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<リアル ボクシング ルポ>本日2月27日 川崎等々力アリーナにて、シャムガル興一が試合

2013-02-27 14:54:01 | スポーツ

 昨年の激闘の印象がまだ消え去らない、シャムガル興一が、2月27日、試合をする。

 今までの主戦場だった「スーパー・ライト級」から、ひとつ体重を上げたクラスの「ウエルター級」で、挑む。

 前回の試合と違い「減量を気にせずに試合までもっていけるので、その分、気もラクです」と、当人。

 

 他のジムへ出稽古に行き、スパーリングを重ねており、戦う準備は万全。試合数日前、少し風邪をひき、ヒヤリとさせたが、それも復調。

 

 相手の情報は、あまり伝わってきていない。7戦して、5勝2敗、らしい。

 それでOPBFの10位ということは、韓国プロボクシング界は近年低迷してるとはいえ、決してあなどれない。

「しつこく、前へベタ足で、出てくるタイプらしいっす」と、興一。

 

 ということは、2人、タイプ、戦法が似ているということか?

Dscf0377 今夜、再びレフェリーによって、興一の右腕が、上がるか?(写真は、昨年の11月3日のもの)

 それとも、上がっても、笑顔は無しか?? ひょっとして、失意か?

 応援団の声援が、等々力に、とどろき渡るか!

 

 拳闘の健闘を、期待したい!

 

 

 


2013・2・24「東京マラソン」参加走者 なんと、3万6000人!東京都庁の天下り役人ら大儲け

2013-02-23 21:01:02 | スポーツ

 世は、健康ブーム。クスリ、サプリメントの広告と、コマーシャルはしつこいほど流れている。そして、スポーツジムも、儲かっている。

 さらに、マラソン中毒患者が、日に日に増加中。それはそれで、良いこと。

 前の、石原”ゴーマン”慎太郎の態度に、これまた、日に日に似てきた猪瀬直樹。蓄膿症なのか、濁った鼻声が、ひどくなってきたが、その都庁の天下り幹部が顔をそろえる団体が主催する「東京マラソン」の、知られざる裏面を知らせときます。

 断って置きますが、気持ち良く、当日走るランナーや、応援する人、歩道から声援を送られる方に、冷や水を浴びせるつもりは、全くありません。

 ただ、知って、心凍る人は、いるかも知れません。

 今回の「東京マラソン」。走りたい人は、応募した。その数、36万4000人に対して、走れる人は、3万5500人。

 参加料、消費税込み込みで、1万500円。ただし、外国からの参加者は、1万2600円と、割増し料金を取られる。

 それだけで、しめて概算だけで、3億7275万円が、主催団体に転がり込む。

 さらに、10キロコースを走る人、500人。この参加料、半額の5250円。海外参加者、6300円なり。

 これだけで、250万円以上が入る。

 さらに、寄付金や、スポンサー、協賛企業からのお金、2億円近くがフトコロに。フジテレビからの放送権料も、転がり込む。

 しめて、6億円以上の収益。

 なお、受付から始まって、「お仕事」する人、協賛企業からの派遣の女性なんか含めて、み~んな「ボランティア」

 アハハの、ウハウハだわさ~。

 ちなみに、他の大都市のマラソン。

 昨年11月25日に行なわれた「大阪マラソン」。ここは、消費税込み込みで、1万円ポッキリ。海外からの参加者は、1万2000円。といって、今年も”かいがい”しい面倒は、見てくれませんでっせ。

 「神戸マラソン」。ここも、1万円ポッキリでおます。

 締めは「京都マラソン」。ここは、1万2000円と、割高。外国人となると、もっと高く1万5000円だ。

 観光で儲けて、マラソンで、さらに、ん億円が、ガッポリ。

いやはや、主催は、汗もかかず儲け、走者は、ヒーハー汗流してマラ損???

 さあ、まあ、しっかり走っておくんなまし。声援送って下さいな。

 この「スポーツ」のとこに、明日の夜から、自己満足者の写真が、氾濫するんだろうなあ~・・・・・

 

 


<リアル ボクシング ルポ>酒井智彦 対 シャムガル興一。観客を感動させた、昨年11月3日の「激闘」再現

2013-02-22 15:45:50 | スポーツ

 110日も前? ナニそれ?と、パソコンや、スマホに向かって、思わずつぶやいた人もいるかも知れない。

 酒井智彦と、シャムガル興一との試合が行われたのは、昨年の11月3日。その夜、試合結果の一報だけのような形で、私としては珍しく、数行報じただけで、文を終えた。

 以来・・・・というわけだ。

 スポーツ新聞の記者と違い、すぐに取材現場に用意された「プレス控え室」で書ける、打てるというタイプではない。取って出しが、出来にくいタイプ。無いアタマで熟慮して、よしっ! と決意して、書き出す。おまけに、遅筆。

 とはいえ、早く打ち出さねばと,心の片隅であせっていた。

 おまけに、当の酒井君からは、「出来上がり、楽しみにしてます」と、笑顔で言われちゃうし・・・・・・。

 片方の、シャムガル。といっても、日本人。シャムといっても、猫じゃない。麻生興一(あそう こういち)という、本名でリングに上がっていたが、今のオザキジムに移籍するとき、心機一転という気持ちも含めて、今のリングネームに変えた。意味は、聖書に出てくる、無敵の勇者の名前から取った。

 ちなみに、麻生、キリスト教信者じゃありません。トレーナーの、洪(ほん)東植が、熟慮の末、命名してくれた。

  酒井、シャムガル、どちらも、すでに取材させてもらって、書いたことがある。それが、試合をすることになったと、相次いで、双方から教えてもらった時には、思わず絶句した。

 正直、どちらにも勝って欲しい。良い試合内容をいつものように見せてくれて、ドロー(引き分け)になってくれたら・・・・・などと、おバカなことを考えながら、会場である後楽園ホールへ。

 事前に、酒井のスパーリングを2回ほど、見ていた。

 ・・・・・調子が、良くない・・・・・どうしたんだろう?

 打ち込まれていた。あの”強拳”林和希と、激しく真っ向勝負で打ちあった時の、強さ、しぶとさは、見いだせなかった。

 思わず、感想混じりに聞いた。

 -どうしたの? 絶不調じゃないですか?

 「ええ、まあ、そうですねえ・・・・すいません・・・・本調子じゃなくって・・・・・」

 そういって、本人、苦笑い。出稽古に来たジムの外には、酒井の彼女と思われる、可憐な印象の女性が。

 ガラス張りの外から、酒井が時にめった打ちになる姿を、目をつむったりしながら、心配そうに見つめていた。

 「大丈夫ですよ。試合までには、間に合わせて、キチンと仕上げますから」

 打たれて、赤く腫れ上がった顔を見せて、苦笑する酒井。

 「外で見ていた女性、あの人、ひょっとして、彼女?」と、明るいハナシに振ると、また苦笑。

 「ええ、まあ・・・・・」

 じゃあ、彼女の為にも、勝たなきゃね。そう言って別れた。

 酒井のことだ。このままでは、終わらないはず。そう、どこかで感じていた。

 11月3日、試合前の控え室には、顔を出さずに、試合の始まるのを待った。

 2人が、リングに上ってきた。気負いは、見えない。双方の応援の声が飛ぶ中、ゴングが鳴った!

 

 < 1ラウンド >

 早くも、ジャブの差し合い。

 林和希を苦しめたキレとスピードのある、酒井のジャブが良い。特に、左!

 シャムガルは、顔をいつものように完全ガード。腰を折って心持ち前傾させながら、ベタ足で酒井を追い詰めてゆく。

 酒井、ストレート、パンパンとダブル打ち!

 シャムガルも、ジャブを放ち、前へ前へと出る。酒井、ジャブとストレートを放って、突き放す。

 追うシャムガル。足を使って回る酒井。予測通りの展開で、1ラウンド終了。

 

 < 2ラウンド >

Dscf0296 酒井(写真・右側)、左ストレート連打!

 シャムガル(写真・左側)、写真のようにガードしながら、前へ、前へ。出て、酒井のボディを狙う。低い姿勢からの、アッパー気味のボディ攻め続く。

 酒井も、ガードの上からぶっ叩く!上下への打ち分け、上手いし、多彩。

もう、どっちも快調。ベストの滑り出しに、応援席、湧き上がる。

 

 < 3ラウンド >

 シャムガル、コーナーへ酒井を、ぐいぐい押し込んでゆく。負けじと、酒井、左ボディ!

