あるニヒリストの思考

日々の思いを綴る

臨時の意識、常時の無意識(自我その60)

2019-03-16 21:06:23 | 思想
心理学では、無意識について、「本人は意識していないが、日常の精神に影響を与えている心の深層。」と解説している。心理学では、無意識の影響の大きさを認めているのである。しかし、無意識という言葉は、意識の前に無という否定の助字が付いた言葉であるために、陰のイメージが強く、意識の劣位にあるような印象を与えている。私は、人間の活動のほとんどは無意識が担い、意識はほんの一時期顔を覗かせるだけだと思っている。そこで、意識を表層心理、無意識を深層心理と呼んでいる。(このような命名は他の人もしている。)さて、たいていの人は、「我々は、寝ている間、夢という視覚像を見ていて、目覚めた後で、見た夢を意識する場合と意識しない場合がある。そして、意志で夢を変えることはできない。また、起きている間、ほとんどの時間、意識して考え行動していて、意志でその行動を自由に変えることができる。それでも、時として、気付かないままに、無意識のうちに行動することがある。」と思っている。「寝ている間」については、現在の段階では、これで良いだろう。しかし、「起きている間」については、これで良いだろうか。「起きている間、ほとんどの時間、意識して考え行動してい」るだろうか。例えば、朝起きて、トイレに行ったり、歯磨きをしたりなどするが、それを意識して考え、行っているだろうか。自分がトイレに行く姿や歯磨きをしている姿を意識しているだろうか。そうではなく、無意志のまま、行っているのではないか。無意識と言っても、そこに、思考が働いていないのではなく、深層心理が思考しているのである。思考の無い行動は存在しないからである。人間は、無意識に行動している時、つまり、深層心理が考えて行動している時、人間は自分に対する意識がない。トイレに入って、暫くして、紙が無いのに気付いた時、自分が今どんな状況にあるかについて意識したのである。つまり、表層心理が働くのである。人間は、日常生活と異なる状況や困った状況に陥った時、自分の現在の状況を意識し、この状況を打開するために考えるのである。この場合、表層心理が自分が紙の無い状態でトイレに入っていることを意識し、深層心理が上の台から新しいトイレットペーパーを探し出すことを考えるのである。このように、自分の現在の状況を意識するのは表層心理であり、この状況を打開するために考えるのは深層心理である。思考するのは常に深層心理であり、表層心理(意識)は深層心理に思考する機会を与えるに過ぎないのである。だから、人間の活動の大部分は深層心理によるのである。また、歯磨きをしていて、暫くして、「お兄ちゃん、早くしてよ。」と、妹に言われた時、自分が今どんな状況にあるかについて意識する。つまり、表層心理が働くのである。それは、人間は、他の人の視線が自分に向けられているのに気付いた時、自分の現在の状況を意識し、その人に良いように思われるように悪く思われないように行動することを考えるのである。このように、他の人から良いように思われるように悪く思われないように行動することを考える、人間のあり方を対他存在と言う。人間の深層心理には常に対他存在がある。ここでも、自分の現在の状況を意識するのは表層心理であり、この状況から、妹に良いように思われるように悪く思われないように、次の行動を考えるのは深層心理である。思考するのは常に深層心理であり、表層心理(意識)は深層心理に思考する機会を与えるに過ぎないからである。このように、人間は、日常生活と異なる状況・困った状況に陥った時や他の人の視線が自分に向けられているのに気付いた時、自分の現在の状況を意識し、この状況を良いように持っていくために考えるのである。自分の現在の状況を意識するのは表層心理であり、この状況を良いように持っていくために考えるのは深層心理である。思考するのは常に深層心理であり、表層心理(意識)は深層心理に思考する機会を与えるに過ぎないのである。だから、人間の活動の大部分は深層心理によるのであり、表層心理は一部分にしか過ぎないのである。

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