LOS ANGELES FLIGHT DIARY

愛機ビーチクラフトボナンザで南カリフォルニアの空を駆ける日本人飛行機乗りの日記。

サンタモニカ空港の未来

2013-05-14 | 航空関連エッセイ

2013年4月末、サンタモニカ市議会はサンタモニカ空港の着陸料の値上げを決定した。もともと連邦航空局とサンタモニカ市議会は空港存続や運営について対立関係にあり、米国連邦法の許す範囲内でサンタモニカ空港に厳しい市の条例を設定する傾向にあった。ただ、今回の着陸料の値上げは今までとは訳が違う。今まではサンタモニカ空港に駐機料や給油による課税などでお金を落としているサンタモニカベースの機体を除き、外来機に対してのみ着陸料を加算していた。あまり用事もないのにサンタモニカ空港に来ないで下さいという意思表示だ。個人所有に近いカタリナ空港は別にし、FAA管制塔がある公設の空港で着陸料を取るのはカリフォルニアではサンタモニカ空港だけだ。ただ、今回はサンタモニカベースの機体にも着陸料を課し、なおかつタッチアンドゴーでは着陸毎に課金するという事になった。米国内ではあまり聞いた事がない、非常に厳しい課金方法だ。しかも着陸料は今までの2倍になる。AOPAなどの団体は、この課金方法や理由について、連邦法に違反していると反論している。それらの異議が通らなければ、この条例は今年8月1日から施行されてしまう。空港の存在に反対する住民団体の強い後押しもあり、かなり強引に採決された新しい着陸料課金方法だが、空港利用者としては納得いかない事も多く、他の空港に機体を移そうかなとも思った。ただ、それでは住民団体や市議会の思うツボ。着陸料を上げてあまり着陸したくない空港、駐機しておきたくない空港とし、離発着の無い空港へと変換させ、最終的には空港そのものの存在意義を無くすというのが彼等と市議会の狙い。そういう意味で、サンタモニカ空港の活動性を落とさないためにも、私はここに残り続けることにした。

騒音問題や安全性の確保など、周辺住民に迷惑をかけない方法を考えるのは空港利用者として当然の立場だ。サンタモニカ市としても、空港のRwy endに安全性確保の為の公園を設置するなど、それ相応の配慮をしてくるべきだったし、するべきだと思う。ちなみに、今は滑走路を挟んで南北に公園があり、離着陸時の事故の緩衝帯としては役立っていない。ただ、こんな住宅街に空港があるのはおかしいとか、空港のお陰で不動産価格が上がらないという反対理由には首をかしげてしまう。サンタモニカ空港は1920年代からここにあるのだ。私がロサンゼルス周辺に不動産を探していた時、サンタモニカ空港周辺の物件も見に行ったことがある。当然騒音が気になる地域は地価にも反映しており、そこに住宅を構えた皆が空港の存在を承知で物件を購入したのだ。住宅街の真ん中に後から空港を作ったわけではない。

反対は住民の言う事で納得する事項もある。ビジネスジェットの騒音だ。サンタモニカ空港は比較的大型のビジネスジェットでも、Gulftream IV(G V/G550/G650は下りれない)やエンブラエルLegacyまでなら着陸できる。お陰でビジネスジェットの離発着数は年々増えている。この離発着数に制限をかけようというのなら、一定の理解を示すことができる。近隣住民は小型機を飛ばしたとしても、ビジネスジェットを利用するような恩恵を受けてはいないだろう。もっと北の街、ビバリーヒルズやベルエアー、ブレントウッドに住む大金持ち達がビジネスジェットを飛ばしているのだから。

しかし、今回の新しい着陸料の課金方法は、そんなビジネスジェットの離発着数には影響を及ぼさないと思う。もともと1時間数千ドルのチャーター料を払い、東海岸までの旅行に1千万円も2千万円も航空費を使える金持ちが、数十ドル数百ドルの着陸料でビジネスジェットの離発着先を変えるとは思えない。サンタモニカ空港が地理的に一番便利なら、これからもサンタモニカ空港を利用し続けるだろう。一番影響を受けるのはフライトスクールで機体をレンタルして趣味としてのフライトを楽しむ人達だ。タッチアンドゴー毎に着陸料を課金されたのでは、サンタモニカ空港での着陸訓練は無理になる。そうすれば、フライトスクールはツブレて無くなっていくだろう。比較的簡単に飛行訓練を受けられたり、飛行機をレンタルできるのがアメリカの良い所で、空にあこがれを持つ人たちに大きく道が開かれている。この課金方法は、そういう人たちから影響を受ける。

近隣住民と空港が共存できる道を見いだすべく、合理的な議論して欲しい。いまは過激で感情的な意見が飛び交い、この歴史ある、緑に囲まれた高台に位置する美しい空港が存続の危機にさらされている。サンタモニカ市議会が中立性や合理性を失っているのも悲しい限りだ。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。