おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

ファニー・ガール

2023-02-11 10:06:55 | 映画
「ファニー・ガール」 1968年 アメリカ


監督 ウィリアム・ワイラー
出演 バーブラ・ストライサンド オマー・シャリフ ウォルター・ピジョン
   アン・フランシス ケイ・メドフォード リー・アレン

ストーリー
人気のないウインター・ガーデン劇場の舞台、ジーグフェルド一座の名優、ファニー・ブライス(バーブラ・ストライサンド)は、1人で座っていた。
彼女の頭には過ぎさった日のことが次々と思いめぐった。
ファニーは、スターを夢みる一介の踊り子だった。
彼女はいつも失敗ばかりだったが観客にはこの失敗が大いに受け、劇場主キーニー(フランク・フェイレン)はギャンブラーのニック(オマー・シャリフ)の駆け引きで今までよりも高給で彼女を雇い入れねばならなかった。
ファニーの胸には、ニックが強くやきついた。
ファニーのショウは各方面で話題となり、彼女は、ジーグフェルド(ウォルター・ピジョン)一座のコメディアン・シンガーとして雇われることになった。
ここでも彼女は大喝采を博し、彼女の前に再びニックが現れ二人はお互いの気持ちに気がついた。
二人が再び会えたのは1年も経ってからのことで、ショウの一座が興行に行った先にギャンブル狂のニックが競馬に来ていたのだが、この再会は二人を結婚にまで導いた。
娘も生まれ、ファニーには幸せな日が続いた。
だが、ニックの仕事がうまくゆかなくなり、ニックはばくちで失敗、彼女はまた舞台に立つことになった。
人々はニックのことを、ミスター・ブライスと呼ぶようになった。
この言葉にニックの自尊心は傷つき、彼はギャンブルにおぼれ、ついには獄につながれる身となった。
舞台の上で思いにふけるファニーに、付人が時間を知らせにきたが、今日はニックの出獄の日である。
化粧室でメークアップする鏡の中にニックの姿が映った。
ファニーはとびついていったが、最後にファニーはニックに「私たち別れたほうがいいわね」と告げる。


寸評
成功したファニーの回想で映画は始まるが、その冒頭で叔母さんたちがファニーが美人ではないことや、特徴のある鼻のことを話題にしている場面が描かれる。
この映画を通じて僕はバーブラ・ストライサンドを知ったのだが、おばさんたちに言われるまでもなく、さして美人でもない彼女の顔立ち以上に大きな鼻が目に焼き付いたことを今でも思い出す。
その後、バーブラ・ストライサンドの出演作を見ることはなかったが、彼女の印象が薄れることはなかった。
彼女はそれほど強烈な印象をこの作品で残した。
単純なストーリー展開のせいもあって、オマー・シャリフを始め共演者はみなお飾りと化している感じだ。
ミュージカル映画としてはそんなにいい作品とは思わないし、ミュージカルナンバーも地味に感じるものが多く盛り上がりに欠けるが、バーブラ・ストライサンドが自然発生的に歌いだすと確かに人を引き込むものがある。
これはバーブラ・ストライサンドというシンガーの実力のなせる業かもしれない。
歌唱で圧巻なのはやはり名曲“ピープル”だ。
初めての愛を告白されて戸惑うファニーが恋に強く生きようと宣言する感動的な場面となっている。
紹介されるミュージカル・ナンバーは上記の「ピープル」以外に、「花嫁の唄」「女の子が美しくなければ」「私は大スターよ」「ローラ・スケート・ラグ」「ブルーなわたし」「セコハン・ローズ」「彼の愛がわたしを美しくする」「きみは女だ」「パレードに雨を降らせないで」「セイディー・セイディー」「白鳥」「ファニー・ガール」「マイ・マン」など。

主人公が美人ではない面白い女性というのがこの映画のバックボーンだ。
ファニーが劇場をクビになりそうになった時、劇場主に「パンの中にベーグルが混じっていると面白いでしょ? 私はベーグルなのよ!」と言って自分を売り込む場面がある。
僕はこの映画を見た時にベーグルって何なんだと思ったことを思い出す。
ベーグルってそんなに馴染みのあるものだったのだろうか、僕は今でもベーグルになじみがない。

内容はよくあるシンデレレラ・ストーリの部類に入るものだが、ファニーがスター街道を駆け上るのは順調すぎて、そこにドラマ性は感じない。
むしろファニーがニックに一目ぼれしてしまい、二人が時を超えて結ばれるラブストーリーの要素が強い。
下町の娘が気品ある男性に魅かれるのだが、ファニーがニックのシャツを見て「ゴージャス」とつぶやくのが面白いし、ファニーとニックの関係を端的に物語っていたと思う。
ドラマとして見れば、ファニーの名声にニックが埋もれてしまい崩れていく様が弱いと感じる。
ニックが罪を認識しながら横領事件に関与する姿が描かれても良かったように思う。
ファニーとニックは最後までお互いに愛し合っていたのだと思う。
相手を想うあまり、ニックはファニーから離れていき、ファニーは別れを切り出す。
そして悲しみをこらえて歌う歌が「マイ・マン」で、この映画の感動を締めくくる。
劇中劇として演じられているステージ場面が挿入されるが、あまり意味を持っていなかったように感じるし、劇中劇としての面白さもなかったのでハーバート・ロスの演出にキレを感じない。
結局この映画はバーブラ・ストライサンドの存在だけが際立っていて、アカデミー主演女優賞を納得させるものとなっている。