転妻よしこ の 道楽日記
舞台パフォーマンス全般をこよなく愛する道楽者の記録です。
ブログ開始時は「転妻」でしたが現在は広島に定住しています。
 



mixiのIvo Pogorelichコミュにて某氏が教えて下さった映像なのだが、
ポゴレリチと、今は亡きケジュラッゼ女史との、
当時のレッスン風景が収録されていて、非常に興味深いので、
こちらにも、URLを貼っておくことにする。
ポゴレリチの演奏に、ご興味がおありの方は、どうぞご覧下さい。

Part 1 Part 2 Part 3 Part 4

80年代のポゴレリチについては、特に、その容姿や服装に関して、
私は、やや、「じんましんが出そう」な居心地の悪さを感じることが、
実は、結構あるのだが(殴!←今は「出ない」のかと言われると(逃))
この映像は、そんなことより、レッスンが収録されているという点で、
今まで見たこともないほど貴重なものだと思った。

83年というと、それまでのザグレブからロンドンに居を移した翌年で、
この頃から彼は、ユーゴのドゥブロブニクや、英国内のサリー州、
またアメリカのNYなどにも、別荘やお城など購入するようになった。
この映像も多分、ロンドン市内のフラットかどこかだろうと思われる。
ちょっと意外だったのは、使用楽器が二台ともYAMAHAだったことで、
ポゴレリチはキャリアの最初から録音では必ずスタンを使っていたのに
家ではYAMAHAとも馴染みだったのか、と私は面白く思った。

この取材に対してポゴレリチは英語で応えているが、
ケジュラッゼ女史とのレッスンでの会話はロシア語で、
ケジュラッゼ女史のほうはインタビューにもロシア語で応答している。
モスクワで知り合った二人なので、私的な会話はロシア語だったようだ。
スカルボの低声部の動きについて、ポゴレリチが自分の考えを言い、
最後に「......, Нет?」(~ではないですか?)と問いかけたり、
彼が区切りまで弾き終えたところで、ケジュラッゼ女史が、
Очень хорошо!」(大変よろしい!)
と褒めているところなどが、通訳音声の合間に聞きとれる。

レッスンは『夜のガスパール』を仕上げていく模様を収録したもので、
曲順通り「水の精」から始まり、「絞首台」「スカルボ」と、
断片的ではあるが興味深い二人の「共同作業」が記録されている。
番組全体のナレーションがポーランド語か何かで、
私などには言語が全くわからないのが残念でならないが、
楽曲の構造の捉え方、手首や指の使い方(例えばマルカートの奏法に、
ケジュラッゼ女史がたびたび言及しているのがわかる)などについて、
当時の二人のレッスンがどのようなものであったかが、
この短い映像からいろいろと想像させられ、
ファンとしてはたまらないものがあると思う。

途中、私邸の居間のようなところで、
ケジュラッゼ女史の息子のゲオルギーくんと一緒に、
本を覗き込んで談笑するポゴレリチの映像も出てきて、
何か「皇○アルバム」のような演出を感じないでもなかったが(殴)
しかしこの義理の息子の彼と、ポゴレリチとが、
この後も巧くいっていたことは、皆の知るところで、例えば、
80年代後半から90年代初頭の、ポゴレリチのレコードジャケットの写真は
ゲオルギー・ポゴレリチ氏撮影の作品がたびたび使用されていたものだ。
ポゴレリチは彼を法的にも正式に自分の養子にしており、
ケジュラッゼ女史の死後も、家族としての良好な交流が続いている。

ともあれ、これは、「イーヴォ・ポゴレリチ」が、
現在のようにポゴレリチ独りの名となる前の、
アリス・ケジュラッゼと「二人で一人」であった時代の、
大変に貴重な記録であると思う。

最後の、「スカルボ」が終わったところで、the end of part one、
という文字が出ていたが、この番組にはまだ本当は続きがあるのだろうか。
できるものなら、それも是非見たいと思った。

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