 ヤロー! とばかりに、シャムガル、対抗心もろ出しの、ボディ・アッパー、はたまた、アッパー・ボディ!

 体、くっつけて、押した瞬間に、パンチを、バン、ズン! くっつけたり、突き放したりして、自在に打ちまくる。

 上手さと、パワー。こうなるとシャムガル、一日の長あり。

 このラウンド、シャムガル、リードとみた。しかし、酒井は引き下がらない。

  < 4ラウンド >

 くっつこうとする、シャムガル。そうはさせじと、足を使って、自分の距離で打とうとする、酒井。

 まさに、つばぜり合い。

 そんな中で、出た! 酒井の、連打、連打、連打、また連打!

 しつこく、体付けようとしながら、シャムガルも、上下、打ち分け。

 負けじと、酒井も、さらに打つ、打つ!

 シャムガル、ボディ狙う!

 打たれても、全くひるまない、酒井。

 シャムガル、ぐいぐい、酒井をコーナーへと詰めて、打つ!

 俗に言う、「見栄え」は抜群! ジャッジへの訴求力も、良し。

 だが、酒井、瞬時も、ひるまないっ!

 試合は夜。昼間無いっ!

 体、ガッツン、ガッツン、ぶつけあって、コーナーで打ちあう!

 まさに、1歩も下がらない、引き下がらないっ!!

 これぞ、ボクシング!

 これぞ、真髄!

 「こ~いち~!」 「酒井君、頑張れ~1」

見守る応援団と、客から、大声援が飛ぶ。飛び交い、リング上で、交錯して、バチンと、はじけた。

 林和希を判定勝ちで葬った時も、激しく打ちあった酒井。試合後、こう語っていたことを思い起こす。

 「自分は、本来、アウト・ボクシングをするタイプなんですよ。華麗にじゃないけど、足を使って。それが、打たれると、よ~し、そっちがそのつもりなら、やってやろうじゃん! となって、打ち合っちゃうんですよ」

 「もう、真正面から、意地になって(苦笑)。それが、また、どっか気持ちいいんですよねえ、困ったことに」

 この試合のあと、シャムガルは、真っ先に言った。

 「いやあ、酒井さんて、気持ちの強い選手ですねえ~。気持ちが、前に出てくるタイプで」

 言いながら、どこか、気持ち良さそう。ボクサーの、本能か。

 

 <つづく> 

  




 

 

 

 


<リアル 役者の演技力 ルポ>依然として愚かな歌舞伎界の非常識構造と、「椿組」春公演 

2013-02-22 15:20:00 | 芸能ネタ

Dscf6807 へったくそ、だなあ、秋吉久美子、58歳になっても・・・・。

 「女優」とは、「優」しい「女」と書くけれど、1度も優しい女に出会ったこと、あらへん!

 そう、「名言」を吐いたのは、明石家さんま。妻だった、大竹しのぶなど、共演した幾多の優しくない、でも、性別だけは女を念頭に置いての発言だった。

 だが、大竹は、こと演技力だけで言うならば、”1枚看板”を貼れるはど、上手い。なのに、朗読は、ヘタすぎて、そのあまりの落差に、驚くばかりだ。

 この原稿を打とうと始めた前、日本放送協会のFMで流れていた「FMシアター」なる、ラジオドラマ創作番組で、先の秋吉が妻と愛人の2役をやっていたのだが、ぶっ飛ぶほど、ひどい。

 声だけで勝負せざるを得ない”ハンディ”が有るとはいえ 、マイクの前に立った中には俳優もいた。秋吉は、ホンに書き込まれたセリフも、ト書きも、棒読みで、ドシロート。

 西田敏行と2人だけで、さまざまな人物を演じ分けるラジオドラマ、「日曜名作座」に出ている竹下景子の域に達するのは、まず永遠に無理。努力、ということが苦手な秋吉だから。古今の名作の朗読の分野で進境著しい松たか子にも、追いつくことは、この先、おそらく無いであろう。

 ワガママで、スタッフや周囲を手こずらせる秋吉、今、どうしているんやろか? と、検索してみると、なんと膀胱結石で、2度目の手術を受けるとか。

 芸能ニュースにも、取り上げられないほどの存在になってしまった。

 そんな塵芥(ちりあくた)に較べ、「椿組」の芝居にいつも出る、井上カオリや、長嶺安奈の上手さの方が、秋吉クラスより、いつ見ても光っている。

 知名度と、実力・演技力とは、本当に比例しない。そんなもんさ、世の中は、なんて、したり顔で言う奴がいたら、ぶっ飛ばしたい。

 井上と長嶺。その声だけの表現力は、どの程度か? 「優しい女」かどうか? は、分からないが、芝居がはねた後、1言2言、聞いたり、話したり、友人・知人と談笑しているさまを見かけると、サバサバして、2人共、実に男っぽい。

 まあ、だから「舞台女優」なんだろうと思う。水没死した太地喜和子が、そうであったように。生前、文学座で本人が私に語った、密会していた中村勘九郎(当時)を、思わず自室のカーテンを歯で裂いてロープにして、押しかけたマスコミの目を盗んで、裏口から吊るして逃がした実話は、面白かった。

 その、歌舞伎界

 かなりの馬鹿でも、その一家に生まれたら、歌舞伎俳優になれちまう。実力や演技力とは、全く関係ない所で、ガキの頃から誉めそやされる。高校生の分際で、年上の女性を妊娠させ、親父は安い手切れ金を他人に渡させて、認知すらさせない親子も、いまだ名優などとされる愚。

 もう、歌舞伎界の常識・慣例・慣習は、世間の非常識!

 どんなに上手く、周囲も認める実力がある役者であっても、”迷門”一家に産まれない限り、死ぬまで脇役止まり。

 妾や愛人との間に産んだ男の子なら、養子縁組して「一家」に入れ込んで、跡目相続させて一丁上がり。ちょいな、ちょいな、世の中、ちょろいな、か。

 極め付きの、男尊女卑の世界。なのに、女性ファンが、なぜか容認する、おかしくい歪んだ世界。それが、日本の「文化」などとされるバカバカしさ。 

 芸能界にも、俳優の実子が、デビューすることはある、最初こそ誉めそやされて、良い役がもらえる。

 だが、視聴率がさほど取れなく、映画でも観客動員に絡まないとなると、次第に仕事の依頼が途絶える。それなりに、キビシー洗礼を受ける。

 ところが、歌舞伎界ゆうたら、あんた・・・・・

 女をもてあそんで、妊娠させて、逃げて、父親任せにしたり、仕事さぼって、泥酔した挙句、暴行事件に巻き込まれたり、泥酔してタクシーに乗り、その料金を踏み倒して逃げたばかりか、駆けつけた警官を殴りつける。

 世間の常識じゃ、鼻つまみもん、ハンパもん、道楽もん。会社員なら、即刻クビ。非正規採用にも、あずかれない愚かもん。だけど・・・・・

 最近、親父が死んだ、酒癖悪い泥酔事件男など、シラフの時も、他人に対する礼儀を知らないママ。誰に対しても、慇懃無礼、クチのきき方を、いまだ知らない。

 そんな3人が、いまだヨイショされてる、異常な世界。歪んだ世界。そして、実力とは、無縁な世界。しょせん、鮮やかな色にごまかされる様式美だけ。ホモも多い。中年「悲恋」の、飛び降り自殺も起こしちゃう。

 そんな愚かな世界をぶち壊し、生前中に、演技の上手い者が主役を張れる、実力主義を中村勘三郎に導入して欲しかった。

 だが、事件を犯した馬鹿息子を前に、臨終寸前まで「ここでは、とても話せないオンナとのハナシを、病床でしていた」と息子が言うのだから、ど~しょ~も~ないスケベ男だなあ、と思わざるを得なかった。喜和子との頃と、死ぬまで、何一つ人間としての「軸」と「器」は、変わっちゃいなかった。

 ガッカリ! した。

 上手いと思えたのは、たった1人。故。片岡仁左衛門。

 今から31年前に公開された、映画「男はつらいよ 寅次郎あじさいの恋」に出た際の、出番は少ないものの、セリフに込められた想いがスクリーンから滲み出ていた。

 後にも先にも、彼1人。あとは、大根。

 さてさて、上の写真は、椿組の昨年夏に行なった、恒例の花園神社テント公演「20世紀 少年少女唱歌集」の、カーテンコール直後の挨拶の時のモノ。

 写真、一番手前の紺色のスーツを着た伊東由美子というヒト。客演のカタチで出ていた、根っからの芝居好き。

 劇団「離風霊船」(りぶれせん)主宰で、且つ、作・演出・女優・妻・母をこなす、53歳の酒豪だが、こと演技に関しても、群を抜く。何かの機会に、彼女の名前を目にする機会があったら、ちょいと、のぞいてやって下さい。きっと、木戸銭以上の名演や快演を魅せてくれるはずだから。

 さてさて、お立合い!

