おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

JSA

2023-11-14 07:05:28 | 映画
「JSA」 2000年 韓国


監督 パク・チャヌク
出演 イ・ビョンホン イ・ヨンエ ソン・ガンホ
   シン・ハギュン キム・テウ

ストーリー
10月28日午前2時16分。
韓国と北朝鮮の境界にある板門店に設けられた、韓国軍と北朝鮮人民軍のJSA(共同警備区域)の北朝鮮側詰所で、警備を担当していた朝鮮人民軍の将校と兵士チョン・ウジンが韓国軍兵士により射殺される事件が発生した。
10月31日、事態を重く見た韓国と北朝鮮の同意を得た中立国監視委員会は事件の真相解明に乗り出し、スイス軍法務科将校の韓国系スイス人、ソフィー・チャン少佐に捜査を依頼した。
ソフィーはまず事件の容疑者とされる韓国軍兵士のイ・スヒョクに面会するが、スヒョクは事件のショックからか何も語ろうとはしない。
ソフィーはスヒョクの捜査記録から、事件の当日スヒョクは詰所付近で用を足していたところ、突如として北朝鮮人民軍に拉致されてしまい、脱出の際に銃撃戦になったという記述を見つけた。
スヒョクはその後、境界線で倒れているところを韓国軍に保護されたということだった。
スヒョクと共に勤務していた韓国軍兵士ナム・ソンシクも同様の証言をしていた。
続いてソフィーは、銃撃戦で負傷したという北朝鮮人民軍の兵士オ・ギョンピルを訪ねた。
ギョンピルの証言によると、スヒョクは拉致されたのではなく、自ら北朝鮮詰所に出向いて発砲してきたと言った。
両者の証言の食い違いにソフィーは困惑の表情を浮かべる。
その後、被害者の検死の結果、二名とも1回撃たれた後で更に追い打ちをかけるように銃弾を浴びせられたことが判明した。
更に調べを進めると、遺体および現場の銃痕と発砲された銃弾の数が一発合わないことが判明した。
やがて事件当日になぜかスヒョクとソンシクの銃が入れ替わっており、ソンシクの銃からは北朝鮮兵士の血痕が発見された。
このことにより、ソンシクも容疑者のひとりとして挙げられたが、ソンシクは取調べ中に窓から飛び降り自殺を図り、意識不明の重体に陥ってしまった。
物語は事件の前にさかのぼる。
ヨーロッパからの観光客の一団が板門店(韓国側)を訪れた時のこと、旅行者のひとりの帽子が風に乗って国境を越えてしまい、当時国境警備に就いていたギョンピルが帽子を拾い上げて旅行者に返した。
一方、韓国側で警備についていたスヒョクは旅行者が写真を撮ろうとするのを制していた。
その後、スヒョクは警備中に誤って北朝鮮側に入ってしまい、しかも地雷を踏んでしまった。
どうすることもできないスヒョクの前にたまたま通りかかったギョンピルとウジンが地雷を解除してスヒョクを助け、それがきっかけで三人は文通を始めるようになった。
しばらくして今度はスヒョクが密かに北朝鮮側の詰所を訪れ、すっかり意気投合した三人は密かに酒を飲み、互いの国の文化などについて語り合った。
スヒョクは人見知りがちなソンシクにも声をかけ、彼も交えた四人は互いの立場を超えた友情を築き上げていった。
しかし、韓国と北朝鮮の関係は悪化していき、そして運命の10月28日、四人が集うのはこの日が最後と決め、ソンシクは絵の好きなウジンに絵の具をプレゼントしたのだが、その場にウジンらの上司が現れた。
時は現在に戻り、スヒョクとギョンピルは取調べで顔を合わせた。
ソンシクが飛び降りた時のビデオを見せられたスヒョクは取り乱し、真実を打ち明けそうになったが、ギョンピルは敢えてわざとスヒョクを罵倒した。
その後、ソフィーは自身の父が北朝鮮軍将校だったことを理由に上司から任務解除を言い渡されたが、どうしても真相を知りたいソフィーはスヒョクに現場近くで発見したウジンのノートを見せ、再度の証言を求めた。
ノートにはウジンが描いたスヒョクの恋人(ソンシクの妹)の絵があり、スヒョクはギョンピルの身の安全を保証することを条件にソフィーに真相を語り始めた。
事件当日、ウジンらの上司がその場に現れたことで四人は一触即発の事態に陥ってしまい、スヒョクは上司と銃を向け合った。
ギョンピルの必死のとりなしでその場は何とか丸く収まろうとしたが、その時上司は無線機を取ろうとポケットに手を入れ、銃を出すのだと勘違いしたスヒョクは上司を撃ち、止めに入ろうとしたウジンをも誤って撃ってしまい、動揺したソンシクは何度もウジンに銃弾を浴びせてしまった。
ギョンピルはかねてからパワハラを受けてきた上司にとどめを刺し、証拠隠滅と偽装工作としてわざとスヒョクに自分の肩を撃たせたうえで逃がした。
行方不明になった銃弾1発はスヒョクがウジンを撃った際に貫通してカセットデッキに当たったのであり、ギョンピルはそれを川に投げ捨てていたのだ。
ソフィーはギョンピルから預かったライターをスヒョクに渡しに行き、その際にうっかりギョンピルの証言内容を伝えてしまう。
取り返しのつかないことをしてしまったと深く悔いるスヒョクは密かに引率していた兵士の拳銃を奪い、自ら命を絶つ。
映画のラスト、友情を組む前の四人が板門店で初めて出会った時の写真が映し出される。


