて、目をほそめて幸せイッパイの写真が出てくる。とっても、ココには転載しにくいほど、にた~~~っ・・・・。
ーーーひょっとして、彼女?
「あ、はい、そうです。今? はい、一緒に暮らしています。同郷で、同級生なんです」
それじゃあ、彼女のためにも、将来、ベルト巻かなきゃねっ!
身長は、165センチ。170センチの今度戦う市村蓮司より低いが、
「実はボク、身長に比べて、両腕が長いんですよ。高校の時は、ミドル級でやっていて、185センチの選手と闘って、打ち込めてましたから」
プロに入っても、2戦目で、177センチの選手に、判定3-0の文句無しで、打ち勝っている。
ジムのスパーリングでは、竹中良とやって、試合巧者の竹中に、ラクに踏み込んで打たせてもらえなかったが、それもカバーしつつあるようだ。
デビュー戦のときは、スーパー・フェザー級。で、今は、2ランク体重下のスーパー・バンタム級。
減量には、こちらが想像するほど苦しんではいない。
もっかのスパーリングの相手は、岩井大だという。
「週に最低10ラウンドは、やらせて戴いてます。大体、14とか、15とか」
「岩井さんに、ボッコボコに打ち込まれて、追い込みに入っています」と言うわりに、声はあっかるい。
トレーナーは、岩井大と同じ、加藤健太。こちらも、宮田正明と並ぶ、素晴らしい力量があり、人間を育ててもゆく、良いトレーナーだ。
「試合では、コーナーに戻った時、自分は分からないんで、加藤さんに聞くと、ポイント取っているかもしれないけど・・・次のラウンドで行かないと、厳しいなと言うんで、行く」
なもんで、ラスト4ラウンド。
連打連打連打連打連打連打連打あ! 休み無しに打ち込み、49-37、39-38、39-37で勝った試合もあれば、ラストに勢い込み過ぎて、思いっきり大振りフックの空振りかまして・・・・・勝った試合もある。
ジムの中では、先輩ボクサーに親しまれ、可愛がられている。
「腹打ち」「腹踏み」
ボディを鍛える練習だが、まあ、遠慮会釈無しに、ボンボンめった打ち踏みされている。1発で、逃げ出すボクサーもいるが、三浦は笑顔で耐え、終わるとファイティング・ポーズを決める!
---アレ、効果あるんですか?
「ありますよ。ボディ打たれても、効かなくなりましたから」
仕事とプロボクサー生活と、めっちゃ幸せな”家庭性活”という、トリプル両立の日々。
ロードワークをこなす時間が、なかなか取れないかわりに
「ボク、住まいは練馬区なんです。仕事先の会社は、高島平にあるんですけど毎日、自転車こいで通ってます」
おおっ! 足腰は、一石二鳥、コレで鍛えて維持していた。
毎日、「ひ~は~」もらしながら、全国各地を、自転車巡業している、火野正平、オントシ66歳の、ふくらはぎと太ももを見れば、三浦のスタミナも容易に想像がつく。
だから、最終ラウンドでも、ムチャ振りもあるけれど、連打も出来る。
さあ、インターハイで見かけた、噂の選手と、ついに11月3日の「文化の日」。
「後楽園ホールド」で、2人の「運命わ」決まる。
大体、午後の2時半から3時前後に、今度は5ラウンド開始のゴングが鳴る。
「相手は強いとは思いますが、ベストを尽くしたいです。勝って、まず全日本新人王を取って、必ずベルトを獲りたい!」
両選手の「大拳闘」を期待したい!