おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

昼下がりの決斗

2023-02-08 07:50:09 | 映画
「昼下がりの決斗」 1962年 アメリカ


監督 サム・ペキンパー
出演 ジョエル・マクリー ランドルフ・スコット ロン・スター
   マリエット・ハートレイ ジェームズ・ドルーリー
   ジョン・アンダーソン エドガー・ブキャナン パーシー・ヘルトン

ストーリー
スティーブ・ジャッドは、かつて名保安官として鳴らした男だったが、今では人々から忘れ去られていた。
ところが、シエラ山中のコース・ゴールドに金が発見され再び彼が脚光を浴びることになった。
コース・ゴールドの人たちが、掘り当てた金を預け入れるために銀行の出張を熱望したため、その重任にふさわしい人として正義の男ジャッドが選ばれたのだ。
黄金を預かっての帰りの山道はあらゆる危険が予想されるため、彼は協力者2人を雇うことにした。
彼が適任者として選んだのはかつてUSマーシャルとして音に聞こえたガンマンのジル・ウェストラムと、ウェストラムの推薦になるヘック・ロングツリーである。
だがジャットが信用しているウェストラムは、実は1日10ドルの日当より莫大な黄金がめあてだった。
山への途中、3人はある小さな牧場で一夜をあかしたが、そこの娘エルサは、山に住むハモンド5人兄弟の1人ビリーに熱をあげ、3人が山へ行くのを知ると家を飛び出し同行した。
一目でエルサにひかれたヘックは、何かと彼女につくすのだった。
エルサはビリーのもとへやって来たが、ビリーとの生活は彼女が夢見ていたものとはまるで違っていた。
たまりかねたヘックは、彼女を兄弟から救い出したが、このことで一行は兄弟の恨みを買うことになった。
金引き取りの仕事を済ませたジャッド一行は帰路に着いたが、ある夜、ウェストラムはヘックを誘って黄金を盗み出そうとしたところをジャッドに気づかれ武器をとり上げられた。
そんな時、ハモンド兄弟が仕返しに来た。


寸評
スティーブ・ジャッドが町へやってくるとラクダと馬の競争が行われていて馬上のジャドは邪魔者扱いされる。
すでに自動車も走っているので開拓時代は終わりを告げるころだと思われる。
ジャドの名前を知ると誰もが「聞いたことがある」と言うから、彼はかなり名の売れた保安官だったことも分かる。
しかし一応正装して銀行に現れた彼の袖口はボロボロだし、契約書も眼鏡をかけてでないと読めないほどになっている。
金銭的には恵まれてはいなさそうで、かつての威光も落ちているということが冒頭で示される。
彼は相棒に、かつての助手であるジル・ウェストラムを選び、更にその相棒である若いヘック・ロングツリーも仲間に加えるのだが、やはり映画の雰囲気を作っているのは初老の二人、ランドルフ・スコットとジョエル・マクリーだ。
僕は「ワイルド・バンチ」でペキンパーと出会って、その時はウィリアム・ホールデン、ロバート・ライアンという老優の活躍に小躍りしたものだったが、それ以前に作られたこの作品を見ると「ワイルド・バンチ」の前哨戦のような気がする。

三人は金山に向かう途中の牧場で一泊させてもらうのだが、そこにいる若い娘がひと悶着に絡む。
父親との二人暮らしなのだが、父親は独善的で男とみれば悪人呼ばわりし、娘を男に近づけさせない。
エルサというその娘はやはり異性との交流を望んでいて、彼らが来るとドレスに着替えたりするのだが、父親はそれも許さない。
父親の理不尽さが描かれるが、その理由が妻の不貞からくるものだとやがて示される。
本筋とは関係ないので墓標での文言だけで描いているが、父娘の関係と娘が家を飛び出す理由づけとしては、その程度描いておく必要があったのだろう。

最終的には敵対することになるハモンド兄弟なのだが、彼らは荒くれ者でその品性のなさからエルサは夢を砕かれるが、荒くれ者なだけでスゴイ奴らだとか、とんでもない悪人にはとてもじゃないが見えない。
彼等との決闘は途中も含めて完全に勝負の先は見えていて迫力不足。
その分、ジャドとウェストラムの間での友情と欲望のやり取りにウェイトがかけられている。
途中でウェストラムがジャドにカマをかけるやり取りが面白い。
決闘に挑む二人が「昔のようにやろう」と言って出ていくのは何かの作品でも見たことがあり、老ガンマンの描き方としては常套手段なのかもしれないがやはり格好いい。

結末はしんみりともさせて味わいがあるのだが、欠落しているのがエルサと父親の関係だ。
あそこまで来たら牧場で起きていることは想像できるのだが、エルサは父親の死をどう感じたのだろう。
確執があった父親だが、それでもやはり悲しんだのだろか?
それとも父親からやっと離れることが出来てホッとしたのだろうか?
そんなことよりもヘックと一緒になれる喜びの方が大きかったのだろうか?
ペキンパー作品としては脚本も演出も粗削りでこなれていない印象を持つが、後年のペキンパーを知る上ではフィルモグラフィとして見ておいても良いのではないか。
やはり彼を発見した作品が一番面白い作品で彼の代表作だと思う。