転妻よしこ の 道楽日記
舞台パフォーマンス全般をこよなく愛する道楽者の記録です。
ブログ開始時は「転妻」でしたが現在は広島に定住しています。
 



昨夕、友人に連れ出されて、地元で文楽を観た。
割引券が互助会で買えたからと友人は親切に声をかけてくれて、
私が胃腸炎で臥ていたことは了解のうえで、
自家用車で我が家まで迎えに寄ってくれたので、
御言葉に甘えて、出かけてみることにした。

会場はアステールプラザ中ホールで、
余談だが、我々が到着したとき、ちょうど、隣の厚生年金会館へ
翌日公演予定の『おかあさんといっしょ』のスプーが、
運び込まれていくところだった(^_^;)。

演目は『曽根崎心中』で、それはそれは素晴らしかった。
吉田蓑助になると、もう、至芸ここに極まれりの境地だった。
私にとって、文楽ほど、生とテレビの落差が大きいものは無い、
と昨夜は幾度も感じた。
私は舞台が一望できるくらいに後方から観ることが多いのだが、
そうしていながら、自分の目は自由自在に、
人形の表情を追い、重要な場面をフォーカスして観ているので、
テレビで勝手にアップにされたりすると違和感が強いのだと思う。
もっと体調の良いときを狙って、
四月は国立文楽劇場へ行ってみようかとも思った。


……のだが。
体調が不十分だと、私はやはり、全く集中力がなく、
観ながらロクなことは考えないのだった。
昨夕は、自分の脳の回路がどこかオカしいことを
たびたび実感させられた。

例えば。

・上演前の解説でも触れられていたことなのだが、
世話物は凝ったウラがなく、見たままの設定なので理解しやすい。
恋人同士、恋敵、ふたりの支援者、ふたりの障害となる人々、等々、
見る側としては安心して?感情移入できるのが良いと思った。
が、そこから私の思考は、『その点、時代物は困るんだよな』に移った。
ほら、お侍さんが出て来るような時代物ではよくあるではないか、
敵方だと思っていた武士が実はこっちの殿様の忠義な家来だったとか、
家のカタキと思っていた相手が、実は生き別れの兄だったとか。
ゆえあって黙っていたのだ……、とか言うのだけれども、
ちょっと居眠りして起きたら人物関係が180度変わっていて、
私は、ひどく困惑させられたことが今までもあった(殴)。
いやはや、そんなあやふやな状況で「仇討ち」とかって、
自分が誰を殺っているか保証の限りじゃないんと違う?
と私は心の中で曾我十郎・五郎に呼びかけていた。

・『そういえば封印切るヤツって、何心中だったっけ?』、
と見ながら不意に、小さなアルツが始まってしまい、
これがなかなか思い出せなかった。
○○心中、……心中天網島、……違うな。
心中・恋の大和路、……それは昔、宝塚バウホールで
瀬戸内美八の星組が演った(近々、再演されるそうだ)。
恋飛脚大和往来、……いや歌舞伎はこの題になるんだけど、
文楽で、○○心中、心中○○、……えーん、出てこないよー。
……正解:冥土の飛脚(T.T)。心中から離れるべきだった。

・天神森の場の書き割りが物凄かった。
松の木のヨコに椰子の木があったのだ(爆)。
前からあんなセットだったっけ???
そして夜空には、マイナス五等星かというくらい強烈な星が、
つまりクリプトン球みたいなのが、三つばかり、光り続けていた。
私はここで、SET(スーパー・エキセントリック・シアター)の
ごく初期のギャグ『星になったふたり』を思い出して悶絶した。
浜辺で、睡眠薬を使って心中しようとする恋人同士が、
薬を口に入れては、その都度、言いたいことを思い出したり、
自分だけ先に死んではと相手を信用できなくなったりして、
口の中の薬を、ぷぷぷぷぷと全部吐きだしてしまい、
じゃあ私が飲むわ、………ぷぷぷぷぷ、………ちょっと待って!
今度こそボクが、………ぷぷぷぷぷ、………やっぱり待って!
と、ぷぷぷぷぷ合戦を繰り返した挙げ句、
だったら、二人一緒に飲めば同時に死ねる、と一緒に薬を含んで、
………二人同時に、ぷぷぷぷぷ。
結局「またにしよう(^^ゞ」と心中を諦める話だったと思う(T.T)。
………なんで、よりによって今、こんなものを思い出すんだよっ、
と内心の大汗を拭っていたら、私の背後のおばーさんが呟いた。
「なかなか、ひと思いにはヤらんもんじゃね」。(←殴・蹴・絞!!)

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