おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

真昼の死闘

2021-12-01 07:46:41 | 映画
「真昼の死闘」 1970年 アメリカ


監督 ドン・シーゲル
出演 クリント・イーストウッド
   シャーリー・マクレーン
   マノロ・ファブレガス
   アルベルト・モリン
   アルマンド・シルヴェストレ
   ジョン・ケリー

ストーリー
メキシコ北部の荒地で3人の男(ジョン・ケリーら)が1人の修道女に暴行を加えようとしていた。
順番を決めようとくじ引きをしていると、銃声とともにダイナマイトを持った男ホーガン(クリント・イーストウッド)が現れて、そしてアッという間に3人を射ち殺した。
女はサラ(シャーリー・マクレーン)と名乗り、姉が売春婦なので、その罪を償うために尼僧となったと言う。
ホーガンは、自分はメキシコの革命ゲリラに雇われている流れ者で、チワワのフランス警備隊を撃滅する作戦に加勢し、成功すればたんまり褒美をもらえるのだと話し、サラは、私はチワワの生まれだと相槌をうつ。
一緒に旅を続けるうちに、ホーガンはサラを使ってフランス軍の動きを探ることにした。
サンタ・マリアのゲリラを攻撃するという情報をつかみ、列車爆破を企てる。
ところが2人が狭い谷間に馬で乗り入れたとき、インディアンの襲撃をうけ、ホーガンは肩に矢を射こまれて失神してしまい、そこからサラの活躍が始まった。
橋にダイナマイトを仕掛け、ホーガンの前にライフル銃を据えつける。
ウイスキーで目覚めた彼は凄腕を発揮、架橋は爆破されて列車は峡谷に転落した。
この事件のためフランス軍は増強され、ホーガンにとってはチャンス到来だ。
警備隊の駐留するところへ通じる地下道があるというサラの話に、新戦術を考える。
サラの案内で、地下道入口のある家にいくと、サラの正体がバレる。
そこが売春宿であり、サラも売春婦だったのだが、サラは懸命に言い訳をした。
売春婦姿では本当の尼僧と言わなかったら何をされたか分かりはしないと。
ホーガンたちは地下道の奥の警備隊の居場所の下に、ダイナマイトを仕掛けて、戦術開始である。
ホーガンは牧場主に化け、フランス将校を刺してお尋ね者となっているサラを引き渡すといい、警備隊の陣地へ入った。


寸評
ドン・シーゲルはいわゆるB級作品と呼ばれる作品を撮り続けた監督である。
兎に角、魅せることに専念していて、その事に関しては極めて職人的な監督だと思う。
数多くの作品を残したが、特にクリント・イーストウッドを使った作品に秀作が多いように感じる。
その代表が「ダーティ・ハリー」だと思うが、コンビの2作目となるこの「真昼の死闘」も要領よくまとめられていて、特段の見せ場はないものの飽きることはない。
イーストウッドは「荒野の用心棒」や「夕陽のガンマン」などで人気を得ていたが、この頃のイーストウッドと並ぶと流石にシャリー・マクレーンの存在感が際立っている。
キャストの第一クレジットがシャリー・マクレーンとなっているのも納得である。
役柄としてはマクレーン、イーストウッドのダブル主演で映画は二人芝居と言っても過言ではない。
パターンとしてはよくあるもので珍しくもない組み合わせとなっている。
屈強な男がか弱そうな女性に翻ろうされながら旅をすると言った内容である。
マクレーンの尼僧がしたたかで、一癖も二癖もありそうな女性であることがもう少し後でわかっても良かったっと思うが、尼僧姿のマクレーンが可愛く見えて言動が大いに笑わせてくれる。
魅かれるものがありながら尼僧と言うことで手出しをせずに同行するイーストウッドが受けに回って絶妙のアンサンブルを見せる。
イーストウッドが演じるホーガンはタバコを吸いベストを着るなど、彼がそれまで演じてきた名無しの男の再現を意図していると思われる。

インディアンの襲撃を受け、ホーガンの肩に刺さった矢を抜くときのやり取り、思わず地が出てしまってサラが発するアバズレ言葉、橋を爆破する際の二人のやり取り、フランス軍大佐の臨終に立ち合うことになったサラの取る態度など、それぞれのシーンが観客を和ませてくれる。
反面最後のフランスの駐屯地を襲うシーンは平凡な描写となっている。
メキシコのゲリラ部隊とフランスの駐屯部隊の戦闘は、数を頼りの描写になっていてイマイチ迫力がない。
ホーガンが金庫を運んでくることによって戦闘の終了を示しているのだろうが、サラとホーガンの物語であることを示しながらラストシーンの笑いで締めくくっている。
僕はマクレーンがロバのお尻をピシャピシャ叩きながら揺られる姿が印象に残っている。
娼婦が尼僧になるという変身ぶり、ホーガンがベストに入れたダイナマイトを次々投げ入れるなど、その演出に郷愁を感じるとともに、それゆえに安心感を持ちながら見ることができる作品となっている。

ちなみに、ドン・シーゲルとクリント・イーストウッドのコンビになる作品は以下の通りである。
1969年 「マンハッタン無宿」
1970年 「真昼の死闘」
1971年 「白い肌の異常な夜」
1971年 「ダーティ・ハリー」
1979年 「アルカトラズからの脱出」
イーストウッドは監督としても秀作を残しているが、ドン・シーゲルを師と仰いでいるとのことである。