 この2月27日(水)から、3月5日(火)まで、新宿3丁目にあるビルの地下1階、芝居小屋「雑遊」で行われる、「椿組」春公演「後ろの正面だあれ」。

 そこで、作・演出をするのは、なんと役者の田渕正博

 過去に、本名の「田渕正宏」で、舞台監督をしたことはあるが、舞台俳優生活30年目にして、生まれて初めての、「作・演出」。

 この人を初めて舞台で目にしたのも、「椿組」の公演でだった。上手いなあ。そう思った。実力あるなあ、とも。

 いろんな職種の役柄を、さらりと、こなす一方で、怪しげな、得体の知れない役も合う。その上、ギターも弾く。もちろん、歌う。上手い。何をやらしても、器用。

 熊本県から、華の東京へ。その青春の日々に覚えたか。現在、48歳。小劇場、一筋、丸30年。

 と書いてはいるものの、実は、ただの1度も、立ち話さえしたことが無い。

 なので、分かっていることといえば、舞台の上での姿のみ。

 先述した、毎夏の「花園神社」でのテント芝居。それが、はねた後、役者と、その知り合いなどが、ささやかに、劇団員手作りのつまみと、旧交を酒の肴に、小一時間歓談する席があるのだが、今振り返ってみても、そういえば、田渕さん、いたっけ? というカンジ。

 役では派手な印象を残すが、素は静か、目立たず? か。椿組の女優陣が、男っぽいのに較べ田渕は、逆に繊細なのかもしれない。

 この春公演 「後ろの正面だあれ」の、稽古場日誌的な中の写真を、幾つか眺めても、グッと控えめ。写りこんではいるものの、端っこ、はたまた、隅っこ、かと思えば、一番奥。引っ込み・・・・じあん?

 作、及び、演出家というのに、俺が、俺が、と前面に出てこない。

 それどころか、お話しの軸は、田渕正博の作ったものだが、板(舞台)の上の、展開と動きの数々は、役者にやらせてみてから、変更、OK!のようだ。

 あくまで脚本は、叩き台、か。

 むろん、罵倒する、灰皿投げる、体罰加える・・・なんてことは、全く無さそうだ。

 演題の「後ろの正面だあれ」。あれ? と、誰しもが思い出すのが、童謡、わらべうた、遊び歌、とされた「かごめ かごめ」の、歌詞の一節だったな、ということ。

 小学校の「音楽」の授業で、歌った、もしくは、歌わされたはず。この歌、そして、演題の一小節。

 実は、とんでもなく、おどろおどろしい諸説があるのを、知っていますか?

 かいつまんでみただけでも、「鬼」 「罪人」 「娘を突き飛ばし、殺す」 「凶」 「死」 「処刑」 「斬首」 「首の無い死体」 「霊」 「囚人」 「母への、恨みの歌」などが、ズラズラ並ぶ。

 マシなのは「遊女の悲哀」ぐらい。

 んな、”刺すペンス”を超えた、ホラー真っ青なお話しを、あの田渕が書いた?

 そう危惧しつつ、チラシや、公演案内の、あらすじのところを読むと、マトモ!

 一見、フツ―の滑り出し。母と、5人の子供が、とある町に引っ越してくる。父は、とうにいない。そして、兄妹が覚えていない、1人の女児の写真が見つかる。誰? この子。その子の名前が、「ウズメ」

 うわあ~、こりゃまた、「アメノウズメノミコト」からきたか!

 これ、日本神話からきた女神の名前。一体、ど~ゆうハナシになってゆくのやらと思ったら、ウズメの正体は「座敷童子」(ざしきわらし)だそうで・・・・・。

 で、物語に戻る。

 やがて、その母はこの世を去り、子供たちは、それぞれ住み慣れた家を離れて、出てゆく。

 そして、時は流れ、思い出が詰まった家が、取り壊されることに。

 久しぶりに集まった子供たち。それぞれ、色んな事情を抱えつつも、その家が取り壊されるサマを見つめる。

 座敷童子は、どうなる????

 「家族の再生」の物語、だそうだけれど、さて、現代の大都会に生きる観客が、どこまで理解出来るだろうか? ましてや、座敷童子まで絡むとなると・・・・・・

 実は、座敷童子が登場した映画が、水谷豊・主演で、被災地となる前の東北で完全ロケされ、3・11以降、公開されたものの、観客動員がふるわなかった。

 今を生きる多くの人達には、ピンとこなかったのかも知れない。ましてや、中途半端な、どっちつかずのファンタジーにしてしまったのも、大コケした一因だろう。

 田渕は、座敷童子を、実像として出して、見せてしまうのか? はたまた、家の中に住みつ居ているように、役者の「心の演技力」で、観客に分からせるのか?

 貧しくとも、身を寄せ合って生きてきた「家」と、今は乏しくなりつつある「家族」という心の中の意識を、個々の役者がどう見せるか? どう、観客に分かってもらえるか?

 田渕の手腕と、役者陣の力量が、問われる一作となりそうだ。

 幸い、というべきか? 「椿組」のあやなす世界が好きで、芝居小屋に足を運ぶ人たちは、中年以上の比較的高齢者が多い。

 地方から、若き日に上京し、大都会の片隅に長らく住みついてはいるものの、心の中では、「家」と、「家族」というものを、よく身にしみて知っている人が見にくれば、座敷童子を知らずとも、理解度は早いであろう。

 

 起・承・転・結、のある、誰にも分かる、大劇場でよく見られる、幕の内弁当的ストーリーには、なりそうもない気がする。

 

 とはいえ、そこは、田渕正博。大衆芝居の楽しい一面も、見せてくれるだろう。

 役者陣は、その田渕も加わり、先述した井上カオリ、長嶺安奈。そして、恒松敦己木下藤次郎岡村多加江鳥越勇作宮本翔太趙徳安浜野まどか今井夢子、そして、「椿組」の主宰者で、プロデューサーも兼ねている外波山文明

 総勢、12人が出演する。いつもは、役者として出演している李峰仙が、今回は演出助手と制作スタッフとして、田渕をサポートする。

 2人が、どんな手腕を見せてくれるのか? 楽しみだ。

 「芸術文化振興基金助成事業」の助成を受け、120万円を手にしてはいるものの、役者としては、1人でも多くの人に、自分たちの舞台を見てもらいたい。

 また、私としても、別に劇団の関係者でもないが、テレビや映画や、歌舞伎のように、真に演技力がなくても、実体のない人気とやらで、フワフワ浮かんで、ヨイショされてる者たちとの違いを、この目で是非見て欲しいとの想いで、長々と打った。

 少なくとも、所作としてラクな、誰でも出来る「見栄」や「睨み」は出来、体震わす嘆きは出来ても、内面の演技はド下手な歌舞伎役者との違いを、見ていただければ幸いだ。

 開演期日と、時刻は、2月27日(水)と28日(木)は、午後7時半。

 

 3月1日(金)、2日(土)、4日(月)は、午後2時と、7時半。

 

 3月3日(日)と、千秋楽の5日(火)は、午後3時です。

 

 

 

 「木戸銭」(観劇&感激代金)は、前売り自由席(日時指定整理番号付き)3500円。 当日、3800円。中・高校生、2000円。

 

