ありゃりゃあ・・・・・・・・。そ~ゆ~取り口になるわけ?
かなりの激闘、両力士の激しい差し合いを期待していただけに、いやあ! 見事に「肩透かし」を喰らっちゃったカンジ。
というのも、宇良の対戦相手となった「勝誠」(しょうせい)のことを、検索しまくっていて、気付いていたから。
驚くほど、宇良に似ていたのだ。
勝誠という力士。まず、土俵に上がってからの所作が、宇良に負けじと美しい。日本人男性の四肢(しこ)を、きれいに伸び切らせると、これほど美しく見えるとは!
(NHK-BS 生中継画像より。以下、同様)
本日も、左側に立つ勝誠。このように左足を上げ、きれいに伸び切らせる。むろん、右足も同様にスパーン!と上げ切り、まさに四股(しこ)でシコを踏む。
右側が、宇良。やはり、同じくらいの高さまで上げ、いつもの様に伸び切らせる。
さらに、この勝誠も、力士としては小柄。身長167センチ。体重130キロ。
宇良、173センチ、122キロ。目に見えて、大きな差は無い。
おまけに、勝誠の得意技、「居反り」と記載あり。以前の取り組みを観たら、腰の強さ、粘り腰が際立ち、投げをうたれても、態勢を崩しながら切り返しを最後の最期まであきらめない。宇良に、似てるう~っ!
さらに、低い飛び込み姿勢から、もぐって活路を見いだす取り口も似ていた。
違うのは、キャリアと、境遇。
勝誠、あと2か月で30歳になる。奄美大島出身で、高校は山口県の「響(ひびき)高校」に相撲留学。
なので、本名の「福永」の後に付けたしこ名は、「薩摩響」(さつまひびき)にした時期もある。かつては、豪栄道(現・大関)のライバルの時代もあった。
そう、幕下入りするまでは、さっさっと勢い良く駆け上がっていった。だが・・・・・すでに59場所。10年近く、幕下に居座り続けている。自分の意思とは関係無く・・・・・。
番記者ではないが私,大相撲を取材してきた年月は長い。
その結果、知った事実のひとつに、素質と実力が一枚抜きん出ている力士なら、殆んどが幕下までは昇っていける。
だが、「その先が難しいんです」と、どの下位の力士も、全員言うのだ。
その例にもれず、想いを込めて「勝誠」というしこ名に変えても、十両には手が届かぬまま。だからこそ、プロのキャリアがまだ乏しい宇良に、何としても勝って、名を挙げてやる!という想いは強かったはず。
続行か!? 引退か!? 自分のこの先の相撲人生の見極めの時期に、差し掛かっている勝誠。
精神的にも激闘になるかも!?と期待したのは、そ~ゆ~ことがあったから。
ちゃんこより、コーヒーとワッフルが大好きという、意外な一面にも好感が持てた。
ここまで、共に4勝1敗同士。
闘志あふれる勝誠の、宇良を見るまなざし。
この直後、宇良は前日まで考えていた取り口を変えたと、取り組み後、語った。
「相手のみなぎるような雰囲気というんですかね。ソレを見たら、前日まで考えていた普通の策や作戦では、いけないな、と」
「いかに、落ち着いてやれるか? それが、勝負の分かれ目だなと想った」
片や、勝誠。
「おそらく、(楽に低く相手のフトコロに)入れないでしょう。だから、動き回ることをしていかないと」と、対戦前に語っていた。
立ち会い。左の勝誠は、先にキチンと両こぶしを土俵に付けて宇良の出方を待つ。
一方の宇良。珍しく、まるで琴奨菊や、ダヴァジャルガルのように、土俵の砂を両足で何度も蹴って、待たせながら、相手の間合いをずらせ、変更後の作戦を考えているフシがのぞく。
宇良。まず右こぶしを先に土俵に付け、立ち上がる寸前、左手をトンと付いて体を立ち上がらせた。
おおっ!勝誠がアタマ下げて突っ込む。珍しく、受けた宇良。
「相手が低くきて・・・。すぐワザを掛けること、出来はしたんですけど」
「自分自身、中に入られた経験が無いので、一瞬、ヒヤリとしました」
入れないと想っていたはずの勝誠も、動き回らずに作戦変更。
いつものように低く入り、後頭部を宇良のフトコロに付けた勝誠。
ところが、受けずに引いた宇良。右へと大きく回りながら
右手を勝誠の脇に深く差し入れ、左手は勝誠の肩の辺りを上から強く力一杯押さえ付けて、素早く自分の動きに引きずり込ませてゆく。
もう、勝誠。カラダのバランスを失い、両足が揃って浮きかげんになる。
そこを瞬時に見て取った宇良。
思いっきり引きずりこんで、勝誠、あわわわわ、バッタリ!
