おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

ベン・ハー

2020-03-23 09:33:34 | 映画
「ベン・ハー」 1959年 アメリカ


監督 ウィリアム・ワイラー
出演 チャールトン・ヘストン
   ジャック・ホーキンス
   ヒュー・グリフィス
   スティーヴン・ボイド
   ハイヤ・ハラリート
   マーサ・スコット
   キャシー・オドネル
   サム・ジャッフェ

ストーリー
西暦1世紀の初め、ユダヤがローマ帝国の支配下にあった頃の話。
ユダヤの都エルサレムにローマ駐屯軍の新将校メッセラが着任した。
彼はこの地の豪族の息子ベン・ハーと幼な友達だった。
しかし、メッセラは立身出世主義者となっており、ベン・ハーと今は相いれなかった。
ある事件からベン・ハーの一家がローマへの反逆罪に問われた時、メッセラに無罪の口添えを依頼したのだが、彼に拒否された為に母と妹は地下牢に入れられ、ベン・ハー自身は奴隷としてローマ軍船へ送られた。
途中、砂漠で渇に倒れようとした時、飲み水を恵んでくれた人があり、ベン・ハーはこの人を忘れなかった。
ローマ艦隊が海賊船団と戦った際、ベン・ハーは司令官アリアスの命を救った。
彼はその養子に迎えられたが、ユダヤの地に帰った。
そこでハー家の財宝を守っていたサイモニデスとその娘エスターにめぐり合った。
エスターは、ライの谷へ送られていくベン・ハーの母と妹に出会っていたが、彼女らの願いで2人は地下牢で死んだと告げた。
ベン・ハーは2人の仇を討つことを誓い、大戦車競争に出場し、メッセラを破った。
ベン・ハーは重傷を負ったメッセラから母と妹は死の谷にいると告げられ、早速彼は母と妹を迎えた。
途中、十字架を負って刑場に向かうキリストを見送ったが、それは砂漠で水を恵んでくれた人だ。
今度はバン・ハーが1杯の水を捧げた。
その行列を見守った母と妹は、病いが奇蹟的にいえた。


寸評
昭和天皇と香淳皇后が初めて映画館で鑑賞された作品としても有名で、映画史に残る一遍であるのだが何はともあれ思い浮かぶのは戦車競走シーンだろう。
背景画にセットを組み合わせた映像があるとはいえ、コンピュータ処理が施せなかった時代の作品らしく、想像を絶するエキストラとセットによって全編が描かれていて、戦車競走シーンはこの映画最大の見せ場である。
スタジアムセットの中を疾走する戦車をとらえたカメラワークは素晴らしい。
今ならCG処理を施したりして迫力を増すのだろうが、この時代としては目を見張る迫力だった。
僕はリバイバル上映で初めて見たのだが、その時でも大型スクリーンに映し出された映像に驚嘆した。
戦闘場面としてはローマ海軍と海賊船集団との海戦場面もあって、随所で観客を理屈抜きに楽しませてくれる。

物語はキリストの生誕で始まる。
したがって宗教映画の側面を持ち合わせているのだが、キリストはその後ベン・ハーの前に現れ、皆に語り掛けるために丘の上に立ち、そして受難を受け磔となるシーンに登場するだけで、しかも神らしくその顔は全く分からないままである。
キリストは最後に「汝の敵を愛せよ」、「父よ、許したまえ。この者たちは何も知らないのです」と言い残したと語られるが、映画はベン・ハーにこの教えを悟らせるための壮大な抒情詩となっている。
主演のチャールトン・ヘストンは数々の主演作を誇るが、この1本で映画史に残る俳優となったと言ってもいいのではないかと思う。
パクス・ロマーナは帝国の軍事力と、巧みな属国支配でもたらされたのだろうが、実社会では描かれたような不満と差別が存在していたであろうことは容易に想像がつく。

ユダ・ベン・ハーはキリストと同じユダヤ人で、裕福で恵まれているハー家の長男でもある。
一方のメッセラはローマ人であるから支配者側で、被支配者側のベン・ハーとは元々相容れない宿命にある。
その関係からベン・ハーは奴隷の身になり、母と妹は囚われの身となってしまい、ベン・ハーはメッセラを憎しみの対象とし敵を討つことを悲願としている。
キリストの説く「汝の敵を愛せよ」と相反するこの思いがベン・ハーの活力となっている。
そしてベン・ハーは自分を苦しめ、母や妹を死に追いやろうとしているのはローマだと執政官に言い放っている。
ローマと言う国家が過ちを犯していると言いたいのだろうが、その帝国の執政者であるローマ人は自分たちが属国に課していることを当然と思っている。
すなわち、キリストが言うようにローマ人たちは何も知らないのだ。
ローマ人によって奴隷にされ、軍船の漕ぎ手となって苦難の道を歩むことになるベン・ハーに対し、最後になってキリストの言葉が投影されたことになる。

キリストの流した血は大地を流れ、人々の苦しみを救っていく。
全ての人々の苦しみを一身に受け止めるこの日のために生まれてきたと言うキリストの血は、ベン・ハーの母と妹の病を治す奇跡を起こす。
キリストは少ししか登場しないが、やはりこれはキリストの物語でもあったと思う。


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