LOS ANGELES FLIGHT DIARY

愛機ビーチクラフトボナンザで南カリフォルニアの空を駆ける日本人飛行機乗りの日記。

フライトログ:夜中の空港でコヨーテに遭遇

2010-03-17 | Flight Log (機長)

もうすぐ冬時間も終わるという3月初旬の金曜日の夜、仕事帰りに空港に直行、軽く飛んでくることにした。まずはオイルを足し、6クオーツくらいのレベルに保つ。先日オイルを換えたばかりなのに、最近突然オイルの色が濃くなってきた。飛び過ぎ!と言われればそれまでなのだが、Tach25時間のインターバルを待たずにオイル交換したい所だ。

ランナップエリアに向かう頃には空は暗くなり、完全にナイトフライトの状態。Rwy21までタクシーし、待ち時間ゼロで離陸許可がおりた。Rt turn at shore lineで海岸線を目指し、黄昏時の空を飛ぶ。パシフィックパイセイズの手前でFrequency Changeとなり、ここはらはひたすら北西の海岸線を飛ぶ。そして4500ftくらいの高度になったところでロサンゼルス国際空港 Class B Airspaceの5000ftを意識しながら北に飛び、Class Bの床を抜けた瞬間に右ターンして一機に5500ftまで上昇、バーバンク空港 Class C Airspace 4800ftの天井の上に抜けた。このブログでも何度も書いている、サンタモニカ空港から東に高めの高度で抜ける定番のルート選択。低高度なら2000ftでダウンタウンに向かうというのもあるが、夜のクロカンフライトで低高度の選択は得策じゃない。

完全に夜の帳が下り、北の山の方は真っ暗、そして南のLos Angeles Basinは夜景が広がる。真っ暗な空、計器を照らす薄赤い光、オイルの匂い、程よい寒さの風がベンチレーターから入り、足下には快適な暖房が効いている。一人で夜空に浮かびながら、リラックスした時間を過ごす。

考えてみれば、このグラマンAA1でサンバラディーノ空港に下りたことがなかったと気付いた。本来はレッドランド空港におりるつもりでいたが、今夜はサンバラディーノに下りることにした。オンタリオ空港 Class C Airspaceの東端の上を飛びながら少し南に下がり、サンバラディーノ空港から南西5マイルくらいのところで管制塔を呼んだ。Left downwind report mid fieldとのことだった。Full stop?ときかれたので、Touch and go and leave the areaと返答。

トラフィックパターンに向けて降下を開始。レーダー化されていないサンバラディーノ管制塔なので、レッドランド空港からのトランジションや警察ヘリのトランジションなど、他のトラフィックがClass Dに入ってくる度にこちらの位置をレポートさせられる。これが面倒で仕方ない。久々に立ち寄ったサンバラディーノ空港だったが、また来ようという思いを殺ぐような感じだ。いよいよDownwind mid field、滑走路のライトも暗いが、なによりも施設のライトがなく、辺りも暗い。ベースからファイナルで滑走路のライトがやっと綺麗に見えるようになり、横幅150ftで長さ10000ftという長い滑走路にナイトランディングを決めた。そして、そのままフルパワーで離陸、アップウィンドに来たところでLeft Standard Departureをリクエストした。そうすると管制塔からReport when leaving southwestと曖昧な指示。しばらくして、Interchangeの南1マイルにいるとレポートすると、frequency change!なった。

そのまま4500ftに上昇してコロナ空港に向かうことにした。高速の上を飛び、すぐにコロナ空港を発見。空港の南5マイルくらいの所で降下し、Rwy25へDownwind entryとなった。この時は変な風が吹いていた。風に流されるのを微修正しながら進入したが、大きな滑走路のサンバラディーノ空港にナイトランディングした後で狭い滑走路のコロナ空港に来ると、Airspeedが出過ぎている錯覚に陥る。やはりナイトランディングの時は純粋な視覚情報だけに頼ると危険だなと再認識。1年に200時間以上飛ぶ自分の感覚は比較的頼りになると勘違いしていた面もあるかもしれないが、自分の感覚に頼り75ktくらいのアプローチ速度のつもりで進入していたが、実際のAirspeedはIAS60ktちょっとだった。昼間だとここまで感覚と実測の差が出ることはないので、やはりナイトフライトには落とし穴があるなと思う。