 なお、初日の2月27日(水)と、28日(木)は、前売り券を買うと3000円に割引される

 公演会場であるスペース「雑遊」は、地下鉄 新宿3丁目駅の、C5の出口出てすぐの、新宿O・Tビル 地下1階にあります。

 なお、「椿組」恒例の、夏の花園神社 野外大型テント特設ステージ公演は、7月12日(金)~22日(月)の、毎夜午後7時開演予定。

 演目は、故・中上健次 原作の「かなかぬち~ちちのみの父はいまさず~」に決定した。

演出は、和田喜夫。外波山文明が、総監修を担当する。

 なお、この公演は、外波山の故郷でもある、長野県南木曽町の桃介橋 河川公園に組み立てた、特設ステージでも、8月2日(金)~4日(日)の3日間、披露されるという。

 ”故郷に錦を飾る”外波山文明、66歳。その晴れ姿を、夏の木曽路を旅するつもりで、観劇に行くのも、一興かもしれない。

 余談だが、上の「錦」。テレビドラマの倉本聰の台本に載っていたこの漢字が、ど~しても読めなかった、若き日の桃井かおり萩原健一のところへ行き、

 「ねえ、ねえ、これ何て読むの?」と、聞いた。

 しばらく、「錦」を見つめていた、萩原が言った。

 「わた、じゃねえか?」

 

 

 


<リアル ボクシング ルポ>2013・2・11 山元浩嗣 対 一場仁志。「僕、この試合に賭けてました!」

2013-02-17 21:49:28 | スポーツ

 この試合に興味と関心を持って戴いて、且つ、関東地区近辺の人で、試合会場である後楽園ホールに足を運んでもらえれば嬉しいなと、私としては珍しいくらい、試合当日まで、何回も一部修正しつつ、このルポのアップを繰り返し、載せた。

 メインでも、セミ・ファイナルでもない、この試合を、なぜ?と思われるかも。

 日本全国に、2641人いる、プロボクサーに共通し、共感できる、何か!? が、この試合のケースを通じて、浮き上がって見えてくるのではないか? 

 そう、予感したから。

 むろん、セミで行なわれた、日本ミドル級タイトルマッチも、ほぼ同様ではあるが、この試合は、究極、強さの優劣が争われた試合となり、予測した通りになった。

 結果は、検索すれば容易にわかるし、その類いの報道で書かれていないことを、いずれ、書き表そうと思っている。また、試合の行われた深夜、地上波で流された地域もあり、タイマー録画にせよ、この目で見た人も、いることと思う。

 さて、表題の、この試合。フジテレビのVTRカメラは、コーナー・ポストにくくりつけられて回っていたが、1秒たりとも、放送されることはなかった。試合後、カメラマンが、リングに入ってまで撮っていたというのに・・・・・。戦った両者にとっては、至極残念なことだろう。

 余談だが、その点、「日テレG+の「ダイナミックグローブ スペシャル」と題された番組は、良い! 第一試合の4回戦からメインまで、全てノーカットで、ナマ放送される。

 帝拳ジム所属選手中心の試合ではあるものの、再放送では、アタマにメインを持ってくるなど、構成は変えるが、基本ノーカット。その回数も、多い。

 そのディレクターに、聞いたことがある。

 今、試合をやっているというのに、CS「フジテレビNEXT ライブ・プレミアム」の「LIVE! ダイヤモンドグローブ 2013」 では、毎度毎度、千原ジュニア内藤大助重田玲ら、くっだらないレギュラー陣のしゃべりを、だらだらと流す。で、この日も、せっかくの放送時間を49分つぶした。肝心の試合は、数試合分、撮っても流さない。

 さらに、「試合が、早く終了しましたので」と、テロップを流して、これまた愚にもつかない番組を30分、放送時間枠一杯にタレ流した。CSのフジの、いつもあのやり方って、どう思われます?

 ディレクター、言い淀んで、苦笑いを浮かべる。

 「まあ、それ、あまり見てないんで・・・・同業者なんで、言いにくいなあ・・・」

 では、こう聞きましょう。少なくとも、来たくとも来れない地方にいるボクシングファンと、試合をしているプロボクサーの気持ちを無視し、ボクサーと、ボクシングファンのことを全く考えていない番組作りだと、同業者として、お思いになりませんか?

 「まあ、ハイ、確かに・・・・・」

 

 さて、すでに書いた(打った)文の最後を、私は、こう締めくくった。

 

 ーーーとはいえ、ボクシングは思いもよらぬ結果と、番狂わせが付き物。ソレを秘かに期待して、ファンは、会場へと足を運ぶ。

 

 一場には、いささか失礼な、遠回しの表現だったが、なんと、その通りの展開となった!

 この日の会場は、チョ~満員。当日券も出たが、即売り切れ。チケット完売となった。

 「今年に入って、初めてですよ」

 顔なじみになった、会場係員が、笑顔で教えてくれた。

 残念ながら、<山元浩嗣 対 一場仁志> という好カードのせいばかりじゃ、なかった。

 「ココにまで来てくれて、お金を出して試合を見て下さる今のお客さんは、シビアというか。去年くらいから、1つのタイトルマッチじゃ、満員にならない。2つか、3つ揃わないと、満足した顔してないし、お客さん、満員にならなくなりましたねえ」

 係員が、一番、”厳実”を、知っている。この日は、ダブル 日本タイトルマッチだった。

 時の流れか、テレビ局も、ダブル、はたまた、トリプルの世界タイトルマッチをジム側に依頼し、「それで、やっと上の許可を得て番組編成にかかれる」(民放プロデューサー)とのこと。。

 それでも、高視聴率を取れないとなげき、喘いでいる。だから、”スター”を作ろうと、大金使って、いろいろと、首を傾げるような相手を探してきてのマッチメイクを画策している。まさに「メイク」、文字通り、「作っている」。作らざるを、得ない時代。

 かつて、ファイティング原田や、海老原博幸(故人)などは、1週間から10日に1度、試合をして客が呼べた。キック・ボクシングでは、沢村忠。だが、そんな時代は、遠い昔。

 そのファイティング原田に、生前アメリカで会ったマリリン・モンローとの一夜の事を質問した時、ニッコリ笑顔で、「ああ、マリリンちゃんねえ」と、切り出したときには、ぶっ飛んだ。

 さて、この試合に、話しを戻そう。ノーランカーの一場仁志が、通路から小林生人(いくと)と、田中栄民(よしたみ)両トレーナーに挟まれながら登場した時、思わずドキリとした。

 一場の目が、尋常じゃなかったのだ。思い詰めたかの様な、この試合、死んでも絶対勝つ! という視線の鋭さ(写真下・中央)。その先を見据えての揺るぎが、まったく無かった

 目は、クチほどにモノを言う、という言い方があるが、まさにソレ!

 ひょつとして、この試合!  ある、予感が、ゾクッと、体を走り抜けた。

Dscf2969 かたや、山元浩嗣。自分の名前が大きく染め抜かれた紺色のノボリの並ぶ列の中、華麗にリング・イン。

 たんたんと、いつもと変わること無し。大きな花束を受け取り、右から左下へ返す。

 予定時刻より早い、18時45分。

 < 1ラウンド >の、ゴングが鳴った!

 先に積極的に振ってきたのは、山元。右の大きなフック、大振り。右ボディ狙う。

 赤コーナーで、山元のトレーナー、高橋智明(ともあき)が、叫ぶ!

 「手数、気を付けて打ってけよ!」

 しかし、手数が早くも多いのは、山元の方。いくぶん、気負ってるようにも、見える。右ボディ、左フック、そして、また返しの右ボディ!

 その時だ!一場が、狙い澄ましたかの様な連打から、右フックがうなりをあげた!

 山元、ダウン! ええっ! 正直、驚いた。山元、すぐ、立ち上がる。ダメージは、見た目ほどは、無い・・・ように見える。

 一場の応援団が、ワ~ッと、大歓声を挙げた。へ~、そんなに人数いたんだ、と少し驚く。

 「強振しないで!」 と、高橋トレーナーの指示が飛ぶ。

 1ラウンド、終了。驚きの滑り出しに、双方の応援団だけじゃなく、満員に膨れ上がった客席も沸きに沸いた。

 図式通りでくくれば、6位のランキング・ボクサーと、そこまでに至っていないボクサー。キャリアも、ほぼ倍近く、違う。勝敗は、ほぼ決まり、と見がち。しかし、・・・・・

 この日の、入場者数、1924人。2階左右に作られたベランダ風の立見席。ジム関係者やファンのカメラマンが記録用に撮る人や、観客も、含めてだ。これが、ホントは正しい数字。

 ん?と、プロレスのファンなら、首を傾げるかも。東京スポ―ツには、2200人(満員札止め)とか、毎回の様に載ってるから。

 ただし、(主催者発表)と、キチンと添え書きが、してある。あくまで、主催者がそう発表してますよ。興行収入に関わる税金問題とかは、ワシャ知らんもんね、という冷静沈着なスタンス。

 ところが、とっちゃん坊やみたいな風貌の、童顔の朝日新聞記者がいた。

 コレが、自ら一度も調べていないのだろう。夕刊の署名コラムの プロレス・格闘技記事で、平気で「2200人の観客」と、何回も書いてた。もはや、記者ではなく、中身の文章も、ただのファン。そういう愚か者もいる。そのノリで、ボクシング取材も、一丁前の顔して、していたのには驚いた。

 もっとも、朝日新聞記者の中には、東電の3・11「未必の故意 福島第一原発 水素爆発事件」から間もない「本店」での記者会見で、「未曾有」を、「みぞうゆう」の事故をと、平気でクチにして質問した馬鹿もおり、記者の質の低下は、目を覆うばかりだ。

 調べたら、クチのひん曲がった麻生太郎の息子や隠し子では、無かったが・・・。

さて、< 2ラウンド >の開始を告げるゴングが、鳴った。

 どちらのセコンド陣も、選手に何やらアドバイスを授けていた。早くもダウンにより、10-8か、減点2のハンディを背負った山元は、どう出てくるか?

