猫猿日記    + ちゃあこの隣人 +

美味しいもの、きれいなもの、面白いものが大好きなバカ夫婦と、
猿みたいな猫・ちゃあこの日常を綴った日記です

すべてはここに。

2006年09月04日 23時10分04秒 | アルバム
昨日、別れを惜しんできた帝蚕倉庫。

森ビルの持ち物となったこの場所では、この5ヶ月。
期限付きのバーがopenしていた。

昨日はその最終日。
私も別れを惜しんできた。

横浜になんの愛情も持たない業者に取り壊される倉庫。
一部は残されるという話もあるが、感傷的に過ぎているのが自分でわかっていても、こんな風に歴史ある建物とそこにまつわる思い出が踏みにじられるのはたまらない。

ここは、横浜を形作ってきた、生糸貿易の歴史的遺構だ。

私にとっては、仕事も遊びも恋愛も生活も、すべてこの風景と共にあった。
この闇に浮かぶこの建物を横目に眺めながら、色んなものを愛した。



                         

新しいものと古いもの。
溶け合っていた風景は、高層マンションの下敷きにされ、人々が愛した風景は、一部の、『ステイタス』のために遮られる。
横浜は金で買い叩かれ、都内のどこかの街と同じような顔を持つ、うわべだけの街に成り下がり、いつしかそこに根付いた文化さえも忘れるのかもしれない。

 

この辺りで生きた人々が、何十年もそうしていたように。
私も多くの夜、もしくは昼を。
または夜明けを、この倉庫のある風景と共に過ごした。

傍から見れば、汚い倉庫でも。
私たちには美しい、思い出の宝箱なのだ。

                    

今は煌々とライトに照らされ、すべてを曝されていても。
ただ、金の生る土地と、拝金主義者にぶち壊されても。

ここで生きた人々の心には。
かつてここが薄闇にも、圧倒的な存在感を持ってそこにあったように。
誇り高くこの倉庫が、聳えつづけるのだと思いたい。

                         


愛情のない街づくりが、すべてを壊したのちも。


最新の画像もっと見る

8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
象徴的 (erima)
2006-09-06 01:52:39
じゅりりん様



美しい、帰りたいふるさとを愛する気持ちを持つ人々がたくさんいる国のはずなのに。

一部の人間の利権・利益のために、それは無視され、コンクリートであっちこっちが固められる。

「お前らなんぞ、これで充分だ」と、ビオトープをあてがわれて、結局、本当に国を思う人間は小さな場所に安らぎを見出すしかない。

それが日本の社会の現実だと思います。

「今がよければそれでいい」「あとのことはあとの人間にまかせればいい」

失いつつあるものの大きさに、子供の頃から特殊な階層で育ってきた今の政治家が気づくはずもなく、このまま踏みにじられてゆくしかないのでしょう。

鉄筋とコンクリートの重さのぶんだけ、彼らは権力と金を持ち、またその子孫が選挙に出られるわけですから。



じゅりりん様がその変わりように驚かれた横浜には、これからも多くの人々が驚き、失望し、去ってゆくでしょう。

そして、住んでいた人々すら「帰りたくない」町になる気がしています。
返信する
集まったのちにわかる現実 (erima)
2006-09-06 01:36:50
くてくて様



あれだけ雨後のタケノコのごとくマンションを建てても人が集まってくる現実は、全国の人たちの横浜へのイメージが先行しているからでしょう。

しかし、住んでみればイメージした横浜はもうそこになく、彼らは本当の現実を知ることになるのだと思います。

マイカル本牧に引っ越してきた人たちが同じ目に遭ったように。

(建設業者から聞きましたが、駅は地盤的に始めから作るのが不可能とわかっていたそうです)



古い建物を残して欲しいと皆が望んでも、今利権を貪りたい人間には何も聞こえない。

20年後。横浜は、住民が誇りを持てない町どころか、観光都市ですらなくなっているような気がします。
返信する
ここはもう横浜じゃなくなりつつある (erima)
2006-09-06 01:26:32
GONCYA様



相棒の言うとおり。かつて横浜はいい街だった。しかし、今はもう、あっちこっちから参入してくる業者に買い叩かれ、無法状態となっているんだ。

小説に登場する路地も、昔からあるバーも、倉庫も今はもうほとんどない。

ある意味誇り高く、閉鎖的だから発展した独自の文化が、経済中心の社会に負けたんだな。

しかし、参入してきた奴らは知らないだろうが、「横浜」は近い将来、人々から見捨てられるだろう。

建設当時はあれほど人を集め騒がれたマイカル本牧がゴーストタウンと化したのを忘れたわけでもあるまいに。



そう。きっと今の街づくりを望んでいる住民はいないだろうが、政治ってのはいつも、そうやって進んでいくもんだ。

お江戸日本橋の上に高速道路をおっ建てる愚かな振る舞いまでした国だ。

こうやって日本は、金意外美点のない国になってゆくんだろう。

本来罪を背負うべき、利権を貪る奴らは、そのツケが廻ってくるころには寿命で死んでるだろうから、将来に生きる人間達と祖国の行方なんかは知ったこっちゃないってわけだな。



