あるニヒリストの思考

日々の思いを綴る

感情に襲われることについて(自我その25)

2019-02-07 18:04:02 | 思想
我々は、自分自身で感情を生み出すことはできない。楽しい気分や嬉しい気分が快楽であることは知っているが、自ら、それを生み出すことができない。我々は、常に、感情に襲われるのである。しかし、それは、我々の外から襲ってくるのではない。我々の中から、襲ってくるのである。我々の中から、感情が生まれ、我々の気分を襲い、その感情一色にするのである。感情は、我々の意志に関わりなく、無意識の下で生まれ、その後で、我々はそれを意識し、自分の意志の下で対処しようとするのである。それ故に、深層心理が感情を生み出し、表層心理がその対処をしていると言えるのである。我々は、いついかなる時でも、我々の中に、感情が存在する。楽しい気分でいられるのは、以前の楽しい感情が残っているからである。悲しい気分でいるのは、以前の悲しい感情が残っているからである。我々の気分には、次の感情に襲われるまで、以前の感情に支配されている。そして、感情の無い思いや感情の無い行動は存在しない。そして、我々は、感情を作ることは出来ない。気持ちがすさんだいる時も、自分の意志でその暗い気分を変えることができない。だから、酒を飲むのである。酒が、楽しい気分を心の中に楽しい感情を生み出してくれるのを知っているからである。それでも、辛い時は、薬物に手を出す人もいる、薬物が辛い気分を解消させてくれるからである。もしも、薬物が、服用の後、精神的にも肉体的にも、本人に大きなダメージを与えず、周囲の人に迷惑をかけなければ、法律で禁止されることは無かっただろう。しかし、法律で禁止されているのに、薬物使用をする人は、絶えない。それほど、辛いことがあるのである。また、芸能人は、法律で禁止され、発覚すれば、マスコミの餌食になるとわかっているのに、その使用をすることが絶えないのは、脚光を浴びていた時と現在の不遇のギャップが大きすぎるから、その辛さに堪えきれないからである。さて、感情の原因には、精神的なものと肉体的なものがある。肉体的なものは、自分だけの問題だから、対処法は、単純である。太っていることにいらいらしているのならば、運動をしたり、ダイエットをしたりすれば良い。簡単に効果が上がらなくても、焦点や目標が定まっているから、長期的に行えば良く、現状の課題もはっきりしている。問題は、精神的なことが原因である場合である。そこには、外的には人間関係が、内的には深層心理の対他存在が絡んでいる。つまり、人間関係が、深層心理の対他存在を刺激し、感情を生み出しているのである。対他存在とは、他の人から良いように思われることを望みながら、他の人から自分がどのように見られているか、探っているあり方である。つまり、自分のプライドが保たれているかいないかを第一に考えながら、人間関係を送っているのである。我々は、他の人から良いように思われることを望みながら、他の人から自分がどのように見られているか探りながら人関係を営んんでいるが、その時の他の人からの思われようの満足不満足の程度によって、深層心理で感情が生まれ、行動が生まれるのである。つまり、他の人からの思われようによって、自分のプライドの満足不満足が生まれ、それが感情となって次の行動を生み出すのである。さて、人間の感情の代表的なものは喜怒哀楽の四字熟語で表されている。この中で、怒りと哀しみはマイナスの感情であり、喜びと楽しみはプラスの感情である。怒りは次のような場合に起こる。高校生が、教室で、クラスメートから、成績について、「おまえは馬鹿ではないか。」と言われた時である。言われた高校生は、深層心理が怒りの感情をもたらし、屈辱から解放されるために相手を殴るように指示される。指示された高校生は、表層心理で、それを意識して、殴った後のことを考える。周囲の生徒から、顰蹙を買うことを恐れて、殴ることを止め、反論することにする。もちろん、深層心理の怒りの感情が強過ぎると、表層心理の制止が利かず、殴るだろう。哀しみは次のような場合に起こる。高校受験の結果が知りたくて、高校の掲示板を見に行った時、自分の受験番号が無かった時である。受験生は、深層心理が哀しみの感情をもたらし、この哀しみから解放されるために泣くように指示される。指示された高校生は、表層心理で、それを意識して、泣いた後のことを考える。周囲の受験生から、自分が不合格だったことが知られることを恐れて、泣くことを止め、平然としようとするだろう。もちろん、深層心理の哀しみの感情が強過ぎると、表層心理の制止が利かず、泣くだろう。喜びは次のような場合に起こる。高校受験の結果が知りたくて、高校の掲示板を見に行った時、自分の受験番号があった時である。受験生は、深層心理が喜びの感情をもたらし、この喜びを誇示しようとして歓声を上げるように指示される。指示された高校生は、表層心理で、それを意識して、歓声を上げた後のことを考える。周囲の受験生の中に不合格だった者がいることを考えて、歓声を上げることを止め、平然としようとするだろう。楽しみは次のような場合に起こる。正月、男子小学生が叔父夫婦が家に訪ねてくることを聞いた時である。叔父夫婦はいつも高額のお年玉をくれる。彼は、深層心理が楽しい感情をもたらし、伯母夫婦を不愉快にさせないように、滅多に掃除しない部屋を掃除するように指示される。指示された彼は、表層心理で、それを意識して、何も障害を感じず、掃除を始める。このようにして、我々は、感情に襲われる。深層心理が感情を生み出すと共に行動を指示する。表層心理が、その指示を意識して、その行動をした後のことを考えて、行動する。しかし、深層心理の感情は強過ぎると、深層心理が指示した行動を取る。だから、怒りの感情が強過ぎると、犯罪を起こすことが多いのである。

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