 先に拳を当てたのは、一場。左フックを山元に見舞う。すぐさま放った双方ジャブの、相打ち。

 一場の左フックに対抗して、またも、右ボデイ打ちで一場のボディ左側深くにパンチをめり込ませる。しかもコレ、試合終わるまで、何度も何度も狙い打ち! 作戦か?

 「左だけでいい!」と、高橋トレーナー。

 山元のパンチ、大振り、空振り、頻発。1ラウンドのダウン2点分、一秒でも早く挽回したいという思いが、そうさせてしまうのか・・・

 「大丈夫、大丈夫、あせるな!」と、高橋。

 逆に一場のコーナーポストからは、大きな声、指示、まったく飛ばず。

 一場の、小さく鋭いシャープな左右のジャブ連打。瞬時に、また放った左で、山元の体が、グラッ!

 手数だけは、圧倒的に山元の方が多い。一場は、しっかり両グローブで両肘高く、顔をガード。

 そして、グローブの間からのぞく目! 獲物を狙うかの様で、ぞっとするほど恐い。数少ないが、的確に狙い定めて、パンチを山元の身体に打ち込む。そのヒット確率、かなり山元より高い。

 倒したり、山元をぐらつかせるパンチに限っては、加藤善孝とのスパーリングの時と段違い! 前傾からの体重移動が、スムーズで素晴らしく、拳に見事に乗り移っている。

 勝ちたい!!という、魂までも!

 そして、決して軽やかではないが、山元と同様、足を使い、体を前後、左右に無駄なく振って、山元の5発に2発ぐらいの数のパンチを、ひょいと、かわしている。

 見切れてる!?   オイオイ、マジかよ。これ、ひょつとして・・・・・

 むろん、山元のクセとも言うべき、大振り左右のフックは、殆んど喰いもしない。

  取材後から試合までのたった半月で、相当自分を追い込んで練習し、パンチの強弱を付けたコンビネーションも完成させたと、見るほかない。また、山元のクセや、パンチの変幻自在のパターンの対策も、驚くほど成されていそうだ。

 それよりも、何よりも、相手に向かう「気持ち」が、ガラリと一変していた。

 「気持ちがねえ、弱いんだよねえ。いいモノは、持っているんだよ」  そう言っていた、田中栄民トレーナーの言葉が、試合を見ながら、甦ってきた。

 その「気持ち」が変われば、との思い。その上で、いいモノが、試合に出れば今までと違うぞ、との、師の想い。

 そして、変わっていた! これほどまでに!? と、ビックリしながら、リングを見つめた。

 山元の左ジャブ、続く左ストレート、ヒット! まだまだ、強打、随所にのぞく。 強い! 6位の看板は、ダテじゃない。

 一場も、小さくシャープな、左右のジャブをヒットさせる。2ラウンド、終了。

 大きなリード差は見られないが、2人の試合中の心境を推し測って見ても、一場のマイペースが、キラリ一筋、リングから光って見える。

 

 < 3ラウンド >

 上気してか、打たれた影響か、出てきた一場の顔が赤い。

 山元、またも右ボデイパンチ、続いて左フック。対する一場、小さく、右フックの早いダブル 。お互い、打ち終わりを狙うなど、上手さも光る。

 と、思ったら、ふらつく感じで、山元、右の大振り。単なるバランス崩してのパンチならば分かるが、妙に気になるのが、山元の体全体の色艶の無さ。スパーリングや、練習の時の見栄えと、全然違う。ゴングが鳴る前から、気になっていた。減量の失敗?? まさか!

 パンチも、浮き出す。気のせい?なら、良いが。

 「調整の失敗? ないない」と、試合後の、山元。高橋トレーナーも、試合前「いつもより、絶好調の仕上がりです」と、言っていたのを信じたい、のだが・・・・・

 接近戦の流れで、頭がぶつかったのか、いきなり一場の「左側頭部」から、大量の血が、ど~っと流れ出した。

 「集中しろ!」と、高橋トレーナーの声が飛ぶ。血を気にせず、集中しろということか。

 山元は、左フック。ひるむことなく、一場もフックで応酬。

 左の顔全体が、鮮血で覆われる一場。

 見かねたレフェリーが、ストップかけ、一場をリング・ドクターの元へ呼ぶ。

 ドクターは、一場の血をぬぐい、傷の大きさと深さを見る。まだ大丈夫との判断が下され、試合再開。

Dscf2997 それでも、一場のこの目!(写真左の右側)。その奥に、”魂”を見た。決して、大げさじゃ無く。

 山元、荒っぽい打ち方に、変わる。もはや、乱打乱打! 一気にたたみかけて、勝負を決めてしまいたい、そういう気持ちの表れか?

 一場の流血、さらに、ひどくなる。左目にも血が流れ込み、見にくくなっているのではないか?

 あっ! 山元も、右目の上を切る。血が流れ、打ち合うたびに、互いの血が、飛び散り、胸板に貼りつく。さながら、かつてのプロレス、流血戦。

 ますます、一場の顔半分が血だらけに。

 どちらも、リング・ドクターに呼ばれる。  が、試合は、続行された。

 超満員の観客どよめき、ざわざわするなか、ようやく、3ラウンド、終了のゴングが鳴る。

 場内にアナウンスが、流れる。

 「両選手の傷は、どちらも偶然のバッティングに、よるものです」

 「バッティング」とは、改めて言うまでもないが、「頭と頭のぶつかること」と、日本ボクシング・コミッションのホームページの中の「基礎知識」の項にある。

 どちらにも、減点されない、カウントされない。そういうことだ。

 この試合の設定は、8ラウンド。双方の傷により、半分のラウンド以内、つまり4ラウンド終了までにレフェリーが選手生命と今後のことを考慮したうえで、試合をストップした場合、選手の負傷を理由に、試合結果は、引き分け、ドローとなる。

 6(ラウンド)なら、3。 10なら、5。 12なら、6終了までにということ。

 時折り、後楽園ホールで、見かけられる光景だ。ドローを下された両選手とも、タオルを傷跡に巻いたり、押さえたりしながら、ガックリ、首を落として下がってゆく姿を見るにつけ、砂を噛むような、何とも言えない気分になる。

 この試合、5ラウンドを、1秒でも超えると、ジャッジは成立。5ラウンド途中までの採点で、勝敗は、「負傷判定」という形で裁定される。満点ならば、50点ということだ。

 この試合は、この先、どんな展開と、結末を迎えるのだろうか!?

 そんな詳しいことを知らない観客にしても、2人の傷と、勝敗の行方を気にしつつ見守っていた。

 レフェリーの想いと判断1つに、かかっているなか、両陣営のセコンドと、当の2選手の思惑と、心理と、駆け引きと、作戦と。

 一気に叩きのめすことが出来ればいいが、逆に相手の流血と傷が広がったら・・・・・。次の4ラウンドの中で、レフェリーが大きく腕を左右に振ったら、即刻、オシマイ。この数か月の、厳しく、苦しい練習が、一瞬にして気泡に帰すことになる。

 その練習を、短い期間と時間ではあるが、つぶさに見てきた身にとっては、それで「引き分け」は、辛い。5ラウンド以降での採点による引き分けなら、まだしも・・・・。

 う~ん・・・・微妙、う~ん・・・・・・・・・。

 < 4ラウンド > 

 そんな想いを断ち切るようにカ~ン! とゴングが鳴り響いた。

 両者、パンチを繰り出していくと、たちまち流血が目に流れ着く。一場に至っては、吹き出る感じだ。山元の右フックが、一場にヒット! グラりと、一場の身体が、したたる血と共に揺れた。

 両者、初のクリンチ。あせりと、疲れと、今までのダメージの蓄積ゆえか。

 レフェリー、一場を呼んで、リング・ドクターの元へ連れてゆく。これで3度目。ああ、これで、試合続行不・・・・と思いきや、なんと、試合再開に!

