猫猿日記    + ちゃあこの隣人 +

美味しいもの、きれいなもの、面白いものが大好きなバカ夫婦と、
猿みたいな猫・ちゃあこの日常を綴った日記です

旅は小説より奇なり。

2017年06月27日 05時56分14秒 | ハ~プニング!

 

呼子にイカを食べに行く途中に、ウロウロ、探索。

 

 

「まるで作り話のようだ」

と、自分たちでも思う。

先日の、『同名の店を偶然発見した話』にしても、
これからする話にしても。

呼子でイカを食べようと、佐賀を訪れた時、
それは起こったのだ。

空腹になるにはまだ間があると、
近辺をウロウロしていたら、
小さな島で、『包丁』と大きく書かれた幟を発見して。

「はて?販売店の建物には見えないが、どういうことだろう?」
と、ちょうど柳刃包丁を欲しがっていたゴンザが車を降りて、
門を覗き込んでいたら、
中から一人の男性が現れて、
「ああ、さっき電話を下さった東京の人?」と、声をかけてきたのだ。

 

美しい場所との出会いは突然に。



「え!?違います。ただ、『包丁』と幟があったので気になって。
こちらで売っていらっしゃるんですか?」

「いや、うちは包丁鍛治でね」

本物の鍛冶屋さんなど、見たこともなかった我々は、
驚きながらも興味深々で、改めて敷地の中に視線を投げかける。

と、思いがけなく、男性が、
「せっかく通りがかったのも何かの縁だから、中を見ていく?」
と、招き入れて下さる。

「ええ!いいんですか!?」

ボリビア夫婦と我々二人。

「どこから来たの?」
との男性の問いに、
横浜から来てレンタカーで九州を旅していること、
ウロウロしていて幟を発見した経緯を、かいつまんで話し、
ゴンザが料理を業としていること、
ちょうど柳刃包丁が欲しくて、足をとめたことなど、付け加えて。

と、工場から出てきた年配の男性を、その人は『父親』だと紹介してくれ、
包丁を打っているのは、お父様なのだと教えてくれた。

対面販売だけなので、その包丁は、店にはなかなか並ばないけれど、
中には外国から、それを求めてくる客もいるのだと。

とっても穏やかなお父様ご本人は、
気さくで、にこやかで、
「工場も見て行く?」
なんて、大切な作業場にまで入れて下さるが、
さらに、『職人の仕事』に目を輝かせる、男子勢の食いつくような質問にも、
ひとつひとつ丁寧に答えて下さって。

やがて、お母様も加わって、
出来上がった柳刃の、見本まで見せて頂くことに。

「これは○○万円、こっちは○○万円」

『値段だけ』聞けば確かに高価と感じるものでも、
一生使う道具と思えば、決して高くはない、鏡のように光る包丁は、
ゴンザの心をいたく刺激したようで、
それぞれを見比べては、
何やら思案している様子。

「...これ、売って頂けるんですか?」

しかし、お母様によれば、今ではもう、
そのような仕上げの出来る研ぎ屋さんは数少ないそうで、
その頼りの職人さんも、ご高齢ゆえ、なかなかに仕事に時間がかかり、
予約をしても、現物が手に入る時期はわからないという。

「お父さんが自分で研いだものでよければ、分けてあげられるんだけどねぇ...」

「えっ!?それはおいくらですか?」

ゴンザの問いに、お母様は古い価格表を探し出して来て、
「この時でこの値段だったんだけど...
今だとどれぐらいになるのかなぁ?いくら出す?」

「それはもう、そちらの言い値で」

今すぐ、財布をそのまま置いてゆきかねない勢いながら、
不安と期待が交錯したゴンザの前のめりに、
「どうしようかねぇ...」
と、悪戯っぽく悩むお母様に、ついに息子さんが、
「お母さんが決めていいよ!」と声をかけ、
お父様はといえば、その横で、ニコニコと笑っていらっしゃる。

「じゃあ、○○円でどうだ!?」

思った額の、半分にも満たない、お母様の『言い値』に、
思わず「下さい!」と叫んだゴンザに、
これを運命といわずになんと言うのかと、
私は、胸がいっぱいになりながら考えた。

きっと、ボリビアカットの男もその妻も、同じ気持ちだろうと。

 

表に出てよくよく見れば「あっ、本当だ!『鍛冶屋』って、こっちの幟に書いてある!」

 


大事に大事に、新しい柳刃を抱えたゴンザと、
共に何度もお礼を言いながら、鍛冶屋さんのご家族に、一行は別れを告げる。

小さな島から、レンタカーの窓越し、
雨に煙る玄界灘を、近くに、遠くに、眺めながら...

その後。

鏡のように輝くあの、見本で見せて頂いた柳刃を、
いつか入手することを夢見てゴンザが、
己のものとなった包丁から、『銘』について調べたところ...

実はあの穏やかなお父様は、大変な名工でいらっしゃることが判明。

驚きも新たに、
さらにその出会いに、感謝と不思議の念を強くした我々であった。

 

お父さん、息子さん、お母さん、本当にありがとうございました!

ボリビア夫婦も、いつもありがとー!








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