たまには朝日もまともな記事をのせるものだ。といっても、これは朝日の記者が書いたものではなく、柳沢協二氏(元内閣官房副長官補)が語った内容を記事として構成したものである。
柳沢協二氏の意見は、ふだん私が考えていることを100パーセント、いや、120パーセント話してくれている。日本が米国の構築する対中包囲網に否応なく組み込まれ、対中戦争の尖兵にされかかっている現在、柳沢協二氏という(元)政府要人の見立ては貴重だと思う。岸田政権は、柳沢協二氏の意見をもっと真剣に聞くべきだ。
我々日本国民も、柳沢協二氏の意見を真剣に聞くべきではないか。
そういう思いから、以下、この記事を丸ごと紹介する。
記事のタイトルは、
「日米比連携、抑止力にならず 意見違っても中国と対話を 柳沢協二・元内閣官房副長官補」
というものである。
柳沢氏の見解の要点はこの見出しの文句に尽きているが、もっと詳しく知りたいと思う人のために、以下、記事本文を丸ごと紹介することにしよう。
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南シナ海の領有権問題で中国と対立するフィリピンに対し、日本は「準同盟国」級への格上げを図っている。日比両国は8日、両国の部隊を行き来しやすくする「円滑化協定(RAA)」に署名。中国の海洋進出を押し返そうと日米比が進める急速な連携強化に、柳沢協二・元内閣官房副長官補は日本が武力紛争に巻き込まれる危うさを指摘し、バランス外交の必要性を指摘した。
*
日米は4月の首脳会談やフィリピンを交えた3カ国首脳会談、その後の南シナ海での海上協同活動により、中国に「乱暴な行為は放っておかない」とのメッセージを送ったはずだった。それが抑止力になると思われていたが、中国の行為はエスカレートし、6月にはフィリピン軍側にけが人が出た。むしろ「日米は打つ手がない」とのメッセージになっている。
中国の乱暴な行為を軍事的コミットメントでやめさせようとする場合、日米はより強い行動をとらなければならない。つまり、いずれは中比の武力紛争に巻き込まれるだろう。海上自衛隊の主な役割は日本周辺の警戒と防衛であり、フィリピンへの関与は能力を超えている。身の丈を超えた約束をしてはいけない。
尖閣諸島が中国に攻撃された時、日本はフィリピン軍の支援を当てにしないだろう。一方で南シナ海で日本が軍事的にコミットすれば中国との戦争に発展しかねない。
*
日本は自国の存立をかけた「必死の選択」についてよく考えるべきだ。「困った時に助けてもらうために」とのストーリーは戦争では成り立たない。台湾有事が懸念されているが、私は台湾の人たちに「日本が助けに来るなんてことはあり得ないと思う」と話している。
東南アジアの多くの国々は米国も中国も選ばず、リスクヘッジしている。日米と連携を深めるフィリピンは独特だ。日本も賢い位置取りをしていかないと、危ない状況に追い込まれかねない。
*
冷戦時代は米国とソ連が「核の抑止」によって直接の戦争が起きないという意味で安定していた。日本は米国と一体化していればソ連から攻められる心配はなかった。
ただ、今の国際環境は不安定になり、現にロシアは戦争している。バランス外交で過渡期を生き残らなければならない。
岸田文雄首相は4月、米議会で「日本は米国とともにある」と演説した。米国側は「何かが起きた場合、日本は一緒に戦ってくれる」と期待しただろう。かつての発想で米国と一体化すると、米国の戦争に巻き込まれる懸念がある。日本の国益に反するなら米国に「戦争は困る」と主張できなければならない。政治的な自立が必要だ。
日本は中国とのパイプがほとんどない中で、米国主導の「中国包囲網」に加担してしまっている。中国との対話も重要だ。意見が合わないからこそ対話しないと、いざという時に事態はエスカレートするだろう。
やなぎさわ・きょうじ 1946年生まれ。70年、旧防衛庁入庁。人事教育局長、官房長などを経て、小泉、第1次安倍、福田、麻生の各政権で内閣官房副長官補(安全保障・危機管理担当)を歴任。「自衛隊を活かす会」代表。
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この人、ウィキペディアで調べると、現在もいろいろな役職に就いているようだが、メインの防衛官僚職は2009年に退官したらしい。定年のためだろうが、日本丸の船長が舵取りを誤らないように、今後もご意見番として、遠慮なくずけずけとものを言ってほしいものだ。
