「フェーム」 1980年 アメリカ
監督 アラン・パーカー
出演 アイリーン・キャラ バリー・ミラー リー・キュレーリ
ローラ・ディーン ポール・マクレーン エディ・バース
ジーン・アンソニー・レイ ボイド・ゲインズ
アントニア・フランチェスキ アルバート・ヘイグ
ストーリー
音楽、ダンス、演劇の3つのカリキュラムを主体とするニューヨークにある芸能専門学校で、その秋、新学期を控えて、連日、入学試験が行なわれていた。
そんな中には母に伴われた内気な少女や、ガールフレンドを連れだってくる青年など、さまざまな若者たちが希望と不安をみなぎらせていた。
厳しいオーデションに合格した者たちが登校する。
スラム街育ちのココ(アイリーン・キャラ)は美声の持ち主だ。
おしゃベりのリサ(ローラ・ディーン)はダンス科である。
音楽に才能を見せるブルーノ(リー・キュレーリ)は音楽科へ入学した。
それぞれが、自分の志に従い励んでいる中、ココは、ダンス科のリロイに惹かれた。
しかし2年生になったリロイは、ヒラリー(アントニア・フランチェスキ)という新入生の金持ち娘に恋をする。
一方、ダンス科のリサは、主任から才能がないからやめるように言われ、ショックのあまり自殺まで考える程悩むが、演劇科に移ることで再出発をめざした。
第4学年を迎えたココは、外国の映画製作者だと名のる男にスクリーン・テストを申し込まれ、その気で出かけるが、それは罠で彼女はポルノ雑誌のモデルをやらされる羽目になってしまう。
また、プエルトリコ人で演劇科の青年ラルフ(バリー・ミラー)はナイト・クラブで注目されるようになってから、いい役者になるという志を捨てはじめていた。
ラルフは、同じ科のモンゴメリー(ポール・マックレーン)の忠告ではじめて自分の愚かさを知る。
寸評
芸能学校に通う若者たちの姿を描いた青春群像劇だが、芸能学校という設定も珍しいし、それぞれのカリキュラムで学ぶ彼らの様子が新鮮な題材だ。
それぞれが抱えるエピソードがユニークで興味深く描かれているが、登場人物の多様性によって焦点が薄らいでいるので間延び感が生じてしまっている。
それでも感動を呼び起こされるのは彼らの姿を丁寧に描いているためだと思う。
ダンス科のリロイは黒人の最下層出身で英語が読めない。
卒業して成功をおさめないといけないが、与えられた課題の読書が出来ず苦労する。
焦りからか自分の事しか考えられず、ご主人の病気に悲しむ先生から叱責を受ける。
ラストでの様子を見ると、そのことで彼は目覚めて頑張ったのだろうが、彼の変化は描かれていない。
ブルーノは音楽科に入学したが、古典的な楽器ではなく現代音楽の楽器を操っている。
作曲の才能もあるようだが、なかなか彼の才能を理解してもらえない。
スラム育ちのココは秀でた歌唱力を有しているが、ブルーノの父親に送ってもらった時にはスラム出身を隠して、高級アパートに住んでいるふりをする。
カメラテストの話に飛びつくが、それは彼女に悲しみをもたらすものだった。
その後、どのように立ち直ったのかは分からないが、彼女もラストシーンでの姿を見ると挫折を立派に克服していったのだろう。
ちょっと注目されたラルフは初心を忘れそうになるが、友人の助言で踏みとどまることが出来る。
その友人はゲイであることを悩んでいるが、それでも前には進み始めているし、才能がないと宣告された少女も別の科で頑張るようになる。
それらの話が、断片のように同時進行で進んでいく。
その後の顛末を省略して観客に想像させるという演出が希薄感をもたらしていたのかもしれない。
彼らの持てあますようなエネルギーは、ブルーノの父がブルーノの作品を通りでスピーカーから流した時に、学内にいた学生たちが一斉に飛び出し踊り狂うシーンに表現されていた。
前半では一番盛り上がるし、感動する場面だった。
僕が一番感動したのはやはりラストシーンだ。
苦労していた彼らが卒業を迎え、卒業公演を行っている。
それぞれの学科で学んだ彼らがその成長を見せる。
楽器専攻の学生は見事な演奏し、ダンス専攻の学生は見事なダンスを披露する。
ココの美声が会場に響き渡り、彼等若者に輝く未来が訪れると歌い上げる。
若者の未来に賭ける情熱と姿は美しく感動的である。
たまらず彼等を応援したくなる。
卒業生の誰もが成功するわけではないだろうが、彼らの未来に拍手を送りたくなった。
授業風景は知らない世界だけに興味が湧いてきたし、芸能人がこのようにして生み出されてくるアメリカのシステムとその世界の厚みの様なものを感じた映画だった。