寸評
韓国と北朝鮮を隔てる軍事境界線を挟んで起きた悲劇を描いているが、メッセージ性はあるが堅苦しい内容ではない。
北朝鮮側詰所で、警備を担当していた北朝鮮の将校と兵士が韓国兵士によって射殺される事件が起きる。
紛争拡大を避けるために中立国監視委員会が事件の真相解明に乗り出し、スイス軍法務科将校の韓国系スイス人、ソフィー少佐が派遣されてくるのが導入部である。
当事者である韓国のスヒョクと北朝鮮のギョンピルが尋問を受け、やがて韓国側のソンシクも関係していたことが判明したが、ソンシクは自殺未遂を起こしてしまう。
ソフィーは政治的な解決を求められ「なぜ引き金を引いたの?」と聞けばいいのねと皮肉交じりの返答をするが、物語はまさに「なぜ引き金を引いたのか」の真相解明に向かっていく。
その為に物語は事件の前にさかのぼるのだが、そこからの描写が面白くてこの映画のメインでもある。
ヨーロッパからの観光客の一団が板門店を訪れた時に4人は出会っていたのだが、そのシーンがさりげなく描かれているのがよい。
偵察に出たスヒョクは北朝鮮側に入り込んでしまい地雷を踏んでしまい、ギョンピルとウジンに助けられる。
南北朝鮮は敵同士だが元は同胞なので軍事境界線を挟んで彼らの交流が始まる。
最前線にいながら親友と呼べるくらいに親しくなっていく様子が微笑ましい。
何度も描かれることで戦争の虚しさが伝わってくる。
どちらも国は捨てたくないが、敵国の友人と殺し合いはしたくないのだ。
グローバル社会となって、ひとたび戦争が起きれば彼らのような関係の人たちはたくさん居るのではないかと思う。
将軍は韓国と北朝鮮のやり方を知っていて、全てを明らかにすることではなく曖昧にすることで平和が保たれるのだと言う。
だから中立国の無関心さを利用して中立国に監査の依頼が来たのだと言うのだ。
そしてヨーロッパ生まれのソフィーの父親が北朝鮮将校であったことが判明することで物語が複雑化し、結果的に彼女は二人の兵士を殺してしまったことになる。
いずれの殺人も自殺も分断がもたらした悲劇であろう。
南北問題を描いた秀作である。


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