柳沢協二氏の意見は、ふだん私が考えていることを100パーセント、いや、120パーセント話してくれている。日本が米国の構築する対中包囲網に否応なく組み込まれ、対中戦争の尖兵にされかかっている現在、柳沢協二氏という(元)政府要人の見立ては貴重だと思う。岸田政権は、柳沢協二氏の意見をもっと真剣に聞くべきだ。
我々日本国民も、柳沢協二氏の意見を真剣に聞くべきではないか。
そういう思いから、以下、この記事を丸ごと紹介する。
記事のタイトルは、
「日米比連携、抑止力にならず 意見違っても中国と対話を 柳沢協二・元内閣官房副長官補」
というものである。
柳沢氏の見解の要点はこの見出しの文句に尽きているが、もっと詳しく知りたいと思う人のために、以下、記事本文を丸ごと紹介することにしよう。
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南シナ海の領有権問題で中国と対立するフィリピンに対し、日本は「準同盟国」級への格上げを図っている。日比両国は8日、両国の部隊を行き来しやすくする「円滑化協定(RAA)」に署名。中国の海洋進出を押し返そうと日米比が進める急速な連携強化に、柳沢協二・元内閣官房副長官補は日本が武力紛争に巻き込まれる危うさを指摘し、バランス外交の必要性を指摘した。
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日米は4月の首脳会談やフィリピンを交えた3カ国首脳会談、その後の南シナ海での海上協同活動により、中国に「乱暴な行為は放っておかない」とのメッセージを送ったはずだった。それが抑止力になると思われていたが、中国の行為はエスカレートし、6月にはフィリピン軍側にけが人が出た。むしろ「日米は打つ手がない」とのメッセージになっている。
中国の乱暴な行為を軍事的コミットメントでやめさせようとする場合、日米はより強い行動をとらなければならない。つまり、いずれは中比の武力紛争に巻き込まれるだろう。海上自衛隊の主な役割は日本周辺の警戒と防衛であり、フィリピンへの関与は能力を超えている。身の丈を超えた約束をしてはいけない。
尖閣諸島が中国に攻撃された時、日本はフィリピン軍の支援を当てにしないだろう。一方で南シナ海で日本が軍事的にコミットすれば中国との戦争に発展しかねない。
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日本は自国の存立をかけた「必死の選択」についてよく考えるべきだ。「困った時に助けてもらうために」とのストーリーは戦争では成り立たない。台湾有事が懸念されているが、私は台湾の人たちに「日本が助けに来るなんてことはあり得ないと思う」と話している。
東南アジアの多くの国々は米国も中国も選ばず、リスクヘッジしている。日米と連携を深めるフィリピンは独特だ。日本も賢い位置取りをしていかないと、危ない状況に追い込まれかねない。
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冷戦時代は米国とソ連が「核の抑止」によって直接の戦争が起きないという意味で安定していた。日本は米国と一体化していればソ連から攻められる心配はなかった。
ただ、今の国際環境は不安定になり、現にロシアは戦争している。バランス外交で過渡期を生き残らなければならない。
岸田文雄首相は4月、米議会で「日本は米国とともにある」と演説した。米国側は「何かが起きた場合、日本は一緒に戦ってくれる」と期待しただろう。かつての発想で米国と一体化すると、米国の戦争に巻き込まれる懸念がある。日本の国益に反するなら米国に「戦争は困る」と主張できなければならない。政治的な自立が必要だ。
日本は中国とのパイプがほとんどない中で、米国主導の「中国包囲網」に加担してしまっている。中国との対話も重要だ。意見が合わないからこそ対話しないと、いざという時に事態はエスカレートするだろう。
やなぎさわ・きょうじ 1946年生まれ。70年、旧防衛庁入庁。人事教育局長、官房長などを経て、小泉、第1次安倍、福田、麻生の各政権で内閣官房副長官補(安全保障・危機管理担当)を歴任。「自衛隊を活かす会」代表。
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この人、ウィキペディアで調べると、現在もいろいろな役職に就いているようだが、メインの防衛官僚職は2009年に退官したらしい。定年のためだろうが、日本丸の船長が舵取りを誤らないように、今後もご意見番として、遠慮なくずけずけとものを言ってほしいものだ。
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