Rwy25にまあまあの着陸、そのままタクシーしてFuel Pitに向かう。途中で野生動物がタクシーウェイを歩いていて、こちらを見て逃げていったが、どうやらコヨーテのようだ。そのまま誰もいないFuel Pitに停止、そしてエンジンを止めた。虫の声も聞こえない静かな田舎のノンタワー空港。給油をしようとしていると、風で揺れる草木の音を聞き”コヨーテが襲ってきたか?”などとドキっとしてしまった。テレビの特集で野生動物に教われた体験を語る番組があったが、その中で山中をトラッキングしている時にコヨーテに襲われたという話しをしている人がいた。その人は獲物として狙われたらしく、その証拠に首に向かって噛み付いてきたようだ。そんな不吉な番組の内容を思い出したりしながら、一人焦りながら給油完了を急ぐ。”もし、かりに襲ってきたら、この航空燃料を吹きかけてやればいいな!”などと万が一の時の作戦を考えつつ、”襲われるなら首を狙われるだろうから襟を立てよう”と、革ジャンの襟を立てて首を守ったりしていた。夜中の空港に一人でいると不安が高まり知能が低下するのか、コヨーテを警戒しながら給油する自分が滑稽に思えたりもした。


コヨーテが飛びかかってくることもなく、無事に給油完了。機体に乗り込みエンジン始動、そしてタクシーアウト!しようとしたら問題発生。ランディングライトがプチ!っと切れた。なんでこのタイミングで!と思うが、しかたないのでゆっくりタクシーした。そしてランナップ、Rwy25から離陸。センターラインが見えないので、Rwy両側の誘導灯が方向をつかむ唯一の手段。離陸してStraight outでSanta Ana Canyon を目指す。ここからはフラトン空港、そしてロングビーチ空港の上を4500ftで通過、そのままSpecial Flight Ruleでロサンゼルス国際空港上空を越えた。Class DからClass Eになった夜のサンタモニカ空港に進入、ランディングライトなしでRwy21に着陸となった。乗り馴れた愛機、そして下り慣れたホーム空港だからこそランディングライトが無くても何のストレスもなく下りれるが、これがどこか見知らぬクロカン先だったら嫌な思いをするだろうなと思う。やはりナイトフライトの目的地は知っている空港がいいと思うし、初めての空港にはできるだけ昼間のフライトで行くというのが賢明。とくにシングルエンジンをシングルパイロットで飛ばす自分にとっては。

夜空の下をタクシーしながら駐機スポットに帰る。サンタモニカ空港併設の寿司屋Humpの横を通ったが、鯨肉を売ったという事で”環境保護を楯に無法行為をするテロリスト達”の攻撃を受けている。変なデモを店頭でやられているので、この日は閉店しているようだった。Humpの下にある同じオーナー(アメリカ人)が経営するタイフーンカフェには客が入っているようだが、ここはオーナーを励ますつもりで、夕食は一人タイフーンカフェのバーカウンターで摂ることにした。それにしても、自分にとって心和むこのサンタモニカ空港に、しばらく反捕鯨のテロリスト達がたむろしてデモを繰り返すのかと思うと気分が悪くなる.

 


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2 コメント

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見事な夜景 (Tommy)
2010-03-19 23:39:04
いつも楽しく拝見させて貰っています。1人だけの夜の空間ていいですね。セスナの体験操縦しかした事ないですが、空・飛行機は大好きです。

そうそう、そちらではその手のテロが居て、周囲が迷惑を被ってますよね。クジラ以外の肉は貪るくせに何をやってるんでしょうね、本当(笑)
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Unknown (C2)
2010-03-20 00:39:37
>Tommyさん
コメントありがとうございます。一人でナイトフライトしている時のコクピットは最高の癒し空間です。気持ちよいフライトを終え、テロリスト達が空港に居るのを発見して高揚していた気持ちが冷めてしまいました。環境テロリスト達、困ったものです。
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