一回観たら、その虜(とりこ)になる! 今まで演劇を観なかったことを、後悔する!
そう断言できるほど、この「椿組」が、繰り広げる世界は面白い!!
主宰するのは、外波山文明という役者。ん?誰、その人? という人は、「とばやま ぶんめい」と、インターネットで検索して欲しい。はいっ、やってみて! この点だけは、インターネットというのは便利だ。デタラメ情報が、真実のように、大手を振っているのは、困りものだけれど。さてと、見た?
あれっ! この顔、テレビとか映画で、何回か見たことある! そう思った人は、多いはず。長野県出身。役者生活は長く、知る人ぞ知る、名脇役だ。
人の好い好々爺をサラリと演じたかと思えば、一転、映画「闇の子供たち」では、アジアの子供たちをさらって、その子たちが生きてるまま、内臓をえぐり取って、手術でその部位が是が非でも欲しがる日本人に高額で売りつける”闇の商人”を、すごみのある、リアリティ溢れる演技で銀幕に叩きつけた。ちなみに、その様な事実はあるし、今も水面下で臓器売買は、行われています。
さて、その事実を踏まえて演技をした外波山の、 硬軟、なんでもござれの姿勢は、ひとり芝居で、さらに本領を発揮する。
その名も「四畳半襖の下張り」での演技は、定評があり、もう見事!!のひとことだ。
そして、劇団椿組を結成してからは、和モノ、洋モノ、あらゆるジャンルを舞台で上演。新宿・花園神社の境内を借りての、恒例大テント公演はもう今年の夏で、27年目を数えるまでになった。
そんななかで、田渕正博、木下藤次郎、長嶺安奈、井上カオリ、恒松敦己などの役者が育った。
みんな芸達者。テレビに映画、どれに、どんな役で出ても、ひときわ異彩を放つ実力を蓄えている。テレビドラマで、主演のガキらの「学芸会」を見ていると、何故椿組の役者を大胆起用する目を持っていないのだろうか?と。不思議で仕方がない。
そんな役者陣が勢揃いして、この4月18日(水)~22日(日)まで、演劇のメッカ、下北沢のスズナリで、その名も「椿版・どん底」を上演する。
どん底って、あの有名なゴーリキーの? そう、あの、です。
ちなみに、ゴーリキーという名前は、ペンネーム。本名は、アレクセイ・マクシーモビッチ・ペシコフ。!? かと思ったら、一方で、ペシコフ・アレクセーイ・マクシモビッチという、真逆の名前も、パソコン上ではまかり通る。
ねっ、このデタラメ、あいまいさが、インターネット「情報」という実態なわけ。
さてさて、今から110年も前、33歳の時にゴーリキーが書いた世界的名作を、忠実に舞台化してるか? といえば、ところがどっこい。
よ~く見ると「椿版」と銘打っており、おまけに舞台はロシアではなく、このニッポン。イエ~ス、じゃぱに~ず! それも、時代と舞台設定は、花のお江戸でござりまする。
貧しく、しかし決してココロは美しくない面々がひしめき合う棟割長屋。人生をあきらめ、ゴミ溜めに巣食う、疲れ果てたかの様な人々。それでも、あばら屋に渦巻く嫉妬、猜疑心に、消え失せぬ欲望・・・・
そんなどん底の町内に、お遍路で通りかかった1人の老人。彼の登場により、人々のココロ持ちが、次第しだいに変わってゆく・・・・・・。
名作に一気に手を入れ、構成・演出。江戸時代のどん底生活をおくる町民の見事な群像劇に仕立て上げたのは、劇団JAMSESSIONの西沢栄治。その実力は一昨年の夏、先の花園神社で上演した「天保十二年のシェイクスピア」で、劇団員にも実証済みだ。
もう、この椿組といったら、あのリア王だって「ささくれリア王」にしちゃうし、「マクベス」だって「リチャード三世」だって、ひょいと刻んで料理して、舞台のまな板に次々とあげちゃう!!もう、そりゃ、お手のもん。