決まり手は、「肩透かし」。
あれれえ~・・・・・見てた私の気持ちも「肩透かし」状態に。
これで、宇良。6戦目を終えて、5勝1敗になり、30歳間近の幕下ベテラン力士の勝誠は4勝2敗に後退。来場所もまた、幕下にとどまることになりそうだ。
だが、宇良もまた、そうなる可能性が大きくなりつつある。
というのも、現時点で十両で負け越しているのは、翔天狼(しょうてんろう)ただ1人だけ。その1人枠をめぐって、十両入りが争われる。
幕下で6勝全勝しているのは、先に宇良に勝った19歳の佐藤と、14枚目の大岩戸など2人いる。佐藤はまだ19枚目なので、今場所、例え優勝しても十両入りは無い。
ちなみに、昨日。佐藤は「押し出し」で勝っている。
さらに、宇良と同じく5勝1敗の戦績の幕下力士は、10人以上いて、星のつぶし合いの取り組みが組まれている。
宇良自身、佐藤に負けたことは、「とても悔しかった」と言う。
この十両入りの、混戦状態。
宇良も、「どうですかねえ・・・・」と、不安をもらす。
「佐藤クンに負けた時点で、(来場所の十両入りは)無いなと想ってしまって・・・・」
力士なら、誰でもまず十両入りしたい背景を最後に書いてしめくくる。
幕下力士に、給金は出ない。もらえるのは、手当てとして、毎月15万円程度。
序の口、序二段、三段目となると、事実上、支給は無いに等しい。そのため、実家から仕送りをしてもらっている者は多い。
相撲部屋住み込みのため、衣食住費は不要だが、10代の若者のなかには、夜、こっそり部屋を抜け出してコンビニに行き、御菓子、飲み物、パン類など買い込み、児童公園のベンチに座って飲み食いしている力士をしばしば見かけた。
片手には、スマホ。親や友人や恋人に電話して、稽古の辛さをこぼしていた。
そんな彼らも将来十両となると、「関取」と晴れて呼ばれ、付き人が付く。
給金は、一気に7倍もの毎月、103万6000円もらえ、さらに、9月と12月には、2か月分に当たるボーナス的なおカネが支給される。
さらに、地方場所の巡業に行くことにより、「出張手当て」までもらえる。
それまで知り合いが創ってくれていた「後援会」も拡大。もらえる領収書無しの金額も、ど~んと跳ね上がることが、常識だ。
宇良ならずとも、なんとしてでも、一場所でも早く十両入りしたいのが、お分かりになるであろうか。
ましてや、先の勝誠の想いは、さらに強いはず。
みんな、頑張れ!
そう強く想う。
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明日、25日。幕下十九枚目の佐藤と、同十四枚目の大岩戸の、6勝全勝同士の優勝決定戦が行われる。
どちらが勝っても、十九と十四枚目のため、来場所の十両入りは無い。
かすかな光明が差す十両入りのためには、二枚目の位置に入る宇良は、26日(土)に行なわれるであろう7戦目の最終日には、なんとしても勝っておかねばならないのだが・・・・・。