おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

日本の首領 完結篇

2024-06-20 07:03:10 | 映画
「日本の首領 完結篇」 1978年 日本


監督 中島貞夫
出演 三船敏郎 菅原文太 大谷直子 佐藤慶
   遠藤太津朗 渡辺文雄 寺田農 小林稔侍
   片岡千恵蔵 志賀勝 待田京介 鈴木瑞穂
   稲葉義男 桜町弘子 西村晃 金子信雄
   小池朝雄 仲谷昇 高橋悦史 佐分利信

ストーリー
関東同盟理事長、大石剛介(三船敏郎)と、関西中島組組長、佐倉一誠(佐分利信)の間には表向きには平穏無事な日々が続いていたが、日本政財界最大の黒幕、大山喜久夫(片岡千恵蔵)が癌で倒れたことにより、両者の間に再び不穏な空気が漂いはじめた。
大山は佐倉の娘婿の医師、一宮恭介(高橋悦史)の執刀で九死に一生を得た。
大山は任侠団体の統一合体を提唱するが、全国制覇の野望に燃える佐倉、大石は共に同意せず、虚々実々の駆け引きが始まった。
サイパン島開発という国家的な大事業に着眼した大石は大山を後盾に保守党中久保派の伊庭官房長官(仲谷昇)に接近する。
平山幹事長(金子信雄)から大石の野心を聞いた佐倉は大いに動揺した。
大石、佐倉の当面の問題は資金調達にあり、佐倉の胸中を読んだ川西(菅原文太)は、膨大な土地、不動産を持つ松原産業の子会社、木村建設を倒産に追い込んだ。
そして自殺した木村社長の娘、由紀子(大谷直子)を保守党の実力者、刈田(西村晃)に与えた。
一方、大石は、娘の郁子(山本由香利 )と刈田の息子春男(織田あきら)の縁組により、刈田を味方に引き込み、アメリカ側への賄賂の特使として、刈田と春男をサイパンに派遣する。
刈田はサイパンでジェラード議員と取引中に中島組の組員らしき強盗団に襲われ、大金を奪われる。
被害にあったのが日米の両議員のうえ巨額の金とあって、鬼島検事正(鈴木瑞穂)は捜査活動を開始する。
身の危険を悟った大石は帰国した春男と愛人をガス自殺にみせかけ口を封じ、重病を装って入院した刈田も毒殺して、サイパン事件の賄賂の領収書を取り戻そうとする。
だが領収書は由紀子の手にあり、それを大山から外科部長の椅子を約束された一宮が買い取った。


寸評
政界の黒幕である大山(片岡千恵蔵)の快気祝いに、川西(菅原文太)が用意した錦鯉を佐倉(佐分利信)が贈るシーンがある。
そこで大石(三船敏郎)を交えた三人の会話がこの映画を物語っている。
まず大山が「畜生というのは、罪がなくて、かわいいもんだ。 主や棲家に難しい注文をつけんからな」と言うが、これは人になぞらえたもので、人は頼る人間や親分や組織に色々と思惑を持つものだと二人を牽制したものだ。
続いて大石が「しかし、水があわないと長くもたんと聞いております」と合いの手を入れるのだが、組織から抜け出すような裏切りは許さないとの信念を述べたものだ。
最後に佐倉は「なじんだ水をまぜとけば大丈夫です」と返答するが、これは自分の率いる中島組が関東同盟のような寄り合い所帯ではなく、個人と組を一枚岩で抱え込んでいる自信を言ったものだ。
この三者三様の立場と思惑が展開していく構成になっているのだが、筋立てが面白いのに脚本が雑だ。
少し詰め込みすぎたのかもしれない。
例えば、大谷直子の由紀子の描き方だ。
彼女は佐倉によって倒産の挙句に自殺に追いこまれた松原産業の子会社社長の娘なのだが、その実行者の川西に売られ、あるいは一宮(高橋悦史)が佐倉の義息であることを知って複雑な表情を浮かべるのだが、結局彼にもなびいてしまう金の亡者だ。
最後にはそうまでして手に入れた銀座の店を守るために泣き叫ぶ。
そんな彼女の複雑な気持ちの変化は全くと言っていいほど描かれていない。
複雑な立場に居る一宮も同様で、その変節は描かれてはいるが描き方は浅いものだ。
人間ドラマとして弱くしている原因だと思う。
一方で、検察の追求も迫力が足りなくて、政治ドラマとしての要因を割いてしまっている。
描き方に切り込むようなところがなく、ちょっと中途半端な作品に仕上がってしまった。

それでも、「ヤクザになるのは医者になるより難しんだ!」と凄む三船敏郎は流石の貫禄だし、高橋悦史を蹴飛ばして意気込む佐分利信の豹変ぶりも決まっていた。
何よりも片岡千恵蔵御大が久しぶりに本格的な芝居を見せているのも、古い映画ファンには嬉しいことだった。
反面、シリーズとして見た場合には役者不足を感じてしまう。
菅原文太は東京・錦城会の幹部をやっていたのに、今回は逆に中島組の幹部で、最初見たときは錦城会の岩見が裏切ったのかと思った。
また、西村晃はアベ紡績の常務で暴力団担当の役だったのに、今回は同じような立場の代議士・刈田を演じていて、1本の独立した作品ならいいけど、シリーズとなればどうなのかなあ・・・。

興味を引くモデルは、片岡千恵蔵の大山は児玉誉士夫で、結成を目論む大日本同志会は東亜同友会のことだろう。
政民党幹事長・平山英格(金子信雄)は田中角栄だな。
大石のモデルとなったのは錦政会(後、稲川会)の稲川角二で、関東連合のモデルになったのは1963年に結成された「関東会」で山口組の東京進出に対抗して作られた関東やくざ連合らしい。


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