本牧では。この8月に、またひとつ、昔ながらのバーの灯が消えたよ。
返信する
充分に豊かで便利でも (erima)
2006-09-06 01:04:53
ハナクロ様



日本は大変に便利できれいな国。それでも「利便性」のために「開発」するのは、ひとえに建築業界と政治の癒着のためだと思います。

必要のない道路工事で予算のバランスをとっているように、住民無視の開発で得をする者がいる。

懐かしい思い出や、祖国の歴史、文化、美しさ、未来より、金と保身が大事な人間に蹂躙されるがままの社会が今の日本なのではないでしょうか。

経済的には豊かでも、卑しく、貧しいこと極まりない...。

でもこれが現実なんですよね。



だとしたら。ハナクロ様がおっしゃるように、私も美しい思い出を大切に、その場所がなくなっても、ずっとずっと持ち続けていたいです。

ここにあるのが美しい思い出ばかりだからこそ。こんなに悲しいのでしょうから。

ハナクロ様。ありがとう。
返信する
Unknown (じゅりりん)
2006-09-05 23:33:55
慣れ親しんだ風景がなくなっていくのはたまらなく淋しいですよね。

数年前久しぶりの横浜の変わりようには私でさえ驚きましたもの。

うちの田舎などもどんどん変わっています。

田んぼ道の水路さえコンクリートの側溝が入れられ・・・。

学校ではビオトープを校庭の隅に作って自然と触れ合う空間・・・だとかなんとか新聞に載っていて、馬鹿じゃないのかと思いました。

こんなに美しい自然の風景があるのにそれを守ることはせず。

本当にそれは必要なのか?と思うような工事。

でもふるさとにはいつまでも美しい自然のままであって欲しいと思うのは、そこにはもう住んでいない私のわがままなのでしょうかね。

けれど「帰りたい」と思うふるさとであってほしい。
返信する
単純に (くてくて)
2006-09-05 20:44:58
どこからそんなに人が集まってくるんだろう、

とおもうほどそこら中マンションだらけですね。

そしてどれもこれも高層。



横浜は古い建物が多いのでできれば町並みとともに残してほしいですね。

10年前くらいに買った横浜の建築の写真集を懐かしげにみている今日この頃です。
返信する
いい街だなあ (GONCYA)
2006-09-05 16:30:09
横浜って。

相棒が嘆くのも分かる気がするよ。

っていうか、すごく分かる。

オレは、横浜とは何の関係もない人間だけど

こういう町をマンションだのファンションビルだのが飲み込んでいくってのは、想像するだけで耐えられないものがあるもの。

横浜を知らない人間でも、映画や小説に登場する路地とか昔のバーとか倉庫とかに、一種の郷愁を抱いてきたんだ。



街を壊すのが、その街に住む人の総意ならオレも文句は言わない。

時代の流れってのが、確かに存在するからな。

でもそれが「開発」なぞというお仕着せの言葉をまとった、国だとか企業だとかがやってるとしたら、その罪は一体誰が背負えばいいんだろうな。

せめてもの償いに、そこで生き暮らした相棒のような人間が、いつまでもその街の姿を語れってか?

失ったものの大きさに気づくのも、恐らくそこを愛した地元の人だけだろうから、ぶしつけやヤツラに、こういうことをいくら言ってもナンにも通じないんだろうけどなあ。



返信する
Unknown (ハナクロ)
2006-09-05 00:59:35
私の実家の周りもずいぶんと風景が代わり子供時代に遊んだ田んぼや自転車ごと落っこちた川・・・・すべてがガラッと変わり、知らない人からすれば「あら、便利になったじゃない」「きれいになったじゃない」と思うのでしょうが、当時の写真をみるととっても懐かしく胸が詰まる思いです。

今は昔の思い出さえも壊されてしまったように感じ辛いと思いますが、何も変わらずあるままだと思い出すことも無かったかもしれないものが、形が変わりなくなってしまったことに一層鮮やかに思い出がよみがえることがあります。

写真ではなくて胸のなかにある思い出はだれも壊せません。

とってもとっても辛いとは思いますが、寂しくなったら新しくなった場所に来て昔を懐かしむという「逆治療」をするしかないです。



でも、本当に利便性だけの街になっていいのかな?って思うことありますよね。
返信する

コメントを投稿