 んん・・・・このレフェリー、なかなか、やるわいと、ココロでニンマリ。ほっとする気持ちと、半々。

 一場、甦ったかのように右フック一発! 今度は、山元、グラリ。

 一進一退、そう見えなくもないが、的確性と、1ラウンドのノックダウンを、明白に盛り返せていない山元。

 番狂わせ、そう言ったら失礼だが、一場、リードを保ったままと見た。

 

 とはいえ、< 5ラウンド >に、なんとか突入! いつ、試合が止められるか、危険性をはらみながら。

 一場、右フック! この、パンチ。渾身のチカラを込めて、そう表現してもいいくらいの、まさに「決定打」的パワーを、持っている。

 クリンチ、また、クリンチ。双方から出る。

 一場、苦しげな顔をチラリ見せた時、タイミング良く、見かねたレフェリー、割って入って、一場、4度目のドクター診察。

 ・・・・・・・・・ああ、レフェリー、腕、振った!

 「一場選手の左側頭部の傷が、これ以上の試合続行は不可能と判断し・・・」

 時、5ラウンド開始して、50秒。次いで5ラウンドの、ここまでの採点で勝敗を「負傷判定」として認定すると、アナウンスされた。

 どよめく、ぎっしり満員の客席。

 リング・アナウンサーから、少しの間ののち、スコアが、読み上げられた。

 「48-47。 48-46。 そして、49-47」

 3-0だ。獲ったな。そう、心でつぶやいた。山元には、悪いが・・・

 「勝者! 青コーナー、一場仁志!」

 その瞬間、一場は、声にならない心で叫んで、リングに膝まづき、突っ伏した(写真・左下)。

Dscf3015 「想い」が、伝わってきた・・・・

 回されるVTR。放送されそうも無いのに。うながされ、立ち上がった一場は、小林トレーナー(写真上の白い帽子)に、幼な子のように抱きつき、喜びを爆発させた。

 静かに、リングを降りる山元。

 控室の通路では、小林トレーナーに、巻いていたバンテージを切り除いてもらっている一場が、いた。陣営の緊急止血が上手くいったのか、流血量ほど傷がひどくなかったのか、時折り笑顔を見せて、お祝いと激励の言葉に次々と答えている一場。

 頭に巻いていたタオルまで、取り去っていた。

 ー傷は?

 「思ったより、ひどくないみたいで」

 「目が、見えずらかったですね。(レフェリーに)何度か止められて、危ないな、とは思ってました」

 ー相手の、あの大振りの左右のフックがくることは? 見切ってるように、見えたけど?

 「あれは、最初から来るだろうなと、分かっていました。小林さんと話しあって、体振って、よけながら、パンチ出していって、きっと後半、相手はあの大振り重ねて、疲れてくるはずだ、と。そこから、後半勝負だと、教えて戴いて。そのつもりでいました」

 -それが、1ラウンド、あれは右フック? 練習重ねていた?

 「はい。相手が、バランス、悪かったので、カウンター、狙って」

 言いながら、時折り、笑みが浮かぶ。

 -5ラウンドで止められた時、自分ではリードしてるかな?と

 「う~ん、ダウン取ったこともあったし・・・・」

 ーこれで、おそらくランキング入り?

 「ハイッ! そうなると、いいですね」

 もう、医務室へ行かねばならないので、ここで止めた。

 近くで、一場が所属する角海老宝石ジムの幹部が、「ラッキー、ラッキー」と喜んでいた。

 田中”師匠”トレーナーに、「作戦通りでしたか?」と、水を向けると、ニヤッ。

 一方の、山元。多忙の歌手活動のスケジュールの中を縫って駆けつけた山川豊など、10人近くのワタナベジムのスタッフや選手が見守るなか、うなだれたまま、やはりバンテージを取ってもらっていた。

 聞きずらい雰囲気の中、う~ん・・・・・・・あえて空気を読まず、切り裂くかの様に、質問。

 ー1ラウンドのダウンは、相手の右フックで?

 「・・・・・そうですね。踏み込んできて、右フックに、かぶさるようにして・・・」

 「調子は悪くなかったですよ。結果は・・・・プロが、判定してるんで・・・・・。勝ったとは、おも・・・・・・」

 Dscf3035

  あとは、言葉にならず・・・・・・・。紫色のタオルをかけて、医務室へ(写真・左上)。山元のスパーリング・メイトといっていい、天笠尚(あまがさ・ひさし。日本フェザー級チャンピオン)も観戦に駆け付け、通路に立つが、あえて山元に、目線は送っても、声かけず。

 ボクサー同士に通い合う心と、さりげない気遣い。

 高橋トレーナーは、言う。

 「2-1かな? 悪くても、ドローだと思ってましたけれど・・・。試合は、結果が全て。指導していた、トレーナーの私の責任です」

 誠実このうえない、高橋らしい言葉に、それ以上は聞けなかった。

 2時間半後、少し元気を取り戻した、山元がいた。また、ランキングを上下するエレベーターに乗り込む客となってしまった。笑顔は、ない。

 「ランキング? もう、東洋太平洋なんて、いらないっすよ。また、一から、やり直しっすね」

 それより前。帰ろうとした一場に遭遇した。

 お疲れさまでした。おめでとう、という私に、一場は、こうキッパリ、言い切った。

 「実は・・・聴いて、もらえますか? ボク、この試合に賭けてました!!

 

 ああ・・・・やっぱり!

 

 

 


 

 

 

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


<リアル ボクシング ルポ>4階級制覇王者・湯葉忠志を、鮮やかにリング下に横たわらせた佐々木左之介

2013-02-11 15:32:00 | スポーツ

Dscf9559 うお~っ!!!! 後楽園ホールが、大歓声で、揺れんばかりに、湧きあがった。

 目の前には、一瞬、信じられない光景が、広がっていた。コーナーポストに悠然と控えて立ち、リングに転がっているチャンピオンを見下ろしているのは、挑戦者 佐々木左之介(写真上・右隅)。

 そして、あえなく、レフェリーによるカウントを耳にしたまま、起き上がれないでいるのは、8か月前に4階級制覇し、その栄光を背に、この日の2度目の防衛戦に臨んだ湯葉忠志(ゆば・ただし。同写真・左下)。

 昨年の10月8日、日本ミドル級のベルトは、この写真を撮った直後、10カウントを数え終え、佐々木に移った。

 思わず「信じられない光景」と記述したが、勝利後、歓喜に湧きまくった卓球選手時代からの佐々木の友人たちでさえ、「勝って欲しかったけれど、まさかホントに勝つとはね!」「それも文句無しの、KOでさあ!」 と、興奮しながらも、正直にクチにしていたほど。

 <番狂わせ>と報じられた、このタイトルマッチ。しかし、”逆転KO”ではなかった。

 1ラウンドから、積極的に出たのは、佐々木。右目の上のまぶたを、湯葉の強打を受け、すぐ深く切ったが、まったくひるむ事無く、打ち合い続けた。この時、まだ同級6位で、25歳。戦績も10勝1敗。うちKOとTKO含めて4勝。まさに、”新鋭”。

 対する湯葉は、すでに50試合もこなしてきた、超ベテラン。それも、41勝(うち31KO&TKO)7敗2引き分けという、誰もが認める強打者。単純に数字で較べてみても、佐々木は湯葉の五分の一。そのうえ、KO率も低い。

 

 とはいえ、ボクシングは、戦ってみなくっちゃ分からない。過去、そうやって、いくたびか、新旧交代が行われてきた。

 ガードを固めながらも、下がったり、回ったりしながら、見定めて有効打を放つ湯葉の、この日のスタイル。かたや、佐々木は、ムチャ振りも含め、ともかく前へ出まくった。小細工、一切無し。クリンチも、無し。

 右まぶたからの出血と、その傷の予想外の深さから、レフェリーの判断で、負傷判定で、試合を早々に止められる危険性も、はらんでいた。

 

 その前に、いけるだけ、行ってみよう! 練習で積み重ねた対策を、出し尽くせ! 佐々木のセコンド陣、とりわけ佐々木のジム入門日に、偶然に出会い、担当になった縁で、この日まで育ててきた小林尚睦(たかむつ)トレーナーの戦略が、功を奏し始めた。

 4ラウンド。右ストレート、左右フックのタイミング絶妙のコンビネーションが、炸裂!

