おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

刑務所の中

2019-05-17 09:59:08 | 映画
「刑務所の中」 2002年 日本


監督 崔洋一
出演 山崎努 香川照之 田口トモロヲ 松重豊
   村松利史 大杉漣 伊藤洋三郎 遠藤憲一
   浅見小四郎 粟田茂 恩田括 小木茂光
   椎名桔平 窪塚洋介 木下ほうか 長江英和

ストーリー
ガンマニアの趣味が高じ、拳銃の不法所持などで懲役3年の実刑判決を受けたハナワ(山崎努)。
北海道・日高刑務所に送られ、晩秋の刑務所で受刑者番号222番を与えられた刑務所生活が始まった。
ところが、彼を待っていたのは暗くてジメジメした刑務所のイメージを覆す獄中ライフだった。
ハナワはそれぞれひとクセもふたクセもある4人の受刑者たちと同房。
入った雑居房は一流ブランド好きのおぼっちゃま受刑者・伊笠(香川照之)、媚を売る受刑者に火花を散らす・田辺(田口トモロヲ)、腕に仁義、いや仁議と刺青してしまった・小屋(松重豊)、シャブに未練たっぷりの冴えない中年男・竹伏(村松利史)との案外と楽しい生活。
厳しく、一見風変わりな規律はたくさんあるが、暴力などは一切なく、テレビも見れて雑誌も読める。
3度の食事は”クサイめし”どころか、驚くほどうまい!
シャバとは一切無縁の退屈なようで楽しい毎日・・・。
お正月の豪華なおせち料理は楽しみだし、免業日の飲み物、お菓子付きの映画鑑賞などもある。
味気ない食事の美味しい食べ方研究や、電気カミソリの電池のもち比べなど毎日飽きもせず繰り返される同じ生活でも満足感を持つ。
ところがある日、捜索(抜き打ち検査)で出所後の互いの連絡先をメモした紙片を発見された5人は、不正連絡で懲罰房に入れられてしまう。
しかし、そこで黙々と薬袋を作ることになったハナワは、懲罰房のほうが生きやすく、受刑者生活の中で一番の思い出になるような気がすると思う始末。
今日も受刑者達の行進の足音が響き、普段通りの日常が始まっていく。


寸評
些細な事に生きる目的を見出していく数々のエピソードが非常に愉快。
人としての無意識な行動が面白おかしく凝縮されている。
人間の本能としては何が一番なんだろう?
とにかく食べる事に対するエピソードが多い。これが一番なのかな。
眠る事にかんして寝具がどうのこうのと思い巡らせてもその思考の広がりは高々知れている。
そこにいくと食べる事に関しては無限だ。
今日はおかずが良いだの、肉が多く入っているだの、去年の正月料理はあんなだった・・・などと話題にとどまる所がない。
ご飯に醤油をかけるとうまいとか、小豆あんとバターを混ぜてパンにつけると絶品だとか・・・。
田辺が北野武監督の「キッズ・リターン」を見ながらお菓子を食べるシーンなんて、お菓子が贅沢品だった小さい頃を思い出した。
あと三個残っていると手探りで数えて、今から食べる楽しみと、後わずかになった寂しさの微妙な感じ。
飽食といつでも手に入る生活レベルからなくしてしまった感覚だ。
刑務所の中ではそれが残っていて懐かしくさえある。
これじゃ刑務所に入ってみたくなる。

彼らは世の中から必要とされていない人間達だ。
それでもわずかな事に変化と生きがいを持って生きている。
懲罰房での封筒貼りの仕事でも何とか日産枚数を上げようとし、達成したときの充実感に酔いしれる。
クロスワードパズルに書き込んだばかりに、人のものを汚したとして懲罰行きになる規律などクソクラエなのだ。

野球なんかに興味がなくてもバッターボックスに立たなければならない奴もいれば、よしここは一発撃ってやろうと意気込んでも、時間が来て終了になりガッカリする奴もいる。
もちろん文句を言えない不自由さはあっても楽しく野球をやっている。
守れないライトはいつも凡フライなのに頭を越される。
ボールを追いかけ投げ返しても途中までしか届かない。
それでも笑顔でそれを拾いに走って行くけなげな生き方を見せる。
今日もそんな風に前向きに生きていく彼等を見守るようにタンポポが咲いていた。

正月前に出所する事を嫌がり、刑務所に居る事で安心感を得る岸田役の長江英和、チンポコの先にティッシュがついていたと告げ口されて孤独に落ちるティッシュマン高橋を演じた大杉蓮、「ハイ、体温計るぅ~。ハイ、風邪ぇ~。入浴禁止ぃ~」などと診察をこなす医官役の椎名桔平などの、脇役人も存在感を見せ付けていたが、ワンシーンだけ登場する浜村役の窪塚洋介がやはり良い。
この人本当にナイーブな存在感を持った子だ。

ハナワさんよ、もっとムショの話をきかせてよ! 「願いまぁ~す」という叫び声が耳に残る。


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