おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

ミッドナイト・ラン

2021-12-08 10:52:39 | 映画
「ミッドナイト・ラン」 1988年 アメリカ


監督 マーティン・ブレスト
出演 ロバート・デ・ニーロ
   チャールズ・グローディン
   ヤフェット・コットー
   ジョン・アシュトン
   デニス・ファリナ
   ジョー・パントリアーノ

ストーリー
シカゴ警察を退職しロスでバウンティ・ハンターをしているジャック・ウォルシュは、保釈金融会社社長エディの依頼でギャングのジミー・セラノの金を横領した経理係のジョナサン・マデューカスの行方を追いかける。
そんな彼を、FBI捜査官モーズリはセラノを追う重要な証人であるマデューカスは渡せないと妨害するが、車の中で彼の身分証を盗んだウォルシュはそれを偽造しニューヨークヘ飛び、モーズリの名をかたり何なくマデューカスを逮捕するが、それによりウォルシュは以後FBIとセラノ一味から追われることになる。
マデューカスの飛行機恐怖症のおかげで一路汽車でロスヘと予定を変更したことを知らないエディは、ウォルシュに業を煮やし彼の同業者マーヴィン・ドフラーにマデューカス移送を依頼する。
2人を襲うドフラーを殴り倒したらウォルシュは、モーズリの名で彼を警察に引き渡しバスに乗り換えた。
バスターミナルで待ち構えるFBIとセラノ一味は、2人がバスから降りるや銃撃戦を展開、その隙にパトカーを奪い2人は逃走する。
思いがけず9年振りに別れた妻子のもとを訪ねるウォルシュは、突然の訪問に戸惑う前妻に冷たくあしらわれるが、素直に喜びを表現する娘デニースに心ほだされた前妻は、ウォルシュに車と金を提供するのだった。
セラノ一味とFBlに追われるウォルシュとマデューカスの旅は続き、途中、ドフラーもからみ、セラノ一味のヘリコプターを撃ち墜としたり、激流の中を逃走したり、またFBIをかたり酒場から金を盗んで貨物列車に飛び乗ったりしてゆくうちに、孤独なウォルシュと心優しいマデューカスとの間には奇妙な友情の絆が深まってゆくのだった。
しかしついに、ウォルシュはモーズリに、マデューカスはドフラーに捕まり、ドフラーからセラノの手に渡ったマデューカスを救い出すため、ウォルシュはモーズリを説得し、セラノ一味を陥し入れるある賭けを試みた。


寸評
FBIとマフィアからの逃亡劇なので派手なアクション・シーンのオンパレードとなりがちだが、コメディ的な要素を多分に盛り込みながら、時にホロリとさせる人情劇を見せるユニークな設定の作品である。
チャールズ・グローデンがとぼけた役柄を軽妙に演じて、哀愁を感じさせるロバート・デ・ニーロと互角の存在感を見せ、二人のやり取りがたまらない。
ロバート・デ・ニーロのジャックはバウンティ・ハンターなのだが、日本人にはこの職業がよくわからないので予備知識を持っておいた方が作品を楽しめるだろう。
アメリカの刑務所は犯罪者で満杯で、刑務所から溢れてしまった犯罪者は保釈金を払ってとりあえず出所するのだが、ところがこの保釈金がやたら高かったりする。
日本では馴染みのない保釈金融会社なる融資会社が存在していて、犯罪者はそこから金を借りて仮釈放されるのだが踏み倒して逃亡してしまう者も多い。
そこで保険金融会社の委託を受けて、決められた期日までに逃亡した犯罪者を捕まえて戻してくるバウンティハンター(賞金稼ぎ)という職業が存在しているというわけだ。
アメリカ人はこの仕組みが理解できているのだろうが、日本人の僕は保釈金融会社の社長エディがマデューカスの逮捕を高額でジャックに依頼している背景がよくわからなかった。
知るとジャックと同業らしいドフーラーの報酬を巡るやり取りも一層面白いものに感じとれる。

マデューカスはマフィアの金を横領して善意の寄付を行っているという変わった男である。
普通の世界ではありえないような行為なので、そうされたマフィアの怒りがもっと鮮明に描かれても良かったと思うのだが、そうなると作品が持っているコメディの要素は消えてマフィア映画としての重さが増し、作者の意図に反する作品になってしまったのだろう。
コメディを感じさせるのは、ジャックたちを追いかける面々が失敗ばかりやらかすドジな連中ばかりなことにもある。
FBIのモズリーは身分証を盗られただけでなく、情報を得て先回りをするが徒労に終わるということを繰り返しているし、マフィアの刺客である二人組もアホとしか言いようのない行動を見せる。
デューカスの飛行機嫌いのエピソードとか、飲食店で20ドル札を手に入れるエピソードなどは笑わせる。
大笑いする内容ではないが、主演二人のタバコを巡るやり取りとか、食事を巡る健康談義などジンワリと迫ってくる可笑しさがある。
感情に訴える一番の場面は、金に困ったジャックが別れた妻の元を訪ねるシーンである。
妻は家族と幸せに暮らしていて金の要求を拒絶するが、そこに大きくなった自分の娘が登場して再会を果たす。
下の息子は再婚相手の子供らしいが、長女は自分との間に出来た子だと分かる出会いである。
自分の子供という不思議な力によってジャックは気持ちを変える。
元妻もジャックに協力し、娘はアルバイトでためたお金を父親に渡そうとする。
コメディタッチの映画だが、この場面は胸に迫るものがあるいいシーンだ。
最後は想像できる結末となっているがイキなものである。
FBIとの取引があり、ジャックはプロとしての意地を見せ、デューカスは秘密にしていた物をジャックに渡して気持ちを見せる。
デ・ニーロとC・グローディンの軽妙演技が冴えわたった作品でもあった。