外波山文明の目は、広い。俳優業をこなしつつ、新宿ゴールデン街で「クラクラ」を経営。俳優仲間に、監督など、有名人が飲みに来る店としても有名だ。
その合間を縫って、名も無い劇団の芝居を、ホントにこまめに見て歩く。そこで、自分の眼力を働かせ、見極め、コレ!!と思った人間に、舞台脚本の新作を依頼したり、構成・演出をしてもらう。
昨年10月には、たった1人で「タカハ劇団」を名乗る高羽彩に、「みちゆき」を書かせ、演出をしてもらった。見て、正直面白かった。将来性、確かに有り。
人気と、観客の動員力は、他の劇団に比べてかなりある。しかし、それにアグラかくことなく、常に新鮮な風を吹き込む姿勢は、大劇場で繰り広げられている商業演劇の、幕あい”弁当芝居”の作・演出家にも、望みたいところだ。
新鮮な風は常に、出演する役者にも及ぶ。今回の「どん底」でも、扉座の犬飼淳治、青年座の勝島乙江、劇団MAMAERの染谷恵子らが出る。
出たい、見せたい、という気持ちは分かるが、見るに耐えない、カネ返せよと言いたくなる小劇団が、大半の中にあって、椿組に客演する役者の演技レベルは、先の田渕正博らまではいかないけれど、かなりのものだ。
よく演劇界でいわれる、芝居じゃ食えない、とか、チケットのノルマがきつくて、という、うめきや、つぶやき。それらは、ある種、事実だ。
それを救う意味もあるのだろう。大テントを毎年、役者も総出で張る花園神社の公演では、オカミ(文化庁)からの巨額助成金を、しっかりせしめる。
この「椿版・どん底」では、文化芸術振興費補助金(トップレベルの舞台芸術創造事業)530万円。
続く夏の恒例、花園神社の公演には、すでに980万円の補助金がふりこまれている。しめて1510万円。プロデューサーでもある外波山文明の、したたかな才覚といえよう。それで、客足が万一悪くても、赤字を防ぎ、出演料もキチンと支払う。面目躍如たるところだ。
ちなみに、この補助金。全額、我々の税金。世間知らずのオカミらしく、まだ企画も漠然としている1年くらい前までに、申請の締め切り。それが為に、まさに「才覚」必須条件なり。
おかしいのは、それをうまく手にする劇団主宰者に限って、作品や内に秘めた、反権力思想溢れる人ばかり(笑い)。映画界で言うなら新藤兼人。でもって、もらったら、こっちのモノという。
数多い申請書を審査する演劇ヒョーロン家センセや、権威有りそな学者センセ、それに加えて実は無識者の「有識者」らは、な~んとほとんどが、招待状をお送りしても、見にも来ないそうな。いったい、ナニを見とるのやら・・・・。まっ、自分のフトコロが、痛む訳じゃないからか。オカミ感覚、丸出しと言うことだ。
さて、お立合い!! ハナシが横にいささかそれたが、 この芝居、見て損なし!! 昨年は、親しくしていた俳優の原田芳雄がこの世を去り、傷心のつらかった日々を乗り越えた外波山文明。
この芝居では、美里や流太など、家族総出で協力。熱い想いが、伝わってくる。
木戸銭は、高くない。指定席3800円。自由席(ベンチ席)3500円。
開演時刻は、4月18日(水)と19日(木)は、19時。20日(金)と21日(土)は、14時と19時。そして、最終日の22日(日)は、13時と17時です。
下北沢 ザ・スズナリは、小田急線か井の頭線の下北沢駅下車、徒歩7分ほど。迷ったら、劇場?03-3469-0511。もしくは、公演期間中なら、劇場ロビー?03-3467-7554へ、かけると良い。.
パソコンで予約ページは、https://ticket.corich.jp/apply/33446/
携帯予約ページは、http:// 以下、同様。
椿組への問い合わせと、直接予約は、080-5464-1350
上演時間は、約1時間50分。観終わった後、気分が「どん底」になることは、あり・・・・ません。