 出たあ~っ!! 湯葉の体が、グラリと揺れ、力なく倒れた。

 後日、小林尚睦トレーナー(写真下。左側)は話してくれた。

 「アレだけじゃなく、実はいろんなコンビネーションを組み立て、考え、練習を2人で重ねてきました。それにしてもねえ、あんなに上手く、ドンピシャと、決まるとは思わなかったね。自分でも、正直、驚きましたよ」

 そう言い終えて、ニッコリと満面の笑顔を見せた。

 連打を喰らって、あおむけになって倒れた湯葉は、2度と立ち上がることはなかった。

 歓喜と驚きが錯綜する中、リング上での勝利者インタビューで、佐々木は、とんでもないことを、興奮しながら次々と言い放った。

 「ぶっちゃけ、勝つことは、分かってたんですよ」

 「僕は、最初っから、日本(タイトル)見てないんで。コレだって、世界(チャンピオンへ)の通過点でしかないんで」

 おいおい、佐々木左之介(写真下。中央)って、そんな、ほら吹き、大口叩き、ビッグマウスの性格だったっけ!? もう、びっくらこいた。

Dscf9602

 控え室に戻ってからは、さらにテンションと、ボルテージ上がりっ放し。ワタナベジム会長・渡辺均(写真・右側)も、腕を組んで、押し黙っちゃうくらい。

 初めて佐々木に接する記者は、面食らいながらも、苦笑して、基本的なデータとも言うべき生年月日、出身地、経歴などを、大口のしゃべりの間に挟んで、聞き質していった。

 かくいう私。ジムで、彼を、一風変わった雰囲気を漂わせたボクサーだなあ、とは感じてはいたものの、ビッグマウスのきざしは、毛ほども感じたことはなかった。

 佐々木は、本名だが、左之介は、リングネーム。卓也が本来の名前。親・兄弟が、卓球好きの一家ということで「卓」の文字を入れたということが、チャンピオンとなって知らされた。

 「左之介」は、当人によれば、「るろうに剣心」という漫画に出てくる人間が気に入って、付けたという。一体どんなヒト? そう思って、アニメ番組をわざわざ留守録画して、且つ何本も、早回しして見たが出てこない。

 調べたら、脇役。それも「左之助」という名。それを「介」に変えた感覚は、良い。

 会長以下、歓喜渦巻くなか、会見を終え、控え室を出てきた佐々木に聞いた。

 「そんなキャラクターでしたっけ? ずいぶん、”創った”ねえ・・・」

 佐々木、二・ヤ・リ

 応援に来ていたWBAスーパーフェザー級チャンピオンの内山高志に、倒したパンチについて聞いた。

 「あれはね、もう、ココしかないってとこに打ち込んだパンチなんですよ。ピンポイントと、言ってもいい。ぴったり、はまったパンチだよね。アレが、もう数センチ、ずれてたら、湯葉さんは倒れることは、なかったと思うよ」

 さすが、内山高志。説得性がある。

 で、実は先に湯葉忠志(写真下)の方に、話しを聞きに行っていた。

 イスに、力なく座り、ガックリと首を下に落とし、殆んど言葉が、出てこない

Dscf9598

 「いやあ・・・・・こんな・・・・・・倒れたときの事って、・・・・・・・覚えて・・・ないんですよ・・・・」

 そばに立つ、飯田裕(ひろし)トレーナーは、無言で、掛ける言葉もない。

 記者も、たった数人。「次のことは? 考えられないですね・・・今は、なんにも・・・・・・」

 その一言を引き取って、翌日のスポーツ新聞紙上には、「湯葉、引退を示唆」と出た。

 ”厳実”というのは、時として、冷酷過ぎるものだ。

 

 今年に入って、先の飯田裕トレーナーに、話しが聞けた。実は、この人、佐々木の所属するジムの、トレーナーを長く勤め、何人ものチャンピオンを育てた実績をもつ。湯葉には、試合が決まれば頼まれ、経営するお店の仕事の都合をなんとかつけて、マンツーマンで、指導している。

 「倒されて、天井を見ている湯葉を見て、ああ、もうダメだと思ったね、正直」

 プロデビューして、約16年半もの間、リングに立ち、激しい練習に全身を酷使し、費やしてきた。

 「全盛期の湯葉のチカラが10だとしたら、今は7、いや、6くらいだね。スタミナ、パンチ力、全てが、かつての湯葉ではなくなっているもん。むかしは、難なく出来たコトが、徐々に出来なくなってきているからね。おそらく、突き詰めてハナシは、あえて、恐くて、していないけど、湯葉自身でも、分かっているはずだと思うよ」

 「所属」は、九州 宮崎県都城市にあるジムだが、実質的には、地元にいる前プロボクサーによれば、もう以前から、閉鎖状態。湯葉は、かねてから妻子をそこに残し、単身、東京で練習を続けてきた。支援者に生活をサポートされてるが、最近、タイには自腹で行き、合宿もした。

 「今後? 今は黙って見てる。本人?東京にそのままいて、ロードワークくらいは、やってるんじゃないかなあ。まだやりたい!と言われたら? う~ん、やるしかないでしょう(苦笑)。地獄の底まで、付きあうしかないよね」

 その湯葉忠志は、再起を決めた!

 2月11日の、佐々木左之介の初防衛戦の9日後の、20日。十二村喜久(とにむら・よしひさ)との試合が決まった。

 日本スーパーウエルター級3位の十二村もまた、柴田明雄のもつタイトルに挑戦して、負けた身。

 湯葉のチカラが、10の8に上がっているか、はたまた6のまま足踏みか? まさに、絶壁、断崖、正念場。対する、十二村もココロの再起、なっているか?

 会場は、左之介の試合以上に、異様な盛り上がりと、声援が高鳴るであろう。

 

 再起を計る者同士の激突、また新たなドラマが生まれそうな気がする。

 さて、佐々木左之介の試合に、話しを戻す。

 相手が、同級1位の胡(えびす)朋宏と決まる前、こう聞いた。

 何か、チャンピオンとなって、生活や、周りの見る目、変わりました?

  「いや、・・・・何も、そんなに変わらないっすねえ」

 今度の初防衛戦で勝って、そこで初めて君の実力が認められると思うけど

 「そっすねえ・・・・・う~ん、そう、思います」

 胡の戦績たるや、10勝(10KO&TKO)2敗。10の10、だ。佐々木が新人王になる2年前に、同じく全日本ミドル級新人王に輝いている。アマチュア経験もあり、KO率、6割。

 試合を見ると、やられていても1発逆転で、相手を沈めるパンチ力がある。それも、ハードパンチャーにありがちな大振り・空振り、ブンブンは、少ないときてる。

 反面、守りには弱い。連打され続けると、反転しての攻めが、とたんに出ず、弱くなる。安定感が、まだ無い。また、佐々木が倒した湯葉に、胡は逆に、3ラウンドTKOで負けている過去がある。

 とはいえ、「最強後楽園」で、勝ち上がってきての優勝と、気持ちも調子も上向き。敵とするには、かなりやっかいだ。おまけに、胡のトレーナーもまた、佐々木のいるジムの、元トレーナー。

 小林尚睦トレーナーが、話してくれた。

 「実は、以前、胡とスパーリングやったことあるんですよ」

 で、手ごたえや、展開はどうだったんですか?

