おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

プリンス/パープル・レイン

2023-02-27 09:44:33 | 映画
「プリンス/パープル・レイン」 1984年 アメリカ


監督 アルバート・マグノーリ
出演 プリンス アポロニア・コテロ モリス・デイ オルガ・カルラトス
   クラレンス・ウィリアムズ三世 ジェローム・ベントン
   ビリー・スパークス ウェンディ・メルヴォワン リサ・コールマン 

ストーリー
アメリカ北部ミネソタ州の工業都市ミネアポリス。
絶大な人気を持つライブスポット<ファースト・アベニュー>では、紫色のジャケットに身を包んだ黒い肌の若者ギッドが、自分のバンド<ザ・レボリューション>をひきいて、ダイナミックなパフォーマンスを展開している。
強烈なロックのサウンドに熱狂する満員の客たちの人ごみの中、美しい女性が楽屋に向かっていた。
ロック・スターを夢みるアポロニアだ。
キッドの人気をねたんでいるライバルのモリスをリーダーとする<ザ・タイム>のステージに見入っているアポロニアに、楽屋から出て来たキッドが一目見るなり心ひかれたが、アポロニアの態度はそっけなかった。
その夜、キッドが愛用のパープル・メタリックのオートバイで家に帰ると、両親が喧嘩しており、自分の部屋にとじこもってやりきれない気分になった。
両親の不和からくるキッドの落ちこみに女性メンバーのリサとウェンディは、彼に対し不満を訴えた。
やがてキッドはアポロニアとのデートに成功し、2人はたちまち愛し合うようになった。
モリスもアポロニアに目をつけ、スターにすることを約束に自分のグループに加わることを承諾させた。
そんなある日、アポロニアが、キッドの欲しがっていた純白のギターをプレゼントしに彼を訪ねた。
そのギターをモリスから受け取った契約金で買ったことを聞くと、キッドは彼女を殴りつけてしまう。
やがて、モリスはアポロニアをリーダーとする美人トリオ・グループ<アポロニア6>を結成した。
<アポロニア6>が近くのクラブで成功を収めた夜、上機嫌のモリスがアポロニアを誘惑しようとするが、そこに現われたキッドが彼女をバイクに乗せて去ったが、またしても2人は喧嘩別れをするはめになった。
深夜、キッドが家に戻ると、父がピストル自殺をはかり、一命をとりとめたものの悲しみにくれていたキッドは、父の戸棚から古い楽譜を見つけ出した。


寸評
残念ながら僕はプリンスを全く知らない。
音楽を除けば、この映画は家族物語なのだが、その中身は薄いドラマである。
音楽ドラマとしてはほとんどの作品がそうであるように、最初は苦しんで最後はハッピー・エンドと言った単純明快なストーリーである。
家族問題を盛り込んでいることで物語に広がりを与えようとしている所が一線を画しているのだろうが、描かれている内容の割には感動に寄与していない。
プリンスのプロモーション・フィルムという感じで、プリンス・ファンにとってはたまらない映画だろう。
プリンスの演奏シーンはよく撮れていて、この様な表現は日本映画ではなかなかお目にかかれない。
音楽の持つ魔力なのか、プリンスを知らなくても、彼の歌う曲を知らなくても、体が自然と反応してしまう。
反面、セリフが少ない上に、出演者にそれを補うだけの演技力があるはずもないので、登場人物の心情が全くと言っていいほど伝わってこない。

キッドとアポロニアは愛し合うようになるが、アポロニアはキッドではなくモリスと一緒にやるようになるのだが、その事へのアポロニアの悩み、葛藤、苦悩が全く描かれないので、彼ら二人がお互いにどう評価したのかよく分からず、恋愛映画としての深みはまったくない。
父親は母親に暴力をふるっているが、何が原因で暴力をふるっているのか不明である。
意識不明の父親に母親が付き添っているが、どのような思いが二人の間にあってそうなったのか分からないので、彼ら家族の普段の生活が見えず家族物語としても成り立っていない。
キッドとアポロニアの関係もハッピーエンドハッピー・エンドハッピーエンドハッピーエンドで終わるが、この映画における女性の描き方は女性蔑視的だ。
冒頭でモリスが付き合っていた女性をゴミ箱に捨てる。
父親は母親にDVを働いている。
キッドにもアポロニアを殴り飛ばすシーンがある。
僕はプリンス・ファンではないので、この映画におけるプリンスは好きになれなかった。
父親はキッドに結婚をするなと言っているが、結婚生活はミュージシャンにとって無意味なものなのだろうか。

結局これは、プリンスの自伝的な物語でありスパースタースーパースタースパースタースパースターであるプリンスを賛美した作品なのである。
彼は偉大なるスーパースターであり、人々の手の届かない場所にいる人物なのだ。
その彼を“人間”プリンスとして描きたかったのだろう。
何処までが本当なのか知らないが、これが自伝だとすれば主演しているプリンスは、自分は家族や恋人や仲間のことで色々と悩んだり傷付いたりしながら、それでも頑張って来たんだと言いたかったのかもしれない。
彼のそうした隠れた部分を理解してくれたファンの為に、最後に十分すぎるプリンスの演奏シーンが用意されていて、途中でカットしたりせず、フルコーラスを流している。
その彼をカッコいいと思えたらこの映画は楽しい。
僕がもう少しプリンスのことを知っていたら、この映画にまた違った印象を持っただろう。
僕はタイトルになっている「パープル・レイン」すら知らなかったのだ。
プリンスと対局のキャラを演じているモリス・デイはいい味を出している。