ささやんの天邪鬼 座右の迷言

世にはばかる名言をまな板にのせて、迷言を吐くエッセイ風のブログです。

高浜町元助役の心理と真理(その2)

2019-10-09 14:49:44 | 日記
目下考察中の福井県高浜町・森山元助役(故人)だが、彼の心理をさらに掘り下げるため、考えられる当時の一シーンに身をおいて、ひとつ想像を広げてみよう。

助役に抜擢されたあなたは、町に一軒しかないこぢんまりした料亭の奥座敷で、関電の幹部たちと酒を酌み交わしている。
「モリさん、一つよろしく頼みますよ」
そう言って、関電の社長があなたの盃に酒を注ぎ、頭を下げる。
「なにぶん頭の固い連中ですからな。あの反対派の連中を説得できるのは、モリさん、ネイティブのあんたしかいないのです。原発を高浜町に建設できるかどうかは、ひとえに、モリさん、あんたのネゴシエーションの力にかかっているんですよ。我々なんかでは、どうしようもありません。なにせ、相手は、100年も前の古〜い頭を持った連中ですからなあ」
その人を食った口ぶりに、あなたは激しい怒りを覚える。この男はあの反対派の連中を小馬鹿にし、見下している。同じように、こいつは俺のことも見下しているに違いない。
「馴れ馴れしい口をきくな、この無礼者!」
そういう言葉がつい口から出かかったが、あなたはその言葉をぐっと飲み込んだ。

原発施設をこの高浜町に建設することは、関電側だけでなく、あなた自身の望みでもある。「助役、よろしく頼みますよ」と常日頃、あなたは町長からも頼まれていた。その依頼を受けて、関電の社長には、むしろあなたの方から「よろしくお願いします」と頭を下げなければならない立場なのだ。

しかし、あなたにもプライドがある。それが都会のおエラいさんへの反発なのかどうか、自分でも解らなかったが、妙なプライドが邪魔をして、あなたは頭を下げることができなかった。それでも原発の誘致話は、何としても軌道に乗せなければならない。町長に恩を売り、この町でのし上がるためにも、この俺は関電に対して、自分なりの「誠意」を見せなければならないのだ。

あなたは代わりに、社長の脇に座った新任の専務・弱腰に顔を向けた。そして、セカンドバッグから分厚い封筒を取りだし、それを彼に差しだした。封筒の中には札束で200万円のカネが入っている。
「弱腰さん、このたびは天下の関電の、晴れて専務取締役になられたそうですな。ご出世、おめでとうございます。これは私からの、ほんの心ばかりのご祝儀です。どうぞお収めください」
「いやいや、助役さん、お心遣い恐縮です。・・・ですが、申し訳ありません。これは受け取れないのです。ですからお気持ちだけいただきます。どうも有難うございます」
あなたは、新任専務のこの慇懃無礼な拒絶の言葉に、怒りを抑えることができなかった。
「なにィ、貴様はこの俺の顔に泥を塗る気か!これは貴様だけじゃない、関電への俺の気持ちも入っているのだ。それを断るとは、一体どういう了見なのだ!」
気づくと、そんな怒声が口を衝いていた。
「い、いえ、泥を塗るなんて、そんなつもりは毛頭ございません。そちら様のお気持ちはわかりますが、これは社内規定ですから、仕方がないのです。ーーでも、そうですか。お気を悪くしたら、申し訳ないことで、その点はお詫びします。そうですか、それなら、こ、これは、はい、ありがたく頂戴いたします」
弱腰はそう答えると、青ざめた顔で、すごすごとカネの入った封筒を自分のカバンに収めた。

実情はそういうことではないだろうか。それなら、不可解に見えた森山元助役の言動も、すこしは解る気がする・・・のだが、いかがだろうか。
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