 「もう、ボコボコにされて。いいとこ、出せないままで」

 やはり、手ごわいのか・・・・・。もくもくと、シャドーを繰り返している佐々木の後姿を見つめた。

 別の所用でジムへ行った時のコト。黒板のスパーリング・スケジュールの書き込みのなかに、とんでもなく興味を惹く1戦が、目に止まった。

 「左之介  清田 8R」

 え~っ! 聞いた。清田って、あのOPBF(東洋 太平洋)スーパーミドル級チャンピオンの、清田祐三

 「そうみたいですよ」

 血が騒いだ。1階級上の、東洋のチャンピオンと、佐々木左之介が、どう戦えるか? ヘッドギアを装着してとはいえ、1つの「試金石」と、2・11に向けての目安になりそうな予感がした。

 しかし、都合つかず、行けず。他のトレーナーに聞くと、後半、清田の放ったボディへのパンチが徐々に左之介に効いたようだよ、とのこと。で、また、あるよという。

 おっしゃあ、行くぞう 祐三のパンチも見に。

 当日。左之介は、緊張気味。片や、祐三は、リラックス。小林トレーナーと、談笑する余裕さえみせる。少しだけ、上体を動かしている。

 その準備時間の間を縫って、清田祐三の所属する「フラッシュ赤羽ジム」の新人ボクサー 氏原(うじはら)文男が、スパーリング。

 この氏原が、すごい。詳しく書くと、本旨からはずれてしまいかねないので、しないが、この先、相当上まで行きそうだ。高知県高知市出身の、26歳。身長169センチ。

 「おととしの7月に、ジムに入って、去年の7月に、プロテストに合格しました。1月30日の”フレッシュ・ボーイズ”に、出場させてもらいます」

 この試合、見には行かなかったが、同じ新人が相手ならば、楽に勝つだろうと思った。

 スーパーフェザー級で出て、結果は、1ラウンド 2分18秒、TKO勝ち。

 だよな、納得。ボクシングファンなら、アタマの隅に置いておいて欲しい1人だ。

 さて、無言,緊張溢れる左之介と、余裕溢れる祐三が、リング・イン。

 ゴングが、鳴った!

 早速、互いに突き出したジャブで、相打ち。左之介は、足を使って回り、動き、ステップ切る。片や、祐三はどっしりと構え、左之介の動きを見つめてゆく。左フック、左ジャブ、ジャブジャブ。重い祐三のパンチが、ヒット!

 ぶっとい祐三の両腕が、グン! と伸び、しなる。左之介の、1・5倍はある太さ。祐三だって、左之介と同じミドル級からスタートしている。いつの日か、筋力も付き、この太さになる・・・・・かもしれない。

 < 2ラウンド >。左之介、回りながら、左ジャブ、放つ。祐三も、負けじと左ジャブ、ビシッビシッと、ダブル見舞う。

 左之介、左ジャブを軸に、打ち続ける。祐三、ボディ、接近して、めり込ませる。これが、第1戦の時にじわじわと、効いたわけか。

 左之介、頭、横に振る。そして、フックから流れる様に、ボディ打ち!

 「低く、低く、早く!」 小林トレーナーの、短く、鋭い声が、飛ぶ!

 左之介、左ジャブ突くが、逆に打ち込まれる。

 「やりたいこと、やられてるよお~」 思わず、小林トレーナー、叫んで、ガックリ、首落とす。

 < 3ラウンド >。出てくる、祐三。左フックのダブルを見舞う。対する左之介、少し飛んで、大きくフックの連打!

 「早く、早く!もっと来るよ、相手は!」 小林トレーナー、ビシッ!とアドバイス。

 さらに、祐三、ジャブ、フック、回り込む左之介を捕らえて、バンバン、容赦なく打ち込む。ぶっとい腕が、うなりをあげる! 左之介、左右に回って、なんとかしのぐ。

< 4ラウンド >。出る、祐三。左のフックが、うなりをあげ、左之介の体をぶっ飛ばす!

 左之介、上体、動かし、突っ込んで行く。回り込みながら、大きくフック飛ばす。

「やりたいこと、やられてるよお・・・・・・・・・」 

 声が、しだいに小さくなってゆく、小林トレーナー。

 < 5ラウンド >に、突入。今度は、祐三も、一転、足を使い。接近して、ボディ狙い。見定めて、獲物を狙うように、左之介の左右の腹に、グローブをめり込ませ、ねじ込む。

 左之介は、足使って回るも、祐三の動きの方が素早く、掴まりがち。

 「YUZO」と染め抜かれたTシャツが、躍動する。

 < 6ラウンド >。祐三のフック、ボディ、左右に散らすテクニック駆使。

 対する、左之介。ジャブを、祐三のガードの上から打ち込む。

 互いにジャブが、ヒット!

 祐三の左フックで、左之介の頭、のけぞる。

 左之介、飛んで、飛び込んで、ジャブからボディ打ち。

 飛んで、飛び込んでを繰り返す。

 左之介、ボディを打たれるや、ジャブ突く。祐三、お返しとばかりに、ボディへ、速射砲2発お見舞いする、

 < 7ラウンド >。左之介、飛んで、ジャブ打ち、なおも狙う。

 祐三は、ボディへ、左右のフック、打ち込む。

 メモを起こしてる限りにおいて、ストレートが極めて少ないことに気付く。ストレート気味のジャブ、が多かったこともある。

 さあ、予定の最終8ラウンド、と思ったら、左之介の方から、これで、まさに「打ち止め」にして下さいのサインが、出た。

 しんどそうに、リングを降りるや、ヘッドギアを脱ぎ、ペタンと床に力なく座り込んでしまって、左之介、動かない。汗がどっと流れ落ち、吐く息も荒い。

 たんたんと、「仕事」を終えた格上チャンピオンに、一息だけつくのを待って、感想を聞く。

 「なんか、疲れてるみたいですね。ずいぶん前にやった時より、成長してるなと思いましたよ」

 余裕のコメントにさえ聴こえてしまうのは、誤りか?・・・・・

 「彼が湯葉さんとやった試合? 見ましたよ、会場に行って、ナマで。すごいなあって、思いましたよ」

 清田祐三自身、3月に7度目の防衛戦が控えていると言う。

 むっくりと立ち上がった左之介、汗を拭きながら、帰り支度を始めた、清田の元へ近づいた。

Dscf2785 まずは、来てもらった御礼をのべた後、「次また、お願いしていいですか?」と、左之介。

「ああ、いいよ」と、祐三。あっさりと、3日後に第3戦が決まった。

 その後は、研究したはずなのに、難なく打たれたパンチの攻防について、アドバイスと、ヒントと、対策話しが、続いた。

 写真上の様に、清田祐三(写真・左)が、左のパンチを出して、それを佐々木左之介(写真・右)が、聴きながら・・・・・・・身振り手振りで・・・・・

 これは、それ以上書けない、打てない。

 打たれても「立ち上がり」が早い、左之介のことだ。この先、どうこの3戦の痛打された体験が、実になって生きてくるか!?

 あえて、3戦目を見に行かなかった。

 楽しみと、怖れと、半ば、まさに、半々というところ。

 んにしても、少し気になったのが、コーナーで、トレーナーのアドバイスや注意をキチンと深く聞き込むこと無しに、リングで動いていたこと。

 我が道を行く。それは、それで良いのだが・・・・・

 ブログで、かつての卓球仲間にも、しばしばからかわれ、カメラを向けると、大会の会場でふざけたポーズをしてしまう、ちょつと掴みどころのない、「佐々木卓也」ではあるが・・・・

 「図 に乗っているんですよ」

 帰り道、一緒になった小林尚睦トレーナーが、苦渋の表情を浮かべて、ボソッと言った。

 そうか、だからか・・・・・・

 チャンピオンになって、浮かれて、調子にのるのは良い。誰しもが、あること。しかし、それも、ひととき、だ。

 どんな人たちの、 無心の協力と、サポートがあったから、ベルトを巻くことが出来たのか!? を、栄光の裏で、ヒトは往往にして忘れて、天狗になる。自分の拳が、並外れて強いから、勝ち続けてきたんだ!と。「自分が考えた作戦」が成功したのさ、そうだぜ~、と・・・・・

 そう勘違いして、堕ちていったプロボクサーを、私は何人も、知っている。

 先に、新人王になった、あるボクサーのことを書いた、彼は、「外」に向けて図に乗った。

 驚いたのが、そこの会長から連絡があり、「全文を削除してくれないか?」と、言ってきたこと。”人間教育”も含めての、トレーナーのはずなのに、それをすることの前に、削除依頼とは・・・・・・・。よい方と思い込んでただけに、ガッカリした。

 キッパリと、断った。

 佐々木左之介は、「内」に向けてか・・・・・

 2・11 勝って、初防衛して、さらに”銚子”の先の太平洋まで跳んで行っちゃうか?

 はたまた、負けて、おのれを振り返り、自分自身を、見つめるか?

 彼には、これだけ言った

 「挑戦者」の気持ちで戦わないと、負けるよ。分かってる、よね